恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
恩田陸、何書いてもおもしろ作家ですごい。物語星からきた小説星人?ちゃんと地に足のついた、描写もディティールもしっかりしている文章なのに最終的にどこへ連れて行かれるのかまるで想像がつかなくて、それがお、おもしれー…すごー…と圧倒されてしまう。
自分で選択したはずの行動が実は巧妙に仕組まれていることがわかったときの恐怖を寄る辺のなさ、他人どころか自分のことすらも信じきれなくなってしまう追い込まれ具合。
物語のはじめから不穏な空気感に満ちてて、それがどんどんふくらんで、いつ”パン!”って弾けてしまうんだろうかとそろそろと読みすすめていたのだけど、それが弾けるというよりはぷしゅーと空気が徐々に抜けてい -
購入済み
つまみぐいにアンソロ
母がフォローしている恩田陸を少し読んでみようと思ったのですがこういう方向性は求めてなかったなあ…という感じ。ファンタジーはちょっと。
しかし高田さんの作品だけかなり刺さったのでシリーズ読みたくなりました。こういうのと出会えるから良いのよね。 -
Posted by ブクログ
『ノスタルジア』では、しっかり涙が溢れました。
僕にとって“懐かしさ”とは。読み終えた今日は10月19日で、僕の中で10月といえば、かつてはハゼ釣りの時期だった。以前は…震災の前は、毎年この季節になると、お気に入りだった漁港で釣り糸を垂れたものです。秋雨前線が解消して、いわゆる秋晴れの、端切れのような雲が並んだ空を見上げては、当時の空気感が、まさしく昨日のことのように思い出されるものの、お気に入りだった漁港の岸壁が、震災以降は釣り禁止になってしまったことが惜しくて惜しくてたまらない。当時とは何もかも変わってしまったけれど“懐かしい”と思うことができる何事かが、今でも僕の中に残っている、確かに、 -
Posted by ブクログ
作者初期の作品。
本書と同じ「三月は深き紅の淵を」という題名の架空の本を巡る4章からなる。
架空の「三月」は「黒と茶の幻想」、「冬の湖」、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、「鳩笛」の4章からなり、作者不明、数十部限定的に私版本として出され、譲渡禁止、貸与は1人にのみ1日だけという制限がついている。
本書の4章はそれぞれ、酔狂な老人たちの「三月」を巡る謎解き、「三月」の作者を追う二人の女性編集者の旅路、自殺した異母高校生姉妹の謎を探る編集者志望の女子大生、「三月」を書こうとする作者のの思索、だが、それぞれの関連はあっても曖昧で「三月」の正解(というものがあれば)は示されない。
第1章 -
Posted by ブクログ
一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたという事件がずっと残っていた”私”がそのことを調べて小説にしていくというところから始まる、フィクションとノンフィクションパートが交互にくる構成の1冊
なんというか恩田陸さんのノンフィクション部分が、ある事件をもとにフィクションを制作するということでその女性二人の想像上の人生に呑み込まれそうな感じもあり、そのあたりの境目があやふやになりそうで、何度か今どのパート読んでるっけ?とページをめくりかえした
その感じが自分もこの「灰の劇場」の世界に気がついたら呑まれている感じもして、今までにない読書体験だった
また恩田陸さん自身もこの女性たちも40 -
Posted by ブクログ
大学時代の友人グループ男女4人が約20年ぶりに再会し、屋久島を旅する。
利枝子と蒔生の破局の原因となった梶原憂理が死んだとの知らせをきっかけに、4人は当時の関係や事実を反芻してゆく。
四十近くになった作者が同年代の来し方を振り返るために書いた、記念碑的作品のように思える。
「麦の海に沈む果実」の憂理を敢えて登場させ主人公たちに絡ませた意図は明らかではないが、作者に特別な思い入れがあったのだろうか。
憂理でなくても物語は成立するように思う。
既読者からすれば、さらなる奥行きを感じはするが。
描かれる屋久島の自然が圧倒的で、確かにこの中にどっぷりと数日過ごせば、過去のわだかまりも含めて俗世の