恩田陸のレビュー一覧
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5人の小説家の短編と、2人のクリエイティブディレクターのアンソロジー
テーマは九州の特別列車「ななつ星」に乗り込む乗客の物語だ
列車はたくさんの人を一度に運ぶけど、乗客の一人一人はそれぞれ特別な想いを持って列車に乗り込む
5人の作家さんが寄せたとても短い物語には人生という長い長い想いが乗っていることに気が付く
恩田陸さんの「お姉さん」が仕組んだ、複雑で切ない物語も時間の長さと、生きようとする想いの深さが音楽に乗ってやってくる
個人的には小山薫堂氏の言葉が圧巻だった
人から人へ繋ぐ想いが言葉となって、香り高く温かみを持って伝わってくる
「共感」という到達点はその気持ちを理解しようとする意識の -
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バレエの話。
春と入団試験から長い付き合いをする深津、春の叔父の稔、春とバレエ教室が同じの七瀬、そして春自身が紡ぐ春の話。
読みながらバレエを、春を感じる。この高揚感流石すぎてほんまに好き。恩田陸さんの芸術系の作品ことごとくどんぴしゃりで好みすぎる。蜜蜂と遠雷とかチョコレートコスモスも音や演技が見えるようやったもん。このspringも、バレエが見えるようで胸を掴まれる。
あと、出てくる人皆好きで読んでてストレスがなかった。深津も七瀬も稔も勿論素敵で、他の先生方やバレエ仲間もやっぱり素敵で、この人々が紡ぐバレエが見たくなる。
最後の春目線の章で掴みづらかった春を掴めた気になり神聖視してたのに思い -
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タイトルだけ見て、伊坂幸太郎の「重力ピエロ」を思い浮かべた的外れな読者です。重力ピエロには、泉と春という兄弟が登場する。どちらも英語ではSpring、まぁ、的外れではあるけれど、この本の主人公も「春」という名のバレエの神に愛されたいと願う男の子だ。ワークショップで出会う深津純目線の春。叔父の稔さん目線の春。バレエ教室から一緒の滝澤七瀬目線の春。そして、俺自身目線の春。という四部構成になっている。
フィクションと言いながら、バレエの世界に限らず、世界の名だたる実在の人物、芸術作品が、これでもかというほど登場する。作者の教養に酔いそうな一冊だ。恩田陸、恐るべし。この一冊、1800円では安すぎる、と -
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ネタバレ分かりやすい伏線とともに、何か小さなノイズのような隠してあるような伏線がたくさん潜んでいて、その先が知りたくて知りたくて、読むことが止められない物語
読み始める時は、写真から始まり、え?こんな話なの?と始まるけど、1組の男女の思いもよらない過去の話がさらさらと語られる。
読んでいてこっちも息を呑んでしまう、言葉だけで緊張感の漂う感じも、読むことを止めさせない。
話がこれで終わりそうなときに、その見えにくい伏線に気づいて、また新たに彼らの過去が紐解かれていく。
モヤモヤしそうだけれど、読み終わった後に意外と消化不良感はなくて、彼らはまた人生を歩いていくんだろうなと少し明るい未来が想像できそうな -
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〔Ⅰ〕四人の、まあ成功していると言えるおっさんたちが各地の喫茶店をハシゴしながら短くて他愛ない怪談話(というより奇妙な話系か)に興じ続けるというもの好きなお話。
〔Ⅱ〕場所は、真夏の京都/真冬の横浜/五月の雨の神保町/神戸/大阪ではマヅラっぽい店や芝川ビルっぽいビルをはじめ知ってるとこが多かったのが嬉しくはある。御当地ものって面もあるなあ/晩秋の京都。
〔Ⅲ〕とても好みのタイプの本でした。たぶん、こういうのがいちばん好き。
■塚崎多聞についての簡単な単語集
【尾上】塚崎多聞の友人。作曲家兼スタジオミュージシャン。もともと京都人。布袋様みたいな感じ。喫茶店ハシゴでの怪談会を企画した。インスピ -
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再読完了。
このお話好きなんですよね。
苦手なロマンスなのに、なぜか好きなんですよ。
刹那の出会いと別れを繰り返す男女のお話ですが、これが、時空を超えて結びつく何やら広がりを感じるもので、一つ一つはほんとに切ないながらもポジティブな雰囲気があります。
んで、そのつながりが小気味良いんです。
あれ?さっきこの人出てこなかったっけ?と何度も戻りながら(すぐ忘れる)、ああこの人はこうなるんだあ、と答え合わせをしながら進むのも分かりやすく、ショートや短編も好きな自分に合ってるんだと思います。
また、美術作品や歴史も絡めて物語が紡がれるので、変なリアリティを感じるのです。まさかあの人物が発端だったと -
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この本は、ピアノコンクールを舞台にした青春群像劇で、音楽をテーマにしながらもエンタメ小説としての面白さが抜群です。上巻では、個性豊かな登場人物たちが次々と登場し、それぞれのバックグラウンドや音楽への想いが丁寧に描かれます。
文章はまるで音楽そのもので、演奏シーンではまるで音が聞こえてくるような臨場感がありました。テンポよく展開しつつも、読者に想像する余白を与えてくれるのも魅力です。上巻の段階で既に「この先どうなるの?」と引き込まれ、続きを読まずにはいられなくなる構成でした。
音楽やコンクールに詳しくなくても楽しめますし、むしろ登場人物たちの情熱に引っ張られて一緒にドキドキできる一冊です。