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安藤大尉、栗原中尉、そして石原莞爾は、再生プロジェクトの指示のもと、コンピュータ『シンデレラの靴』がつくり出す時間の狭間で「再生」された過去をなぞり歴史を「確定」してゆく作業にとりかかる。だが、3人の胸の内には、異なる決意があった。錯綜する時間、空間、それぞれの思惑。「二・二六事件」という歴史の事実に材をとり、自在な筆致で想像の極限を描くSF長編。
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Posted by ブクログ
全ての伏線が鮮やかに回収された見事なSF。 SFに抵抗感のある人でも充分に楽しめると思います。すごい。
10年ぶりくらいの再読。読んでいくうちに、そうだった!これこれ!と思い起こされ、あぁやっぱりなんて面白い作品なんだ!と最後までノンストップでドキドキワクワクさせられた。最高の一冊。 何のための遡行プロジェクトなのか判明する時の鳥肌といったらないし、これまで割といい子だった石原がまさかの行動により不...続きを読む一致を起こした瞬間もジトりとした恐怖が沸く。 そして懐中連絡機を持ったマツモトの口調や喋り方、こんなにゾクゾクするものはない。置かれた環境が人格を作るのだとまざまざと感じられる。 何といっても目を離せないのは栗原中尉。彼の冴え渡る勘と研ぎ澄まされたカリスマ性には心を奪われてしまう。必死にもがいて巧みに誘導してきた彼の、最後の不一致での叫びに胸を締め付けられないものはいまい。 こんなに面白い物語をこれから初読できる人たちが羨ましくてたまらない。
面白かった。 鉄棒の練習を助けた人、車の暴走などなど最後で何故起きたのか分かる。過去を変える大変さもコミカルに描かれて重い空気も軽くみえる。 この作者と相性はすごくいいのでもっと作品を読んでいきたい。
ひねったアイデアと、その世界観を見事に描き切っている。 細かい説明を上手く回避するテクニック。 当時の日本のリアリティ。なかなか書けるものではない。 ウイルスの蔓延など、今の状況とシンクロしすぎて怖かった。 IF 今の世界も確定の最中だとすると…。
リオデジャネイロ五輪、その閉会式のスクリーンを席巻した日本発のキャラクター達。日本人が胸を張った瞬間。その中央にいたのがドラえもん。ある調査では日本人の認知度97%とされる日本人の共通認識。 もし、仕事で大失敗をした時、あの時、あの瞬間にこうしていたら、あれを見過ごさなかったら、人は誰でもそんな経験...続きを読むはあると思います。そんな時にもう一度あの時間に戻れたら、これもよく思うことです。でも思えばそんな発想がすぐできるのは、ドラえもんを知っているから、タイムマシンを知っているからなのかもしれません。でも同じ日本人でもドラえもん以前の時代の人だったらどうでしょうか。しかもあの時間に戻っても同じことを忠実にやり直さなければならないという条件がつけられてしまったとしたら…。 『俺は一度死んだはずだった。もしかして、これは罰なのだろうか。永遠に同じ時間の中、維新をやり遂げることができずに悶々と朝もやの中を歩き回るという罰。』と、ふと思う安藤大尉。そして、その時間を管理する側にいるアルベルト。『天国へ行くのか、地獄へ行くのかは分からないが、好奇心という最強の武器の前にタブーなんかない。地獄すらも、我々にとっては新しい地平なのかもしれないよ。 』、過ぎた時間をやり直す俳優とその演技がシナリオ通りかを厳格に管理する監督。でもやり直し、やり直しを繰り返す中で本当の歴史とはなんなのだろうかという疑問が浮かび上がってくるのは必然とも言えます。 思えば歴史とは、後世の時代の人がその時、その瞬間に起こったこと、起こっていたことを結果論で捉えて、誰が正しいかったのか、誰が間違っていたのかを評論家のように判断します。この二・二六事件なども、その後の第二次世界大戦、そしてその後に続くこの国の歴史を総合的に判断して語られます。でもあの時代に生き、悩み、踠き苦しんだ人たちも、その時の自分たちの前にあるものと真剣に対峙し、そして次に来る歴史を思い最善と思える判断をし、行動していったのだと思います。そういう意味では後世の人間の過去の振り返りは実に冷めていて冷たいものだとも言えます。ただし、その我々も後世から判断される身。一生懸命考えていても、行動していても果たして後世どう判断されるかなんて分かりはしません。 何が正しいのか、何が正義なのか、確かに歴史に我々が学ぶ点は数多だと思いました。 下巻は上巻よりページ数が少ないこともあって、最初から物語は怒涛の展開を見せます。上巻のどこか緩んだ雰囲気は全く消え去り、とてもシリアスな展開。そこに恩田さんが埋め込む伏線の数々。 時間遡行を題材にした作品に期待されるあの展開、この展開もきちんと織り込まれ、作品は一段上の次元で結末を迎えます。恩田さんらしくない丁寧な結末、伏線がぞくぞくするほどに回収されていく展開。そして、これで終わりと思われたそのさらに後まで、最後のページまで魅せてくれる えええっ、そうだったの?というSFの結末。 恩田さんが描くSFの世界。過去の話なのに未来の話のようでもある。我々に続くこの国のことなのにどこか他の国のことのようでもある。 少し歴史に知識が増えるとともに、とても面白い世界観を見ることのできた作品でした。
第二次世界大戦の頃の話なので、軍隊とか軍人が沢山出てきて難しいと言うのが読み始めの印象。 やけどすぐにストーリーに入り込めて、普通の小説として面白かった! 3回読み直しました!
わたしは好きですよ 恩田氏の著作の中でも大好きな作品です。 人類のあまりの傲慢さ・・歴史に介入せんとする姿勢 まあ人間的には「黒歴史」は潰したいというの理解できますが。 実際に当の「2.26事件」を生き抜いた人々に対する 冒涜以外の何者でもないでしょう。 頼むから「死なせてくれ」そういうの辛いですよ...続きを読むね。
間違いなくSFなのだけれど、よくよく考えると、これって一種の歴史観を示してもいるのかもしれない。 私がそれを感じるのは、「登場人物たちは『正史』通りに確定しようとしている」という部分。 つまり、「正史」って、「勝者の記した『正しい史実』」だから。 恩田先生がどこまで「正史」に意味を込めたかは分からな...続きを読むいのだけれど、この話のオチ(あまりに衝撃的な展開)を思い出すに、「歴史」ではなく「正史」としたのは、やっぱりそういう考え方が根っこにあってのものな気がする。
こんな結末だったっけ(°_°)fragmentがこんな形で伏線になっていたとは。 結末をわかった上で“歴史を再生”するのはどれほどもどかしく苦しいものなんだろう。歴史が変われば違った未来があったかもしれないと、安藤も栗原も石原も感じていたんじゃないかなぁ。特に安藤に感情移入してしまった。
正しい歴史に導く為に何回も二二六事件が繰り返され、俄然、面白さが増してます。 物語の間にあるインタールードも最後に繋がっていきます。 まさか、上巻の子供が逆上がりの練習している話がここに繋がるのかなーと納得。 パラレルワールド?を上手く描いた作品だと思います。 ラストもなんか、映画の美しいシー...続きを読むンのようで良かったです♪
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