恩田陸のレビュー一覧
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黒幕は誰なのか?実際は何が起こったのか?これを断定することは出来ない。多分わざと、材料が足りない状態にしている。
緋紗子という盲人の少女。彼女の存在感も手伝って、『群盲、象を評す』という言葉が思い出される。盲人が象の身体の一部を触った感触から象を語ろうとするが、いずれも見当違いな感想になるという皮肉の言葉だ。
本作では頻りに、真実を語ることの難しさについて述べられている。それは、我々は等しく「象」という全体像を見ることは出来ないからだ。同じこと体験したとしても、そこから得られるのはそれぞれの視点から見た断片でしかない。その事を忘れて真実を知った気になって、象を語らそうとする愚かさが表現 -
Posted by ブクログ
「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編集。
「祝祭と掃苔」「獅子と芍薬」「袈裟と鞦韆」「竪琴と葦笛」「鈴蘭と階段」「伝説と予感」の6作収録。
最初に言っておくと、「蜜蜂と遠雷」は記憶の彼方である。
素晴らしい作品だったこと、栄伝亜夜や風間塵など主要キャラの外殻など断片的なものしか覚えていない。正直、再読せずにこの短編集を読んでしまって良いものか直前まで悩んだ。でも、えいやという気分で頁を開いてみた。
最初の作品が「祝祭と掃苔」で、前述の栄伝亜夜と風間塵が出てきてくれたので、意外とすんなりと世界に戻ることができた。天才たちの年相応の雑談に、心が和んだ。記憶が曖昧でもちゃんと楽しませてくれるなあ。
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Posted by ブクログ
昭和初期、山間の遊郭・墜月荘で、私は三人の母と共に生活していた。
産みの母・和江、育ての母・莢子、名義上の母・文子。館に訪れる軍人や客、下働きの男女たち…私の視点で紡がれるのは、不穏で耽美な空間。「鈍色幻視行」の核となる作中作。
浮き世離れしている作品。
主人公であるビイちゃんがあまり主張してこないせいか、のっぺりした平板な印象を受ける。読者は、輪をかけて遠くから墜月荘を眺めているような気分にさせられ、終始視点は俯瞰だった。それをのめり込む事ができなかったと評価することもできるのだが、この奇妙な距離感があったおかげで、墜月荘の非日常感が色濃く演出できていたという見方もできる。非常に評価が難し -
Posted by ブクログ
九州の水郷地方都市で、三人の老女が相次いで行方不明になり、行方不明中の記憶を失くして数日後にひょっこり帰って来た事件の謎を解明するために、元大学教授の協一郎と、協一郎に呼ばれた教え子だった多聞、協一郎の娘の藍子、ジャーナリストの高安が奔走する。
すごく久しぶりに恩田陸を読んだのだけど、ああそうだ、じわじわーっと気色悪いのが近づいてくるこの感じ・・・緊迫感とか、逃げ場のない不安感、寄る辺のない心もとなさが「これぞ恩田陸」なんだったなーと思いながら読んだ。
「父には分からなかったのだろう。いつも独りぼっちでいるのが当然と思っていた私の中に、『誰か』に助けを求めるという選択肢がなかったということ