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Posted by ブクログ
凄く面白い短編集だった。
今まで、蛍その他短編集、パン屋再襲撃、女のいない男たちを読んだが、パン屋再襲撃の次に好きな短編集となった。
内容としては相手の奥行きを測り損ねてしまう、正確には覗き込もうとするがその輪郭は当事者にしか掴めないということを多面的に述べていた短編集だと思う。
タイトルにもなっている、中国行きのスローボートや午後の最後の芝生、土の中の彼女の小さな犬など、初期の村上春樹が持つ物語を曖昧に操作する力が上手く働いた作品が多かったと思う。
輪郭が曖昧で、道が川のようにスルスルとしており、それこそ風の歌を聴けのように全体の空気感とファクター、小物でニュアンスを操作しているものが多かったように思える。
それでいて、併せ持ったポップさと現代にも通じる感性、空気感それらがとても心地よい。
最後の話、しりつたんていは子供向けに書かれた小説なのであろう(巻末より)が、それもとても面白い話だった。
結局は、相手を想像して、努力をするがそれがフロイトだか、想像力だかそんな適当なもののお陰で何となく浮かび上がり何となく消えていくのだ、我々はきっとそうやって人と結びついて、孤独に生きているだと思う。
主人公は、庭や動物園、そこに住む人を言い当てて想像することができる。しかし、それは大変疲れてそれでいてそこに立ち入ったとしても何も感じることも匂いを嗅ぐこともできないのだ。
我々人間にはきっとそれぞれみんながそんなスペースを抱えているのだろう。
Posted by ブクログ
中国行きのスロウ・ボート
2025.08.09
主人公が出会う3人の中国人。彼らはみな淡々と語り、どこか寂しく感じるようなふるまいをしている。ゆっくり読まないと気付かないようなさりげない空気感で描写していた。物語の最後には居場所のない中国人と自分を重ね合わせ、現状から抜け出して居場所を求めたいという気持ちがうかがえるものの、逃げようというよりは受け入れざるを得ないような仕方のない状況にあることを表現。「スロウ・ボート」によって示し、なんともいえない状況に陥っている様子が感じられる。
居場所のなさがこんなにも淡々とした虚しい世界を生み出してしまうのかと怖くなった。同じ境遇の中国人たちと自分で新たな居場所をつくったら少しは良い方向へ向かいそう。
Posted by ブクログ
以前、文庫版を古本屋で購入したのだけれど、紙が焼けていて、それでも大切に読んだ本だった。
今回、ハードカバーで復刊すると知り、当然ながら購入。嬉しい。
文庫版の自分のレビューを読むと、「カンガルー通信」を読みたくて買ったようだが。
読んでから、ずっと記憶に残っているのは「中国行きのスロウ・ボート」だ。
それも、バイトの同僚の中国人の女の子とのパートが、ずっと残り続けている。
ネタバレになるのだけど、良い雰囲気になった中国人の女の子を、家とは反対方向の電車に乗せてしまった、あの出来事は本当に偶然なんだろうか。
そう考えると、そもそも偶然って何だろうとも思うのだけど。
中国人の女の子を騙そうという明確な悪意がなかったとして。
いろんな無意識、無自覚の織りなす糸が絡まって、偶然が作り出されてはいないのだろうか。
中国人の女の子の落胆は、「考えすぎ」なものとして流してしまって良いものなのか。
未必の故意は、私たちの意識の奥深くで、しっかりと輝いているのかもしれないし。
ちょっとしたアンラッキー、と済ませてしまうことに、もしかしたら何らかの意味があるのかもしれない。
そんなことを一つ一つ疑って生きてはいないのだけれど、読むたびに、いつも、この話のエンディングの意味合いは「変わらない」ように感じる。
そんなわけで、私にとって大切な物語の一つだと言える。
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小説・文芸
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