【感想・ネタバレ】鈍色幻視行のレビュー

あらすじ

謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。

撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――

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Posted by ブクログ

読み終えてまず感じたのは、
読書という行為そのものの不思議さでした。

一冊の本は同じ紙と文字から成り立っているのに、
読む人によって受け取る感触がまったく異なる。

そこには、
その人の経験、価値観、家族との結びつき、
今まで過ごしてきた時間や傷や喜び――
そういった“その人だけが持っている背景”が反映されます。

本の内容そのものよりも、
その本をどう読んだかが、
ときに内容以上に豊かで面白い対象になる。
この作品を通して、改めてその事実を強く実感しました。

さらに、人は同じ本を読んだとしても、
10代で読んだ時と20代で読んだ時とでは、
感想がまるで違う。
そしてその変化は不可逆で、
もう二度と“かつての自分の読み方”に戻ることはできません。

読書とはそうした一回性の上に成り立つ営みであり、
時間の経過そのものが読書体験を変えていく。
この作品は、その不可逆性を静かに思い出させてくれました。

作中に登場する「夜はつるところ」という本をめぐる
人々の会話や関係の揺らぎは、
まさに読書という行為がもつ“影響力”を象徴しているようでした。
その本を読んだ人がどう変わるか、
あるいは変わらないか――
そこにそれぞれの人生が滲み出る。

「夜はつるところ」がどういう内容の本なのかより、
その本を読むことで誰かの人生がどう動くのか
という点が物語の中心に据えられているのだと思います。

その意味で、この本の中身は
ニーチェやシェイクスピアの作品のように
“読むたびに姿を変える古典”のような性質を持つのかもしれません。
解釈の多様性を残しながら、
読む人の内部で意味をつくっていく本。
そういうものとして私は受け取りました。

私にとっては『鈍色幻視行』は読書という行為、鑑賞という行為を取り巻くありとあらゆることを再認識させてくれる物語でした。

1
2025年11月20日

Posted by ブクログ

謎の作家と、その作家が遺した(死亡が確認されないまま行方不明で死亡扱いになってしまったためこの漢字であっているのかはわからない)いわくつきの作品にまつわる話。
人と人との感情がかなり細かく描写されていて惹き込まれた。

0
2025年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読後シャイニングぽいかもって思ってきたら怖くなってきて評価上げました。

恩田陸の書く女の表現が好きなので真鍋姉妹がお気に入りです。軽めの文ですっきり読みやすいし不気味な物語が読み終わったら爽快感に変わってるんですけど、よくよく考えたら怖い!
いい気分で読み終わって時間経ってから、え、でも解決してないしホラーじゃんって気づいて怖かったです。大団円は呪いに取り込まれたようにも受け取れるし。

あと、禁煙した者なので喫煙描写が楽しすぎて辛かった。

0
2025年09月18日

Posted by ブクログ

あ〜面白かった!
前にちょうど読んでいた夜果つるところという小説をベースにその作品・作者の飯合梓について話をする
な〜んにも知らずに読んでいたけど先に夜果つるところを読めて良かった
夜果つるところ、は映像化しようとして、ことごとく失敗に終わる呪われた作品
関与するところ先々に死者が出てしまう、撮影中の事故、心中、自殺。そんな呪われた小説について夫の雅春に誘われ、監督・プロデューサー・飯合梓の出版編集者・熱狂的ファン…が一同に揃う船旅がある。
小説家の梢はそこにインタビュアー、オブザーバーとしてそこに入り本の題材にするとして参加した
どんなことが語られるのか?呪われた作品の真実とは?

面白かった〜
恩田陸の作品の最後はいつも大団円、というかなんかレオナルド ダヴィンチの最後の晩餐会を思い出す
聖なる場のような、終わりが見えて名残りおしい、でも登場人物たちの中に光が灯っているようなでもまだ謎が明かされていない、終わってない感じ
恩田陸贔屓だからすごい例えしてるなあ笑

0
2025年09月06日

Posted by ブクログ

最高すぎます。
これだけぶ厚いのでわくわくしながら読み始めましたが

1冊の本(映画)について話すところは三月は深き紅の淵を
男女複数人で、謎について語りあいながら旅をするところは黒と茶の幻想
最後の方でインタビュー形式の章が出てきますが、それはユージニアやQ&A

などなど、過去の大好きな作品の要素がふんだんにちりばめられているではないか・・と大変興奮しました。
本当に贅沢な小説!
恩田さんの小説は、お話の中に出てくるエピソードトークが良すぎて、本題の謎があやふやなままでも、まぁいっか となってしまうんですよね(私は)。
『夜果つるところ』も楽しみにしています。

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2025年06月26日

Posted by ブクログ

恩田陸節炸裂という感じで私はとても好き。映像化を試みると必ず人が死ぬといういわく付きの小説の関係者が、日本からアジアを周る豪華客船で一堂に会す。そんなワクワクしそうな設定と舞台の600ページほどある大長編なのだが、これと言ったイベントは起こらない。誰かが殺されそうなシチュエーションだが、誰も死なない。なんならほとんど船も降りない。この閉ざされた海上の空間で、登場人物たちが繰り広げる会話劇を存分に楽しむ趣向だ。

一応仕掛けはある。主人公は弁護士と作家の夫婦。再婚した2人だが、夫の最初の妻は脚本家で、いわく付きの小説の二度目の映像化の際に自死を遂げている。夫は船上にいるうちに、元妻の日記を読み解いて、彼女の最後の言葉、付箋に残された「必然性?」の意味を解き明かそうと密かに思っている。一方、妻の作家は、そのいわく付き小説の映像化関係者に船の上でインタビューを敢行し、作品化しようとしている。

船に集まったのは、映画監督、女優、元編集者、大御所の映画評論家のおじいさんとその若いツバメ、そしてその小説のマニアである姉妹の漫画家。物語の前半では彼らは集まって、その小説や映像化の試みについてそれぞれが持っている記憶や見解を好き好きに話す。

なぜあのとき俳優が死んだのか?作者の小説家はどんな人間だったのか?作者はまだ生きている説。作者は2人いたのではないか説。作者は2度死んだ説。

後半は、作家がひとりずつを呼び出して、個別にインタビューをする。登場人物それぞれも、お互いについて色々な思惑や感情やトラウマを持っていて、それが語られる。

主人公の作家は最後、探偵よろしくみんなを集めて自説を語る。結末も会話の内容もネタバレになるので控えるが、なかなか面白かった。恩田陸の人間観察が光る作品。例えば、人は本を読むとき、無意識に作者が男が女かを気にする。どちらの席に座って読むかで見える景色が違うと人は知っているからだ、など。本好きを、うーむとうならせる文章が満載。

なおこの作品にはもう一つ、かなり大掛かりな仕掛けがある。なんと、このいわく付き小説である劇中作品「夜果つるところ」も出版されている。そちらを読んでからこの「鈍色幻視行」を読んだほうが、断然楽しめる。

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2025年02月22日

Posted by ブクログ

【短評】
少々の個人的な語りが許されるのであればーー私はこの本を「二度」挫折している。
肉体的或いは心理的な事情に拠るものなのか、社会情勢に拠るものなのか、はたまた星の巡りに拠るものなのか。理由は定かではない。
本作は、人生において数少ない途絶を経験した「いわくつき」の一冊である。

謎の天才作家・飯合梓(めしあいあずさ)が遺した「いわくつき」の奇書『夜果つるところ』を巡る物語。小説家・蕗谷梢(ふきやこずえ)は本作に関する取材調査を行うため、夫・雅春(まさはる)と共にクルーズ船に乗り込み、海千山千の「関係者」達との対話を試みる。彼らは何を語るのか。飯合梓とは何者か。『夜果つるところ』とは一体何なのか。

ご多分に漏れず「雲散霧消する方」の恩田陸なのだが、正直に言って読後感は悪くなかった。少なくとも、わざわざ投げ出す程の駄作ではない。イメージの奔流を楽しめたと言っても良い。自己分析するならば、読み手としての「構え」が正しかったとでも言おうか、本作を愉しむための正しい姿勢が取れていたように思う。

有り体に言えば、私は『夜果つるところ』に係る「いわく」の解決を期待しなかった。
ミステリィとして構えて読むと、スカされた印象が先行するだろう。
これは「創作物」が喚起する、或いは「創作物」に向き合うことによる心の動きの物語であり、夫婦が成熟する物語なのだと思う。魔的な魅力を持つ作品に惹かれることで、人の心はどのように動くのかを記述した本なのだと理解した。
外海を征くクルーズ船という現実から切り離された場所において、自己を内省する。そこに厳然とした正解はないし、各々が納得する解答を用意できれば良いのだと思う。「こっち側」に舵を切った恩田陸は好みではなかったのだが、不思議と惹き込まれた作品である。

【気に入った点】
●インタビュー編の構成が上手い。隠された事実関係が徐々に明らかになる衝撃が心地良いし、「作品」によって露となった本心を言語化するという行程が、本作の主たるテーマであることを強く意識させられた。
●「鈍色幻視行」とは良いタイトルだと思う。喚起されたイメージの世界である。ゆらゆらと揺蕩いながら自己を顧みるのである。素敵である。
●雅春が気に入った。落ち着いた大人の男は格好良いのである。狂言回しとしての真鍋綾実(まなべあやみ)も悪くない。武井さんとQちゃんとか、清水桂子(しみずけいこ)さんも良い。人物が魅力的なので、話を傾聴する気になった。

【気になった点】
●「結局のところ、何だったの?」という残尿感を適切に処理出来るかが問題である。期待のしどころを見誤ると致命的にキツイとは思う。そういう類の恩田陸であることは間違いない。

因縁に決着を付けるため、丁寧に読み込んだ一冊。
「作品と向かい合おう」という気概を以て臨んだことが、図らずも奏功したのだろう。
振り返ると何とサイン本であった。何故だろう、ちょっと感慨深い。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

「必然性?」
そう書き残して自死した脚本家の前妻をいつまでも消化しきれない夫と再婚した小説家の妻が、いわくつきで未完成の映画の原作の謎について、いわくに関わった人たちと2週間の船旅に出る。

「鈍色幻視行」
そのまま読めば“色のはっきりしないまぼろしを視つつ行く”
そんな空気感を漂わせながら船上で問題の小説とその作者の真相、映画化が頓挫したわけを話し合う。

それぞれの過去を映し出した感じ方が、互いに少しづつ表に流れ出す。
いつのまにか登場人物たちの流れ出た物語に引きずられてのめり込むように読んでしまった。

「真実はパレードで降ってくる金色の紙吹雪 落ちてしまえばただの安っぽい紙切れ」

表に現れているのは事実、真実は虚構の中にこそ存在する。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画化の企画が上がるたび死者が出る呪われた小説『夜果つるところ』。その小説の謎を追う小説家・蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春と共に参加する。梢の取材に応えて語り出す関係者たち。

とても良い雰囲気で好き。
不思議な作品と作者の謎が良い。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

ちゃん面白く読んだけど、私の恩田陸ブームは終わったなぁと、ふと思ってしまった作品。この人の描く男女感が、少し古いのかな。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

久しぶりに恩田陸の作品を読んだのですがとても面白かったです。

舞台は豪華客船に乗ったある本に惹かれた様々な人々が集まり議論や交流をするもので、閉鎖された空間で繰り広げられるストーリーに引き込まれました。

作中に何度か出てきた「真実とはパレードの紙吹雪みたいなもの(最初はひらひら舞って綺麗で見る人によって変わるものが時間が経つと大勢に踏まれて紙屑同然になってしまう)」という表現も好きでしたが、私が1番好きになった表現は武井京太郎のインタビューにある現実には真実など無く事実と現実と生活、感情があるだけという言葉がとても気に入りました

物語や虚構の中にこそ真実がある

生きている人間はそれだけで精一杯で真実の紛れこむ余地が無い

これは世の中が正義と悪で割り切れないところや人によって見方が変わる事などもあると自分もよく思っていたので心に残りました

それと本を読んでいてこの登場人物には共感出来ないな…と思う事があるのですが例えばこの本だと↓

主人公の梢が絢美にインタビューで怒られてしまった事を夫である雅春に伝えるシーン、梢は絢美が昔から雅春を好きで梢に嫉妬している事も知っていてそれでも実際に言われた言葉よりも強めに荒く雅春に伝えるところに(うわ…告げ口した…嫌な女だ…)と咄嗟に思ってしまった

のですが、これは私が雅春を1人の男性と見ているから感じた事であって梢からすると大変なインタビューの連続の後にキツい目にあったことを信頼できる夫にだけ愚痴をこぼした、本音を話しただけなのかもしれません

読書や映画を見る時自分のこれまでの経験や考え方と照らし合わせながら見る人は少なくないと思いますが作者と自分は他人でその考え方の違いや生き方の違いを理解したり楽しむのも虚構に触れる良さなのだとこの登場人物の武井京太郎の言葉で実感してよい読書体験だったなと思いました

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2025年05月24日

Posted by ブクログ

なかなか長い本だったけど、、そのおかけでどっぷりと不思議な世界に浸ることができた。
豪華客船の中での非日常のやりとりがよりいっそう恩田陸ワールドに誘ってくれたような気がする。
結局どうなったのかというはっきりとした答えは導かれないけど、ふんわりと余韻を残して煙に巻かれた感じがよかった。
好き嫌いが別れる作品かもしれない。

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2025年04月13日

Posted by ブクログ

全部で約650頁近くある分厚い本。しかし全部で47の章で構成されており一つ一つの章の量はちょうど良い長さ。 舞台は豪華客船。豪華客船に乗ってゆっくりと大海原を渡り、旅をするというのはとても贅沢な時間である。主人公である蕗谷梢は豪華客演を舞台に「飯合梓『夜果つるところ』」の謎を追求する。我々読者は豪華客船の旅という贅沢な時間の中で、蕗谷梢とともに上記作品の謎を解明するための旅に出る。 特に印象を受けた場面は、蕗谷梢がインタビューをする場面。完全に蕗谷目線で書かれているあたりは恩田先生の手腕が光っていた。

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2025年03月24日

Posted by ブクログ

賛否が分かれるような気もするが、わたしは好きなタイプの物語だった。

豪華なクルーズ。
非日常と日常が溶け合う旅。
そして、そこに確実に「存在」する、飯合梓という作家と、『夜果つるところ』という小説。

全体的にミステリというよりは幻想小説に近い印象で、すっきりした解決というよりはそれぞれの心の落ち着きどころをもたらす結末。
それでも、恩田陸の確かな筆致、安定していて安心できるストーリー、叙情的で内省的な、雅春と梢のモノローグが、読んでいて心地よかった。

読み終えた今は、なんだかぼんやりとしているが、何となく(言葉にはできないけれど)これで良かったんだ、という気持ち。
もちろん、作中作でありある意味主人公である『夜果つるところ』も手元にあるので、ぼんやりしているうちに読むとする。

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2025年03月22日

Posted by ブクログ

恩田陸さんらしい、木曜組曲とか麦の海に沈む果実とかを思い出させる感じの作品。そちらが好きな人は好きだと思う。結局なんなんだ?みたいな謎はすっきり解決!みたいな作品ではないのだけど、色々な人がある人物、作品について思い思いに話す、人の話を聞くのが好き。

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2025年03月14日

Posted by ブクログ

恩田陸さんの小説は、世界観や雰囲気がとても良くていつも読みながらワクワクします。
でも、多くの作品は後半ガッカリすることが多いので、今回も「どうせ、投げっぱなしで終わるんでしょ」と覚悟しながら読んでました。
予想に反せず、なかなかに投げっぱなしのラストでした(笑)でも、個人的にこういう投げっぱなしはそんなに嫌いではないようで、ラストまで気持ちよく読み切れました
船旅に憧れを抱きつつ

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2025年03月06日

Posted by ブクログ

長かったぁ〜
どんよりとした空気感で、鈍色幻視行というタイトルがぴったり。
どう物語が締めくくられるのか、想像もつかなかったけど、良い終わり方だったと思う。
物語の途中で仄めかされていたように、曖昧でつかみどころのない終わり方だけど必然性を感じた。
夜果つるところを先に読んでいてよかった。
この二つをセットで読むことで恩田陸のファンになってしまいました。

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2025年02月18日

Posted by ブクログ

何も知らず「夜果つるところ」を読んで感想を見たらこっちを先に読んだ方がいいという作者の言葉をみてすぐに読んだ。だけど、「夜果つるところ」を先に読んでいて良かったと思う。
記憶が新しいうちに含みの多い作品だから自分の考察と照らし合わすことができた。
「鈍色幻視行」は650ページ以上の長編だったけど、読みやすく疲労感が少なかった。
いわく付きの謎の本と作者をめぐった、同じ船の中で2週間共にする様々な人生を持つ登場人物達による視点。 真実は虚構にしかない。どんな現実もそれぞれが見たいように見てるそれは本当にノンフィクションなのか。真実なんて、パレードで降ってくる紙吹雪のようなもの。
鑑賞作品の真実、過去という真実。自分自身という真実。様々な要素が回収されて、そして考える隙を与えてくれるこれぞ文学って感じがした。

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2025年01月19日

Posted by ブクログ

蕗谷梢は、夫・雅春と共にクルーズ船に乗船する。
目的は、飯合梓の曰く付きの著作『夜果つるところ』について関係者にインタビューすること。『夜果つるところ』フリークの漫画家姉妹、最初の映画化時の助監督、女優、文庫化の編集者、映画化を試みたプロデューサー、映画評論家など、実に多くの関係者が一同に会す場で、梢は何を見聞きすることになるのか。

単調で、一度挫折した。
船旅というものは、洋上にいる時間は退屈なものだ。これは決して悪いものではなく、非常に贅沢な時間の使い方だと思う。社会人になり、家族を持ったりなんかすると、「ああ、暇だなあ」なんて思う機会はぐっと減る。梢や雅春も、陸にいると仕事に邁進してしまうタイプだろうし、物理的に日常と距離を置かないといわゆる余計なことなんてできないだろう。それ故に、本作の時間の経過が退屈にゆっくりと感じられるのは、ある意味リアルな船旅感が出せているという見方もできるのかもしれない。

登場人物たちの『夜果つるところ』愛が深すぎ。
みんな作品に対する執着が強すぎて、何度も置きざりにされた。飯合梓の正体も、作品の曰くも、途中から興味が薄れて、そうなってしまうと「まだこんなに頁が残ってる…」という最悪な読者に成り下がってしまった(笑)

視点は統一した方が読みやすかったのでは?
雅春と梢の視点の間を行ったりきたり。やや梢の方が多いかな。笹倉いずみとの関係性を描くには雅春の視点が重要なので、いっそ彼が主人公の方が読みやすかったのかも。群像劇的な作りはしていないので、なんとなく物語が薄まってしまったように感じて、決着が中途半端に感じてしまった。

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2025年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ユージニアのような一人称で各々が好き勝手に喋るインタビュー形式のパートがあるとは思わなかった。雅春パートでどんなことを語るのかと恐々しながら読んでいたが、杞憂でよかった。

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2025年05月24日

Posted by ブクログ

『夜果つるところ』を読み終えたけれど
どちらも恩田作品にしては読み進めるのに時間がかかった

メタフィクションのアイデアはおもしろいけど、
どちらもコンセプトやプロットに縛られすぎてる気が

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2025年05月06日

Posted by ブクログ

長い、とにかく長い
読みにくさはないけど長い
霧がかかったような世界観が続いていくTHE恩田陸様
たしかに本を読んでると、この作者って男の人なのかな、女の人なのかな、って考える時あるなぁ

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2025年04月26日

Posted by ブクログ

ものすごく長く感じた本だった…。
何だろう…この読み終わったあとの解放感…。
本の中の登場人物のように暗い所をぐるぐるしていたような気分になった。

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2025年03月23日

Posted by ブクログ

最後まで継続して読めるけれど、イマイチまとまりのない感じのお話がずっと続くので、読後感もなんだか消化不良気味です。

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2025年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

恩田陸にはまって何作か読んできたけど、ちょっと疲れたなあ。
陸がグダグダとめんどくさいとこがあるのはわかっていたけど、ああでもない、こうでもないと・・・
「夜果つるところ」は以前に読んでいたので、それを踏まえながら読んだのだけれど、アイデンティティの問題か、
そうなんだけど、死者が出すぎ、あまり殺さないでほしいなあ。

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2025年02月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久々の恩田さんの小説。
『夜果つるところ』という呪われた小説と謎の飯合梓という著者に関して主人公の小説家が本を書こうと調べはじめ、様々な関係者を客船の旅の中でインタビューすることによって謎に迫ろうとする物語です。
最初の映像化はセットの火事により中止、次の映像化の際には俳優二人の心中により中止、そして次の映像化企画の段階で脚本家が自死して中止というのがこの小説の呪われた歴史。また、著者はいつも帽子をかぶって顔を隠し、会う人ごとに印象が異なる謎の人物で、死んだと思われていたが死体がない。
そんな状況で、映像に関わった者とその関係者、自死した脚本家の夫であった主人公の今の夫と主人公の語りによって物語が進んでいきます。
作者の招待に関しては朧げに推測できる結末ですが、映像化の際の不幸に関してはあまり解明されず、余韻を残した形になっています。
そういった点で推理小説としてはあまり評価できませんが、登場人物の描写や関係性などはなかなかよく練られているなあと感じました。

竹蔵

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2025年02月03日

Posted by ブクログ

長い話しだった。それでもこの話しは本当はもっと何倍も長く、この本はその一部に過ぎないと思わせる内容だった。
でもこの長い話しにもかかわらず、文章は読みやすく、つい先を急いでしまう。
長い話しに付き合ったのでフェリーのファウェルパーティーでは、読者もパーティーに参加して充実感を味わってしまった。

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2025年01月31日

Posted by ブクログ

最初はどうかなと思いながら読み進めましたが、後半のインタビューのあたりは、一緒に聞いている感じがして、引き込まれました。

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2025年01月13日

Posted by ブクログ

撮影中の事故で何度も映像化が中止され”呪われた小説”と言われる『夜果つるところ』とその著者である飯合梓の謎について本を書こうとしている小説家が、関係者一同と同じクルーズ旅行に参加して船上でインタビューをする話。映画監督やプロデューサー、編集者などそれぞれの視点から作品と作者について語り合う。
語られる飯合梓の人物像がユニークで面白い。
作中で何度も言及される『夜果つるところ』は恩田陸によって別の本になっており、そちらを先に読んでいたのでイメージしやすかった。序盤は冗長だと思ったが、中盤からの連続インタビューはさすがに恩田陸。

内容とは関係ないが、長めの長編で単行本なので本が重くて辛かった。

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2025年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作中作「夜果つるところ」にまつわるミステリー。
映像化しようとするたびに不幸な事故が起こって頓挫してしまう本作。
これは呪いなのか?
その関係者やファンが集まり、それぞれの「夜果つるところ」について語り合い、解き明かそうとしていくストーリー。

後半のインタビューや、作者である飯合梓の正体についての考察が面白かった。
でもたぶん、何ひとつ正解は分からず。
それでも登場人物それぞれが、この作品に対して多少なりの折り合いをつけることができたのかな。

舞台はクルーズ船。
非日常の中、熱に浮かされ、下船と共に日常に引き戻される。
あれは現実にあったことなのか…なんて感覚は誰しも経験したことがあるんじゃないかな。
そのおかげか、恩田さんのいつもどおり広げた風呂敷を畳みきれてない印象はあるんだけど、なぜかあまりモヤっとしなかった。
「夜果つるところ」も出ているので、こっちを読んでからまた読み直したいな。

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2024年12月14日

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