あらすじ
恩田陸にしか書けない、緊迫の舞台型ミステリー
舞台は、アパートの一室。
別々の道を歩むことが決まった男女が、最後の夜を徹し語り合う。
初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿――共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。
濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。
不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編!
「一つの部屋に、男女が一人ずつ。具体的な登場人物はこの二人だけ。そして、章ごとに男の視点と女の視点が入れ代わる。
読み進むうちに、どうやら、二人は今まで同居していて、引っ越しを決め、最後の夜を共に過ごそうとしていると分かってくる。
そして、さらに読み進めれば、二人はある殺人事件に関わっているのかもしれないという予感がしてくる。
……まだ、小説を読まないまま、先にこの解説を読み始めた人に伝えられるのはここまでです。」
(解説・鴻上尚史)
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Posted by ブクログ
私の心に刺さりまくる本でした。私は綺麗な情景が描かれる所謂女の子が好む恋愛小説が大好きです。この本はそんな本のような読み易さは最初は全くありませんでした。ですが、読み進めて行くにつれ物語に引き込まれていって、3時間ほどで読み切ってしまいました。終わり方もしっくりくるもので、最近読んだ数々の本からはなかなか感じられなかったベストな終わり方に感じました。短い本ですがとてつもなく内容が濃く、感想をすぐにでも書きたくなる本でした。ぜひ色々な人に読んでほしいです。
Posted by ブクログ
2人の兄妹の会話劇によって物語が進んでいきました。
初めはとても運命的で、危なさのある兄妹という
関係、そしてその2人を切り裂く要因になっている兄妹(双子)だからこその通じ合うことという舞台情景に惹かれ、少し羨ましくも思っていました。
しかし、一つの事件をきっかけに、会話にズレが起こり、徐々に明かされていく真実とそれによって、感情自体が変わっていく様子がどきどきとしました。
死は生きる選択の一つというセリフが印象に残っています。
そして、恩田陸さんの情景が目の前に浮かぶような繊細な表現に吸い込まれました。
木漏れ日に泳ぐ魚たちの様子は幸せの表れなのかな。
Posted by ブクログ
別れることが決まった男女が過ごす最後の夜の場面だけを一冊で語る展開は他に見ないなと思った。ページを捲るたびに分かってくる2人の関係性、そして、あの男との関係性に驚きを隠せなかった。
Posted by ブクログ
久しぶりの恩田陸。どうしても海外作品を優先してしまうが、先日買ったガイド本で気持ちが再燃。
明日にはアパートから引っ越す男女。ある事件について、それぞれが相手に罪があると考えており、どこか油断ならない最後の夜が始まる…
この不穏な感じ。最初は何が起こっているか全くわからないが、徐々に霧が晴れるかのような展開。恩田陸の特徴の一つでもあり、ハマるととことん面白くなる。今作は見事にハマった作品ではないか(たまにボヤッとしたまま終わり、拍子抜けする作品もあるが笑)。
まず秘密を抱えた男女が、最後の夜に語り明かす設定が良い。予想外の着地も用意されており満足。積読を後悔した作品となった。
Posted by ブクログ
たぶんこれは、一枚の写真についての
物語なのだろう。
むろん、ある男の死を巡る謎についての物語でも
あるし、山の話でもあるはずだ。そして、一組の
男女の別離の話という側面も持っている。
僕は、この表情を見たことがある。この写真と
同じように、複数の人間がこんな表情でこんな
ポーズで僕を振り向いていたことがある。そんな
確信が身体を強く揺さぶったのだ。
今夜、最後の一晩をこの部屋で過ごし、明日は
めいめい別の場所へと出て行く事になっている。
季節は初夏。窓を開け放っていると、時折いい
風が入ってきて快適だ。夜に窓を開けていると
外の空気が繋がっていて不思議な胸騒ぎのする
解放感がある。
荷物はあらかた運び出してしまったので
家の中はがらんとして広い。
今、僕たちは彼女のスーツケースを小さな座卓に
して向かい合っている。
僕たちは、どちらからともなく宴会の準備を始める。
惣菜は彼女が、酒は僕が調達してきた。
お互いに聞きたい事、知りたかった事、
知ろうとしなかった事、、、、、
ぼんやりとした色彩の淡々とすすむリズムを
感じながらの時間でした。
色のない色彩、私の経験した事のある空気感、
なんとなく穏やかさも感じていた曲調が突然
ブーン という音とともに激しく転調します。
そして、ここからは読むスピードを抑えられなくなり
一気に感情が剥き出しになりました。
沢山の印象に残る描写がありました。
今の私に重なった想いで
写真立てを見ながら、テーブルに頬杖を突いて
明るく話し合うふたり。
私は自分がかすかに微笑んでいるのを感じる。
足が動いていた。
私はそっと玄関に向かい、スニーカーを履いて
外に出た。
不思議な解放感に身体が包まれ、私はあっけに
取られてその場に棒立ちになった。
世界というのは、こんなにも広いところだったのか
この数年間、あの部屋が世界のすべてに思えたのに
驚きと、あっけなさ。
まじまじと周囲の景色を見回す。
見慣れたはずの景色を、
これまで一度もきちんと
見ていなかったことに気付く。
そして最後の
土を掘る。
深く、深く。誰にも見つからないように。
やがて息が上がってきて、頭の中が空っぽになる。
掘り返した土の匂いが、鮮やかに鼻を付く。
突然、土にまみれたナイフが、きらりと輝いた。
ふと手を止めて、目を細めて空を振り返る。
ついに、太陽が姿を現したのだ。
恩田陸さんの物語だからと、どんな物語か知らないで
読むことができた事。
凄く面白いとお勧めできる物語の筈です。
面白いとだけ思えれば
凄く良いんですが・・・・・
それでも 読むことが出来て良かったです。
Posted by ブクログ
千明と千尋の禁じられた恋。
それぞれ印象的だった一節。
「一緒に死んじゃおうか?」
そして、僕がその提案をとても嬉しく感じていたからだった。
「きょうだいとしての愛だった。彼がきょうだいだったからこそあたしは彼を愛していた。」
表紙のイラストは千明がナイフを埋めた後、汚れた手を洗う際、泡の付いた自身の手を見つめている視点では無いかと推測する。残ったのは後悔なのか達成感なのか。
木洩れ日の中で過ごしていた時間は果たして幸せだったのか
Posted by ブクログ
続きが気になり、いつもなら読めない平日の夜も読んでしまう作品だった。
どうしても、恋愛系の作品はくっつけばいいのにと思ってしまう。
こーいう心理??
小説はくっつかない作品も多いからそれも見どころ
Posted by ブクログ
同居している男女の引っ越し前夜の会話。
徐々に見えてくる2人の関係性や
浮き彫りになる事件の真相にも驚くが、
それよりも物語全体を包んでる緊迫感と現実味のなさが絶妙な配合だった。
長いあいだ執着していたものにあっけないほど無関心になっていく様や、感情が熱を引いていく感じが妙にリアルで、
夜から朝になって広がっていく世界と対比して印象的だった。
死に誘惑されたときの現実と夢の境界線をふわふわと逡巡している感じ、なんか不思議な感覚だった。
Posted by ブクログ
一部屋の男女の夜から明け方までの話。
明日から二人は別々の道を歩く。
一枚の写真から一年前のあの日のことを語り合う。
少しづつ2人の関係性が分かり始め、少しづつ一年前の出来事の全貌が鮮明になる感じ面白かった。けど、結局は全部女の子の妄想で真実は分からなかった。
Posted by ブクログ
分かりやすい伏線とともに、何か小さなノイズのような隠してあるような伏線がたくさん潜んでいて、その先が知りたくて知りたくて、読むことが止められない物語
読み始める時は、写真から始まり、え?こんな話なの?と始まるけど、1組の男女の思いもよらない過去の話がさらさらと語られる。
読んでいてこっちも息を呑んでしまう、言葉だけで緊張感の漂う感じも、読むことを止めさせない。
話がこれで終わりそうなときに、その見えにくい伏線に気づいて、また新たに彼らの過去が紐解かれていく。
モヤモヤしそうだけれど、読み終わった後に意外と消化不良感はなくて、彼らはまた人生を歩いていくんだろうなと少し明るい未来が想像できそうな文で締めくくられている。
後日談も知りたいけれど、そこを書かないのが恩田さんなんだろうなあ。
Posted by ブクログ
場面はずーっと男女2人がアパートの一室で喋っているところから変わらないけれど読み進めているうちに2人の関係性やある事件との関わりや過去への回想を通して読み進められるからとっても面白かった。今まで読んだことない感覚。
Posted by ブクログ
最初読み始めたときの、これはこーゆー話かあと後半にかけての、え、こーゆー話!?の差がすごい。面白かったけど、しんどさも残る話だったなぁ
Posted by ブクログ
興味深い内容だったな、と思う。
実態のないもの、例えば愛とか家族とか、そうゆうものについて悩み苦しむ主人公たち。その葛藤について、理解はできるけど、共感は出来ないかなあ。
私はそこまで悩む行為を続けられないと思う。疲れてしまうし諦めてしまうと思う。
物事を突き詰めることが出来る、出来てしまう
どちらが良いか悪いか、そんな事は決められないし
決めてはいけないな。
やっぱり世界は善悪、白黒はっきりできないことばかり。そのもどかしさの中生きていかないといけないんだな。
ここまで考えて、うーんまあ私はとりあえず
後悔しないように、死ぬ時にいい人生だったと思えるように、毎日一生懸命生きよう
こうゆう結論に至る。今回も然り。
Posted by ブクログ
「カメラに向かって笑う僕たちは、未来の僕たちと常に共犯関係にある。」それぞれの状況があるなかでも、写真を撮るときは自然と笑顔になって、それを見返すと楽しい思い出になる。そのことが柔らかい言葉で表わされていて、それに気づけて心が軽くなった。
Posted by ブクログ
男女ふたりの関係性や男の正体やら、最初に思いこんでいたものとはかけ離れていて驚きばかりだった。場所も時間も限られている、会話と回想だけなのに、読みながら浮き沈みしていた。自分の脆さとか狡さとか、嫌なところが見えることはよくある。刺さる部分が多かった。
Posted by ブクログ
とにかく続きが気になって読み進める手が止まらなかった。こんなどんでん返しある?え!なにこれ面白い!が率直な感想でした(笑)恩田陸さんの本を初めて読んだけどすごく面白かったので他の本も読んでみたいと思いました。
Posted by ブクログ
2025. 7. 17.
別れを決意し、互いの道を進むことを決意した二人の最後の夜の話。
二人が別れることになるきっかけは一つの事件にあった。
事件の描写が美しく描かれながら、そこに対する二人の異なる考察、心理戦が読者の興味を唆る。
思いがけない発見と互いに対する深い理解。
心情の機微と情景描写の美しさには恩田陸にしか描けない繊細さが表れていた。
面白いが故に最後にどんでん返しを期待してしまったための4/5評価だが、もう一度読み返したいと思うほど抽象的で深い登場人物の心理描写が魅力。
Posted by ブクログ
彼と彼女の目線でかわるがわる語っていく感じが
面白かったのと、段々明らかになっていく真実に動揺していく二人の心の変化に少しハラハラしながら読みました。優しそうでずるい男って、結構身近にもいるもんだよね~って実感です。
Posted by ブクログ
シチュエーションが面白い 恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」や「夜のピクニック」が好きで手に取りました。私は恩田陸さんの作品でも合うものと合わないものがあります。少し読み始めましたが、シチュエーションに読まない理由はないなと思いました。前半は面白さでサクサク行けましたが、後半はもったりしました。
お互いのことを殺人犯ではないかと考えているカップル(後に男女と記した方が良いと分かる)が、二人で住んでいたアパートで最後の別れの夜を過ごすというシチュエーション。これだけで読まない理由がないと思いました。
食料品は生き物だ、生き物だから重いんだ、カップラーメンは軽い、生きていないから軽いんだ。その通り!
時間が解決してくれるという感覚は良いものだと思っています。悔しいこと情けないことすべてが笑い話になりますように。
大どんでん返しのない終わり方に少し残念な気持ちがあります。
Posted by ブクログ
私も割と 好意を寄せられたから好きなのでは?
自分を好きだと思ってくれる人だから好きなのでは?という問いを自分にも相手にも抱いて生きてきた。
彼らの関係性が一転二転と話が進むにつれて変化していく。
すれ違いだったり思い込みだったり、全てちゃんと話し合えれば解決できることが沢山あって、それらをせずその場をやり過ごしているうちに取り返しのつかない事になるストーリーを読むたびに イライラすることが多いけど。パートナーに限らず対人関係において、なかなかそう向き合って話すことはないのかも知れない。
それができるならば、もっと上手くいってた事もあっただろう。
ただ面倒臭いんだろうね、そうやって話をするのが。
私はパートナーなら、ちゃんと向き合って話し合える人がいい。
最近になってよくそう思う。コミュニケーションが取れない人とは上手くやっていけない。
最初はそうできていても、段々なくなっていくんだよね。大事よ、年月を重ねていく程 大事。
私が思ったのは一年も前の事を、一年も経ってから?
お互い相手を疑って?
Posted by ブクログ
『木洩れ日に泳ぐ魚』は、一晩の会話劇を通して、過去の出来事とそれにまつわる記憶や感情が少しずつ浮かび上がってくる作品。その全体を包むように、タイトルの「木洩れ日に泳ぐ魚」という言葉が静かに、しかし確かに物語を象徴していた。
読後、まず心に残ったのは、「真実とは何か」という問いに対する曖昧で詩的な描き方。登場人物たちは、同じ出来事を見ていたはずなのに、それぞれ異なる記憶や印象を語る。まるで木洩れ日のように、断片的で、揺らぎのある光が過去を照らしている。その光の中に、一瞬だけ浮かび上がるもの――それが真実なのか、それともただの錯覚なのか、読み手である自分も迷わされる。
「泳ぐ魚」という言葉も印象的だ。記憶や人の心は、水の中を泳ぐ魚のように、目に映っても手では掴めない。形があるようでない、でも確かに存在するもの。そうしたものを、登場人物たちは語り合いながら追い求めていく。その過程を読んでいると、自分自身の過去や人間関係の中にも、掴みきれずに心に残っている何かがあることに気づかされる。
本作は、派手な展開や劇的な事件があるわけではない。だが、会話だけで物語を進めながら、静かに心の奥へと入り込んでくるような力がある。そしてそのすべてを、タイトルが静かに包み込んでいるように感じた。
「木洩れ日に泳ぐ魚」という言葉の美しさと、それに込められた意味の深さに、読むほどに引き込まれていった。この作品は、「真実」を一つに定めようとするのではなく、曖昧で揺れ動くものとして肯定している。その姿勢に、私は深く共感した。
Posted by ブクログ
ミステリーのような内容だが、一緒に暮らす双子の男女の別れ話だったり、父親殺しかも知れないとお互いを疑う不穏な内容。
男女の視点を変えた展開だが、推理はほぼ女性側で、全て憶測なのに二人が納得し、色々な点が真実かどうか不明なままでありスッキリしない。
Posted by ブクログ
夜ふけから夜明けまでの時間、男女、部屋で会話をする。
たったこれだけの設定で、ここまでの話が描けるのはすごい。
はまる!!という本ではないけれども。
Posted by ブクログ
なんだかモヤモヤとしながら読み終わりました。ずっと水の中をひたすら歩いている感じ、時々ドキドキしたりこの先はどうなるのかと期待しながら、結局何もないまま
読み終わってしまった。
この内容と題名は全く合わないと思ったのは私だけでしょうか?!