あらすじ
自らの名に無数の季節を抱く無二の舞踊家にして振付家・萬(よろず)春(はる)。少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。同時代に巡り合う、踊る者 作る者 見る者 奏でる者――それぞれの情熱がぶつかりあい、交錯する中で彼の肖像が浮かび上がっていく。彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。一人の天才をめぐる傑作長編小説。 【電子書籍版には紙書籍版に収録されている「パラパラ漫画」と書き下ろし番外編二次元コードは付きません】
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Posted by ブクログ
思っていたのとちょっと違っていた。
主人公は「萬春」。物語は彼を取り巻く人の「語り」で進んでいく。ハルという人がちょっとずつ鮮明になってくるのが面白い。
Posted by ブクログ
8歳でバレエに出会い、15歳で海を渡った萬春。「跳ねる」「芽吹く」「湧き出す」「春になる」。1人の天才を巡る4つの「spring」。
久々に恩田陸さんのこう言う感じの本を読んだけど、読んでいる間ずっと面白い。バレエなんが全然分からないけど、引き込まれた。
「芽吹く」が好き。
Posted by ブクログ
春。そしてバネのように跳躍する身体。個人的には蜜蜂と遠雷よりこちらのほうが好み。
どんな色や映像を思い浮かべるのか読者の自由を邪魔しないモノクロのカリグラフィーだけのシンプルな装丁もとてもいい。偶数ページにノンブルが寄せられ奇数ページがパラパラ漫画でシルエットが躍るのも楽しい。
P20 補充と補強は違うの。バカ高い契約金でよそのスターを引っ張ってくるのは補充。イチローみたいに長い目で見てチームに貢献する人材を呼んでくるのが補強。
P69 いるよねー、微妙にストレス感じる相手。あの、踊っている間中どこかで常にイライラしてる感じ、いやだよね。それも、わざわざ口に出して言うほどじゃないっていうのが一番ストレス溜まる。
P71 身体の細胞が非自己と認識してない、っていうの?HALも自分、みたいな感覚なんだよねえ。【中略】あの感覚、不思議だよねー。あれ、あたし今誰と踊ってるんだっけ?なんて考える瞬間がある。
P109 俺もヤツも正しい。俺たちは、互いに互いを連れてここまで来た。補完関係でもライバルでもなく、ましてや運命なんかでもない。そう、たまたま居合わせたのだ。【中略】ぽんと出会って、接触して、跳ねた。互いに互いをスプリングボードにしたのだ。アヴィジャイ・コーエンの曲が流れている。
P281 バレエの語彙。それはダンサーにとっても、振付家にとっても非常に重要なものだ。語彙が増えれば増えるほど、より繊細に、より複雑な物語を語れる。
P300 残らない。でも、覚えてる。それが春ちゃんの返事だった。
P317 同じ踊り。確かにあたしも舞台を見ているうちにそう思うようになった。我々は、表と裏の双方から同じものを見ている。情欲の中の戦慄を。殺戮の中の官能を。それらを併せ持つのが人間の性なのだ、ということを。
P326 舞台の上で、役者や音楽家やダンサーは、観客の代わりに「生きてくれている」誰もが、舞台の上で「生き直す」自分を観ている。
P328 戦慄せしめよ。『遠野物語』の序文で、柳田國男が述べた一節 ー 【中略】願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。
P366 確かに、スーパースターと呼ばれる人たちは、すべてがクリアだ。「私のことをわかって」などという、うじうじした雑念なんてどこにもない。観客に無尽蔵に愛を与え、そのことでそれ以上の愛を観客から受け取っている。なるほど、スーパースターは完全に双方向だな、と腑に落ちた。
P373 春の臆面もない明るさに、芽吹く生命の獰猛さに、気後れを覚えるようになる。さあ、年寄りども。道を空けろ。新しい生命に居場所を空けろ。そう糾弾されているような心地すらする。
Posted by ブクログ
正直なかなか読み進めませんでした。
しかし、最後まで読み終わるといい作品だったと思います。
色々な視点でのストーリーが思い返すと面白く、芸術の素晴らしさが伝わっできました。いつかバレエを見に行きたくなりました。
Posted by ブクログ
恩田陸さんの作品で、
本屋大賞にノミネートされた作品と知り、
読み始めました。
天才の人生を色んな視点(本心の視点も含めて)
読み進め、こんな美しい世界を覗き見させてくれてありがとうというような気持ちを感じました。
そして、些細な出会いで自分という存在がピッタリ
はまることもあるだろうし、逆に出会えなければ
何か違和感を感じて生きていくんだと思うと、
人生は奇跡の連続なんだなと思います。
また、そういう奇跡に出会ったとしても自分で気づくことが大切で、ぐっと掴まないといけないんだと思いました。
人と人の出会いを大切にしたいです。
Posted by ブクログ
バレエの知識もないしきちんと見た事もないけれど、面白かった。専門用語や曲、分からない知らない事も多いなかそれでもその世界観に美しさに引き込まれました。
『蜜蜂と遠雷』の時も思いましたが、恩田陸さんの表現が素敵。イメージが湧いてくる。
物語というか、萬春という人物エピソード、4人の語り。
それぞれの知るHALを語るなかでHALの歩んできた道や特異性が浮き彫りになる。HALを包む周りの人達の優しさや愛情も伝わる。
最後にHAL自身の語り。先の3人の語りがあるからこそ最後の彼自身の語りでうわぁと重みを増して目の前に展開される。
Posted by ブクログ
初めての恩田陸作品 全くないバレエの知識
新刊のコーナーで見かけて「不思議なタイトルだなぁ」と浅い感想を持ち、「気になるな」状態を引きずり、やっと手に取りました。
情景の描写がほんとに綺麗で、キャラクター、一人一人のイメージがはっきりと伝わってきて映像を見てるような感覚でした。
バレエの知識0の状態だったので、動きや状態が上手く掴めきれなかったのが悔しいです。なかなか、バレエを生で見る機会は無いけど見てみたいと思いました。
この作品、とにかく深い。気になったら色々考 える前に手にとってほしい。
匿名
マンガでも読みたい
小説を読んでいるのにまるでマンガを読んでいるかのような錯覚に陥りましたた。それは緻密な描写力によるものに違いありません。
主人公を近しい3人の観点から、そして最後に自分の観点から語る展開は一種オムニバス映画を見ているようでもあり、同時に主人公たるものが私の中でほどよいスピードで肉付けされていきました。
数時間で読めてしまう小説は物足りないし、かといって長過ぎる小説は中だるみしてしまう。そういう意味では常にわくわくしながら読み応えのある素敵な小説でした。
Posted by ブクログ
天才バレリーナであり天才振付師である青年を4人の視点から描いた物語。著者のバレエの知識と愛情を感じる。バレエの知識がほとんどないので、創作過程を描いたⅢとⅣでは、置いておかれた感があった。バレエの知識があれば、だんだんと引き込まれていったんだろうな。Ⅳの視点を本人にしたのは、天才の苦悩を描きたかったなかな?その分、神秘性が薄まった感じもしました。
Posted by ブクログ
七瀬とHALが即興でコンテンポラリーを再現しているくだりでやっと気がついた。
「蜜蜂と遠雷」の作者じゃん!
亜夜とマサルじゃん!
いや、別の話だし、
こちらはこちらで素晴らしかったけれど。
バレエは娘が12年やってた。
ロシア留学なんて言い出したら費用は?
なんてバカ親炸裂させていたけど、
娘が楽しかったのはバレエ以上に友達と一緒にいる事だったらしく、この発表会が終わったら受験生、というタイミングであっさり未練もなくやめて、トゥシューズも捨ててしまった。
送迎に、役員の押し付け合いに、発表会の裏方に、振り回された日々は何だったんだ、という気もするけど、娘は楽しい時間を過ごせたのだろうし、私もそれなりの経験を積ませてもらえたのだろう。
それなりにあった楽しい事や充実感の倍以上、嫌な思いをした気がしてならないけれど。
バレエ繋がりでちょっと思い出しただけ。
Posted by ブクログ
すごい!
バレエを全く知らないのに読んでシーンが思い浮かぶ類稀なる文章力。
これは実際にあった物語では無いですよね?!って思うくらい細部まで事細やかに描かれてる。
登場人物に天才が多過ぎて、世界で活躍するような人たちはやはりこれくらい天才ばかりなのだろうな。
さらに天才の性的指向はマイノリティでもそう驚かないのは何故だろうな。
それぞれの人からの視点で描かれているのも面白かったけれど、一人の天才の物語という感じで、すごい盛り上がりが仕込まれているわけではないので私の好みからは多少外れているかな。
Posted by ブクログ
「蜜蜂と遠雷」「なんとかしなくちゃ。」以来の恩田さんの作品でした。今回、他作家の別作品2冊と同時進行で読むということをやってみました。
本作の『跳ねる→芽吹く→湧き出す→春になる』のそれぞれの間に、2作品の一編ずつを挟んで読み繋ぐという荒技。すると、自分自身飽きっぽい性格なのですが興味関心が薄れることなく、むしろ、まるで好きな連続ドラマを1週間毎に観るような感覚になり、次の順番が回ってくるのが待ち遠しくなるんですね。
結果4日で完走。ちなみに他2作というのは、永井紗耶子さんと髙田郁さんの作品でした。そのどちらも次に回ってくるのが楽しみで仕方がないという…。
で、本作ですが(笑)。
主人公HALの内面の心情を詳説することでバレエのダンスを描写している「春の祭典」の場面はとても気持ちが高揚しました。観客と一緒に舞台を鑑賞しているような感覚になりました。そこに辿り着くまでの主人公の成長が、複数の人物からの目線で丁寧に描かれていたからではないかと思いました。
最後に、複数の人物の一人、七瀬の次の言葉が、私にとっては深く印象に残ったので書き留めておきます。そんな捉え方は初めてだったので…。
『舞台の上で、役者や音楽家やダンサーは、観客の代わりに「生きてくれている」。誰もが、舞台の上で「生き直す」自分を観ている。舞台の上のアーティストと一緒に、人生を生き直す。』
Posted by ブクログ
バレエの話。
話は悪くない、陸らしい運びで面白かった。
かなりマニアックだ。
「蜜蜂と遠雷」もまあ、考えてみればそうだったんだけど、ピアノの話だったのであまり気にならなかったが、
バレエは知らないからなあ・・・
Posted by ブクログ
登場する天才たちが、恩田さんが連ねる言葉が、ひたすらに美しかった!ここまでなんで文字で書けるんだ、オリジナル作品全幕観たいよ!
私は、春くんの向こうにずっとking gnu常田さんが見えました。
Posted by ブクログ
なんだか,そこはかとなく読みにくいと感じた.それはバレエの世界観に親しんでいないからな気がする.
一方で,バレエの,踊りのエネルギーが直接伝わってくる感じがする.読みにくいのに.踊る苦悩や作り上げていく大変さ,それらをひっくるめたポジティブなエネルギー.直接,視覚で見てみたいと思ってしまった.
またすこしズレた世界から見た現世の不思議な感じ方はとても良い.「そうだよなぁ」ともうちょっと頑張ってみよう,と思える.
Posted by ブクログ
読み始めたときはJUNが主役の小説かと思ったのだが、途中から萬春(よろずはる)が主役だと気が付いた。そうと分かれば作品の味わい方も整理できた。春はバレエの才能に気づき、世界の舞台で才能を花開かせる。一見華やかな芸術の世界であるが、春を含めて周りの人間も芸術の泥臭いところをきちんと見せてくれる。バレエとその周辺を含めて高度なところを舞台にしており、芸術の世界がもつ特異性を描きながらも芸術をさも日常のように描く。春がバレエの高みに行くために捧げるものが全然特別ではないかのように描かれ、すっとラストまで読める。春はどこまで行ったのだろうか。
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2025年本屋大賞ノミネート作。
ということで手に取ったけれど、もしかしたら恩田陸作品は初読みかも?
主人公は萬春(よろず・はる)。小さい頃からどこか他の子と違い、何を考えているか分からない。が、8歳でバレエに出会い、15歳でドイツに渡り、プロのバレエダンサー兼振付家になる長編バレエ小説。
春について、深津、稔さん、七瀬の視点から、それぞれ深く関わり合った時期のエピソードが語られ、最後に春の視点で締め括られるというような構成。
自分はバレエの『バ』の字も知らないし観たこともないけど、それほど困ることはなかった。むしろ、困るどころか踊っている姿が見えるようで、特に『春の祭典』を踊るシーンは本当に圧巻だった。
印象に残ったフレーズ。
“時分の花、という言葉がある。まだ未熟で未完成なアーティストであっても、その若さでしか、その時にしか表現できない、刹那の輝き。散ることのない、「まことの花」とは異なる、一過性の、散ってしまう花。”
『時分の花』は世阿弥の言葉らしいけど、いい言葉だなと思った。その時その時にしか出せない輝きみたいなものがきっとあるはず。今できることを精一杯やるのみ!
バレエをやっている人は必読じゃないかな?
関係ないけど、ページ下部のパラパラ漫画が可愛かった、笑
ほんと、恩田陸は芝居などの情景描写がうまい。同じ作者の「チョコレートコスモス」では演劇を、「蜜蜂と遠雷」ではピアノコンクールを、そして本書ではバレエを題材にしている。私は演劇もバレエも見ないし、クラシック音楽は好きだけれども生のコンサートは行ったことがない。それでも、それぞれの著作を読んでいると、まるで目の前で演劇の舞台が繰り広げられ、あるいはピアノが鳴っている様に感じる。本書でもスポットライトを浴びたダンサーの跳躍や優雅な腕の動きが見える様だった。
Posted by ブクログ
「蜜蜂と遠雷」、「チョコレートコスモス」のように、プロの芸術家の世界、天才の世界を垣間見ることができる。ただ、主人公に強く焦点が集まっている感じで、バレエについての比重が、やや軽いような印象がある。
Posted by ブクログ
本屋大賞6位だから期待して読んでみたんだけど、私にはあんまりはまらなかったかなあ
はるの類稀な才能にもっと惹きつけられるようなストーリーを想像してた
私がバレエに造詣がないこともあって、読んでて想像するのが難しかった
Posted by ブクログ
聞こえるし見えた。
表現力が素晴らしい。カバレフスキーの「メルヒェン」を実写化してほしい。カバレフスキー大好き。
ただ、この本の登場自分たちはトイレに行ったり風邪をひいたり痰がからむことはあるのだろうか?人間味が無さすぎて、少しラノベのようにも思えた。自分には耽美すぎたのかも。群像ならもう少し現実感がある方が好き。
Posted by ブクログ
勝手に自分の中で映像化しながら読んでた。春くんはallday projectのターザンがぴったり!
叔父さん視点の章、空港でのお別れシーンでは泣きました。ラストの章は天才の脳をのぞきこんだ感じです。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ想像力が必要でした!『蜜蜂と遠雷』はピアノが舞台だったので、習っていた身としては分かるところが多かったけれど、バレエは我が子がちょっと習ってたくらいなので、想像したこともあっているか分からないため、ぜひアニメか実写化してほしいな〜と思いました。
Posted by ブクログ
踊ることで世界のカタチを表現することを追い求めた天才ダンサーHALを、
多様な視点から見つめた作品。
圧倒的な踊ることへの憧憬、熱量。
実際の舞台で観てみたいなぁ、、、
バレエを観たくなる作品
Posted by ブクログ
バレエがテーマ。
周りの人から見える萬春くん、本人が見るハル。
バレエは全く見たことがないのでイメージできていない部分が多かったですが、バレエに魅入られた人間の本質が深く描かれた作品。
Posted by ブクログ
好き、努力が届かない世界はある。
出会いが奇跡だと感じることもある。
でもそれらが結実した人の
全てを知ることは少ないんだよな
もう自分では絶対になり得ない
共感することすらおごましい天賦の才
というものを突きつけられると
すごいというしかない。
恩田さんの「天賦の才」がどのように
天賦なのかを書くことのできる才能にも驚いた。
Posted by ブクログ
バレーの知識がほぼ無い状態で、興味本位で読み始めました。
萬春と言う人物を、3者の視点から紐解き「春の祭典」と言う演目で昇華するとてもキレイで流れるような演出でした。
ただ私ときたら、バレーを知らなすぎて何回も言葉を調べ覚え、忘れ、覚え、忘れ…
流れるようには読めませんでした、ですが話は引き込まれたしバレーと言えものに興味も湧きました!
2025年8月16日
Posted by ブクログ
まずは、バレエに無学な私にも、この壮大で甘美な世界を開いてもらえたことに大感謝。その世界を堪能出来たのは、恩田さんが書いてくださったからに違いない!と感じる。一つのバレエを構成するための多様な要素が個性の異なる登場人物の視点で描かれている。その視点を通じて作品が出来上がっていくプロセスを自然と追っていけるので、おこがましくも自分が以前からバレエが好きだったかのように途中から勘違いをし始め、もう近々バレエを観劇しに行くんだ、それが当然なんだ、くらいの感覚でバレエに親しみ始めている不思議。
という、存分にこの小説を堪能させていただいた前提はありつつ、ここからは個人的な好みの話。「蜜蜂と遠雷」も同様な感想を持ったが、"天才"を描いているからなのか、やや登場人物がステレオタイプ的、"こんな人居るのかな?"と感情移入しきれないところが残念。現実味を帯びないと自分事として感情移入出来ないということなのだろうか…。"違う世界"と切り離してしまっているのなら、私自身の他者への寄り添いや理解の姿勢の課題なのかもしれないけれど、個人的にはもっと人間の矛盾や複雑性が嫌と言うほど詰め込まれているキャラクターが好みなのかもしれない。
とはいえ、最終章で、それまで自分の無邪気さに無頓着・無敵な天才タイプの春が、避けてきた過去の自分自身と向き合い完成させた"春の祝典"により一皮剥ける過程は感慨深かった。