恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ美術の授業にて、「夏の人を描きましょう」と先生に言われ、先週転校してきたミチルはなんのことやら?とにかく夏らしく、麦わら帽子をかぶった子供を描いたが、他のみんなは揃って全身緑色の人間を描いていた。隣の席に聞くと、「みどりおー」といいかけるも、夏の人としてみんな知っているという。
帰宅後、習慣で全身鏡を覗くと小屋の影から、緑の影が見えた。「みどりおとこ」
そして、なぜか夏の城への招待状を受け取り、計6人が林間学校に参加。食事当番、お参り、水路から流れてくる花の色と数の報告という、謎の業務。
以上が導入。
p168という短さながらも少しSFチックなはっきりした真相もあって、読後の満足度が高い。 -
Posted by ブクログ
すごく面白かった。恩田陸さんの本は独特な世界観で物語の中の空気感も好きです。上下巻と分かれてる少し長めのお話でしたが、スッと物語の中に入っていけたのであっという間に読めました。
下巻のみんなそれぞれのインタビュー形式の場面では読者の前にそれぞれの人物がいて語ってくれているみたいでした。
自分の中で気になった文章書きます。
P11
【肉体関係を持とうが持つまいが、他人は他人である。むしろ、他人でない人間と肉体関係を持つのはまずい。肉体関係は、あくまでも「他人」と持つべきもの。なのに、なぜ関係を持ったとたんに「他人ではない」ということになるのか】
P156
【世の中には、全く言葉の噛み合わない、何を言っても根本的に話の通じない、どうしようもなく「違う」タイプの人間がいる。家族だからって、必ず理解しあえるとか、共通点があるとは限らない。】
P205
【真実があるのは、虚構の中だけだ。もっと正確に言えば、虚構のなかには、真実に触れられる瞬間がある】
P228
【結局、人は自分が読みたいようにしか読まない。逆にいうと、自分の知識と経験の範囲内でしか読めない。だから、皆が同じテキストを読んでいても、必ずしも同じものを読んでいるわけじゃない。】 -
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【あの名作たちの不穏で気になるその後】
豪華メンバーによるパロディのアンソロジー!
今回の一番のお目当てはあをにまるさん。
『今昔奈良物語集』が最高にファンキーで面白かったので、期待値爆上がりで読みました。
『髭』 あをにまる
芥川の『鼻』のコンプレックスを現代風にアレンジしたハートフルコメディ。
やっとの思いで髭のコンプレックスを克服したのに、周りの反応が意外にも……「おい、それかよ!」と唸らされた。
そこで気づかされる、自分にとって髭が何だったのか。「俺の髭は観葉植物じゃない」と叫びながらも、どこか吹っ切れた感じの主人公にクスッと笑えます。原典をしっかりと踏襲しつつもユーモア溢れる作品。しかし、舞台が奈良でないせいか「あをにまる節」のキレが今ひとつで、ファンとしては少し物足りなさも。
『偽史・山月記殺人事件』 斜線堂有紀
『山月記』のifの世界を描いた続編。
柳広司さんの『虎と月』とは正反対のアプローチ。今作は「おい、いい加減に夢から覚めて現実を見ろ」と、夢追い人のお尻を強めにはたくような冷徹でブラックなミステリ。
自分の器(才能)を知るというるというのは、人間にとって一番苦しいこと……。
袁傪も李徴も、なんだかもう、うかばれなくて切ない。
ほかの3作品も、原典の出汁と著者の特徴をしっかりと活かした味付けになっていて楽しめました! -
Posted by ブクログ
いい年のおじさんたちが、喫茶店やバーをハシゴしながら怪談話をするという短編集。何も知らずにこの作品を読んだが、どうやら主人公を塚崎多聞とするシリーズの3作品目らしい。シリーズは飛ばさず順番に読みたい自分としては悔しいが、この作品からでも十分楽しめる。
全体的にはゆるっとした雰囲気。怪談もほとんどが怖くなく、どちらかというと仲良しのおじさんたちが話しているのをまったり見守る感じ。さらりと読める。
ただ、たまにゾクっとくるエピソードがあるのと、多聞の何気ない一言が、友人の仕事のサポートになることがあり、いい刺激になっていた。
おしゃれそうなお店が出てくるため、純喫茶に行きたくなる。ほんのりとしたホラーみと、おじさんたちの男子会を見守るほっこりさとが両立して、バランスよく、ちょうどいい味わい。ぜひ前2作も読みたい。
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本の中の気になった一文を引用して書こうと思います。ネタバレ気になる方は読まないようにしてください。
P321
「世界はつねに揺れているし、価値観は揺さぶられ続けている。そのことを意識しないふりをし、自分が幼時から築いてきたちっぽけなセルフイメージにしがみついて、世界は揺れてなどいない、うねってなどいないと自分に言い聞かせ続けているのだ。」
価値観を揺さぶられたくて、自分は本を読んでいるのかもしれない。
いろんな価値観を知るのは楽しくもあるが、恐ろしくもあるなと思う。
読むたびに惹かれる文章に出会うのが、すごく楽しい。期間をあけて再読したときにまた違う箇所に惹かれるのだろうと思うと、また楽しみが増える。
P368
「ノンフィクションは見えるフィクションに過ぎないのだと。きちんとした絵、繊細な映像があっても、人間は自分の記憶と想像でしかものを見ることはできない。結局、見たいものしか見ていないという意味なのだろうか。」
確かに人それぞれ同じものを見ても、注目してる箇所が違うし、覚えてることも違うかったりするなと思う。たまに記憶が改ざんされてて、なんか違う作品になってたりするしなと思った。人間の記憶とは曖昧なものだなと思う。 -
Posted by ブクログ
三年に一度、「サヨコ」と呼ばれる生徒が選ばれるという伝承が残る高校。謎めいた転校生の登場をきっかけに、穏やかな日常は少しずつ不思議な色を帯びていく。
正直、感想をまとめるのが難しい作品だった。それは理解できなかったからではなく、一つの答えにたどり着けないから。答えらしきものは示されても、それが本当に答えなのかは分からない。だから、この物語の答えは読者それぞれの中にあるのだと思う。
読んでいて何度も浮かんだのは、高校時代という特別な時間だった。子どもでも大人でもない、現実と幻想の境界がどこか曖昧だった頃。仲間、友情、恋愛、噂、集団心理――あの頃だけが持つ不思議な熱量は、何気ない出来事さえ複雑な物語へと変えてしまう。
誰の立場で読むかによって見える景色も変わるのだろう。だから感想も一つにまとまらず、思考はあちこちへ広がっていく。その散らかり方さえ、この作品らしい余韻に感じた。
高校時代を振り返るたびに、この作品もまた読み返したくなる気がする。その時はきっと、今とは違う答えが自分の中に生まれているのだろう。