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「それらを通過する前とあととでは、日本人の意識のあり方が大きく違ってしまった」1995年に起きた阪神淡路大震災、そして地下鉄サリン事件。日本の戦後史の転換期を狙い澄ましたかのようなこの二つの悲劇は、地下--「アンダーグラウンド」から突如噴き出した、圧倒的な暴力の裏と表だった。魂の最奥部を見つめ続けてきた作家が、62人の関係者への丹念なインタビューを通じて浮かび上がらせる現代日本の、そして人間の底深い闇。強い祈りをこめた、渾身の書き下ろしノンフィクション。
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Posted by ブクログ
地下鉄サリン事件の被害者へインタビューをしてまとめられた作品。 村上春樹さんの文体で読みやすい内容ですが、 今までの報道では被害者を数字でしか知り得ませんでしたが、1人1人の人生苦悩があることを改めて実感し、改めて事件の悲惨さを感じることができました。 また、多くの人の人生を覗き見ることができたよ...続きを読むうで、たくさんの気付きや発見もありました。
今からちょうど30年前の1995年は、1月に阪神淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件と、連続して日本を震撼させる出来事があった年として銘記される。戦後50年の節目の年でもあり、バブル崩壊後の平成不況が続くさなか、全日本国民にとって「終わりの始まり」の年となったと言ってよい。1995年以後の30年は、そ...続きを読むれ以前の30年とは明らかに違う。「以前」が上り坂だとしたら、「以後」はずっと下り坂だ。 当時25歳だった自分はどう感じていたか。もちろん事件には驚愕し、テレビの報道映像に釘付けになったが、その時点では、今が「現代史の分岐点」とまでなるとは思っていなかった。自分にとっては4月から新たな就職先での仕事がはじまることと、3月に彼女にフラれたことの方が大きな事件であった。個人史的にも、1995年は特筆すべき年である。 『アンダーグラウンド』は数ある村上春樹作品の中でも異色のものである。インタビューによるノンフィクションという形式も、アメリカではよくあるようだが、日本では珍しいのではないか。 作者は「はじめに」で、700ページを超える大部のこの著書をものした動機について、次のように語っている。 「取材において筆者がまず最初に質問したのは、各インタビュイーの個人的な背景だった。どこで生まれ、どのように育ち、何が趣味で、どのような仕事につき、どのような家族とともに暮らしているのか――そういったことだ。(中略)そのような姿勢で取材したのは、「加害者=オウム関係者」の一人ひとりのプロフィールがマスコミの取材などによって細部まで明確にされ、一種魅惑的な情報や物語として世間にあまねく伝播されたのに対して、もう一方の「被害者=一般市民」のプロフィールの扱いが、まるでとってつけたみたいだったからである。」(pp.27~28) 『アンダーグラウンド』の主役は「巻き込まれた一般の人たち」であり、それは私やあなたである。「オウム」という特別な人たちではない。ここがポイントだ。今から30年前、月曜日の朝の通勤時間にいつも通り地下鉄に乗っていた、父親や母親、息子や娘であった普通の人々だ。 インタビューを受けた人たちの口から、「ああ、確かにあの頃はそんな風に考えてた」「そんな風に感じていた」と思わせる言葉がたくさん出てくる。まさに時代のドキュメンタリーである。
地下鉄サリン事件に関するドキュメンタリードラマを観て、自分が30年前にニュースで見聞きした印象とずいぶん違っているような気がして、この本を手に取った。 実際にサリンを吸ってしまい被害に遭われた方たちのインタビューである。いろんな方がいて、いろんな人生があり、この日もいつもの日常の延長が始まるはずだ...続きを読むったのに、たまたまあの時間に、日比谷線・丸の内線・千代田線のいずれかに乗ってしまったために、サリンの被害に遭ってしまった。亡くなられた方や重い後遺症を負ってしまった人たちもいる。 私はあの事件をニュースで見た時に「怖いな」「なぜあんな見るからに怪しい宗教にはまる人がいるんだろう」とは思ったが、被害そのものに対する解像度は低く、そのまま30年が過ぎてしまった。この本を読み、個々の人生の日常が大なり小なり破壊されてしまったことが、とてもリアルに伝わってきて、やっとこの事件の凄惨さを実感できたような気がする。 今またオウムの後継団体に入信する若者が増えているという。あの事件がどんどんと遠い過去となり、風化していく前に、特に若い人たちはこの本を読んでほしいと思う。
あれから30年。被災に遭っていたので地下鉄サリン事件のことは、ほとんど知らなかった。当日、被害にあわれた方々の生の証言は、30年たった今もまざまざと色々な感情が感じ取れる。真面目だけど生きづらい人を取り込む宗教の上層部や自分の保身にあたる組織の上層部には怒りしかわかない。30年たって、果たしてこの事...続きを読む件の教訓が生かされているだろうか?この本を作った著者、製作者、証言者には頭が下がります。
テレビに出ていたサリン事件。まだ私が生まれてない時だったので、そこまで詳しく知りませんでした。 この本を読んでたくさんの被害者の証言で感じた事は、サリンの副作用の恐ろしさに大変恐怖を感じました。2度とこのような悲惨な事件を起きない事を願うばかりです。
地下鉄サリン事件当日何があったのか、村上春樹による綿密な調査とインタビューによってリアリティをもって知ることができた。 事件の被害者の方のバックグラウンドが書かれており、事件の前後で何が変わりどのような影響をもたらしたのか興味深く読むことができた。 被害者の方々にはそれぞれの人生がありストーリーが...続きを読むある。 ドキュメンタリーを超えた人生ドラマが私を強く惹きつけた。 また、被害者方の何人かは偶然事件に巻き込まれていたり、あるいはいつもと違う行動を当日とっていたことにより被害が軽症であったりした。また、不思議な体験をされている方もおり、そういうこともあるのだなと感慨深く感じた。
わかりやすい構図、伝えたいこと、そんなレールに沿って語られる物語より、アトランダムに取り上げられた物語から出来上がった総体から、やんわりと感じられる何か、そんなものが私を惹きつける。 ジャーナリズムだって、その例外ではない。というか、ジャーナリズムこそ、そうあるべきなのかもしれない。 こんなに熱が...続きを読むこもっているのは珍しいくらいに、熱いものを感じるあとがきの「目じるしのない悪夢」は、今回のテーマを超えて、普遍的なメッセージとして心に響いた。 「…あなたが今持っている物語は、本当にあなたの物話なのだろうか? あなたの見ている夢は本当にあなたの夢なのだろうか? それはいつかとんでもない悪夢に転換していくかもしれない誰か別の人間の夢ではないのか?」
【2024年141冊目】 1995年3月20日、東京の地下鉄で起きた無差別テロ、地下鉄サリン事件。作家村上春樹がその被害者や関係者総勢62名に対してインタビューを行った生きた記録である。あの日、東京の"アンダーグラウンド"で、一体何が起こったのか。迫真の一冊。 きっと★いくつと...続きを読むかで評価をつけるべきではないのだろうと思いつつ、少しでも高評価であることで、手に取る人が増えると良いなと思って★5にしました。 文庫本にして777頁、しかも多くの頁は2段組という恐ろしい文量の一作です。読み進めるのにかなり時間がかかりました。一気読みはとてもできなかった。 本著が書かれた時よりも被害者数には変化があり、死者は14名、負傷者は6,000名を超えるとされています。正に未曾有の事件です。 本作において、被害者ひとりひとりの証言はまずそのバックグラウンドから語られ始めます。どのように人生を生きてきたのか、そしてサリン事件の前後でどのように変化があったのか。 あまりにも生々しい証言の数々。そこから読み取れるのは、オウム真理教への怒りと困惑でした。理解ができないことが起こったというのが正しいのかもしれません、判断の範疇外の出来事すぎるのです。 巻末で村上春樹さんが「意識をして逸らさなければならない存在」というように形容していて、なるほどなと思いました。無視をするには、少しだけこちらの世界に足を踏み入れている、そんな感じだったのかもしれません。 この本はもっぱら電車移動の時に読んでいましたが、人間の世界は性善説でなんとか均衡が保たれていて(もちろん事件は起こっていますが)こういった大事件は、起こるかもしれないという想像さえつかなかったはず。現に、この本を読むまで、電車という密閉空間の危険性について忘れていたくらいなので(サリン事件の時、まだ小学生でした) 少しボリュームがありすぎるので、なかなか気軽に読むには決心がいりますが、何百年先まで語り継いでいくべき一冊だと思います。
ぽん先輩が「これはただのノンフィクションではない」って言ってたけど、その意味がわかった。 本当に事実だけが、彼らが証言したことがそのまま書かれている。 だからサリンの匂いについてだったり犯人たちへの思いだったり、同じことを言ってるなと思うこともあれば違うことを言ってる人もいて、人間の個性が出ていて興...続きを読む味深いものだった。 わたしは信仰心に漬け込んで悪事を働いたオウム真理教が許せないけれど、本屋に足を運んでもそれ関連の本はなかなか見つからない。あれだけの凶悪犯罪なのに、肖像権の問題があり当時のニュースなどは残っていないし、仕方ないことかもしれないが忘れられようとしている気がする。風化させないようにしたいと思った。
村上春樹による「オウム地下鉄サリン事件」の被害者たちへのインタビューに基づくノンフィクション。文庫本で600ページ以上という大作。 この作品は読む前に期待していたものよりも、もっと多くのものを含んでいると感じた。 その内容は大別して2つに分けられる。「被害者たちの体験の追憶」とそこから著者によって...続きを読む分析される「地下鉄サリン事件とは何なのか」である。 前者は圧倒的な取材量がベースとなって描かれる、サリン事件の被害者たちのリアルである。著者はこの作品を書こうと思った動機として、当時のメディアが被害者たちを「傷つけられたイノセントな一般市民」としてしか描いておらず、彼らのリアルが明らかにされることがほとんどなかったからだと冒頭で語っている。 メディアは、オウム(悪・狂気)と被害者(正義・正気)という単純な二項対立を描くために、被害者たちの「顔」(個性)を排除したのだ。 対して村上春樹は、被害者たちが事件の当時どんな目に遭って、どう感じて、今(取材当時)どう生きているのか、を率直に綴る。 このリアルに圧倒された。 被害の大小に関わらず、被害者たちの人生と生活は事件の前後で一変してしまった。それが痛々しく伝わってきた。 特に、こうしたイレギュラーな大事件は人が平時に信じている価値観や「軸」、大事にしているもの、アイデンティティを浮き彫りにするのだと感じた。事件の後、多くの被害者たちがより一層自分の生き様を考えて、それに偏るようになったと語っている。 そして「地下鉄サリン事件とは何か」という問題。 村上春樹はこれに対して、いずれこの大事件が単なる「狂気の集団によって起こされた異常な事件」「都市伝説的な犯罪ゴシップ」と見做されてしまうようになることに多大な危機感を持っていると書いている。 実際、事件の後に生まれた自分もこれに似たようなイメージを持っている。この2022年において、大多数の日本人がそうだと思う。村上春樹の懸念は当たったわけだ。 では村上春樹が分析する「地下鉄サリン事件とは何か」とは、「オウムの狂気は我々の中にも存在する」という事実である。 つまりオウムとは「自律的に目標を追求する意志を抑えつけるシステム(高度管理社会)への反抗」であり、これは誰しもがうちに抱えている問題だとするのだ。 この分析は傑出した洞察かと思う。実際、インタビューの中で「彼ら(オウム信者)の気持ちも分かるんです」という被害者もいた。 個人的にもこの分析は当たっていると思う。自分の中にも社会に反抗して自律的パワープロセスを追求したい気持ちはあるが、それに見て見ぬ振りをして上手く社会に溶け込んでいる。多かれ少なかれ人はそうした感情を持っているのではないか。 麻原彰晃は人のこうした感情を非常に上手く焚き付けて、魅惑的でシンプルなストーリーを説くことで信者を獲得していった。信者は麻原についていくことで自尊心を満たし、代わりに自我という対価を渡した。 「地下鉄サリン事件」は正義と悪の単純な二項対立ではなく、我々の内にも存在する負の感情の表出である。それを理解しなければ、今後第二のオウム、地下鉄サリン事件が出てくるだろう。 今からでも学べることはあるのではないか?
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