恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2021.6.23
★3.9
高校の伝統行事「歩行祭」で、夜通し80キロを歩く生徒たちの一日を描いた物語である。主人公の貴子は、複雑な関係にある異母兄の西脇融と「話をする」という小さな目標を胸に歩き始める。長い道のりの中で、友人との会話やさまざまな出来事を通して、自分の気持ちや人との関係に向き合っていく物語。
まさに青春。歩き続ける中で少しずつ心の距離が変わっていく様子が丁寧に描かれていて、夜から朝へと移り変わる時間の流れとともに、登場人物たちの心も変化していくところが魅力的。
主人公が勇気を出して一歩踏み出す姿には、勇気づけられるし、読んだ後少し前向きになれる小説。
✍︎雑音は、うるさ -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本を読み終えて、まず感じたのは強い没入感だった。舞台や芝居に特別な関心があるわけではない私でも、物語に引き込まれ、芝居の世界を少し覗き見たような感覚を味わえたのが印象的だった。
一方で、オーディションでの演技シーンはやや難しく感じた。作中で演じられている芝居そのもののストーリーを知らないため、断片的な描写だけでは完全に理解しきれず、少し置いていかれるような感覚もあった。しかし、響子の感情に焦点を当てて読むことで、物語の流れや緊張感は十分に伝わってきた。
この作品で特に印象に残ったのは、飛鳥という存在の描かれ方である。周囲の人物たちの視点から見た飛鳥は、天才的で異質、どこか恐ろしさすら感 -
Posted by ブクログ
上巻がいわば明石の「生活者の音楽」を描いたものだとすれば、下巻は風間塵を触媒としてマサル、栄伝亜夜が羽ばたいて行く物語。
音楽を世界に連れ出す、亜夜を音楽の世界に連れ戻す、音楽を世界に還元する、演繹的かつ帰納的な表現に富んだ作品で心を打たれた。
言ってしまえば「読書」とは文学作品を消費する行動であるが(もちろん読み終えた後に残るものはある)、この作品は読み進めていく中で文章を音に変え、心に蓄積させてくれる。
結果感動的なシーンでもなんでもない音楽の描写がすごく泣けてくる。感動でもなく、ただ心が溢れた結果なのだと思うが、
これも音楽が世界、自然に還元されていると言ってもいいのではないか。と思 -
Posted by ブクログ
演劇の天才を描く物語
「蜜蜂と遠雷」がピアノの天才なら、これは演技の天才
芸能一家に生まれ、容姿と演劇の才能に恵まれた東響子
幼い頃から空手に打ち込んでいたという異色の経歴を持つ佐々木飛鳥
舞台にたった経験がないにもかかわらず、彼女が何かを演じる技術は初めから卓越している
旗揚げもしていない無名の男子学生集団に演技力を見出され入団し、その才能は演劇業界に広まっていく
そんなに圧倒的な演技というものを観たことがないので、天才っぷりをリアルには想像できない
「蜜蜂と遠雷」と同様に、演劇に関する素養のある人ならもっとリアルを感じて読めるのでしょうね
登場人物がちょいちょい現実の人を彷彿させる