村上春樹のレビュー一覧

  • 小澤征爾さんと、音楽について話をする(新潮文庫)

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    指揮者自身は音を出さないが、大勢の奏者を躍らせて音楽を生み出す。
    作家もまた一人で作中の登場人物を自在に操り物語を紡ぐ。
    同業者同士の対話は、共通認識を語らず細部や流行に傾きやすい。
    しかし異業種の対話では、むしろ幹が浮かび上がる。
    小澤征爾と村上春樹のやりとりからは、音楽のディテールに加え、創作の根本や未来への視点までもが立ち現れてくる。

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    2025年09月05日
  • ねじまき鳥クロニクル―第1部 泥棒かささぎ編―(新潮文庫)

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    間宮中尉の長い話はかなり読むのがきつかった。
    でも戦時中は「悪」の連鎖反応により「悪」が増幅した結果、あのようなものは当たり前のようにあったんだろうな….

    壮大な物語がこれから始まろうとするワクワク感のある第一部。是非

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    2025年09月03日
  • やがて哀しき外国語

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    いかにも村上春樹節といった語り口で、どこか飄々としながらも癖のある文体が良い。
    日本という国を外から見た形が独特の視点で語られていて、なかなかに面白い。

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    2025年09月02日
  • 騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編(上)―(新潮文庫)

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    一枚の絵が、秘密の扉を開ける……妻と別離し、傷心のまま、海を望む小暗い森の山荘に暮らす孤独な36歳の画家。ある日、緑濃い谷の向こうから謎めいた銀髪の隣人が現れ、主人公に奇妙な事が起き始める。雑木林の古い石室、不思議な鈴、屋根裏に棲むみみずく、そして「騎士団長」――ユーモアとメタファーに満ちた最高の長編小説!

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    2025年08月31日
  • レキシントンの幽霊

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    いずれも「過去」をめぐる話だった。
    過去に囚われた人(沈黙、レキシントンの幽霊)過去とのみ生きると決めた人(氷男)、過去とはなんの関わりも持たないで生きると決めた人(トニー滝谷)などなど。
    この頃彼は過去作の改作にこだわっていたというのも面白い。
    めくらやなぎと眠る女、蛍はどちらも改作をしていて、ノルウェイの森に繋がっている。
    村上春樹にとってノルウェイの森はそんなに思い入れの深い作品だったのだな。

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    2025年08月29日
  • さよなら、愛しい人

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    大鹿マロイのはなし。マーロウは今度はマロイに友情というかシンパシーを感じる。そうして自分を痛めつけながら色々と無理を通す。はなしの構成という意味でよくできている。

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    2025年08月29日
  • ラオスにいったい何があるというんですか?

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    村上春樹さんの好奇心や行動力、交友関係の有り様に惹かれた。世界のいろんな場所で暮らして、鋭い観察眼でいろんな景色やものを見ていて、縁を大切にして、ほんとに豊かな人生を送っているなあとしみじみ思った。
    ユーモアもあって読んでいて楽しかった!
    ラオスと熊本に行ったことがあったので、これらの章は特に親近感を抱いて読むことができました☺︎

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    2025年08月28日
  • 猫を棄てる 父親について語るとき

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    私がこの本で得られたこと、あとがきにあるように、歴史が過去のものではなく、それらが自分の中にあるのだと言うことを感じられたことです。

    父と共に猫を捨てにいったのに、その猫が先回りして家にいた。そんな父と僕との何気ない人生の共通の思い出が、2人の中にあり、その共通のものが、2人を作っていくという感じ。その象徴的な絵のように感じました。

    小さな日々の積み重ねが、やはり自分をつくりあげ、その一つが違えば、また違う道がある。こうしたいくつもの重なりや偶然の上になりたっていることを、村上春樹さんとそのお父さんの一つの歴史の中で感じさせてもらえる本だったと個人的には想います。

    高妍のイラストもこのお話の雰囲気と相まってとても素敵でした。

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    2025年08月26日
  • パン屋再襲撃

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    一見は合理性がない物語の中に、合理性を当てはめていく作業。見えない水脈を探し当てるように、ひとつの筋を見つけようとする作業を続けていく。こんな作業を通して、この物語たちは、読んだ人々に溶け込んでいくのだろうかと思う。

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    2025年08月25日
  • パン屋再襲撃

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    パン屋を襲撃するという意味がわからない展開。展開自体は意味がわからないけれど、独特の世界観すぎて安定に面白い。比喩が誰にも思いつかないような比喩で彼にしか書けない

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    2025年08月21日
  • 街とその不確かな壁(上)(新潮文庫)

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    途中まで世界の終わりとハードボイルドワンダーランドの焼き直しなのかなと思いながら読んだけど、途中から枝分かれしてきたので、これからどうなるのかが楽しみ。

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    2025年08月18日
  • 1Q84―BOOK3〈10月-12月〉前編―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ・首都高でヘックラー&コッホによる自殺を図ろうとした青豆を呼び止めたのは、青豆に聴こえた遠くから自身の名前を呼ぶあの声は空気さなぎの中の10歳の青豆に名前を呼ぶ天吾の声だったのかと気づいたとき、本当に素敵だと思った。これ以上ない伏線回収でかつこれ以上美しい愛がそこにはあると思った。登場人物である2人が気づいていないだけで、そこには既に愛はあるのだと思う。

    ・天吾が猫の町に行く前、天吾も青豆も高円寺の街でお互いを想い続けるシーンは、個人的にミスチルの「君が好き」を挿入歌にしたいと思った。この小説の主題歌がヤナーチェックのシンフォニエッタだとしたら挿入歌は君が好きで間違いないと思う。

    ・青豆って雅美だったんだ。なんかわりと納得。実写やるなら長澤まさみにやってほしい。

    ・牛河は青豆も天吾もそして自分自身も、「無条件で自分を受け入れ、抱きしめてくれるような何かを求めていた」と推測するがこれには深く共感した。私もそれを求めているから。


    P.S.とにかく牛河の存在感が強い一編だったとも思う。
    牛河はもうお腹いっぱい。

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    2025年08月17日
  • ねじまき鳥クロニクル―第2部 予言する鳥編―(新潮文庫)

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    あくまでここまで読んだ自分なりの解釈です。

    この物語は、"僕(=トオル)が恩寵の光を得るための修行記録"の物語なのでは無いか。
    つまりは、間宮中尉がノモンハンの井戸で獲得出来なかったものの総称としての恩寵です。

    僕らは力を手にすると途端に居丈高になったり強権的になったりしてしまう。ではそうならない方法は何か?それはつまり"やれやれ"でやり過ごす事だ。卵の側に立つ事だ。でも、敢えてデタッチメントからコミットメント(バットを持って戦う)に向かわなければいけない時があるのだ。

    その時に我々に恩寵の光が差し出されるのだ。

    加納クレタをシャーマンのように扱うくだりも、綿谷昇が絡んで来る時の新しい村上春樹の地平も良いと思います。

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    2025年08月15日
  • ねじまき鳥クロニクル―第2部 予言する鳥編―(新潮文庫)

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    8.9/10

    次第にあちらの世界へと呑まれてゆく。第3部では、猫もクミコもノボルも加納姉妹も、謎が尽きない。ラストの18章はあまりに美しく、まるでデヴィッド・リンチの世界を彷彿とさせた。「かまわない」と岡田が発した瞬間、思わず鳥肌が立った。

    やってやれ。何かを、それを、暗闇の中であろうと、井戸の底であろうと、夢の中であろうと、抱きしめてやれ。

    僕の最も好きなシーンは、カルタが暴力的に犯されたシーン。あれはやばい

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    2025年08月13日
  • パン屋再襲撃

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    笠原メイ、ある歯科医の受付女性は五反田君と過ごした後に失われてしまったメイなのか。名作長編『ねじ巻き鳥クロニクル』へと続く前日譚を収めた、読者に畳み掛ける短編集。山羊を飼う少女、ワタナベノボル、ある場合においては繋がり合う世界観。ひと差し指で軽くこめかみを押さえると、かっこうと鳴く声が聞こえる。

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    2025年08月15日
  • 1Q84―BOOK2〈7月-9月〉後編―(新潮文庫)

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    この巻で話がかなり壮大になったと思う。今までの4作中、際立って良かったポイントは思いつけないものの、青豆と天吾の再会に身を焦がれ続け、ページを繰る手が止まらなくなるような面白い一編だった。またすぐに5を買いに出向こうと思う。

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    2025年08月12日
  • ねじまき鳥クロニクル―第1部 泥棒かささぎ編―(新潮文庫)

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    8/10

    完璧な序章。
    文章が完膚なきまでに完璧で、惹き込まれてしまう。終盤の間宮中尉の話は止まらない、あれほどにグロテスクで場面が頭の中で自動再生されたのは初めてだな。やはり、村上春樹はトリアー+リンチ+濱口竜介って感じだ。幻想的且つ暴力とエロスに満ちた世界を、無機質な文体が染める。まるで脂ギッシュな鶏胸肉みたいだな。

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    2025年08月12日
  • 1Q84―BOOK2〈7月-9月〉前編―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ・予想。リーダーはリトル・ピープルに促され豹変した深田保で、最初に犯された10歳の少女はふかえり?

    ・あゆみは「いかにも開けっぴろげな見かけの部分は演技的なもので、根本は柔らかく傷付きやすい感受性を持っている」タイプらしいが、青豆の「私はもっとあの子を受け入れてあげるべきだった。あの子の気持ちを受け止め、しっかりと抱きしめてやるべきだった。それこそがあの子の求めているものだった。」「無条件に受け入れられ、抱きしめてもらうこと。とにかく安心させてもらうこと。」という後悔は本当に的を射ていて、私もあゆみと似たような性格だからこそ本当にそれが必要なのだと共感できた。

    私もそれが喉から手が出るほど欲しい。欲しくてたまらない。

    ・天吾にとっての安田恭子(年上のガールフレンド)=青豆にとってのあゆみかな。

    青豆と天吾、お願いだから早く出会って。あなた達はお互いに想いあっている。そのことに早く気づいて、という気持ちでいっぱいになった。

    そしてさきがけのリーダーと青豆、療養所の天吾の父と天吾が2人きりで対話するシーンはどの場面よりも強烈で強い存在感を残していた。

    とくにさきがけの秘密を語るシーンはあまりにカルトとしての解像度が高すぎて鳥肌が立つほどだった。

    とにかく続きが気になる。

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    2025年08月23日
  • レキシントンの幽霊

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    私は村上春樹氏の小説がとても好きだ。文章が好きなので、斜め読みせず、時間をかけて読みたい。そして、読み終わったら、しばらく余韻に浸って、内容について考えていたい。
    この小説で、夏休みの読書感想文が書けるのか?と聞かれたんだけど、私には書けない。というか、夏休みの宿題で、ちゃちゃっと書ける感想文用の小説ではない、ということは、わかった。もちろん、熟考して書けば、良い感想文は書けると思うけども。

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    2025年08月10日
  • 中国行きのスロウ・ボート

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    中国行きのスロウ・ボート
    2025.08.09

    主人公が出会う3人の中国人。彼らはみな淡々と語り、どこか寂しく感じるようなふるまいをしている。ゆっくり読まないと気付かないようなさりげない空気感で描写していた。物語の最後には居場所のない中国人と自分を重ね合わせ、現状から抜け出して居場所を求めたいという気持ちがうかがえるものの、逃げようというよりは受け入れざるを得ないような仕方のない状況にあることを表現。「スロウ・ボート」によって示し、なんともいえない状況に陥っている様子が感じられる。

    居場所のなさがこんなにも淡々とした虚しい世界を生み出してしまうのかと怖くなった。同じ境遇の中国人たちと自分で新たな居場所をつくったら少しは良い方向へ向かいそう。

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    2025年08月09日