あらすじ
本と映画と音楽……それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。「大学」という特別な空間を初めて著者が描いた、青春小説決定版!単行本未収録・本篇のスピンオフ「糾える縄のごとく」&特別対談収録。
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〈不思議だ。
こういうのって、決して特別なシーンじゃないんだね。
他愛のない、ほんのワンショット。夕暮れ時の、小さな川に架けられた石橋が、真っ赤な水面に黒い影を落としてる。〉
青春小説を愛おしくを感じるのはどんな時だろう、と考えてみる。たぶんひとによって答えは様々だとは思うのですが、個人的には、〈派手な事件〉や〈特別な事柄〉よりも、〈とりとめのない思考〉に対して感じることのほうが多いように思いました。本書は、学生時代のこと、社会のこと、小説のこと、映画のこと、音楽のこと、高校時代の同級生だった大学生三人のまなざしから、それらに関する〈とりとめのない思考〉が綴られていて、読み進めるうちに、どんどん愛おしさが増してくる、そんな作品でした。
もちろん本書はフィクションなので、作家自身の声と同一視してはいけない、と承知したうえで、作中に挟み込まれる〈小説を書く〉ことに対する問い掛けも印象的でした。
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特に何も起きないけど心地よかった。
社会人になった3人の登場人物が、大学時代をモノローグで思い出す。
3人の大学時代の絡みは大人になった今振り返ると、あったようななかったような曖昧なものだった。
自分に残る人との思い出はなんだろうか?
と10年後の自分へ想いを馳せてみた。
どの関係のどんな場面が印象に残るとかわかんないので、考えるのをやめた。
今は、心をごまかさずに人と過ごそうと思う。
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「自意識過剰なのにコンプレックスの塊で、やっとプライバシーを手に入れたのに人恋しく、何者かになりたくてたまらないのに、足を踏み出すのは恐ろしかった。」
「愛のために何もしなかった。だから、いけなかったんです。」
女性的「気まぐれで、感情的で、強烈な自尊心があるくせに非常に小心者で、とても嫉妬深い上に異常なほど猜疑心が強いのである。」
「未来は決して劇的なものでも新鮮なものでもなく、こんなふうにだらだらと変わりばえのしないものかもしれない。」
オズマバンドと先輩早瀬さんとがセッションする場面、頭の中で音楽が流れてきてにやにやした。
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ザキザキトリオ。
文学、音楽、映画、
高校同級生の大学での話。
地元の友達との関係。
変わりたくないけど変わってしまうもの。
大学の頃はその狭間で悶々としてたのを思い出した。
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高校時代に関わりのあった綾音・衛・箱崎一 の名字にザキがつくザキザキコンビ。
それぞれが昔を回顧する群像劇。高一で三人組でフィールドワークのようなことをし、田舎で昼間人がいないことが記憶に残っていたり、それぞれの大学時代の思い出が語られている。高校時代に出会い、関わりはあるが関わりがない人生の進行が描かれている。綾音は本、衛はベース、一は映画を意識の差はあれど大学で取り組んでいた。
一人が伸ばした興味の先に、他人の興味がぶつかっている、関わりが拡散から収束している美しさ・偶然の運命に心が動かされた。過去に同じ体験をした人たちがそれぞれの人生を歩んでいく風景が心にぐっと来た。
自分にこのように時間をかけた体験として思い出せるものがあるだろうかと考えた。ゲームをした思い出が大半で、何かを成し遂げた思い出は大学にはない。これから人生を振り返ったときに、あれをやったことが自分の今につながっていると感慨深く思えるように生きていかなければと感じさせてくれる物語だった。
評価4
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同じ高校から同じ大学に進んだ3人の男女それぞれの学生生活。
高校時代は仲良しトリオだったのに、いつの間にか疎遠になっている。決定的な何かが起きたわけでもなく、ただ何となく。というのが、いかにもありそうな話。
彼らの間に何かがあったという話ではなく、何もなかった。という物語でもある。
もう少し何とか出来たのではないか?こんな事もしたかったのに出来なかった。
振り返ってみると、学生時代というものは漫然と過ごしてしまいがちで、今思えば後悔ばかり。
「大学生というのはあまり停車駅のない長距離列車に乗っているようなもの」という例えが、じわじわと読み手の胸を抉る。
恩田作品にしては珍しく、自伝的な要素の強い、半分エッセイみたいな、お話でした。
ケータイのない時代。1980年代の大学生活の雰囲気が、まざまざと蘇ってくるのはさすが。
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歩道橋シネマ読んでから、なんとなく読み返したくなって久しぶりに再読
谷内六郎がここにいた
第一部から第三部の大学生パートは、まだ読むには少し生々しくて
自分の大学時代を冷静に、客観的に見つめ直す度量がまだ無い
またしばらく時間を置いてから読みたい
糾える縄の如しは何故か水沢めぐみの絵で脳内再生された
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こんなに自伝的要素の強い恩田陸作品は初めてだったので、読み始めて純粋にびっくりした。(というか、そもそも恩田さんの一人称が珍しいので綾音の章はその一人称っぷりにびっくりした)
しかし衛の章は完璧な三人称、一の章は主観ごっちゃの人称になっていて、なるほどな、と。キャラの物の見方がそのまま表れているのだろうな。
最後の章の語りをもっとも俯瞰的な人物にするところや、綾音と衛が似た者同士で付き合うところなど、『黒と茶の幻想』を思い出した。やはり衛の章が一番面白かった。
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あまりにも普通すぎる話なのでビックリした。 が、最後まで読んでみて納得。 当たり前のように過ぎた日々にだって幸せはある。そう思えた。 個人的には、箱崎がインタビュー中に学生時代の三人での日々を思い出している場面が素敵だと感じました。
2010/01/12
Posted by ブクログ
同じ高校から同じ大学に進学した三人の物語。
ベースを弾くのが上手い男の子、
映画が好きな男の子、
本を読むのが好きな女の子。
第1部の綾音の物語を読んだ時、
「これって恩田さん自身の事?」
と疑惑が沸いたが、巻末の対談で
「私にしては珍しく自伝的な作品」
と述べている。
そういえば恩田陸の作品には高校生が出てくるものは多いが、大学生を主人公にした作品はあまり見かけない‥‥いや、なかったかもしれない。そういう意味では珍しいが、恩田陸カラーはしっかり堪能できる、さわやかな青春小説だ。
Posted by ブクログ
早稲田の文化祭、どんな感じなのだろう。
同じ高校でも、そんなに会わないものなのだろうか。
携帯がラインが無いと、確かに気軽に約束はとりつけられないが。
3人で観に行った映画のタイトルが『禍福はあざなえる縄のごとし』
3人で川を覗き込んでいた時の彼のセリフが「糾える縄のごとく」
無知によりタイトルスルーして、何て映画だろう?何て言ったのだろう??と疑問に思っていた。。。
教養が欲しい。。。
『あいつと私』小説
『陽の当たる場所』映画
『青い花』は何なのだろう。。。
GW前とか 入学や入社、新たな時期から、少し経過した、でも
夏真っ盛りでも梅雨でもない今の時期に読み返したい作品だな、と。
楡崎綾音氏の彼氏への回想がラストだけ、というのが
次章の戸崎衛氏とのギャップだなぁ。と。
彼女は作家になることへの思いに一点集中。
戸崎氏は割と時系列順に、音楽を絡めての回想。
映画監督となった箱崎一氏が意外にも心情面が多く描かれている。
大学生の実態の無さ
長距離電車に乗っているよう
もやもやとした不確かな感情を、こうも鮮やかに描ける作者には本当に、毎回脱帽する。。。
過ぎ去った身としては、青春真っ盛りの大学生に読んでもらって、もっと謳歌して欲しいとも思ってしまうが
大学を特に何もないまま卒業して今普通に日常をこなしている社会人だからこそ、分かる部分もあるのかなぁ、と。
対談は、類友じゃないけれど、活躍している人の友人は、活躍しているのだなぁ、と。
ジャズ、今でさえ敷居が高く感じるが、学生時代から好きな人もいるのだよなぁ、と。
同作家の作品で無人島に一つだけ持ち込めるとしたら辞書を持ち込んで、物語を書く、という女性が登場するのだが
生活をより豊かにするのはモノではなく、個人の感性、行動なのだろう、とフットワークの重くなった最近切に思う。。
Posted by ブクログ
日常というか、どんなに世代がかわっても変わらない普遍的なものっていうか…
特別なようで、特別じゃない。
そんな時代が、確かに私にもあったような気がしないでもない(笑)
ふと自分の青春時代を重ねて思い出す。そんな懐かしくなる作品。
Posted by ブクログ
「大学」という特別な空間の中で、男女3人の青春を描いたそれぞれの物語。
初めはエッセイかと思ったが、ちゃんと小説だった。
でも明らかに最初の物語は作者の大学時代を綴ったモノであろうと呼んでいたら、後書きでその通りであったことがわかる。
自分も大学を出ているが、確かに学生と呼ぶには小中高とは全く違う世界が広がっている場所だったと改めて思い出す。
物語の3人は同じ高校に通い、同じ大学に通い、ある二人は幼馴染であり、ある二人は付き合っていたり、それぞれ関わりがあるにもかかわらず、まるでそれぞれがパラレルワールドを歩んでいるかのように、別の世界別の時間の描かれ方が、大学という特別な空間をより浮き彫りにしているような気がする。
また、恐らく世代的にそんなに離れていないので、読んでいて懐かしさも後押ししてくれる。
この淡々とした空気感好きだなぁ。
Posted by ブクログ
再読。半自伝的小説。小説、音楽、映画という分野の男女3人すべてに恩田さんの痕跡がある。時代感もばっちり取り込み、あの時代の空気感を共有できるのは、同世代作家さんを読む醍醐味。これだけ綿密にキャラクターと背景を書き込みながら、愛憎もつれる恋愛劇みたいな陳腐なお話にしないのが恩田さんらいしい。専門の学問と無関係のクラブ活動で、多くのプロを排出する大学って、こんな雰囲気なんですね。大学ってフシギなところだ。
Posted by ブクログ
冒頭───
狭かった。学生時代は狭かった。
広いところに出たはずなのに、なんだかとても窮屈だった。
馬鹿だった。学生時代のあたしは本当に馬鹿だった。
おカネもなかったし、ついでに言うと色気もなかった。
二度とあんな時代には戻りたくはない。
周りの女友達も、もう学生なんてまっぴらだ、という子がほとんどだ。
けれど、男の子たちは違うらしい。
恩田陸の私的エッセイ風(一部のみ)連作短編集。
学生時代の回想をもとに三人の視点で書かれている。
第一部「あいつと私」は自分。
第二部「青い花」はジャズ研の戸崎。
第三部「陽の当たる場所」はシネマ研究会の箱崎。
男は学生時代を懐かしそうに振り返る。
「ああ、あの頃に戻りたいなあ」と。
私もそうだ。
一生の中であんな自由な時期はなかった。
未来は明るい希望で満ち溢れているように漠然と思っていた。
その希望は、卒業、就職活動が近づくにつれ、少しずつ薄まっていくことになるのだが------。
ことさら凄いエピソードやストーリーがあるわけではないのだが、何故か心に染み入る物語。
恩田陸はファンタジー路線の作品で有名だが、本屋大賞受賞作「夜のピクニック」のような、リアリティのある爽やかな作品のほうが私は好きだ。
こんな作品をもっと書いてもらいたいものだ。
Posted by ブクログ
自伝的とあり全部が恩田陸自身なのかと思ったらそうではなさそうだった。
で3人を中心に物語が進み最後に高校の出逢った頃に話が戻る展開に面白くそして1番最後の行でカチッと音がするような歯車が合う音が聞こえた。
恩田ワールドにハマると音が聞こえるような気がするのさ私だけだろうか。
Posted by ブクログ
3人の崎の話。一人一人の物語に、他の2人がたまにでてくる。
1人目は、恩田さん自身に近いように感じて、大学生活を聞くような気持ちでした。
2人目は、音楽び一生懸命な人で、メンバー全員レギュラーになれてよかったなと。
3人目では、映画監督で、インタビュアーへの心理や仕事に対する考え事は、面白かった。
どれも、人物に対しての分析が、鋭く凄かった!
Posted by ブクログ
物語が進むにつれてふわふわと頼りなくおぼろげになって、そのまま終わってしまう。三人の思い出が重なり合う瞬間が、ハコちゃんのいう「とてもよかった心象風景を描いた短い映画」にかけられているのだろうか?ある意味不完全燃焼なのだけれど、前半の二作は初々しい学生時代の物語として楽しく読めた。
Posted by ブクログ
たぶん、5月連休明けか、中旬くらいに読んだんだと思う。
読んでいて、ふと、思った。
これって、もしかして、恩田陸版「なんとなく、クリスタル」?って(爆)
といっても、「なんとなく、クリスタル」は、主人公(だったか?)の女性がパイドパイパーハウスに新譜を見に行こうか迷うシーンしか記憶にないwこともあり、内容ではなくて。
この「ブラザー・サン シスター・ムーン」に出てくる3人の日常の雰囲気が、なんとなーく、“なんとなく、クリスタル”だなーって。
ていうか、それこそ「なんとなく、クリスタル」なんて題名にした方が、この本の内容に合っている気がするのだ。
いや、別に、「なんとなく、クリスタル」にこだわっているわけではなく、「ブリリアントな午後」でも、「たまらなく、アーベイン(だっけ?)」でもいいんだけどさw
自分としては、これを書くにあたって、著者がモチーフにしたのかもしれない、その「ブラザー・サン シスター・ムーン」という映画を知らないこともあり、(話の後、著者と登場人物のモデルとなった当時のジャズのスタープレイヤーとの対談がついていることも含めて)なんとなーくクリスタルな話?、だなぁーって思った。
それはそれとして、ファンとしては、これって、著者はどういう意図で書いたんだろう?というのが気になるわけだ。
ま、意図というか、どんな風に書いたというか(たまたまネタがなかっただけwというのも含めて)。
3つの章+予告編ヴァージョンで構成されているこの話を、著者はどの順番で書いたのだろう?と、なんだかそこが妙に気になるのだ。
ファンとしてはw
とはいうものの、著者はジャズをやってただけあって、インプロビゼーションでノリまくるのはいいんだけど、
ノリまくりすぎちゃって、元の演奏に戻り損ねることが多々ある(というか、常習?)からなーw
(ビッグバンドにインプロビゼーションがあるかどうかは知らないw)
素直に考えれば、「予告編ヴァージョン」は予告編とあるのだから。この3人を主人公に物語を考えていて、次にポツンと話が飛んで2章目を書いたってことかなぁー、と思うんだけど…。
というのも、1章目がよくわからないんだよなー。
ぶっちゃけ、素人が自己陶酔が自己逃避だかで書いたみたいな、この話を一章に持ってきている(残している)ということは、「予告編」にある3人の物語を書くというのはもちろん頭にありつつ、まず一章を書いて。
次に、もっとも小説然としている2章を次に書き、3章でインプロビゼーションしまくっちゃって、例によって話が元に戻らなくなって。
しょうがないから、なんとか収拾をつけようと予告編の部分を、わざわざ「予告編ヴァージョン」とことわりを入れて書いたんじゃないかと勘繰ってしまうわけだw
ただ、短編集なんか読むと、この「予告編」みたいに唐突に始まって唐突に終わる話は普通にあるから、まず短編として(ネタとして)「予告編」があったのかなーとも思う。
だって、1章は「予告編」の設定をちゃんと引き継いでいるし、また、2章に展開を巧く引き渡してもいる。
結局、3章のインプロビゼーション吹きまくりで話を収拾し損ねただけ、と考えれば、なんだ、結局いつもの著者のパターンじゃんwみたいな?
ということは、1章は著者のたんなる照れにすぎないってこと?w
恩田陸の小説の魅力は、めくるめく謎、謎、謎…(ただし、それに見合う結末はないw)にあると思ってたけど、間違っても結末に期待してはいけない!を忘れなければ、これはこれで面白い。
というか、ノスタルジアの魔術師と言われる(らしい)恩田陸が、自ら“自伝的”と言う小説で、自分の大学時代を全否定するのが面白い(興味深い)。
(80年代半ばにおくった自分の大学生活を否定する著者の感覚。もしかしたら、それこそが恩田陸が今ウケる根本なのかも?なんて思ったりw)
というかー、これって、そもそもフィクションなわけで。著者が“自伝的”と言うそれって、ノスタルジーに浸ることを良しとしないことにこだわりたい著者の、当時スターだった大学のジャズプレイヤーとの対談まで全部ひっくるめたフィクション(小説の一部)なんじゃないのかな?なんて思ったw
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なにか特別なことが起きるわけではない。しかし、読むことが全く苦じゃない。すらすら読める。読みやすく違和感のない文章を書くって意外と難しいことだと思う。面白かった。
あと恩田陸の小説で、実在する音楽や映画、小説が出てくるところが好き。ミステリー好きのキャラクターがいたりとか。
Posted by ブクログ
これはなんだろう。これは本当に小説なんだろうか。
ある女子大生の日常が第一人称で語られる。そこに出てくるキーワードの数々。『女子大生ブーム』『消防署のほう…から来て消火器を売りつける』『イカ天』『エビ天』、日航機の墜落事故の記載があることで、これが1980年代後半のことだろうと思われる当時の時代を表す言葉たち。
文章が変だ。『本音を言えば、あんまり学生時代のことを話したくないのだ。そもそもあまりにも平穏で、大した話もない。』という割には、永遠に続くかのような極めて粘着質な文章。わざと句点を入れないで、読点で強引に繋げていく長々とした読みづらい表現。それを分かった上で、『私の何事も起きない学生時代の思い出をだらだら断片的に紹介されることに飽きられても仕方がない』と自虐的にまとめる恩田さん。
『小説家になりたい、なんて、口が裂けても言いたくないし、そう心の底では思っていることを認めたくなかった』という記載で思い当たる、やはりこれは恩田さん自身のこと。
『書くというのは業だ。書くというのは癖だ。あたしはいつも右の靴の外側の減り方が妙に早いのだけど、あれと同じだ。書く人は、ほっておいても、禁じても、一銭にならなくても、書くのである。』、小説家になることを意識し、小説家に実際になる人ってこういう感じなのかと、なんとも興味深い記述が続きます。読みづらいことこの上ないどうでも良いと思われた文章が突然親しみの湧くものに早変わりする瞬間。同じものを見ていても、読んでいても、人はそれに興味があるのか、ないのかが全てなのかもしれないと改めて感じました。
作品は、小説家を志す恩田さん自身をモデルにした第一部を含め三部構成です。第三者的に読むと断然面白いのは第二部。ジャズに全てをかける四年間を過ごした男子学生のことが描かれます。大学に入ってトリオを組む。能力のある友人と遅れを取る自分。必死の努力で後を追う姿。ベースとピアノということで異なりますが「蜜蜂と遠雷」を思い起こさせる部分もあり、短いですが読み応えがありました。この第二部だけで書き上げられた長編を読みたくなりました。
ただ、全体としては極めて淡々とした、小説というよりはエッセイのような作品でした。山もなければ谷もない、ごく普通の大学生活を送った三人のそれぞれの四年間。
感想を書いているこの時点ですでに印象が薄くなってしまっているなんとも希薄な印象の作品。恩田さんを読む一冊目がこれだと二冊目を手に取ることはないと思いますが、恩田さんをたくさん読んでいる身には、たまにはこんな恩田さんもいいかなって、そう感じました。
Posted by ブクログ
久しぶりに恩田陸の小説を読んだ。
大学生活の回顧録みたいな感じで、綾音(小説)・衛(音楽)・一(映画)の視点から語られている。
最初に読んだ時はピンとこなかったけど、今回読んで何を言いたいのかわかった気がする。
三匹の蛇が落ちてきた様子、その後の蛇たちが行く末の描写が印象的。
特別対談では?だったけど、衛の音楽サークルの話(2部)が好きだった。
Posted by ブクログ
再読4回目。
ああ、そうだった。大学4年間(わたしは5年)って、こんな時間だった。と、いう感じ。全編通してセピアだった。色彩あふれる学生時代なのに、何故かセピア。思い出して懐かしみたいけど、気恥ずかしくて思い出したくない、そんな学生時代のお話。
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エッセイのような小説。高校時代に出会ったザキザキトリオの大学時代と、ふと思い出す高校時代や出会いのエピソード。すれ違っているようで交わりながら大人になった3人。それぞれの立場からの感情表現は興味深かったけれど、平坦で、あまり面白みはなかったかな。
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ザキザキザキトリオがそれぞれ大学で文学、音楽、映画に取り組む話。それぞれの話が最後に行くに連れ絡み合って伏線が明らかになっていく、のかと思えばそんなこともなくほとんど独立した短編集に近い構成だった。大学ならではの空気感の描写はよかったが、早稲田大学の話だと分かると「なんだかなぁ」と思ってしまった。
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学生時代のことを、少し小説化して書いてみた不思議なテイストの作品集。3つの短編にわけてあって、それぞれ独立した主人公がいるようで、微妙に絡み合っている。