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九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも? 事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは〈人間もどき〉の存在に気づく……。
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Posted by ブクログ
珈琲怪談を買ったのですが、関連書籍と聞いてこちらの作品と不連続の世界も購入。 恩田陸さんの作品を読むのは初めてでしたが、読みやすくてすごく面白かったです。町のじっとりとした空気感や仄暗い雰囲気が終始目に浮かぶようで、設定も文章もすごく惹き込まれるものがあり他の作品もとっても気になって積読が増えました...続きを読む…読むのが楽しみです!!
多聞さんまで盗まれたいたとは 予想外の展開でした 掌に握られていた鳩笛 藍子も同じ鳩笛を握りしめていたのは何故? 得体のしれない あれの存在にビクビクしながら 楽しんで読みました
月は夜空に浮かぶ。いつも月を見ているが、しかし、地球から月の裏側は見えない。それでも、月を見て、月は知っているような気になる。しかし、見えていない月の裏側で何が行われているのか? この物語は、見えていることだけでなく、実は見えていないものが、知らない間に存在し、それが現在の見えている世界に関与...続きを読むしているという。認識の不確かさと日常生活の脆さがあらわになる。随分前に、月の裏側に置き去りにされた夢を見たことがある。荒涼とした月の原野に見えるのは漆黒の空だった。本書は、堀と川が多い街で、人が忽然と姿を消し、数日後に記憶を失った状態で戻ってくるという不可解な事件を巡る物語。その事件の謎解きは、はっきりしていないし、解明はされていない不思議な物語だ。 ある日突然、大切な人が消え、何事もなかったかのように戻ってくる。その間、彼らがどこで何をしていたのか、なぜ記憶がないのか、誰にも分からない。常識では考えられない現象が起こった時、何を信じ、何を拠り所にすればいいのか。 九州の水都である箭納倉(モデルは柳川市だそうだ)で事件は起こる。大学の先生をしていた三隅協一郎とその教え子で、現在大手レコード会社のプロデューサーの塚崎多聞。そして協一郎の娘で京都の料亭の女将をしている池内藍子。藍子は多聞の後輩で、若い頃に多聞を好きだったようだ。地方新聞の記者の高安則久の四人が、見たこと、そして過去にあったことを重ねて、人がいなくなる事件の謎解きをする。 協一郎は、失踪を誘拐ではなく「盗まれる」という言葉で表現している。失踪者は数日間が空白となり、その間の記憶を失っている。時間や記憶、あるいは個人の存在そのものが奪われている。これは、失踪者の人生の一部、あるいはアイデンティティの一部がごっそり「盗まれた」状態と言える。残された人々は、突然の出来事に不安と混乱を覚え、それまでの平穏な日々が失われたと感じている。そして、過去にもそんなことがあったことを思い出したりする。空間軸とさかのぼった時間軸が交差する。 ここで重要な役割を果たすのが、白雨というネコである。白雨は、人間よりも早く異変を察知しているかのような描写がある。人間には見えない、感じられない何かを捉え、失踪の兆候やその後の変化に敏感に反応しているように見える。白雨は言葉を話せないが、その行動や視線は、物語の進行に静かに寄り添う。人間が混乱し、真実を追い求める中で、白雨はまるで達観したかのような存在。そして、白雨は、人間の指や耳を加えて、ヒントを与える。協一郎は白雨を追いかけるが、いつも見失ってしまう。人間には理解できないところと行き来しているのが白雨である。 そして、失踪する人の家は、堀に面している。また堀や川は増水すると街全体を覆うほどの勢力を持つ。雨が降り、増水し、堀に面した家の窓に水膜がへばりつく。また、その部屋にいた人は、びっしょり濡れた感覚となる。確かに、生命は海から生まれ、身体の水分は大人で60%もある。ある意味では人は水でできている。四人は、不確かな現象を見て、謎解きをしようとする。人が失踪し、何事もなく戻ってくる。そして、いつの間にか、街のすべての人がいなくなり、テレビ、ラジオの放送が途絶え、電話も繋がらない状態になる。そして四人だけしかいない街となる。街は盗まれた状態となる。そして、
お手本のようなSFモダンホラーだ。間違いない。未読の方は幸せだ。情報など欠片も仕入れずにこの本を手に取り、頁を開け。夢か現かわからない悪夢にうなされる事は間違いない。保証する。 20年振りに再読してもなお、本書は新鮮だ。奇妙な出来事に直面した登場人物たち、彼らが追っていく事件の一つ一つ、そして明らか...続きを読むになっていく真実と事件の姿……この様に静かに悲鳴をあげたくなった。大口を開けて悲鳴をあげるのではない。息を押し殺して心の中で叫ぶのだ。このねっとりとした、まとわりつくような恐怖は詩的で、郷愁を誘い、魅力的だからタチが悪い。一度取り込まれたら最期だ。もう引き返せない。
●所感 2025年、最も、考えさせられる小説かもしれません。 いや、小説という括りが適当ではない書籍といえるかもしれません。 感想は後日改めます。 簡単には、書けないからです。 ------------ ●2025年12月記録 感想 1.世界観 『月の裏側』は、私たちを日常の裏側に潜む不確かな世...続きを読む界へと誘い込む、冷たくも美しい傑作です。 物語の根幹を成す不可解な現象――人が唐突に失踪し、しばらく後に記憶を失ったまま戻ってくるという出来事と、街の至るところに溢れる水源という異様な設定から生まれています。 2.テーマ この小説が提示するのは、「見えているものの本来の姿は何なのか?」という、哲学的な問いかけです。 物語の舞台となる街は、失踪と水源という二つの「異界の兆候」を抱えながら、あたかも何も起こらなかったかのように日常を営んでいます。 この不気味な状況は、私たちが生きる「自分」という存在の基盤を揺るがします。 それは、私たちは、生きているが、「どこまでが己なのか?」「肉体と精神の境界は何なのか?」という根源的な問いです。 3.得体の知れない怖さ 記憶を失って帰還した者たちの姿を通して鮮烈に突きつけられます。 それは、自分の肉体が知らない時間を過ごし、精神が空白を抱える状況に、、、です。 私たちが「私」だと認識しているアイデンティティは、いかに脆く、曖昧な境界の上に成り立っているのかを痛感させられるのです。 4.恩田陸さん 日常の隙間から滑り込む「月の裏側」のような異世界を、恩田陸さんは圧倒的な想像力と創造力で具現化しています。 あり得ないはずの現象を、あたかも現実であるかのように描写する筆致に、ただただ圧倒されました。 この作品を読み終えて痛感したのは、AIが論理的な「物語」を構築できても、恩田さんのような作家が作り出す、読み手の存在そのものを問い直す「作品」は生み出せないのではないか? というものでした。 以上 ------------ ●2025年11月内容 このレビューでは、なぜそのように考えたのか? そのきっかけの原文を転記しておきます。 なお、□は、私側で勝手につけた分類である。 ------------ ●お願い もしも、どれか一つでも、皆様の心を捉えるならば、ぜひご一読をお願いしたい ------------ 『月の裏側』は、生物史であり、人類史であり、哲学であり、そしてそれらの上でのミステリーであるのかもしれない。 -----以下は原文----- □男のひと、女のひと 「男はさ、たまにバラバラな奴もいるけど、だいたい同じ方向向いた矢印がいっぱいぶら下がってるんだよ。 でも、女の子って、向きの違う矢印がいっぱいぶら下がってるのね。 だから、男は自分の矢印と女の子の矢印の向きを合わせようとするんだけど、女の子の矢印は全部方向が同じわけじゃないから、いつのまにか他の矢印と正面衝突したり立体交差になっちゃてたりする」 ------------ □人類 「なあんで、こんなに複雑な生き物になったのかなあ、人間って。僕らのサブカルチャーなんて、人類の進歩には全く貢献してないよねえ。人間って無駄なことばかりする方向に向かってるけど、これも何か戦略と関係あるのかなあ」 ------------ □進化 「この一世紀、人間はどんどん身体を使わない方向に向かってますよね!!乗り物が発達して足を使わない。道具が発達して手も使わない。首から上ばかりを使う。話す、聞く、読む。 つまり、目に見えない部分、言い換えれば『意識』をどんどん発達させて、イメージを広げて頭の中のものを目に見えるようにしたいと思っているわけです。これがさらに進んでいくと、テレパシーに近い状態になっていく。意識だけで他人と交信する。」 ------------ □共同体 『ひとつ』になりたいという誘惑だ。宗教も、家族も、社会も、我々の「ひとつ』になりたいという誘惑が生み出した形式なのではないかと思うことがある。なぜなら、個々に自分の戦略を探るのは大変なストレスが伴うが、「ひとつ』になるのは楽だし何も考えずに済むからだ。 ------------ □同化、多様性 我々は無意識のうちに他者と同化することを避け、恐れてきた。なぜならば、多様性こそが我々の生物としての戦略だからだ。 ------------ □日常への観察と認識 みんながどっぷり平凡な日常に浸っていて変化に気付かない。または、頭から変化を否定して気付かないふりをしている。 ------------ □生命の歴史 人間が意識を獲得し、社会を作り、倫理や哲学を確立して自らの行く末を模索してきた歳月も、生命というもの自体の巨大で冷徹な流れには何の関係もない。
行方不明になったかと思うと、何事もなかったかのように帰ってくる。それも町中のみんなが。。 帰ってきたのは人間なのか生産されたそれなのか。。果たして私は本物の私なのか、それとも、、、 視覚的な恐怖はもちろん、臓物から湧き上がる心理恐怖の板挟みで発狂してしまいそうでした。 人気「夜のピクニック」よ...続きを読むりも私は断然こっちをオススメしたい。
水郷都市・箭納倉で3件の失踪事件が起きていた 箭納倉に住むかつての恩師協一郎に呼ばれた多聞は、3件の失踪事件が全て堀に面した家で起きていること、しばらくしてから怪我もなく無事に戻るが失踪している期間の記憶がないことを説明される 多聞たちはこの不思議な事件を思考し始めると、ある仮説に思い当たる… . ...続きを読むあ〜おもしろかった! 恩田陸のわりと初期?にあたる作品だと思う 六番目の小夜子のようなホラーみのある話 私は恩田陸が好きだし慣れているのだけど、伏線が張られて全て回収してほしい!って人には謎が残るものになるのでそこはがっかりではなく理解してほしい
ゾクゾクした。 そんなわけない。と思いながらも、もしかしたら…?と思ってしまうような、不思議なお話。 ミステリー?ホラー?
まだらに読んでいる恩田陸さんの作品で どちらかというと読んでいるものの方が多い中で なんとなくスルーしていた作品。 塚崎多聞という主人公を据えた シリーズとして読める作品ということを知って読んでみた。 内容としてはthe恩田陸。 水路の走る町。 老人の行方不明事件。 少し不思議などこかホラーな、...続きを読む恩田陸の世界。
のどかな水郷都市で次々と起こる不可解な出来事を描いた物語。 何か得体の知れないものが音を立てずに忍び寄る、そんな不気味さと怖さを演出する手法が見事です。 現実の不確かさや曖昧さを意識させる幻想的な雰囲気もあり、読後は長い夢を見ていたかのような気持ちになりました。
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