あらすじ
恩田陸にしか書けない、緊迫の舞台型ミステリー
舞台は、アパートの一室。
別々の道を歩むことが決まった男女が、最後の夜を徹し語り合う。
初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿――共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。
濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。
不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編!
「一つの部屋に、男女が一人ずつ。具体的な登場人物はこの二人だけ。そして、章ごとに男の視点と女の視点が入れ代わる。
読み進むうちに、どうやら、二人は今まで同居していて、引っ越しを決め、最後の夜を共に過ごそうとしていると分かってくる。
そして、さらに読み進めれば、二人はある殺人事件に関わっているのかもしれないという予感がしてくる。
……まだ、小説を読まないまま、先にこの解説を読み始めた人に伝えられるのはここまでです。」
(解説・鴻上尚史)
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Posted by ブクログ
久しぶりの恩田陸。どうしても海外作品を優先してしまうが、先日買ったガイド本で気持ちが再燃。
明日にはアパートから引っ越す男女。ある事件について、それぞれが相手に罪があると考えており、どこか油断ならない最後の夜が始まる…
この不穏な感じ。最初は何が起こっているか全くわからないが、徐々に霧が晴れるかのような展開。恩田陸の特徴の一つでもあり、ハマるととことん面白くなる。今作は見事にハマった作品ではないか(たまにボヤッとしたまま終わり、拍子抜けする作品もあるが笑)。
まず秘密を抱えた男女が、最後の夜に語り明かす設定が良い。予想外の着地も用意されており満足。積読を後悔した作品となった。
Posted by ブクログ
たぶんこれは、一枚の写真についての
物語なのだろう。
むろん、ある男の死を巡る謎についての物語でも
あるし、山の話でもあるはずだ。そして、一組の
男女の別離の話という側面も持っている。
僕は、この表情を見たことがある。この写真と
同じように、複数の人間がこんな表情でこんな
ポーズで僕を振り向いていたことがある。そんな
確信が身体を強く揺さぶったのだ。
今夜、最後の一晩をこの部屋で過ごし、明日は
めいめい別の場所へと出て行く事になっている。
季節は初夏。窓を開け放っていると、時折いい
風が入ってきて快適だ。夜に窓を開けていると
外の空気が繋がっていて不思議な胸騒ぎのする
解放感がある。
荷物はあらかた運び出してしまったので
家の中はがらんとして広い。
今、僕たちは彼女のスーツケースを小さな座卓に
して向かい合っている。
僕たちは、どちらからともなく宴会の準備を始める。
惣菜は彼女が、酒は僕が調達してきた。
お互いに聞きたい事、知りたかった事、
知ろうとしなかった事、、、、、
ぼんやりとした色彩の淡々とすすむリズムを
感じながらの時間でした。
色のない色彩、私の経験した事のある空気感、
なんとなく穏やかさも感じていた曲調が突然
ブーン という音とともに激しく転調します。
そして、ここからは読むスピードを抑えられなくなり
一気に感情が剥き出しになりました。
沢山の印象に残る描写がありました。
今の私に重なった想いで
写真立てを見ながら、テーブルに頬杖を突いて
明るく話し合うふたり。
私は自分がかすかに微笑んでいるのを感じる。
足が動いていた。
私はそっと玄関に向かい、スニーカーを履いて
外に出た。
不思議な解放感に身体が包まれ、私はあっけに
取られてその場に棒立ちになった。
世界というのは、こんなにも広いところだったのか
この数年間、あの部屋が世界のすべてに思えたのに
驚きと、あっけなさ。
まじまじと周囲の景色を見回す。
見慣れたはずの景色を、
これまで一度もきちんと
見ていなかったことに気付く。
そして最後の
土を掘る。
深く、深く。誰にも見つからないように。
やがて息が上がってきて、頭の中が空っぽになる。
掘り返した土の匂いが、鮮やかに鼻を付く。
突然、土にまみれたナイフが、きらりと輝いた。
ふと手を止めて、目を細めて空を振り返る。
ついに、太陽が姿を現したのだ。
恩田陸さんの物語だからと、どんな物語か知らないで
読むことができた事。
凄く面白いとお勧めできる物語の筈です。
面白いとだけ思えれば
凄く良いんですが・・・・・
それでも 読むことが出来て良かったです。
Posted by ブクログ
千明と千尋の禁じられた恋。
それぞれ印象的だった一節。
「一緒に死んじゃおうか?」
そして、僕がその提案をとても嬉しく感じていたからだった。
「きょうだいとしての愛だった。彼がきょうだいだったからこそあたしは彼を愛していた。」
表紙のイラストは千明がナイフを埋めた後、汚れた手を洗う際、泡の付いた自身の手を見つめている視点では無いかと推測する。残ったのは後悔なのか達成感なのか。
木洩れ日の中で過ごしていた時間は果たして幸せだったのか
Posted by ブクログ
分かりやすい伏線とともに、何か小さなノイズのような隠してあるような伏線がたくさん潜んでいて、その先が知りたくて知りたくて、読むことが止められない物語
読み始める時は、写真から始まり、え?こんな話なの?と始まるけど、1組の男女の思いもよらない過去の話がさらさらと語られる。
読んでいてこっちも息を呑んでしまう、言葉だけで緊張感の漂う感じも、読むことを止めさせない。
話がこれで終わりそうなときに、その見えにくい伏線に気づいて、また新たに彼らの過去が紐解かれていく。
モヤモヤしそうだけれど、読み終わった後に意外と消化不良感はなくて、彼らはまた人生を歩いていくんだろうなと少し明るい未来が想像できそうな文で締めくくられている。
後日談も知りたいけれど、そこを書かないのが恩田さんなんだろうなあ。
Posted by ブクログ
場面はずーっと男女2人がアパートの一室で喋っているところから変わらないけれど読み進めているうちに2人の関係性やある事件との関わりや過去への回想を通して読み進められるからとっても面白かった。今まで読んだことない感覚。
Posted by ブクログ
最初読み始めたときの、これはこーゆー話かあと後半にかけての、え、こーゆー話!?の差がすごい。面白かったけど、しんどさも残る話だったなぁ
Posted by ブクログ
「カメラに向かって笑う僕たちは、未来の僕たちと常に共犯関係にある。」それぞれの状況があるなかでも、写真を撮るときは自然と笑顔になって、それを見返すと楽しい思い出になる。そのことが柔らかい言葉で表わされていて、それに気づけて心が軽くなった。
Posted by ブクログ
私も割と 好意を寄せられたから好きなのでは?
自分を好きだと思ってくれる人だから好きなのでは?という問いを自分にも相手にも抱いて生きてきた。
彼らの関係性が一転二転と話が進むにつれて変化していく。
すれ違いだったり思い込みだったり、全てちゃんと話し合えれば解決できることが沢山あって、それらをせずその場をやり過ごしているうちに取り返しのつかない事になるストーリーを読むたびに イライラすることが多いけど。パートナーに限らず対人関係において、なかなかそう向き合って話すことはないのかも知れない。
それができるならば、もっと上手くいってた事もあっただろう。
ただ面倒臭いんだろうね、そうやって話をするのが。
私はパートナーなら、ちゃんと向き合って話し合える人がいい。
最近になってよくそう思う。コミュニケーションが取れない人とは上手くやっていけない。
最初はそうできていても、段々なくなっていくんだよね。大事よ、年月を重ねていく程 大事。
私が思ったのは一年も前の事を、一年も経ってから?
お互い相手を疑って?