【感想・ネタバレ】アンダーグラウンドのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年06月25日

ぽん先輩が「これはただのノンフィクションではない」って言ってたけど、その意味がわかった。
本当に事実だけが、彼らが証言したことがそのまま書かれている。
だからサリンの匂いについてだったり犯人たちへの思いだったり、同じことを言ってるなと思うこともあれば違うことを言ってる人もいて、人間の個性が出ていて興...続きを読む味深いものだった。
わたしは信仰心に漬け込んで悪事を働いたオウム真理教が許せないけれど、本屋に足を運んでもそれ関連の本はなかなか見つからない。あれだけの凶悪犯罪なのに、肖像権の問題があり当時のニュースなどは残っていないし、仕方ないことかもしれないが忘れられようとしている気がする。風化させないようにしたいと思った。

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Posted by ブクログ 2022年10月01日

村上春樹による「オウム地下鉄サリン事件」の被害者たちへのインタビューに基づくノンフィクション。文庫本で600ページ以上という大作。

この作品は読む前に期待していたものよりも、もっと多くのものを含んでいると感じた。
その内容は大別して2つに分けられる。「被害者たちの体験の追憶」とそこから著者によって...続きを読む分析される「地下鉄サリン事件とは何なのか」である。

前者は圧倒的な取材量がベースとなって描かれる、サリン事件の被害者たちのリアルである。著者はこの作品を書こうと思った動機として、当時のメディアが被害者たちを「傷つけられたイノセントな一般市民」としてしか描いておらず、彼らのリアルが明らかにされることがほとんどなかったからだと冒頭で語っている。
メディアは、オウム(悪・狂気)と被害者(正義・正気)という単純な二項対立を描くために、被害者たちの「顔」(個性)を排除したのだ。
対して村上春樹は、被害者たちが事件の当時どんな目に遭って、どう感じて、今(取材当時)どう生きているのか、を率直に綴る。

このリアルに圧倒された。
被害の大小に関わらず、被害者たちの人生と生活は事件の前後で一変してしまった。それが痛々しく伝わってきた。
特に、こうしたイレギュラーな大事件は人が平時に信じている価値観や「軸」、大事にしているもの、アイデンティティを浮き彫りにするのだと感じた。事件の後、多くの被害者たちがより一層自分の生き様を考えて、それに偏るようになったと語っている。

そして「地下鉄サリン事件とは何か」という問題。
村上春樹はこれに対して、いずれこの大事件が単なる「狂気の集団によって起こされた異常な事件」「都市伝説的な犯罪ゴシップ」と見做されてしまうようになることに多大な危機感を持っていると書いている。
実際、事件の後に生まれた自分もこれに似たようなイメージを持っている。この2022年において、大多数の日本人がそうだと思う。村上春樹の懸念は当たったわけだ。

では村上春樹が分析する「地下鉄サリン事件とは何か」とは、「オウムの狂気は我々の中にも存在する」という事実である。
つまりオウムとは「自律的に目標を追求する意志を抑えつけるシステム(高度管理社会)への反抗」であり、これは誰しもがうちに抱えている問題だとするのだ。
この分析は傑出した洞察かと思う。実際、インタビューの中で「彼ら(オウム信者)の気持ちも分かるんです」という被害者もいた。

個人的にもこの分析は当たっていると思う。自分の中にも社会に反抗して自律的パワープロセスを追求したい気持ちはあるが、それに見て見ぬ振りをして上手く社会に溶け込んでいる。多かれ少なかれ人はそうした感情を持っているのではないか。
麻原彰晃は人のこうした感情を非常に上手く焚き付けて、魅惑的でシンプルなストーリーを説くことで信者を獲得していった。信者は麻原についていくことで自尊心を満たし、代わりに自我という対価を渡した。

「地下鉄サリン事件」は正義と悪の単純な二項対立ではなく、我々の内にも存在する負の感情の表出である。それを理解しなければ、今後第二のオウム、地下鉄サリン事件が出てくるだろう。
今からでも学べることはあるのではないか?
 

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Posted by ブクログ 2022年07月03日

長かった。やっと読み終えることができた。これを機に村上作品を読むようにしてる。村上ラジオも欠かさず聴いている。

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Posted by ブクログ 2022年05月31日

面白いとか、好きではないのだけど、この地下鉄サリン事件の被害者62人にインタビューし、事件の一側面からの生の記録を残したことがまずすごいと思った。元気がないとなかなか読めない本。
インタビューはとても読みやすかったけど村上春樹本人のとこは、読みづらかったかな。
でも、読んで残る本。数でまとめられてし...続きを読むまう出来事の先に一人一人の人間がいるということ、そして、それぞれの人の性質やほんのひとえの行動が生死や、軽症・重症をわけること、この事件がどういうものだったかなど色々考えさせられた

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Posted by ブクログ 2021年09月20日

村上作品でもっとも好きな作品。地下鉄サリン事件の被害者に焦点をあてたインタビュー集だが、被害者の日常や背景を淡々と描きながらも、人物像が浮かび上がる筆力に感動した作品です^_^
オススメ!

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Posted by ブクログ 2021年08月08日

村上春樹のノンフィクション。
「あの時、本当は何が起こっていたのか」をまざまざと見せ付けられます…地下鉄サリン事件の被害者60人の証言から。
被害者の方々の、何が起こってるかよく分からないし自分も苦しいけど他の苦しんでる人を何とかしなきゃという姿勢や行動がとても尊いです。非常事態って現場の人が何とか...続きを読むしなきゃいけないんだなって、ちょっと悲しくはなりましたが。警察があたふたしてただけのように、この証言からは多く読み取れたので。
件の地下鉄にも、たまたまあの日はその時間のその路線のその車両に乗ってたという人が結構いて、怖かったです。前日まで会社休んでたのであの日は行かなきゃと思った、という人も多かった。
あと、かなり苦しいけど会社は行かなきゃ…という人も多いのも日本的な気がしました。時代もあるだろうけど。
あとがきも良かったです。麻原彰晃の荒唐無稽な物語に対抗出来る真っ当な力を持つ物語を我々は提示できるのか…物語を紡ぐ作家さんでも、そうでない一般の人でも、これは突き付けられると思います。何かよくわからないけど危なそうな宗教に身近な人がハマってるとき、どうしたら目を醒ませられるのかは作家でなくとも考えなくちゃならない。
いつか狂気を要求するかもしれない誰かの物語を自分の物語として受け取ってないか…も残りました。
村上春樹さんってエッセイやラジオの印象でもっと飄々として軽薄な感じだと勝手に思ってましたが、真摯な方なのですね。印象が変わりました。

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Posted by ブクログ 2021年06月14日

地下鉄サリン事件で起きたこととは、沢山の無実の人達が突然に命や健康を奪われ、人生を狂わされた出来事だったのだと改めて知った。村上春樹さんと編集者の丁寧な仕事、被害者の勇気ある証言によって、この本に書かれたことは忘れられることはない。どんなメディアの報道よりも真実が深く伝わった。最初は何故?と思ったが...続きを読む、ジャーナリストではなく村上春樹という作家が本にすることの意義も強く感じた。事実だけでは、真実のごく一部でしかないからだ。

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Posted by ブクログ 2021年05月29日

地下鉄サリン事件の被害にあったかたの辛い思いが詰まった一冊。なにがあるかわからないなと思った。当たり前だが被害にあった一人一人に人生があって、大切な人がいて、命というもは重いと思った。我慢している人が多いので、しんどいときはしんどいと言うことは大切だなと思った。村上さんの人間の分析力はすごいと思った...続きを読む

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Posted by ブクログ 2021年03月18日

ドキュメンタリーはすごく好きだ
物語を取り入れる行為について、実際の物語と架空の物語を取り入れるのでは強度が違うところがあると思う。

何かの本で村上春樹は、苦境に立たされた人からのお便りに対して、「あなたのような人がこの世に存在しているということは、確実に自分の中に存在し残っています」というような...続きを読む返事をしていた。ノンフィクションな物語を取り入れるとはそういうことなんだと思う。

この本は、とても非日常的な出来事に面した人たちのことを限りなく実際的な目線で描いている。そしてそれらの物語・人々に想いを馳せる時、自分の日常の輪郭がハッキリと浮いてくるような感覚がある。そういった力強さを、この本に収められた話たちから受け取ることができたと思う。


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20210623 記載

僕自身はサリン事件の当時まだ物心がついていないくらいの年齢なので、この本を読みながら周辺情報や当時のテレビの様子などをインターネットの情報で補足しながら読んでいった。

ここに記されている地下鉄サリン事件の被害者の方々へのインタビューは、まったくもって文学的な味付けをされていないが、それゆえに読んでいて切実さが滲み出てくるものばかりである。当時の時代背景など分からなくとも、ただその人たちの暮らしが綴られているのみなので、ピンポイントなタイムラインのことなのに不思議とすんなり入ってくるし、それだけにこれは自分の生きている世界のことなのだということを切実に実感する。

この本は大切な友達が勧めてくれた他では、村上さんに聞いてみようのエッセイシリーズで度々話が出ていて、興味が湧いたので読んでみたが、本を開くのがたまに怖くなるほど力を持った本だったと思う。

同時に、こういった人間の営みに対する愛着や、関心が深まったという点がこの本が自分にもたらした効用だと感じた。どんな人間であっても、彼らなりにそれなりの文脈を持ってそれぞれの人生を生きていて、それはかけがえがなく、力強いものなのだということを実感として抱いた。

「人の心の中を部屋に例えると、その部屋の中に入り、置かれた物々をじっくりと眺め、手に取ること。そういったことにとても興味がある」と村上春樹がエッセイに書いていた。

このドキュメントは極めて限定的な箇所についてだけれど、それだけにとても濃密な、人間の心の部屋に置かれた物体を観察することができるものだと思う。

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Posted by ブクログ 2020年12月02日

重い内容なのに、苦なく読みきれて、村上春樹先生自身の文章力を感じる。
実在する刑事事件をテーマにした小説に興味を持った最初の本。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年04月24日

村上春樹が、地下鉄サリン事件の被害者の方にインタビューをした話をまとめて、最後に彼なりのこの事件への考えを述べた作品である。この本を書こうと思ったきっかけの一つは、加害者、つまりオウム真理教の信者、のみの具体性のみが追求され、被害者の方々はたまたまそこに居合わせて被害にあってしまった人々といった通行...続きを読む人Aのような全く具体性がない人として扱われてしまうマスメディアのやり方に疑問を覚えたことによる。被害者の人々の具体性というのは、追及されなくて良いのだろうか、と感じこの本を書くきっかけとなった。被害に遭われた方の職業であったり、家族構成や、作者が見た第一印象が作者によって書かれて、その後にインタビューが続く。インタビューのはじめは、当日の家を出るまで間の流れが書かれ、その後に事件の時の様子、その後の後遺症、最後にオウム真理教に対する意見というふうに基本的には構成されている。そして、路線ごとにまとめられていて、読み進めるごとにその当時の状況というのがわかりやすくなるように構成される。被害者の話は、それぞれの具体性を有しており、たまたまその日に会社に出勤しなくてはならなくなり現場に居合わせてしまった人、たまたまいつもと違う車両に乗りサリンの風上側になり症状が軽かった人、それぞれの人々にそれぞれに被害があったことを、そして、それは決して一般化されるべきではないと痛感した。また、オウム真理教に対するそれぞれの人の考えたもかなり異なり、作者による人物紹介と症状の大小などによって様々であったのも印象的であった。そして事件後の後遺症について被害者の少なくない被害者の方がサリンのせいではなく年齢などのせいであると考えているとことだった。病院で診察して加齢ですねと言われればそう思ってしまうかもしれないが、被害者の多くが、記憶力の低下や疲労感などに未だに悩まさられているというのは、サリンの影響が少なからず出ていることは確実なのに、加齢のせいと思いこもうとしいてるか、思い込まされているのかそう感じていたことも印象に残った。
最後に、作者によるオウム真理教の現在の扱われ方に対する批判などが書かれている。裁判という制度化された枠組みのなかでこの事件を扱うことにより事件の詳細は明らかになるが、この事件が起こった根源は明らかにならず、最終的に狂人たちが起こしたイカれた事件として後世に残されることを危惧している。その根源を明らかにするためには、オウム真理教の追究だけでなく、我々=論理的な行動をできる人の側からの視点も必要であると考えている。
自身の正義の枠組みというものの再構築の必要性を強く感じる作品であった

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Posted by ブクログ 2019年06月07日

オウム真理教団により引き起こされた東京・地下鉄サリン事件。その被害者や被害者遺族の方々の膨大な生の声を村上氏が纏めたノンフィクション。当時事件の真相や教団の実態を追う報道ばかりがされたが、この作品ではむしろ事件の全貌にでなく、被害を受けた「個」に全力で目を向けている。約一年以上かけて取材がなされたと...続きを読むいうその62名の方々へのインタビューが綴られているが、その人がどんな人間で、仕事は何をしていて、日々何を考え、どういう生活をしていて、そしてあの朝どのように事件に巻き込まれたのか、何を感じたのか、どのような身体的・精神的な後遺症に犯された(され続けている)のかを集めることによって、むしろ事件の凄惨さや規模の大きさが伝わってきました。他の村上小説とは違い限りなく文学的・物語的な要素を排除したインタビュー作品だが、暗い小説以上に読んでて何度も辛くなった。それでも読み出したら止まらない求心力があった。少なくとも62人の方々の血の通った声は胸に突き刺さるような力があった。色々なことを考えさせられたし、今後社会で生きていくなかで他人や社会に対して思いやりを持つということの意味というか価値がまた自分の中で変わった気がする。
随分長い時間をかけて読み終えることが出来たけど、それは単なる本の分厚さによるものではない。

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Posted by ブクログ 2019年01月16日

1995年3月20日に一体現場では何が起こっていたのか。
オウム真理教が引き起こした地下鉄サリン事件の被害者(遺族)62人に村上春樹がインタビューし、それをまとめた証言本。
しばらく積ん読のままだったけれど、今が読む時かな…と思い。
自分は知っているつもりになっていたけれど、何も知らなかったのだなぁ...続きを読むと思わされた。

777ページにもわたる読み応えのある本の中身は、被害が軽く済んで自ら証言できる被害者の談もあれば、重い後遺症を負ってしまった被害者の家族が語ったものもあり、そして最後の方は、不幸にも命を落としてしまった被害者の遺族の話も収録されている。
(合間には、オウム事件に関わった医師や弁護士などの話も)
そして最後は、著者の村上春樹による、オウム真理教(とこの事件)に対する見解(長めのあとがきのようなもの)が。

当たり前のことなのだけど、被害者それぞれにひとつの人生があり、家族があり、ドラマがある。それなのに被害者は「不幸にも被害に遭ってしまった人たち」と一括りにされがちで、なぜか事件を引き起こした人たちの人生の方がピックアップされて報道される。
そこに違和感を覚えた著者が書くと決めた本なのだけど、シンプルに読んで良かったと思う。
被害者たちがどんな風に生きてきて、どんな仕事をしていて、どんな家族がいて、そして“その日”はどんな行動を取ったのか。
読んでいくと偶然なのか分からないけれど、“その日”は普段とは違う行動をしていて被害に遭われている人が結構多い。普段とは違う時間に家を出ていたり、たまたま忘れ物をして家に戻ったりして、いつもの電車とは別のものに乗って…という。乗る車両がたまたまいつもと違っていた、という人も多い。
それによって被害が軽くなった人もいれば、逆に重くなった(と予想できる)人もいて、人の運命ってなんだろうとつくづく考えてしまった。

全ての証言者の証言を照らし合わせるとおそらく矛盾している点もあるのだろうけど、それはそれぞれが感じたことや記憶であって、きっと全てが真実なのだと思う。
意外なほど、危機を感じる雰囲気ではなかった、ということも分かる。「何かあったのかな?」と駅や電車の中を歩いているうちに毒ガスを吸ってしまった人がとても多い。倒れている被害者を見ても、貧血かてんかんかと思った人たちが多かったようで。
分からないままに被害が拡大してしまう。恐ろしい毒ガスであることが、リアルに伝わってくる。
喉に違和感を覚えて、咳が出てきて、鼻水が止まらなくなって、目が暗くなって(縮瞳により)という症状が出た人が多いようで、その後、視力や記憶力の低下という後遺症や、悪夢を見る、眠れない、などの後遺症を負った人も多い。それも“軽い”と言える被害者の枠の中の話で、よくよく考えてみると全然軽くない。
そして23年が過ぎた今、サリン被害者の癌罹患者率がとても高いということもわかっている(これは本書ではなく別所で読んだ)。それも後遺症と呼べるならば、やはり被害はとても長く深いと言っていいと思う。

どの犯人がどの電車に乗ってどの辺りでサリンの袋に穴を開けて(失敗した実行犯もいたが)ということも詳しく書かれている。
この人たちも洗脳さえされなければ、優秀と言える一般人の一部だったのにな、とつくづく思う。

当時私は中学生だった。「すごい事件が起きてしまった」とは感じたものの、田舎に住む中学生にとってはどこか遠くて現実感に欠けるところもあった事件(地下鉄が身近じゃないせいもあるかもしれない)。
無知とは恐ろしい。こうして知る機会を持たせてくれた本があることに感謝したいと思う。

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Posted by ブクログ 2018年12月29日

このような凄惨な事件に☆5をつけるのは何だか気が引けるんですが、読みやすく、当時の臨場感が伝わってきます。文字数は多いのですが、まず人物像を作者が感じたままをわかりやすく説明し、その後被害者本人の語り口調で体験談が始まるため、目の前で読み手が想像した人物が話しているような気持ちになり、より感情移入す...続きを読むることができました。路線ごとに体験談が分かれており、時折別の人物同士の体験談が重なり合う場面もあり、また、個人個人が混乱のためか同じエピソードも細かいところが全く同じではなかったりと、それが逆にリアルで恐怖がこみ上げます。当時東京にいなかったからか、ひどい事件だと思いつつもどこか遠い世界の出来事だったサリン事件ですが、今も苦しみながら生きている人がいるということを、忘れてはならないと思いました。これはただの本ではなく記録であり、資料でもあると思います。村上春樹さんの小説は実は一度も読んだことがなかったのですが、事件から1年~2年以内にこのようなものを作ることは大変な労力であったろうと推測し、とても素直に尊敬の念を抱きました。

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Posted by ブクログ 2018年10月19日

"この本は、地下鉄サリン事件に不幸にして遭遇してしまった人たちの声を集めたもの。作家の村上春樹さんが、当時の報道ではいっこうに見えてこない、その場に遭遇した人たちのありのままの体験を集めてくれた。私は、こんな事件が日本で起こったことをすでに遠い昔のように感じていた。
この事件で被害に遭われ...続きを読むた方は、本当にお気の毒としかいいようがない。たまたま、その場に居合わせただけで、いつもと変わらぬ1日の始まりのはずが、サリンを体内に取り入れてしまい大変な目にあってしまった。これは、自分にも起こりうることだったと思う。
この本は、こうしたことが二度と起こさない為に、社会、システム、仕組みを作る為に何をすべきかを問いかけてくる。自分さえ良ければ良いというような社会、システム、仕組みの中では、再び悲劇が起こりかねない。
お互いを助け合い、支え合う社会、システム、仕組みをどう構築していくのか?日本の21世紀の課題だ。
さて、私に何ができるのだろうか?悪いやつをたたきのめせというだけでは、解決しない。人間は誰でも良と悪、光と陰、両方を兼ね備えている生き物だ。闇雲に進むのではなく、光を見つめて未来に進みたいと心から思った。
Always look on the bright side of life.
すべての人が、個を認め、良い面に光を当てて過ごせる社会、会社、家庭を作るために・・・・何ができるのだろうか?そんな問いをこの本は問い続けているように感じた。"

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ネタバレ購入済み

2018年04月05日

まだ50%しか読んでいませんが、信州大学病院長へのインタビューは是非一読頂きたいと思います。

地下鉄以前の松本事件での医療経験を、ご自身の判断で直接東京の医療現場へFAXで情報提供を指示したことが人命救助に繋がった事実。

偶然にも事件当日は、大学の卒業式のため予定を空けていた、松本事件の...続きを読む医療論文出版日で資料が手元にあった必然。

また、通常なら然るべき機関を通して情報提供する所を直接情報提供する判断に至ったのは、その卒業式に卒業証書を授与される女生徒が松本事件で亡くなっており心するところがあったとのこと。

最後の一文、涙が零れました・・・。



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購入済み

あの時のこと。

2018年03月17日

20数年前に起きた、あの事件の被害者達の記録。
普通に生活していた人たちに降り掛かったことが当時の言葉で語られています。
週刊誌とかで数人の被害者の話が載ることはあるけど、ここまでまとまっているのはないかな。
あの時のことを忘れないための1冊。

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Posted by ブクログ 2024年01月01日

インタビューはもちろん、最後の「目じるしのない悪夢」まで読み応えのある作品だった。
特に和田さんの話、明石さんの話から、「平和」、大事な人がいることの大切さを強く感じた。そして
一番危険であるのは、誰かに己の思想を任せることだ。村上自身の言葉で言えば、自律的パワープロセスは自分自身のものか、確かめる...続きを読む必要がある。

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Posted by ブクログ 2023年08月02日

読む前はページ数と二段組の構成に怖気をなしていたが、さすが村上春樹、非常に読みやすい文章。しかし本書は地下鉄サリン事件について「こうだからこうです」とわかりやすい結論や正解を与えてくれる本ではない。62人へのインタビューを通し、善良な市民と異常なカルト教団という二分化に走ってしまう私たちの認識が本当...続きを読むに正しい見方なのか、という揺らぎを与えてくれる内容。社会には本当にたくさんの人々がいて、それぞれの人生があり、色々な痛みを抱えているんだということに実感を持つことができたし、とても意味のある一冊だったと思います。あとは時代もあるのか、ラッシュアワーの地下鉄に乗る人々だからなのか、とにかく仕事を頑張る人たちが多いのが印象的だった。今も同じように仕事を頑張り、毎日きつい満員電車で会社と家の行き来をする人々(本当にすごい)はたくさん居るけれど、時代として「まあ仕事はそこそこで自由な時間を楽しみたいよね」という価値観も重視されている現代とはまた違った雰囲気があるというか……。こういった人々や社会全体の空気感によってこの国は発展してきたんだろうなとも思う。その変化が良いのか悪いのかはわからない。

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Posted by ブクログ 2023年08月01日

転職してもうすぐ一年が経とうとする頃、職場の最寄駅に突然黒服の集団が等間隔で立っている。
まさにそこが地下鉄サリン事件の舞台であった。
物心つく前に起きた事件だったため、名前は知っていたけれど何が起きたかは全く知らなかった。普段何気なく歩いていた駅構内がまさにその場所であったと知った瞬間、この本を読...続きを読むむために自然と書店に足を運んでいた。 

想像以上の解像度で何が起きたか知ることができた。事件に遭う遭わないの命運はいくつかの偶然が重なって別れたように思えるし、生死を分けたのも運であった気もする。(袋を破った近くに居合わせたかどうか、風上が風下か、偶然バスが遅れていつもより遅い電車に乗ったなど)
ただこの事件を企む者がいなければ被害者の日常は暴力的に奪われることはなかったと思うと彼らが信じていたものは何だったのか、虚しい気持ちにもなる。

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Posted by ブクログ 2022年10月13日

65冊目『アンダーグラウンド』(村上春樹 著、1999年2月、講談社)
1995年3月20日。カルト宗教団体「オウム真理教」は東京都の地下鉄構内でサリンを散布するという、未曾有のバイオテロを行った。俗に言う「地下鉄サリン事件」である。
本書は村上春樹がその事件の被害者、および被害者遺族にインタビュー...続きを読むを行い、その証言を纏めたノンフィクションである。
証言者の数は60人以上。750頁を超える大ボリュームの一冊である。

〈一九九五年三月二〇日の朝に、東京の地下でほんとうに何が起こったのか?〉

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Posted by ブクログ 2021年12月26日

全800ページ弱の地下鉄サリン事件の
被害者及び専門家のインタビュー記録。
村上春樹に対して苦手意識があったけど、
事件と真摯に向き合っておられ、
その分、パワーをつぎ込んで読んだので
読破に半月ほどかかりました。
実行犯や幹部のインタビューもあれば
よかったです。

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購入済み

毛色の異なる村上作品

2021年12月04日

常日頃から村上作品を愛読する者として、毛色の異なる作品だと感じた。
極めて現実的な内容で、シビアで、淡々としたルポルタージュ。
あまりにシビアな部分を読んでいるうちに、本来の村上作品を超えるような幻想性を感じさえする。
しかし、面白かった。
それにしても、地下鉄サリン事件には戦慄を覚える。

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Posted by ブクログ 2021年11月30日

最近、電車内での事件が立て続けに起きていたので、ふと地下鉄サリン事件を思い出し、この本を手に取った。村上春樹が地下鉄サリン事件に遭遇した方々へインタビューをした内容がまとめられており、事件のリアルを知ることができる。
自分がもしそのような事件に遭遇したら、どんな行動を取るだろうか。いつもと違う駅でお...続きを読むりるのか、人を助けるのか、それとも会社に直行するのか。ちょっとした行動の違いが生死を分ける。自分の直感と五感を大切にして日々過ごさなければと思う。

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Posted by ブクログ 2020年12月11日

とにかく深く考えさせられてしまった。られた、ではなくさせられたであるのはインタビューの最後にある村上春樹自身が綴った文章にもあるように、わたし自身がオウム真理教が起こした地下鉄サリン事件について、生理的嫌悪感から無意識的に考えることをやめてしまったからだ。この本を読むことによって、やっと正面から向き...続きを読む合う気持ちになり、あらゆることを考えさせられた機会となった。

圧倒的な暴力のまえで、暴力を受けた側は何かしらの感情は持つが、その感情を表すための言葉は失ってしまう。地下鉄サリン事件が起きた1995年、わたし自身は1歳になるかならないか。生まれたばかりの者にとって、覚えていない事件を“関係のないこと”と判断するのは非常に容易い。現にわたしはこの年になるまで事件のことを深く知ろうとは考えてはいなかった。毎年3月になれば世間は事件を振り返り、長期に渡る裁判に動きがあればそれはニュースとして報道されていたから、事件全体のことは知らなくても、主犯が誰で、どんな目的があり、どれくらいの被害者が出たのかは知っていた。でも本当にただ知っていただけだ。それ以上のことは能動的に知ろうとする自分はいなかった。その理由は先述した内容になるが、少し知っただけでもとてつもない生理的嫌悪感があったのだ。はっきり言えば知りたくはなかった。

本を読んで思ったことがある。この事件は誰にでも遭遇する可能性があり、多くの人はこの本に書かれている内容を他人事だと思えないだろうということだ。事件の体験者は自分だったかもしれないし、自分の家族だったかもしれないし、生まれたばかりの自分の子どもである可能性もあった。それゆえに読みすすめることが、しばしば辛いと感じた。読み終わった今はただ、駅員としての責務をまっとうしようと行動した方々、そして自身も苦しい状況にありながら、互いに助け合いどうにか地上に出て病院まで辿り着けた方々の人としの素晴らしい姿勢を、自分も見失わないようにしたいと思うばかり。

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Posted by ブクログ 2020年07月29日

1995年に起こった地下鉄サリン事件。事件当初は「オウム真理教」という特殊フィルターを通して連日連夜報道されていたが、被害者含め一般市民にとってあの事件とは何であったのか。村上春樹氏が62名の関係者にインタビューを重ね再検証する。

本書を読んでまず思うのは本作品の執筆が村上春樹氏で良かったというこ...続きを読むとだ。氏の何かを判断したり決めつけたりしないスタイルが今回のノンフィクションに非常にマッチしている。本作品に登場する人々の人柄や生活、事件がもたらした影響を剥き身のまま伝えてくれる。我々と変わらぬ普通の人々の人生が当日交差して立体的に描かれることで、事件の異常性と大きく構えれば1995年の世相や歪みを描き出している。

そしてこうした事件で毎度語られるマスコミの横暴には苦笑いしてしまう。一方で、現場にいたマスコミ関係者のインタビューも掲載されているので個人としての言い分や論理を聞くと気持ちはわからなくもないと思うのが不思議なところだ。

世界でも有数の平和国家で起きた、世界的に見ても極めて稀な無差別バイオテロを起こしたオウム真理教。彼らを「カルト集団」で片づけるのではなく、我々一般市民との関わりで何が起こったか捉え直す良いノンフィクションであった。

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Posted by ブクログ 2019年04月15日

2015年にこの本を手にとって、でも最初のひとり目のインタビューを読んで、もうそこでそれ以上読み進めることができなかった。すごく怖くて、すごく苦しくなって、どうしても読めなかった。

当時東京に引っ越したばかり。精神的にもすごく不安だった気持ちを覚えてる。そんな時に神保町の古本屋で出会ったハードカバ...続きを読むーのアンダーグラウンド。ビニールにかけられて古本だけど綺麗だった。1000円で買ったのを覚えてる。

いきなり自分の住んでいる場所の近くの駅から話が始まった。その駅名が妙にリアルで生々しかった。これがフィクションじゃない、わたしが今日も使ったあの路線で起きた話なんだ。怖くて怖くて、読めなかった。

こんなことが起こったなんて。

この本を手にとってからしばらく、本当に2,3ヶ月くらい、ずっとトラウマで一人でその駅を歩くのがすごく怖かった。

事件が起こった当時、6歳だったわたしは事件のあった日のことは全く覚えていない。大人になってから少しずつ知っていった。でも、意識的に触れることに避けていた。でも、知っておかなければならない類のことだとも本能的に思っていた。

そしてようやく。東京から物理的に離れた場所に来て。あの時から4年経って、ようやく読むことができた。昔のように恐ろしいほど感情移入してしまうこともなく、しっかり、事実を事実として自分の中に受け入れながら読み進められた。

世の中の現実世界のシステムに適応できない人たちが選ぶ別のシステムとしての宗教。現実社会に適合できずこぼれ落ちていく人たちにとって、宗教がセーフティネットなんだとしたら。彼らが夢見たその場所が、とんでもない悪夢に変換していくかもしれないという危険性を、誰が事前に予測できただろう。
今、彼らを受け入れる器となる安心安全な場所は、あるんだろうか。

「あなたの見ている夢は、本当にあなたの夢なのだろうか?」村上春樹のあとがきの言葉に、ドキッとする。

当たり前って、本当に当たり前じゃない。今の自分をもっと大切にしたい。わたしの物語と、わたしの夢を生きないとだめだ。こんなにいろんな感情が渦巻いているのに、こんなにも陳腐な言葉でしか表現できないのが悔しい。

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Posted by ブクログ 2019年03月22日

人は社会の中にある諸々のシステムに併せて生きている。けれどそのシステムにあまりにも生きづらさを感じると、違うシステムを求める。それが世界を破壊しようとするオウムというしすてむ。 2010.11.28

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Posted by ブクログ 2018年12月30日

村上春樹さんは大好きだけど若い頃はノンフィクション(全部)どうも苦手でずうっと避けていた

何を思ったかすごく読んでみたくなって購入。
今が読みタイミングだったのかなぁ私にとって。
路線それぞれの事件の経過と、それぞれで被害にあった方々のインタビューのみ。巻末の「目印のない悪夢」はとても面白かった。...続きを読む村上さんの個人的な考えが読めたし「アフターダーク」や「神の子供達は…」に通じる怖さがあった。これと「世界の終わりと…」を押入れから発掘して再読しよう、決めた。

この人生の主人公は、自分だ
これ↑文字にしちゃうとほんとに陳腐で恥ずかしいんだけどww
結局これしかないんだよね
認識変えて、自分でなんとかするしかないほんとコレ

松本智津夫が自分の欠損から自分自身の夢を描いてどんどん周りを巻き込んで…そりゃ、同じような悩みを抱えている人にとってはその夢はとてつもなく甘いだろう。
っていうかついった見てても思うけれども、同じようなことで悩んでいる人しかいないんだよ逆にいえば。

結局、心の欲望(承認とか、自己確立とかそういう?)を満たしてくれるはずの信仰集団の中でさえ、お互いにライバル視したり、麻原に気に入られたくて行動したりとかしているんだから……

感想見てると「被害者の方々がなんでこんな状況でも会社に行こうとするのか謎」みたいなのよく目にするけど、私でも同じじゃないかなー
体調悪かったらまず昨日何かしたかなとか今朝何か食べたかなとか考えない?
流石に周りで倒れてる人が2人も3人もいたら、おかしいと思うが…それだってもしも吸い込んで即死!みたいな濃厚な毒であったなら、きっと地下中パニックになってたんじゃないかと思うし

何かで「日本人は異常事態の時全然パニック起こさない、すごい」みたいなの、多分地震の後だと思うけどどっかで見たが、これ今回にも当てはまるよね。
「うわ!なにこれどういうこと?!」とか誰かが叫んでみんなが地上へ殺到すれば、ドミノ倒しとかもちろんすごく危険だけど、サリンガス吸い込んじゃった人はも少し少なかったのでは?とか…

「え、何なんで具合悪いんだろ、今誰かがガスがどうとか言うの聞こえたけど何かやばくね?…でも私一人だけ焦って騒いだりしてもしなんでもなかったらすごい恥ずっ」
…とか思ってるあいだにバッタリ倒れるなぁきっと私だったら…


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Posted by ブクログ 2022年03月06日

事件が起きた頃はまだ小さかったので、オウム真理教が起こした事件くらいの認識しかなかった。
被害に遭われた方のリアルな声をまとめておくというのは、とても貴重なことだと思う。
事件のことはもちろん、満員電車に毎日1,2時間乗る生活を送る人のことを考えさせられた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年10月09日

村上氏の作品の中では珍しいノンフィクション。
地下鉄サリン事件の被害者のインタビューの模様がひちすら描かれている。

ものすごく長くて読むのに時間がかかった。
同じ出来事なのに、体験した人によって印象が大きく違うのが興味深い。

終盤で村上氏が語る、現場では優秀な人が尽力してパフォーマンスをあげてい...続きを読むるにも関わらず、上からの全体的なマネジメントがダメダメで、結果的にあまり上手くいってないという状況は、サリン事件、ノモンハン事件、そしてこのコロナ禍にも共通する所があると思う。

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Posted by ブクログ 2021年08月04日

ながい!
けど、いろんな職業の人たちが出てきたので
日々の仕事のやる気が向上した。
ジョッキーの外国人の証言は中々響いた
地下鉄サリン事件って今やそんなに話題に上がらない事件だけど、この本を読んで
その時の緊張感だったり、怒りだったりがヒシヒシと伝わってきた。
特に、東日本大震災を経験した私から言え...続きを読む
この本に上がっている証言はほんの一部に過ぎないと感じた。読むのは大変だったが、
人生の中で読むべき本ではある事は間違いない

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Posted by ブクログ 2019年05月30日

情景がリアルすぎて、自分も地下鉄にいるかのやうな気持ちになってきて具合が悪くなりました。

それだけ、文章が中にグイグイと迫ってきました。苦しすぎて半分でギブです。

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