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Posted by ブクログ
不思議な力を持ちながらもひっそりと生きている一族の話。SF?と思って読んだけど、もっと優しいというかふわっとした感じの話。中には戦争真っ只中の話もあったり、大きな事故の話もあったりと読んでてつらい場面もあった。
「国道を降りて」でツル先生が笛が上手だったな…と話しかけるところで、毎回涙ぐんでしまう。みさきさんが音楽を続けることを投げないでよかった。
Posted by ブクログ
初めて読んだのは確か小学生の時で、学生の頃にもう一度読んで、20代後半の今、また読み返した。
最後に読んだ時からしばらく経っていたけど、自分の中で1番印象深く残っている小説だ。改めて読むとやっぱり素晴らしかった。
不思議な能力を持った人々を取り巻く短編集なのだが、彼らはファンタジーの世界ではなく、リアルな現代日本のなかで能力をひけらかすことなく粛々と生きている。リアルな世界で静かに息づく異能が、ちょっとした事件を解決したり、醜い人々に蹂躙されたり、普通の人々とは違う悩みを抱えたりする物語は唯一無二で、すごく派手な展開があるわけではないのに、不思議な魅力が心を掴んで離さない。独特で繊細な世界観に惹き込まれる。
物語全体や登場人物には繊細で柔らかい印象がある一方で、時折現れるグロテスクで衝撃的な画が脳裏にこびりつく。塔の燃える鉄球、毒々しい色をしたツタやシダ……。今回読み返すまで、この作品のことを思い出す度、素敵な物語だという認識と一緒に、じゅくじゅくと赤黒く、おびただしく種を含んだ、巨大なイチゴのイメージが頭に浮かんでいた。それくらい印象的だったのだ。そんなグロテスクさと繊細さのギャップにも揺さぶられて夢中になった。
タイトルにもなっている「光の帝国」はあまりにも悲しい展開で涙が止まらなかったが、「国道を降りて…」の序盤でもしかして…!?と思い、ラストで少し救われて、また泣いた。
常野の人々は、常野の人々であるがゆえの使命や危険に悩み、恐怖を抱えていることだろう。しかし、だからこそ常野の絆は強い。仲間がいるという実感がある。現代社会の中で毎日言いようのない孤独を感じている自分には、亜希子のことが少し羨ましく感じられた。
Posted by ブクログ
「月の裏側」が好きなんだけど、この作品も同じくで、わたしはつくづく恩田陸さんが描くこのタイプの作品が大好きだ わたしたちの普段の暮らしと不思議な世界線が実は同居しているというおはなし
そんな不思議な世界は堂々と粛々と動いているから、用いる言葉が明朗としているから、どんどん読み進めてしまうのだけどほんとうは大切なことや苦しいことや綺麗なことやどれにも当てはまらないことなんかがたくさん込められていてもっとじっくり読みたかったんだよ!!
というわけで二回目よみました
3冊のほかすべて小説捨てなさいとか言われても、この本は手放さないとおもう
酔った勢いでほんとうにさいあくなことを書くけどさ、わたしが好きな言葉の選び方をする作者の方は話自体も使う言葉と同じような無風な感じに思うんだけど、(それでも読んでて美しいから幸せなんだけど)
この作品はことばもおはなしもすべてを愛すしかなくてほんとうにだいすきだったんだ
Posted by ブクログ
幅広い作風を持つ恩田氏ですが、本作を読んである思いに至りました。
「この人は怪奇系が得意かも」
氏の作品は20作以上読んでいますが、超常系のエッセンスが入っているのは結構ツボります。そして本作もそうでありました。
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ザックリ言うと、常野という場所・そこを起源とする氏族は特殊能力を持ち、それが発現する話が連篇で綴られるというのが構成です。
とある場合は現代、息を潜ませるように生きている記憶をつかさどる能力に秀でた人たち(「大きな引き出し」)。またある場合は、戦中の東北に難を逃れたこの氏族の出身者が最終的に殺されてしまう悲劇を描く(「光の帝国」)。
このようにして連篇が10篇収録されています。
あるものは独立しているように見えますし、あるものは他の短編と関連があるようにも見えます。このあたりが含みを持たせる書きぶりなどがしてあり面白いところ。
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さて、この小説の魅力といえば、やはり超能力、ではないでしょうか?
んなものねえヨ、って言っちゃうのは簡単なのですが、あればいいなあーと憧れた方も少なくないのではないでしょうか。
私は本作を読んでいて、かつて見た『グリム』というドラマを思い出しました。
我々が何気なく生きている街中にも、超能力を持った人種がひっそり生きているとしてもおかしくないなあ、みたいな。もっともこっち(グリム)は大分粗々しいですが。
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さて、私も勘づきましたが、字面から類似性に気づき、「つねの」ではなく「じょうの」かなあと。
タイトルが遠野物語に由来していると推測される点については、解説で久美沙織さんも指摘されていました。
で、じゃあ遠野物語って何かっていうと、柳田国男→民俗学、ここまでは日本史で頭の中にありましたが、遠野物語までは読んだことありませんでした。
早速wikipediaで確認してみると、言わば地方の超常現象系民話集!実に面白そう。読みたい!
因みに、折口信夫の民俗学も有名ですが、この前の入院中にトライしてみました(結果、挫折)。
こちらは巫女とか神様の神話が南方(沖縄とか)よりやってきたとか、宗教と習俗とのまじりあいの過程の仮説とか、民話や神話に現れる単語の言語学的ルーツをたどるとかでそれなりに面白かったのです。
が、起きるべき昼には私を眠りに誘い、隣のおじいちゃんが呻いてうるさくて眠れない夜にもまたばっちり眠気を与えてくれる睡眠薬の立ち位置に留まりました(泣)。ということで挫折。余談でした。
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ということで恩田氏の超常系小説でした。
中学校で「宇宙皇子」、高校でスティーブン・キングにドはまりした私としては超能力・超常現象系は大好物。続編もあるようなので引き続きトラックしてゆきたいと思います。
Posted by ブクログ
再読。引っ越しのときに常野シリーズ手放したけど、持っといたらよかった〜。
全然覚えてないけど、「光の帝国」がよかった気がして読んだら悲しくて悲しくて。あれ、こんな話やったっけてなった(笑)
でも全体的にいろんな話があってよかった。
ツル先生、みさきに会えてよかったね。
最後の話は蜜蜂と遠雷に通ずるところがあって、今読んだからの感動もあった。
Posted by ブクログ
異能力を持った一族「常野(とこの)」の人々の物語。
ファンタジーの短編集だが、あちこちの物語が繋がっている構成。こういうのは嫌いじゃないが、うっかりすると見落としてしまうので、時間がかかると大変。
表題作の「光の帝国」は、戦時中の村で起こる悲劇。ツル先生という老人が、長い歴史を見つめ続ける。その生涯の中で、いくつもの悲しみを抱えるが、笛を抱いて命を落とした少女と、最終話で出会うことができたところが、ほんのりと優しく癒される。