あらすじ
恩田陸にしか書けない、緊迫の舞台型ミステリー
舞台は、アパートの一室。
別々の道を歩むことが決まった男女が、最後の夜を徹し語り合う。
初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿――共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。
濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。
不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編!
「一つの部屋に、男女が一人ずつ。具体的な登場人物はこの二人だけ。そして、章ごとに男の視点と女の視点が入れ代わる。
読み進むうちに、どうやら、二人は今まで同居していて、引っ越しを決め、最後の夜を共に過ごそうとしていると分かってくる。
そして、さらに読み進めれば、二人はある殺人事件に関わっているのかもしれないという予感がしてくる。
……まだ、小説を読まないまま、先にこの解説を読み始めた人に伝えられるのはここまでです。」
(解説・鴻上尚史)
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Posted by ブクログ
ある男の死という出来事が序盤で出されるも、なかなかその事件が起きず、それまでがとても長く感じられてもどかしかった。
しかし、主人公2人の血の繋がりについてが仄めかされたり、その男の死の出来事が登場してくると、一気に面白くなり、最後は一気に読み切った。
他の作品でもあったが、やはり血の繋がりがあることを知らずに、血の繋がりのある人に出会うと、運命だと勘違いして恋心が芽生えてしまうものなのか。でも当人達にとっては死を選びたくなるほどの大きな悩みになってしまうことに、すごく不思議な気持ちになった。
「私が彼を好きだったのは、彼が私を好きだったからだ。私は私を好いてくれる彼が好きだったのであって、彼を好きだったからつきあっていたわけではなかったのだ。」という文章が、私にもすごく当てはまっていると感じて刺さった。私自身も、自分から誰かを好きになることはなく、誰か好きになってくれる人の中で、付き合うと好きになったような気になるし、その人からの愛情が無くなったり裏切られたりすると、どうしてその人のことを好きだと錯覚してしまっていたのだろうと疑問に思うほど冷めて一気に感情を失う。私もまだまだ子供なのかと思わされた。
また、「死は生のひとつ」というフレーズも心にすごく残った。
Posted by ブクログ
一見、静かなのに、読み進めるとどんどん強い感情がなだれ込んでくる小説。
読む前の印象とは全く違った。そして、ものすごく面白かった。
疑いあって、探り合って。
真実を突き止めようとしたり、余韻を残そうとしたり、相手の気持ちをはかろうとしたり、感情的になったり、記憶を整理したり。
終わりに向けて、ありとあらゆる作業が展開されていた、たった一晩で。
なにも共有できていなかったことが共有され、相手への気持ちがかたちを変える。相手の素性がわかる。そして、朝がくる。
秘密の共有や障壁で成り立っていた関係性が、実は別物だったとわかるとき。
それも意識的な選択でもあるように思えた。恋愛のおわりを見届けた、という感覚。
Posted by ブクログ
ひとつの謎に対する真実を追う中で写し出される人間の感情
恋愛モノなのかミステリーなのかサスペンスなのか 全体で見たらどこかの括りだと捉えられるかもしれないけど
ひとつは純愛であって ひとつは人間のありのままが否応にも描かれてる
「2人で大きな罪を共有したら 今ここで彼に殺されて2人で死んだら、一生自分と彼を繋ぎ止めるものが出来るかもしれない」という焦燥感が痛くて苦しいほど伝わってきた
最後に薄れていった相手への興味は保身からか真実の発覚からか分からないけど
その時の感情全てがあまりにもリアルで
視点が交互に入れ替わるのに「今どっちだっけ?」ってならなくて自然に話と動作主の感情が入ってくる書き方が凄く上手かった
構成も綺麗で内容というか心情描写が結構好み
Posted by ブクログ
兄弟であることが身をよじるほど燃え上がる恋愛をさせていた。兄弟ではなかったことがその恋愛を終わらせた。
小説の中で、「やっぱり、死は『生きる』ということの無数の選択肢の中のひとつなんだよ。生と死が別個にあるんじゃなくて、死は生の一部分なんじゃないかな」とあった。崖から落ちて死んだ男、死が近い母、死んだ千明であったはずの小さい女の子。圧倒的な生のなかではこれらは一つの選択を選んだ事実にすぎない。そして涼しい風が吹く初夏のもとではこれらはコメディにすぎないのである。晩夏や向秋ではなく、初夏というのがまた妙でありいとおかし。
恩田さんの言葉選びはおしゃれ
女には自己憐憫と言う娯楽がある。
彼の目が宙を泳ぐとき、私はいつも木洩れ日が揺れるのを見る。
カメラに向かって笑う僕たちは、未来の僕たちと常に共犯関係にある。
夜明けの公園は、ひっそりとして、「公園」という名の置物みたいだった。
朝の雄弁な沈黙が足元から這いのぼってきた。
Posted by ブクログ
血縁、恋愛、友情、他人。
関係値というものにがんじがらめになり
別れを決めたふたりの男女が、
引っ越し前夜の空っぽの部屋で
過去のとある事故を回想するという、
不穏な最後の一晩を過ごします。
お互いに、腹の中へなにか一物抱えているのを
さぐりあい、確かめあうふたり。
じっくりじっとり進んでいく
夜半から明け方への時間経過のなかで、
ひとつ、またひとつと
ふたりにとっての真実がめくられていく。
実はこうだった、というあれこれが
絶妙な塩梅で小出しにされるので、
読者としては、じりじりします。
でも。早く先を知りたいのに
じっくり、じっとりと、読んでしまう。
読むスピードをまるで調整されてるような
不思議な緊張感が終始続く。
作家さんの術中にまんまとハマってしまうのが
うすら怖くなる読書でした。
Posted by ブクログ
AIによるみんなの感想まとめ内に、中盤で明かされるネタバレ設定が堂々載っているのという笑
あの時のあの男は父親だったのではないか、あの男を殺したのはこいつなんじゃないか、そしてお互いが男女の関係としてどうなのか、アパートで夜通し話し合う話。
近親恋愛だったのがとある真相が判明したことで、逆に距離を置くことになる。そういう皮肉な流れこそ、人間という生き物のややこしさを感じる。
Posted by ブクログ
初め読み出したら⋯えっ。先が気になる!!と読み進めていけたが後半はなんだか⋯苦しくなってしまいました。気持ちが重くなってしまった。すっきりとした終わりではなかったな⋯。文章は面白く惹きつけられました。
Posted by ブクログ
記憶って曖昧なものだし、何をきっかけに思い出すかわからんもんだね。
恋してる自分に恋してる人とかって本当いるよね。本当に純粋に人を好きになることって意外と難しいものなのかな?そういう人はなんだか自分勝手だなぁと思いつつも、可哀想とも思った。
木漏れ日の表現が好き。
「魚が水面を見上げると、こんな感じなのかしら。」
「水底から、水面の光を見上げる三人。」
山登りした三人もお互いのことを知った状態で出会えていたらこういう他愛もない穏やかな日を過ごせてたのかなぁと、想像でしかないシーンが、魚が水の中から水面を見上げたらこんな風なのかなって想像と合わさって、切なくもあり幻想的でもあった。
Posted by ブクログ
☆3.5
朝が来る。
まぶたを閉じても、朝はすぐそこまで来ている。
朝はいつも何かをあきらめさせる。
私たちの逡巡に、迷いに、決められない何かに引導を渡す。
朝の光は、時間切れの合図だ。
男女2人のかけあい、最初は曇り空でどうなるんか怪しい雰囲気…
謎ははっきりとは解けていないけど、納得できるところに落ち着いて、心が晴れてくる