恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ミステリーを読んだはずなのに、心に残ったのは女たちの矜持だった。
˖ ⊹ ࣪ ˖ ☽ ⊹ ࣪
ミステリーとして紹介されることの多い作品だけれど、実際に読んでみると謎解き以上に、女性の強さを感じられて面白かった!
ひとりの作家の死をめぐる真相に翻弄されながらも、それを乗り越えるどころか糧として取り込み、それぞれの人生を前へ進めていく女性たち。
終始お互いを探り合う緊張感のある物語なのに、完全に敵にはなりきれない微妙な距離感が良い。
美味しそうな料理を囲みながら交わされる、女子会のような気の置けない会話がいい具合に緩みを作っていて、とても読みやすく一気読みしてしまった。
そして何より、登場する女性たちがみんな格好いい。
それぞれが自分なりの矜持やプライドを持ち、その強かさに触れることで、自分が女であることを少し誇らしく思えた。
欲を言えば、物語の中心にいる時子自身の魅力をもう少し見たかった気もする。
周囲の人々が長年囚われ続けるほどの存在としては少し物足りなく感じた。
でも、それもまた登場人物たちが過去に縛られるのではなく、それを糧に未来へ進んでいくラストのためだったのかもしれない。
ミステリーとしても面白かったけれど、それ以上に女性たちの生き方や関係性が印象に残る一冊だった。 -
Posted by ブクログ
本のページ数かつ三分の一がエッセイなので、想定よりもそれぞれの話は短かった。ホフマン先生と風間塵の出会いがあるというので、本編では故人であったホフマン先生がどんな人かわかるかと思ったが、話が短くて人柄を把握するほどではなく、そこはちょっと残念だった。
しかし、本編では脇役であった審査員の三枝子やナサニエル先生、課題曲を作曲した菱沼さんについてはそれぞれの性格が垣間見える過去がわかり、より好きになった。特にナサニエル先生は、本編よりかわいい先生だなという印象になった。
スピンオフ以外の恩田陸先生のそれまで寄稿したエッセイ集は、先生のクラシック好きがよくわかり、面白かった。クラシックが好きだと、レコードの時代からの曲の集め方の変遷や、聞くだけでなく記譜を集めるという考えたことがなかった聞き方をしており、もう一度本編の蜜蜂と遠雷を読みつつ、登場した曲を聴いて見たいと思った。 -
Posted by ブクログ
恩田陸さん著「祝祭と予感」
最近読み終えた「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ作品、6篇からなる短編集。
「蜜蜂と遠雷」の個性豊かな登場人物達。その彼らのスピンオフ。どれも素晴らしかったし、読んで良かったと思わされるものばかりだった。
本編「蜜蜂と遠雷」に挿入してしまえば更に長くなってしまうだろうし、コンテスト内という一つの軸がぶれてしまう。
この形で読者に届けてくれた著者に感謝。
特に印象に残った2篇
「袈裟と鞦韆」
作曲家菱沼忠明が宮沢賢治の詞でもある「春と修羅」という曲の作曲に至るまでの背景が描かれている物語。
秀逸なのは「蜜蜂」の本編で「菱沼賞」を受賞したコンテスタントは2次で落選した明石。この物語と見事にリンクしている。
菱沼は明石の演奏こそが彼の作曲までの苦悩や葛藤が共鳴していると思えたのだろう。
本編では詳しくは描かれなかった「菱沼賞」受賞の経緯、この1篇に集約されていてこの作品を読んでこそ本編の真の姿が分かるといった様な内容だった。
「伝説と予感」
ホフマンと風間塵の出会いが描かれる、本編の前日譚の物語。
このサブタイトル「伝説と予感」、なんて素晴らしいのだろう。
「蜜蜂」本編でさえ天才ピアニスト?天才ソリスト?なんと形容していいか分からないが風間塵に関しては序章に過ぎないと思わされる描かれ方の中で、その「伝説と予感」は充分すぎるほど描かれていた。
その前日譚にもある「伝説と予感」…
素晴らしすぎた。
本編「蜜蜂~」本作品もそうだが描かれている登場人物達のキャラクターが素晴らしいし、各々が生身で生きている作品なのだと感じられる。
だからこそ音楽のみならず物語が共鳴して胸に響きわたる様に感じるのだろう。 -
Posted by ブクログ
・大学の劇団に突如現れた不思議な天才少女(佐々木飛鳥)、ステップアップを狙うサラリーマンあがりの中堅脚本家(神谷)、演劇進出を狙うアイドル(安積あおい)、芸能一家出身で圧倒的地位を獲得しつつある女優(東響子)など・・・が伝説のプロデューサー芹澤泰治郎による舞台への出演を掛けたオーディションに臨んでいく群像劇
・面白かった!!!!! ゾクゾクした!!!!! というのが読後の率直な感想
・演劇の世界の深さや、登場人物の心理描写やスピード感が圧巻
オーディション場面は、「演劇サークル入部の為のエチュード」「2人3役の脚本」「舞台主演が演じる傍らでその影を演じる」などいくつかあるが、夫々違った方法で想像を超えてくる
・オーディション描写の性質上、「同じ脚本を異なる登場人物が順番に演じる」ことになるが、登場人物による演じ方の違いを、ここまで生き生きと文章で表現出来ることに驚くしかない
・コンパクトな人物・背景説明で読者に事前知識を与えつつ、改行等も上手く使って臨場感・スピード感でぐいぐい引っ張っていく様な書き方など、プロの技が光っている気がする
・個人的には、東響子からの学びが多かった。これだけ恵まれた環境にいて強い自我・プライドを持ちながら、客観的にも自分を分析し、自分に足りないもの、知らないことを積極的に吸収しに行こうとする姿勢、時には恥をかくことも覚悟で飛び込む姿勢など、素敵過ぎる、、、
・俳優が常に自分自身を問われ続ける苦しさに対して、自分がビジネスで問われる苦しさは何だろうか
・続編『ダンデライオン』『チェリーブロッサム』はいつ出るだろうか、、、 -
Posted by ブクログ
バレエダンサーがテーマの人気長編の続編である。続編は、短編集であった。長編で活躍した登場人物ひとりひとりが取り上げられ、前日譚や後日譚、サイドストーリーなどが展開される。
…ただ、入手するまでにずいぶん時間がかかってしまって、本を開いても出てくる人物出てくる人物、ほとんど覚えてない笑 覚えてなくてもったいない気もしたが、それでも楽しめるのだからさすが恩田陸…。
そして読んでいくうちに少しずつ思い出す。あの日の光…。挑戦、葛藤、栄光。
短編のなかで、主人公の萬春のかなり未来を垣間見る物語もある。おじいさんになったバレエダンサー兼振付家へのインタビューという形式だ。不覚にも月日の流れと人生というものに涙した。長編で青春を見届けた主人公の晩年まで読めるとはなんと贅沢なつくり。