あらすじ
膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから――「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への志向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか? 不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。
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もしかしたら東北がルーツのあの人も...と思わざる得ない面白さでした。
文章が情景を思い起こさせるのに十分すぎる表現力で、さすがだと感じました。
とあるフレーズは思わず音読してしまうほどに引き込まれました。
読み始めは短編集だから、それほど時間もかからず読めるだろうと思っていましたが
1章分のページ数が少ないが、内容はすっごく濃いのものでした。
正直、短編集を読んだ満足度の比ではないくらい高かったです。
まだまだ常野の物語は続くようなので、引き続き続編を追っていきたいと思います。
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恩田さんの名前は聞いたことあるが、
自分の読みたいジャンルではないなと素通りをしてました。
ふと思い、恩田さんの作品を調べてみるとSFジャンルも書いているとわかり、読本することに。
美しい日本語とはを語ることはできないが
こういうのが美しい日本語というのだろうなと思いました。
都会、田舎、雪の中、雨の中、人々の喜怒哀楽。
心に染み渡るような文章でした。
自分としては長編作品が好きなのだが、
連作短編もいろいろなところで伏線があって面白いなと
前に出てきた人物を発見するとワクワクしました。
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再読。
特別な力を持った「常野」の一族。
オセロゲームの「裏返す」エピソードが読みたくて手を取ったけど、全編こんなに切ない話だったかと大人になっても唸る。
恩田陸さんは爽やかな本も多いけど、こういうSFもの大好き。
そして続きの本、3冊目のエンドゲームは見つかったけど真ん中の蒲公英草子が見当たらん…
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何度かウルウルきてしまい、病院の待合室で読んだことを後悔した。
人ってむごい。
どうにもならない悲劇的なことも起こる。
でも何かのために、大きなうねりの中で、光を浴びて生きている。
私も何かのために力を尽くして生きたい。
そんなことを思った。
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常野一族に関する話で、1話1話少し繋がりのある短編集となっている。世界観が独立してあり、最後まで中弛みすることなく楽しく読むことができた。ファンタジーがすきな人に強くお勧めする。
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厳かで、一方で民話のような懐かしさや親しみのようなものも感じられる、本書全体の世界観がとても好き。文体や、ファンタジー感のある設定が巧妙に組み合わさって独特の雰囲気を味わえる一冊でした。
短編のつくりになっていて、一番好きだったのはタイトルになっている「光の帝国」でした。
シリーズ化されているようなので是非他の作品も読んでみたい!
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恩田陸の愚かな薔薇に近い特殊能力系のSFチックな作品。誰かに利用されそうになり、互助しながら社会の片隅でひっそりと生きていく姿が微笑ましい。続編が気になる。
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2020/3/7
夜のピクニック蜜蜂と遠雷に続き、恩田陸の次の作品として光の帝国をチョイス。SFって、、と思いつつ手に取ったが、人気あるのも頷ける。短編ながら好きだわぁ、この話。シリーズの蒲公英草紙とエンドゲームも早速手にいれた。
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僕が読んだ最初の恩田陸の作品は『六番目の小夜子』で、そのあと『球形の季節』などを読んでみましたが、この作品は短編集だけど、一番面白かったです。
常野(トコノ)一族という超常能力を持った一族の短編を集めたものです。
解説者の久美沙織氏は常野一族の由来を柳田國男の『遠野物語』からのものだろうと言ってますが、それは違うよなあと思いました。
民話のイメージを借りた部分はあるかもしれないけど、常野一族の源は明らかに萩尾望都の『ポーの一族』ですよ。
恩田陸の年齢ともリンクしているし子供の頃読んだポーの一族の影響が強く出ていると自分は考えます。
常野一族とポーの一族では語感もよく似ているし。
もちろん盗作とかそんな話ではないですよ。影響を受けているという話です。
短編の中の『手紙』を読んだことでほぼ確信しました。
これは『ポーの一族』の中で、ジョン・オービンが、エドガ-を古い記録の中から見つけ出す話にそっくりです。
また、光の帝国の中の短編『光の帝国』の物語は、古い分教場に集められた常野一族の子供達が、その能力を利用しようとする軍部の攻撃を受けて全滅する悲しい話ですが、これは筒井康隆の『七瀬ふたたび』を思い起こさせます。
どんな本も以前に書かれた何かに似ているという事はよくあることだと思います。
要は単なる真似ではなくそれを土台にしてさらに高い、深いものを作ろうとする意思だといえるでしょう。
恩田陸はオリジナリティだけでなくアレンジ能力も高い作家なのではと思いました。
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ツル先生は主人公ではないが、ツル先生が縦糸となって、『とこの』の様々な人々の人生を横軸で紡いだ物語。
中でも光の帝国は時代は個人の凄惨さ異常さが描かれ、他のしみじみとしたノスタルジーや単なる不思議モノとは一線を画し、読むのは辛かった。
が、最後の話はあー良かったなと思えるストーリーで救われた。
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自分は特別な人間かもしれない、と勘違いした経験は誰にでもあるのではないだろうか。
この話は世間にひっそりと紛れ込みながら、特別な力をもつ「常野」の人々のお話である。
恩田陸さんは私の好きな作家であり、幻想や不思議といったテーマが好きなので、このお話はまさに私の好みドンピシャの作品だった。
連作短編集で、内容も主人公も全て違うのに、全ての登場人物が関わっている。
昔好きだった人がひょっこりと同窓会に顔を出した時のあの感じ。物語が完結した後、またその主人公の息を感じる瞬間、たまらなく興奮する。
私は常野の人間ではないが、光の子供である。
ツル先生たちならそう言うだろう。
常野の人たちが私の隣で生活しているかもしれないというそこはかとないワクワク感が読後に感じられる。まさにタイトル通り光が感じられる作品だった。
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世界観や設定が個人的にはとても良くて面白かった。常野の意味は、「権力を持たず、群れず、常に在野であれ」。実は身近にそんな人がいるのかもしれない。
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不思議な世界に連れていかれた。人々の暮らしの中で本当に大切なことをさりげなく表現している。実際に常野一族があって今自分たちの近くにもいるのではないかと思ってしまう。やさしさが横たわっている良い小説だ。いつも恩田陸の作品には心奪われてしまう!
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久々に読んだファンタジー。私たちが生きる現実世界にもこの本にあるような不思議な力は存在しているのだろうと思った。登場人物が多くいっきに読まないと関係性を把握しきれない可能性がある。
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【読むきっかけ】
・夜のピクニックが良かったので、奥様書棚にあった本作を手に取った。
・ジョウヤモノガタリ?つねのものがたり?
【感想】
・「とこのものがたり」かよ!
・「大きな引き出し」、「二つの茶碗」が良かっただけに、「光の帝国」が悲しすぎて、凹んだ。「達磨山への道」は、私には理解が難しい…。
・最後らへんでの心のつぶやき。『え?あと「黒い塔」と、「国道を降りて…」の2つしかないよ?量も少ないよ?大丈夫?伏線回収できるの?』
・「国道を降りて…」、で音楽ネタ。その道に進んだ光紀が出てくるのかと思いきや、出てすらこんじゃん!
・続きはないのか?続きは?(半ば怒り)
【あとがき】
・著者のあとがきを読んで、初めてシリーズモノの短編集と知る。
・著者も『今にしてみれば「大きな引き出し」の春田一家の連作にしても良かったなぁと、少々後悔している。』と書いてある。そうだよ。僕もそう思う。光紀の活躍が見たい!
【続き】
・ネットで調べると、常野物語は「光の帝国」、「蒲公英草紙」、「エンド・ゲーム」と続くらしい。ホッとした。ぜひ、続きを読みたい。
ひとまず、個人的に読んでて辛かったので、星3つです。続きを読んだら、変動するかも。
Posted by ブクログ
漠然とした内容の物語が多い短編集
引き込まれるものもあれば読み飛ばしてしまうくらい興味が湧かないものもあった
そんなところがこの作家さんのよいところなんだろうけど今回はあまり馴染めなかった
Posted by ブクログ
ファンタジー小説の紹介でおすすめされてた1冊だったので選びました。日常の世界に特別な能力を持つ人がいるというファンタジー。日常を忘れさせてくれるようなファンタジーではなかったけど、それぞれの短編に純粋に感動したり、胸が悪くなったり、また希望を見たり。
Posted by ブクログ
読み始めはなかなか掴めないなと思っていたが、“手紙“の章から、恩田さん独特の不気味ででも引き込まれるSF要素が出てきたなと。
恩田さんにSF/オカルト系と何かに専念した青春系の2つの作品タイプがあるとしたらこの作品は明確に前者。
ツル先生の話で、そもそも軍に特殊能力を利用する目的のはずがなんのメリットがあって皆殺しするハメになったのか全然わからなかった。でも理解のできない強大な力というのは恐れているからこそ制限したくなるものなのかしら。
何の目的もなく皆殺しにされた子供たちが可哀想でしんどかった。
Posted by ブクログ
丁寧に読めて…いない?
常野の魅力を味わえなかったのは、現代社会に溺れてしまっているからなのかなあ。
『二つの茶碗』や『達磨山への道』の雰囲気は好きだった。日常と常野が混ざり合っていて、絶妙な余韻が残るのがいい。『夜のピクニック』と『六番目の小夜子』のいいとこどりって感じだった。
しかし、『オセロ・ゲーム』以降、話に乗り切れないまま進んでしまった気がする。続きが気になるカロリー高めの話なんだけど、盛り上がったところで、次エピソード続きが描かれない。現代の余裕のない大人はつんのめっちゃう感じがしたなあ。静かな部屋でコーヒーを飲みながらゆったり読んでれば常野の空気を胸いっぱいに吸い込んで楽しめたのかもしれないが、通勤の合間合間で読んでいると作品全体がぼんやり感じてしまい、常野の人々をくっきりと見ることができなかった。働きながら本を読む限界に触れた気がして悲しい。
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常野と一緒に不思議な力を持つ一族の話。
短編なので読みやすい。
一つの話の登場人物が他の話にも出てきて、そういうことかと繋がる。
タイトルにもなってい光の帝国の話が切ない。
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常野という不思議な力を持った一族を主題に置いた連作短編集で、短編ごとに繋がっていて、読み進めるごとに常野とは一体どんな存在なのか分かってくる。
短編で読みやすかった。
とてもファンタジーな内容だった。
Posted by ブクログ
想像力を掻き立てられる短編集。短編集だけれど、それぞれ少しずつ断片的に繋がっていて、常野一族の謎が少し見えてくる。
しかしまだまだ謎が多く、壮大な世界観を感じるし、気になることが多すぎるので、2作品目も読んでみたい。
Posted by ブクログ
社会に溶け込んだ、不思議な能力を持つ常野一族を描く連作短編。
すべての話が繋がるわけではなくて、結局達磨山のことや、黒い塔がなんだったのかわからないまま終わってしまった感があるけど(あとがきを読むと、達磨山の話とかは別の長編物として考えられていたものらしい。)、最後は良い感じで終わった。岬と美咲はどういう関係なんだろう。一族全員が集って大団円ではなかったけど、色んな境遇の人がいるように、常野一族も色んな境遇のなか暮らしているんだというふうに感じた。
本筋とは異なるところな気がするけど、「草取り」の話ではっとするところがあった。
「この人たちがそれぞれに目的を持ち、やがては自分の部屋に帰るのだと考えると不思議な気がする。」
「力がある方向に働く時、必ず逆方向の力が起こる。」
Posted by ブクログ
再読しました。
特殊な能力を持つ常野一族のお話。その高い能力の代償なのか、様々な災厄に襲われ散り散りになるも、それぞれが力を覚醒しながら徐々に集まってるような様子は、もうどうなるか忘れたけど、これから続く続編の展開に期待を持てます。
ただちょっと雰囲気が暗めで、優しいお話もあるけど、寂寥感が強かったかな。
高い能力を見せつけるこれからの世代の活躍に期待です。
Posted by ブクログ
宮城県にある常野という地に生まれた者たちは、特異な力を持っているという。
膨大な情報をまるで引き出しにしまうかのように記憶すること家族、人の未来を見通す力を持った女性、二百年もの月日を生きる老人。かつて一族を総称して地名でもある「常野」を語っていた彼らは、現在ひっそりと人類に溶け込んで生きている。
本作『光の帝国 常野物語』は、そんな摩訶不思議な力を持った常野一族にまつわる短編が全十編が収録されている。
超常的な力を持つ常野で生まれた者たち。だが、不思議と彼らの日常は私たち読者とあまり変わらない。学校へ行き大人になり、仕事をして子供を育てる。そうやって社会に溶け込む姿を見ていると、常野一族は私たちの世界にも実在するのではないかと、つい信じてしまいそうになる。
特に好きだった作品は、『光の帝国』と『国道を降りて…』の二作。
表題作『光の帝国』は、さまざまな境遇で社会から締め出された常野一族の子供を育てている分教場の話。
描かれた惨劇は胸を抉るものだったが、そのラストには拭いきれない優しさが滲み出ており、悲しい物語にもかかわらず不思議と穏やかな心になれる。特に私は、ツル先生の元に常野の子供と彼らの先生となる大人たちが集っていく場面に、大きな優しさと平穏を感じ取った。
『国道を降りて…』は、美咲という女性の視点で描かれる。美咲という名前にフルート奏者という設定。その部分からある短編との繋がりを知った私は、まるで雷に打たれたような衝撃を受けた。
また、彼女が憧れるチェロ奏者・川添律とのエピソードも甘酸っぱくて微笑ましい。恩田作品の中に音楽が絡むと、どうしても『蜜蜂と遠雷』を連想してしまう。青春小説と芸術小説、二つのジャンルを掛け合わせたものを描いたら、恩田陸氏に勝る作家はいないと確信できる。読後感もとても爽やかだった。
このように、連作とまではいかないが各短編はゆるやかな繋がりを見せる。
短編集なのでひとつひとつの話はあっさりとした読み心地。にもかかわらず、どこか懐かしさを帯びた不思議で優しい物語たちに惹かれてしまうのは、恩田陸氏の幻想的で柔らかな文体によるものだろう。
息も忘れて物語に没入してしまう恩田作品が多い中で、ホッとため息が出てしまうような爽やかな作品も鮮やかに世に放ってみせる。流石、恩田陸。私の推し作家だ。
久美沙織氏による文庫本解説もたいへん素晴らしい。読者の恩田陸像への解像度を明瞭にするとともに、他の恩田作品も読みたいと思わせてくれる。文庫本で本作を手に取った方はぜひ、解説までじっくり楽しむことをおすすめする。