あらすじ
あたしは主人公にはなれない――。関根夏はそう思っていた。だが半年前の卒業式、夏はテニス部の先輩・志田から、秘密の使命を授かった。高校で代々語り継がれる〈サヨコ〉伝説に関わる使命を……。少女の一瞬のときめきを描く『六番目の小夜子』の番外篇(表題作)、『夜のピクニック』の前日譚「ピクニックの準備」など全10話。恩田ワールドの魅力を凝縮したあまりにも贅沢な短篇玉手箱。
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『ノスタルジア』では、しっかり涙が溢れました。
僕にとって“懐かしさ”とは。読み終えた今日は10月19日で、僕の中で10月といえば、かつてはハゼ釣りの時期だった。以前は…震災の前は、毎年この季節になると、お気に入りだった漁港で釣り糸を垂れたものです。秋雨前線が解消して、いわゆる秋晴れの、端切れのような雲が並んだ空を見上げては、当時の空気感が、まさしく昨日のことのように思い出されるものの、お気に入りだった漁港の岸壁が、震災以降は釣り禁止になってしまったことが惜しくて惜しくてたまらない。当時とは何もかも変わってしまったけれど“懐かしい”と思うことができる何事かが、今でも僕の中に残っている、確かに、あのとき体験した空気感が実際に存在していたという事実が。僕自身が、自ら体験したことは、時の作用で“懐かしさ”に変化した。体験しなければ、その事実が存在していなかったら“懐かしさ”は生まれない。その事実の存在が、すでに消えてしまっていても、むしろ消えてしまっているからこその“懐かしさ”とは、つまりそういうことなのだなあ、と思い至ることができた。
恩田陸さんの物語としては、硬質な印象の一冊だった。すべての短編に読者としての手ごたえを感じた。
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あ、これあの話のことだーとか、これはあっちの話の前の話だーとかあって楽しかった。ただキッチリ終わらない話があって、んんんってなって、もどかしいところがあったりした。色々なシリーズを読んでる人は楽しさが増えると思います。
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これぞまさに恩田陸さんの作品。
語りすぎないところが良い。想像力が試される。
水野理瀬、夜のピクニック、六番目の小夜子が大好きなのでそれぞれの番外編が読めて嬉しかった。
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よく分からないのもあったけど、読んでいて引き込まれる作品ばかりだった。個人的には図書室の海がお気に入り。主人公は、私は主人公になれない人生なんだよねってカッコつけてるけど、自分からしたらめちゃくちゃ羨ましい青春送ってるように見えた。
中学高校時代を思い出して、心が締め付けられる感じを思い出させてくれる。
懐かしさだけが、僕たちの存在を証明する手がかりなのだから
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色々な味のある短編集。 やっぱり「ピクニックの準備」が大好き。 なかなか理解できないものや好みではないものもあったけども。
「睡蓮」は理瀬が出てくるので好き。亘の彼女に嫉妬するけど、それはそんな必要のない相手。父親との会話がぎこちない。まだ後継者としての自覚をする前の理瀬。 「春よ、こい」「国境の南」「図書室の海」が好き。
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短編10編を集めた本ですが、他の長編作品のスピン・オフを多く含んでいます。
「睡蓮」は、『麦の海に沈む果実』(講談社)に登場する水野理瀬の幼年時代を描いたもの。「ピクニックの準備」は、『夜のピクニック』(新潮文庫)の予告編。「図書室の海」は、『六番目の小夜子』(新潮文庫)の番外編になっています。また、「イサオ・オサリヴァンを捜して」は、大長編SF『グリーンスリーブス』の予告編ということですが、本編はまだ刊行されておらず、もう一つのスピン・オフ作品である『夜の底は柔らかな幻』上下巻(文芸春秋)が先に刊行されています。
卒業の季節に何度もくり返し出会うニ人を描いた「春よ、こい」と、旅する城塞都市ココロコを描いた「オデュッセイア」が、とくに印象的でした。喫茶店で、客に出すコーヒーに砒素を入れ続けていたマスターとウェイトレスについての物語である「国境の南」は、幻想色が濃厚に立ち込めたサスペンス小説で、いかにも著者らしい作品だと感じました。この著者は、短編のほうがずっと作品が多いような気がします。
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再読4回目。
短編集が好きである。が、当たり外れがあるのもまた、短編集である。これはほぼ当たりの1冊。怪談・ホラー寄りなところがまた宜し。変なファンタジー、というか。
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2023.11.15 再読
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『六番目の小夜子』の番外編『図書室の海』
『夜のピクニック』の前夜のこと『ピクニックの準備』
『麦の海に沈む果実』の主人公理瀬の幼少時代を描いた『睡蓮』。
これは、理瀬やその周辺の謎がまた解けて読み応えがあった。
など、全10話の短編集。。。
恩田ワールドを存分に楽しめます。
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三月シリーズの睡蓮が入ってる。
理瀬、源氏物語って知ってる?
百合の骨の番外編て感じかな。
あと、ココロコ好き。
いのちのパレードに収録されてる、走り続けろ〜(?)の奴と似てる感じがする。
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短編集。とりあえず全部大好きな深海のようで薄氷を踏むような雰囲気で好き。昔読んでよく分からんってなったのを、再読したらめちゃくちゃ好みだった。はっきり書かれてないのが昔ダメやったんやろなぁ、そこを漸く読み取れるようになったのか。
「春よ、こい」
春を目指して巻き戻る少女たちの女性たちの話。タイムリープ感と海底のようなしっとりじっとりした感じが大変好み。
「茶色の小壜」
会社の同僚が血を見て笑っている、それが気になり調べる女性の話。同僚の女性を同じように気になってたのに、いつ足を掴まれていたのか。はっきりと明記できない怪しさが好き。
「イサオ・オサリヴァンを捜して」
イサオのことを知っている人たちに話を聞く話。沼みたいに入ったら抜け出せない。この続きが読みたい。
「睡蓮」
理瀬シリーズ短編。理瀬が学園に行く前、亘と稔と住んでいて嫉妬を芽生えさせる話。亘の連れてきた女の子に嫉妬するの、亘のこと好きなんやろな、どういう種類かはさておき。そして亘の彼女を誘惑した男、理瀬の父親では?理瀬のこと好きな、親バカなのか。
「ある映画の記憶」
ふと思い出した映画を見て、古い記憶が呼び起こされる話。あの日、海で死んだ叔母は、なぜ死んだのだろうか。
「ピクニックの準備」
夜のピクニック前日譚。夜のピクニック読みたくなる。ここから始まったのか。
「国境の南」
喫茶店で人気だった店員は、水にヒ素を入れていた。そして同じ所で新たにオープンした店は、かつてその店の店長がまた始めた店だった。怖い、ゾワゾワする、何てフィクションって言い切れないすぐそばでありそうな様がもう。
「オデュッセイア」
ココロコ、という大陸が意思を持ち歩き、泳ぎ、背に人を住まわせ進む話。世界の歴史かのようで、最後に救いがあるのがまだこの世界を諦めていないようで良い。
「図書室の海」
六番目の小夜子の前日譚。ここから本編か、めっちゃ本編読み直したい。小夜子の代じゃなかったら、こんな風なのかもね。
「ノスタルジア」
懐かしい記憶、というお題から天敵の女から逃れられない話になる話。
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スピンオフものを含む短編集。
一昔前の作品であり、著者の原点とも言えるものとなっていると思う。表題の『図書室の海』がおすすめである。心の機微が切り取られている。
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初、恩田陸。
短編集を読む時、満足を得られるかどうかの方針は、収録されている短編の半数以上に満足すれば満足、という場合もあるし、ほとんどがお眼鏡にかなわなくともある突出した一編があることで満足、終わりよければ全て満足、勿論、どれをとっても満足、ということもあるだろう。
今回でいうと、収録された作品のほとんどが複雑怪奇で説明不足の感を否めない。なんじゃこりゃって感じだったのが正直なところ。しかしながら、あとがきまで読むとそれが覆される。各作品、書き下ろしのものは別としてそれぞれに原案や原作、恩田作品の前日譚、といった役割があった。つまり、この短編集のほとんどが導入であり下地なのだということ。
そして、解説にて「初めて恩田陸を読んだ読者に向けて」の解説があったが、そこで更に合点がいった。つまり「これは始まりに過ぎない」のであって、ここで判断するのは時期尚早ということみたいだ。
と、いった前提を踏まえた上でこの一冊に関して感じることとすれば、それでもよくわからぬ、難しいということだ。それぞれの原点にあたればよりよく理解できるのだろう。恩田作品初の自分にとって考えついたのは掴みどころがないなという所感。どの作品も登場人物も世界観も時代も場所も違うので、一体何を読んでいるのかわからぬといったところ。
とりあえず短編集もう一冊買ってあるので、時期を隔てて取り組むこととする。
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他の恩田陸さんの著書のスピンオフや前日談の様な内容があるので、ある程度他の作品も読んだ上で本作を読むと面白いかも
イヤミスのような、最後にぞくっとくる短編もあって面白かった
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久しぶりの再読。色んな小説のスピンオフを合わせたような短編集なので、これだけ読むとよくわからないかも。六番目の小夜子を読み返したくなりました。
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短編集というものをあまり読まないからスパンスパンと読み進められるのが新鮮だった。
でも自分の読解力の問題で一つ一つの話を読み解いて楽しむって流れができなかった。
なんなら読み取ろうとしすぎて「この話ってつまりどういうこと?ちょっと読んでみてよ」って人に聞いた。(茶色の小瓶)
小夜子や夜のピクニックの前日譚は胸アツ!
Posted by ブクログ
以前夜のピクニックを読んだので、その予告編が書かれているこの本を読んだ。
ファンタジー要素のある話が多くて展開が読みにくいからか、読んでいるのが面白かった。
お気に入りは、「国境の南」「図書室の海」
Posted by ブクログ
恩田陸さんの短編集になります。
短編集といっても「夜のピクニック」「六番目の小夜子」そして「理瀬シリーズ」の前日談やスピンオフなど、初めて読んでもどこかに知っている人物が現れるという面白い感覚で読みました。
オデュッセイアが内容ではハマり、こういうファンタジー系の描きぶりは流石です。
茶色の小壜もどこかピリッと不気味さを出すのもほんとに上手だと思いますね。
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「夜のピクニック」の予告編「ピクニックの準備」、
「六番目の小夜子」の番外編「図書室の海」ほか、代表的な恩田作品の別編がまとめられた短編集。
ホラーな雰囲気満載の一冊。
けれど基本はミステリーだから、私でも読めるくらいのホラー度合い。知っている登場人物たちに会えて、なんだか懐かしかった。「夜のピクニック」、買いたくなってしまった。
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恩田陸の短編集
わりとSF・ミステリ系が多い印象
「春よ、こい」香織と和恵の時間が繰り返す
「茶色の小瓶」OLの関谷俊子はあることがきっかけで同僚の三保典子が気になる
「イサオ・オサリヴァンを探して」ベトナム戦争らしき戦場を舞台にした短編
「睡蓮」利瀬と血のつながらない兄弟の亘と稔
「ある映画の記憶」映画『青幻記』をモチーフにしたミステリ
「ピクニックの準備」恩田陸で一番好きな「夜のピクニック」の前日譚
「国境の南」喫茶店のウエイトレスが行ってきたささやかだけど恐ろしい行為
「オデュセイア」ファンタジー 面白かった
「図書室の海」六番目の小夜子のスピンオフ的作品
「ノスタルジア」最初の「春よ、こい」と少し似てる
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番外編を目当てに買ったが、それ以外の方が引き込まれた。
番外編で個人的に1番よかったのは表題作の図書室の海かなー。
十六番目のサヨコをまた読み返したくなり、また映像を見たくなった!
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本の名前に引っ張られてか、学生の時の図書室で本をつまみ読みしてる気分になった。物によっては映画の予告のような気分になるものもあった。
短編の中でここまで、物語をイメージし読み手の中で想像を膨らませていくことができるのは面白いなと感じた。
個人的な感想だが、恩田陸の自分の中で想像を膨らませていく感覚を短編でも味わえたことが嬉しかった。
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恩田さんの10から成る短篇集。
恩田さんの作品はそんなに読んだ事無いので、広く浅く作者のことを知るには良いのではないでしょうか。
ガッツリ一つの作品を読みたい自分としては、少し一つ一つが短すぎたような気がしました。短編だから当たり前ですけど。本の読み方の好みですね。
結構ミステリータッチな作品も書く方だったんすね。
すごく独特な感性が盛り込まれてて、どれもすごく考えさせられながら読みました。
特に思春期の何か、どこの地に足を付けていいかもがくような、そんな微妙な心情を興味深く描いている「図書室の海」が印象的ですね。
Posted by ブクログ
恩田陸さんの短編集。表題作から「夜のピクニック」前日談などが収録されている。私自身恩田陸さんの小説をあまり読んだこと無かったが、サスペンス調だったり、日常系だったり、引き込まれていく感じがした。
Posted by ブクログ
いわゆる恩田陸ワールド満載の一冊。短編集。
今までに書かれた長編のなごり、きれはし、昇華とこれから書かれるだろう物語の暗示、予感だろう。
それらしき思い当たりがあるのがある。私がまだ読んでいないのもは分からないし、読んだのもぼやっとしているが、これから巡り会う楽しみがある。
不思議だな、恩田陸の作品は「いつでも、どこでもない」場所で起きる事象。東北の一地方のような気がするが、雰囲気がモダンでしゃれていて、いつか行ったような土地、過ごしたような時間、会ったような人々が登場する。宮沢賢治もそうだった、やはり東北系。
以下の一口感想は、私の思い違いもあるかも。
「春よ、こい」…古今和歌集紀貫之の歌が懐かしい。時間旅行のだんだら模様。
「茶色の小壜」…「木曜組曲」系っぽい。女の嫉妬?
「イサオ・オサリヴァンを捜して」…「ライオンハート」系。
「睡蓮」…これはあきらかに「三月は深き紅...」シリーズ。
「ある映画の記憶」…恩田さんには珍しく、松本清張を彷彿させた。私好きだ。
「ピクニックの準備」…高校時代の長距離歩行訓練行事。昔から歩けるところがある田舎に多い学校行事。都会では無理。だから郷愁を誘う。と思っていたらなんだか事件が…続きが読みたい。
「国境の南」…驚愕の結末。うっ。
「オデュッセイア」…人間のはじまりは宇宙からやってきた?移動する空想的な物体。
「図書室の海」…「六番目の小夜子」に決ってる。
「ノスタルジア」…突拍子もないが源氏物語の「雨夜の品定め」を思い出した。
以上恩田さんの「あとがき」を読む前に感想を書いた。「あとがき」を読んで納得。さらに解説を読んだら「予告編」とあった。うまいことをいう。
プロモーション本という体裁。ファンには垂涎(すいえん)物。
ところで恩田さんの本「きょとん」とするとか、「デジャ・ヴ」という言葉が多く登場するね。
Posted by ブクログ
大学時代にも読んだような気がしますがもう一度読んでみました。
今年は珍しく短編をよく読んでます。
考えながら読まないとよくわからない話が多かったですが面白かったです。
もう一度『六番目の小夜子』と『夜のピクニック』を読もうと思います。
Posted by ブクログ
再読しました。
著者後書にもあるように、デビュー10周年にして初のノンシリーズの短編集。
10話ともそれぞれ全く異なる背景の作品が集まっていますが
どこかぞくっとくるような、鳥肌のたつ終わり方をするものが多いです。
そしてちょっと難解で、自分の想像次第でいろんな方向に膨らませられる余韻を残させる作品ばかりです。
というのもこの10篇のうちの何話かは他の作品の番外編であったり、本編の前の予告編であったりするからです。
「睡蓮」は「麦の海に沈む果実」の理瀬の幼年時代。
「ピクニックの準備」は「夜のピクニック」の前夜が描かれている。
「図書室の海」、これは「六番目の小夜子」の番外編で、関根秋の姉、夏の物語。
やはりこの3篇は読み応えがあります。
そういうこともあって、やはり他の恩田作品を一通り読んだ後に手に取る方がいいような気もしました。
そしてこの本を読むとまた本編を手に取りたくなる(笑)。
そんな感じです。
個人的には「春よ、こい」が好きです。