あらすじ
青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから……、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。
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切ない、なんて切ない物語なんだろうか。今の時代を生きる私たちに、まさに問いかけてくる。そして、美しい日本語で綴られ、硬い文章のようだが、情景が映像のように浮かぶため、読みやすく理解しやすい。シリーズであるエンドゲームを先に読んでいたので、違いに驚きつつ、まさにこれは名作だと思う。
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切ない。これは切ない。これだけは言っておきたい。悲しみもあるが、切なさの方が先に立つ。過去、過ぎ去った歴史の物語を読んでいるはずなのだが、どうにも今、この時代を読んでいるような感覚まである。
戦前の長閑だが、どこか不穏な気配がする時代の空気が見事だし、そこにいる不思議な人々のユーモラスで、ふわふわした存在感が見事だ。そこにいないはずなのに、いそうな感じがするのだ。
ファンタジー、ではあるのだろうが不思議さと人の世の儚さをテーマにした群像劇でもある。恩田陸、不思議を不思議のままに描かせたら右に出る者のいない作家である。
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最後の5ページがガツンと来る。村の美しく悲しい日々がこんな終着なのかと。
村のお嬢様の話し相手に選ばれた主人公、峰子の「いつの世も、新しいものは船の漕ぎだす海原に似ているように思います」という回想から始まる書き出し。新天地の輝かしさだけでなく、失敗の恐怖にも触れられる。悪いことが起こるのだろうと端々からわかる。
なのにあまりに村と人々が素敵なものだから、峰子と同じようにずっとこの日々が続いたらいいのになあと思いながら読んだ。
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日本人として避けてはいけない事実に対して、人としてどう向き合うか。
人は互いに心通わせ生きていく。歴史的な悲劇も「歴史」として目を向け大切に互いで共有しないといけない。
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惑うことなき古き良き日本人の心が描かれた作品。
この作品には今を生きぬくための答えの一つが「しまわれている」と思う。
常野の人は一人一人が特別な能力を持っている。
この能力を自分のためでなく、人のために使うことが尊敬するところだと思う。
力を持つものが富や名声を独占する今の世の中だからこそ「響く」と思う。
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「なぜこの結末を書いたのか?」
この問いから逃れることはできない。これと向き合わなければこの本は終われない。
本作の描写はあまりに柔らかく美しい。蒲公英草子とはよく言ったもので、麗らかな光が降り注ぐ日本の原風景のような楽園が広がっている。
淡い恋があったり、”にゅう・せんちゅりぃ”を生きる人々の葛藤と情熱の描きっぷりも巧みで、風景から心の描写まで筆が乗りに乗っている。
本当にこの美しい夏の記憶だけをずっと味わっていたかった。
だが、結末はどうだ。起承転落だ。それも深い深いところに突き落とされる。楽園で解きほぐされた剥き出しの心をガツンとやられて、問いを渡されたまま終わる。
だからこそ、「なぜこの結末を書いたから」これを考えなければいけない。
“「この国で生きていくことを決めた時から、僕たちはみんなを『しまう』ようになったんだ。みんなの思いをこの先のこの国に役立てるために。僕は、自分の一族に生まれついたことや、この生活を後悔してないよ」”
→これだ。多分これなんだ。僕たちも生きていく上で「しまう」ことをし続けなければならないんだ。美しいことを「しまう」ことは簡単だけども、苦しいことも悲しいことも「しまって」それでも前を向いて生きていかなければいけない。そういうことを言っているのだと思う。
辛い読書体験だったが、どうにかこの本を僕の中に「しまい」、少しでも「響く」ものにしたい。
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再読。
常野物語、どんな話だったかと思いながら読み返しました。
古き良きのどかな時代の話かと思ったら聡子様の最後のくだり、そして戦後に繋がるエピソード。爽やかな青春と重たい現実に胸が塞がるような後味でした。対比によって、主人公と聡子様たちが過ごした時間がより一層懐かしく、引き立っていました。
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静かで上品で、風に揺れる草花のように趣深い作品だった。
登場人物の佇まいや世界の描き方、そのすべてが柔らかくて清らかで、読み終えたあとも心に残り続ける。
この本が似合うような、静かな気品をまとった人間になりたい。
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夜のピクニックと蜂蜜と遠雷がすごく良くて、購入したけれど読んでいなかったこちらを手に取り読んでみた。自分は峰子くらいの時に冷戦が終わって世界は平和なんだって言う認識で育ってきた。峰子が世の中に色々不安を感じているのと今がちょうど重なるな、とか、楽しいやりとりの毎日にわくわくしたり聡子様の将来にざわざわしたり、びっくりするくらい一気に読んだ。
それからシリーズ物の中にあたる話のようだと気がついた。もうこの本から読んでしまったのはしょうがない。他の話も読んでみよう。
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「君の一途さ、無垢さが、吾が国を地獄まで連れていくだろう。」
この言葉が強く印象に残った。
国を思うことに憧れのようなものを抱く。
それと同時に、自分には何も力がないことに、何もできないことに愕然とする。
ご先祖様たちが死にものぐるいで守り、作り上げてきたこの国で、私はなんとお気楽な日々を送っているのか、なんてことを思ってしまう。
才能があってその道に行かざるを得なくて、自分の望み通りでないとしても、この才を生かすのだと使命感を持って生きること。
やる気はあるのに、まったく能力が伴わない悲しみ。
ほんわかとした表紙と題名に対して、なんとずっしりと心に来る話だろうかと、読後しばらく頭から離れない。
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常野物語の2作品目。1作品目と同じように常野に関わる人たちの短編が続くのかと思いきや、今作品では常野一族の人たちと関わる世間を常野ではない一般的な家庭の少女の視点で描かれる長編作品でした。個人的には2作品目の方が好きで、表紙やタイトルからも窺える通り、読んでいて非常に心穏やかになれるシーンの多い作品でした。3作品目にはエンドゲームのタイトルで常野物語が続きます。1、2作品が直接繋がらないように、3作品目も全く異なる常野物語となるかもしれませんが、それはそれで楽しみです。
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今回のお話も凄く面白かったです。1巻の時の面白さがそのまま引き継がれていて安心しました。今回は短編ではなく中編の長さになっているので、1巻の時の短編が凝縮されたお話が好きな方には物足りないかも。それにしても、恩田陸先生はこういう不思議系な日常話書くの凄く上手いですよね。ハードカバーでも、文庫本でも、全部揃えたくなってしまいます。
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常野シリーズ第2弾。
前回は短編でしたが今回は長編で個人的には今回の方が良かったです。
不思議な力を持つ常野から来た人々。
主人公は東北の村に住む峰子。
峰子は旧家槇村家の末娘聡子のお話し相手となる。
峰子は生まれつき病弱で学校にも行けず、ずーっとお屋敷での生活を強いられている。
槇村家のお屋敷には色々な人たちが出入りする。
そんなある日、常野から来た家族がやってくる。
前半は峰子と槇村家の家族、そしてそこに出入りする人々とを穏やかに進んでいくが、台風襲来から話は一気に緊迫感が増して聡子が大胆な行動に踏みきる。
物語は二十世紀が始まったばかりの明治時代。
この後、日本はどんどん暗い時代に突入していく。
だから尚更、前半のお話が良き日本の時代という印象が強く感じられた。
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第七章の運命では、表題のとおり聡子様の悲しい運命に涙を禁じえません。
私は聡子様の感性が好きです。
これからも、もっとたくさんのお話の中で出逢いたかったです。
【好きなシーン】
聡子様が椎名と永慶が描いた絵の感想を言う場面
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『光の帝国』の1話目に出てきた春田一家が(名前の漢字は違うけど)、明治時代、世紀の変わり目の東北の農村の旧家にやってくる。
一見小さな農村で完結する物語のようだが、列強に肩を並べようと戦争に進んでいく日本の時代の空気感が繰り返し述べられる。
歴史修正主義が跋扈する今読むと、過去をあったがままに「しまい」、人々が経験したこと、その思いを今生きる人たちに伝えてくれる春田一家が、記憶すること、それを後世に伝えることの大切さを教えているように感じた。
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感想書くため再読。
初めの「光の帝国」より、こっちの方が好きだなあ。
優しい雰囲気が漂う中で、そこに集まる人たちの過去や人柄、想いが明らかになり、そしてそれぞれが変わっていく。んー、なんかいいね。
と思ったら、とんでもない災害。また後味の悪いことに…、と思ったら、聡子様の奮起、強い想いが明らかになり、悲しいながらもポジティブな雰囲気に感動した!
で、(またまた)と思ったら、戦後の混乱状態に時が進み、この対照的な雰囲気の違いが、戦後の大変さを際立たせて、しんみりしてしまう。
最後が少々ポジティブさが欠けた感があるけど、全体的な優しいイメージが(峰子さんのお話口調がお上品で)なんというか安心して読めた。
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できるならこの時代に行ってここに出てくる人々と会ってみたくなった。
常野はあくまでも添えてって感じで、主人公たちの美しい日常が切り取られている。どの人も魅力的で嫌な感じが一つもない。
こんな少女時代を過ごせたら良かったのにな〜と自分のこれまでの人生に少し悲しくなったけど、こうして日記を覗き見るような感じも悪くないと思う。
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なんて、美しい物語だろう。20世紀初頭、日本の農村の、1幕。
1人の少女、峰子の、お屋敷のお嬢様聡子様と過ごした限りある、暖かい日々。
近代化が始まった日本が、その後どんな道をたどったか。それは歴史のとおり。
最後の数ページ、胸が引き裂かれる思いだった。
日本は元々持ち合わせていた美しさも失って、どこへ向かっていくんだろう。
常野物語2作目として、この作品を見たとき。
1作目で続きが気になるなぁと思っていた、「しまう」者たちの役割が明確に描かれていて、満足しました。
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最後の転落からの転落がものすごい。
いつも新しい時代の幕開けは
様々な希望や志を持ってた人たちが
いた訳だけど、終戦した日はどんな気持ちに
なったのだろう、峰子みたいに思った人が
沢山いたんだろうな。
現代で言うと、バブルを経験した人が
リーマンショックも経験したり今の
円安の物価高で打撃受けてる人みたいな感じかな。
常野の人たちが居たら私も聞いてみたい。
日本これから大丈夫か?って。
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優しく暖かく残酷な世界の終わりに。 なんとも言えない読後感。
それは悪い意味ではなく良い意味でなのです。
文章から広がる田舎の風景。おそらく100年ほど前が舞台で、滔々と語られる風景、描写、感情はとても心地よい。
聡子様に涙し、峰子に共感する。
そして不思議な「常野」の一族。
どこか「ポーの一族」を思わせるような感覚もあります。
このシリーズ、一旦ケリはついてるのかもしれませんが再開して欲しいです。
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不思議な力を持った人々、常野シリーズの1つですが、すごくタイトルがしっくりくる小説です。移りゆく時代の中でも聡子様と峰子の関係性が素朴なテイストで描かれている様が、正に地に根を張る蒲公英のようだと思いました。ふんわりとした雰囲気のひらがなのたんぽぽではなく、少し固さが表れる漢字の蒲公英である点も深い意味があるように思えます。
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人の人生をしまうという宿命を背負った人達がいる。この本には、悪人が登場しない。みんな、それぞれの宿命を静かに真摯に生きている。
前編もやのかかったような、不思議な優しい世界だった。人生を理解し、その尊厳を体に記憶していくという事はどんなに辛いだろうと思う。やがて、むかえる死を前にそんな人達がいたら安らかにいけるのだろうか。
以前、悼む人という本を読んだが同じ宿命の人だろうか
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常野物語の第二弾。
前作は短編小説であったが今作は、長編で描かれている。
特異能力をことさらにフューチャーする訳ではなく、粛々と物語るのはこの独特な世界を作り上げている一翼を担っているのだろうな。
常野じゃない子が物語の進行を担っていて、客観的に常野を語る点においても興味深い造りだった。
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常野物語、2作目。
前作は連作短編集だったが、今回は1つの長編だった。
前作の「大きな引き出し」に出てきた春田一家の先祖のお話。
序盤から示唆される終わりの予感と、そこに向けて収束していく物語に引き込まれ、悲しみに囚われる前に一気に読み終えてしまった。
悲しみだけのお話しじゃないのだろうけど悲しい。
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恩田陸氏による常野物語シリーズ第二巻。本シリーズでは、常野と呼ばれる特殊能力を持つ一族の活躍や生き様が描かれます。
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時は新世紀(20世紀…1900年)初頭。とある田舎の村で周囲を取り仕切る槙村家。その槙村家にいる末娘聡子様にお仕えすることになった、中島医師の娘の峰子。この峰子が老いたときに在りし日を回想する形式で、槙村家で起こった超常現象と悲劇について描いたもの。
・・・
常野という特殊能力をもつ方々が出てくるので、まあ超常現象系の事件がクライマックス。
ただね、何ていうんだろう、峰子の聡子様へ女子高的憧れやその聡子様の恋心、槙村家の屋敷に集う風変りな方々の描写など、峰子の青春の一ページを切り取ったかのような描写が太宗を占める印象。
割と淡々と進んでいき、クライマックスが過ぎると途端に現代に戻るのは、まるであり得ない夢を見ていて突然目が覚めたかのようでもありました。
あっさりとしていますが、ホントそんな感じ。まあ青春小説ですね。
・・・
ということで恩田氏の常野物語第二弾でした。
本作は超常系<青春系みたいな感じで、少し肩透かしを食らった印象。個人的には派手に超能力かましてほしかったかな。
第一弾・第二弾と読んだので第三弾もいずれ読みたいと思います。
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常野(とこの)のシリーズの一つ。
恩田陸の作品は、どれも読みやすいのだが、今回、登場人物が多くて、それぞれに抱えているものがあり、それらが少しずつ語られているからなのか、どの人が誰なのかが、ちょっと混乱した。また、思い出が語られることもあり、今、いったい何歳なのか、何年経ったのかがわからなくなった。最終的に、運命の日が来た時、彼らは何歳だったんだろう?
話の始まりから、いずれ物語が戦争に突入するのではないかと感じさせられていたので、もっと、そのあたりが書き込まれるのかと思っていたのだが、そこは少し肩透かし感があった。
とはいえ、全体的に読みやすく、ほのかな哀しみと癒しがあり、良作だった。