あらすじ
「それはメリー・ゴーラウンドによく似ている。それは定まった 場所を定まった速度で巡回しているだけのことなのだ。どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない。誰をも抜かないし、誰にも抜かれない」人生という回転木馬の上で、人は仮想の敵に向けて熾烈なデッド・ヒートをくりひろげる。事実と小説とのあわいを絶妙にすくいとった、村上春樹の8つのスケッチ。
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著者が人から聞いた話を元に小説風に仕上げている。どの話も不思議な余韻がある。レーダーホーゼンはドイツの仕立屋で旦那と同じ体型の男にズボンを仕立ててもらう。その間に自分の中で家族への怒りに気付きそのまま一度も会うことなく離婚する。絵画の目利きとして、修行中に無名の画家から買い取ったタクシーにのった男、何十年後にアテネのタクシーで同じ格好の男と話をする。電話がかかってきたら、嘔吐するのを1ヶ月続けた男の話。
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わたしの、あなたの、記憶の断片たち。そのどれもが創作物で表すことの難しい魅力を秘めていた。中でも『タクシーに乗った男』、『プールサイド』、『嘔吐1979』、『野球場』が好みであった。
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家庭を奇妙って言ったり生を他者の死の喪失感によって規定されるとか言ったり、普段向き合おうとしない1つ1つの言葉に新たな視点を持たせてくれる文章が本当に大好き
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ハルキ氏の短編集で一番、好き・・というか身近にとらえられる。
と言えども、彼の洞察力のかけらもない私には、回転木馬の様にデッドヒートをする感覚はない。
ぼんやり文字を追って、五感のアンテナに澱が引っかかっていて・・時を経てリフレインされるようなニュアンスが好きっていうべきかな。
ドビュッシーは若い頃も今も、そうそう好みではない。
しかし欧州のピアニストのいくばくか、彼の楽曲にほれ込んでいるという。イタリア・ベルガモの景色の叙情感が彼のイマジネーションを掻き立てたと聞いたことがあるが・・そんなこんながこの短編集を読んでいると脳の片隅にジュワッと浮上してきた。
亡き王女のためのパヴァーヌというあのメロディーが脳内に鳴り響く・・して、短編を読むと、一見脈絡な内容でイメージが繋がっていくのが不可思議
数回目の今回は「レーダーボーゼン」が良かったな。
妻が心を決めた一瞬、一見不可解なようで、そもそも人生は不可解なんだと納得させられた。
それと・・人は記憶を消し去ることはできない。消え去るのを待つしかない。妙に心に刺さる文だ。
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これまで読んだ村上春樹の短編の中では一番おもしろかった。どこまで本当のことを書いているのかわからないけど、建付けとしては、作者である村上が、実在の人間から聞いた本当の話を誰だから分からない程度に書き換えてまとめたものということになっている。
人間の掴めそうでつかめない心のニュルっとしたところを、つかめないのでそのまま文章にしましたという感じの短編集で、どの短編にもこの物語でしか感じられない「感じ」が詰まっていてとても好きだった。
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着眼点やテーマが独特でおもしろい。
なぜその話をしようと思ったのか。そして必ず疑問形で村上さんに語りかけてくる登場人物たち。
人と話そうと思ったって、そんなにすぐに出てこないような話を短編でまとめあげる能力がすごいなと。
村上さんの独特の言い回しにも落ち着きを感じるようになってきた。
これが村上ワールドか。
今年に入ってから本を40冊読む目標を立てたのだが、読み終わることが目的となって、目の前の本とちゃんと向きあえていない気がしていた。本は1冊ずつ読むのではなく少しずつ色んな本を同時に読めばいいのでは、と思い、この本は、1日に1編ずつ、少しずつ読んだ。余韻も楽しんだ。最後は駆け足になってしまったが、久しぶりに本を大事にできた気持ちになれた。
109/140
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『類は友を呼ぶ!?小説のような聞き語り短編集』
小説でもノン・フィクションでもない他人から聞いた話を春樹フィルターを通して書き記した8つのスケッチ集。回転木馬のデッド・ヒートのように、最後に残るのは無力感…
でも、その過程には独自のドラマが刻まれている。
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どこかで読んだことがあるような気がする。
けど似たような話が多いからよくわからんなあ。
一応実際に起きたこと、として語られる。ほんとにそうなのかもしれないしフィクションなのかもしれないけどそこはあまり重要ではない。
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4.2/5.0
テンポの良い会話や、簡潔な文章の中に、人間の些細な変化や繊細な部分が鋭く描かれている。
全編に渡って、なんというか凄くお洒落で、じんわりと温かくなるような不思議な文体。
物事に対して優れた感受性を持っていないとこういう小説は書けないんだろうな、と感じた。
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すごいサクサク読める。
そして裏切らない。
よく、登場人物の伝聞がストーリーになっている気がするけれど、
ほんとうに、自分もその人の話を一緒に聞いているようで、
その親近感か何かがとても落ち着く、というか、
普段のテンションで、読める、というか、
ちょっと奇妙な、そんなこともあるんだ、みたいな、
いつのまにか不思議な世界に引き込まれている感じ。
本当に正直に伝えるところが、
やっぱファン・ボルムさんの本にもあったように、
登場人物は、現実の人間だと隠しているようなことも読者に分かるように伝えられることが特徴的だ。
なかなか聞けない話、知れない事実、見れない情景、などなど。
そして村上春樹さんのショートストーリーは、
シーン、セッティングが多岐に振れて、
次はどんな人たちと出会えるんだろう、
と思いながら、
なにかと普遍的な、共通するような、
人間の不思議みたいなものがあるような、
そしてそれがたんたんと、
語られることで、
ああ、こういう体験も、あるのか、
こういうひとも、いるのか、
こういう考えも、持ったりするか、
と、
想像を膨らます。
と分かったようなことを書きながら、
おりのようなもの、って何だろう…
Posted by ブクログ
作者が人から語ってもらった話をもとに作られた短編集。「話してもらいたがっている」といわれるそれらの作集にはさまざまな人々の生き方や考え方が描写される。個人的に好きな話はプールサイド。私自身も水泳をやっていた経験があるのもあり、自分の人生の折り返し点を定めるという考え方はとても共感を得た。後5メートルを何回分、そんな気持ちで泳いだこともたくさんある中で、自分の人生を水泳に見立てるととりあえず今の時期を必死にもがくことの大切さや、もがきを繰り返すといつか振り返った時に道が後ろに見える、折り返しを定めることでもう一度奮起したり、終わりに向かってどのように生きるかを計画したり、できそうな気がする。
私は今三十代前半、一度折り返し点をどこかに定めても良いと思った。
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小説ではなく、聞いたままの話を文章にうつしかえたものの集まり。(作中ではスケッチと表現)。
確かに、何かの示唆だとかテーマ性を持っているだとかいうお話達ではない、だけど面白い。
ただ、下記の文章は刺さりました。
『自己表現が精神の解放に寄与するという考えは迷信であり、好意的に言うとしても神話である。少なくとも文章による自己表現は誰の精神をも解放しない』
『自己表現は精神を細分化するだけであり、それはどこにも到達しない。もし何かに到達したような気分になったとすれば、それは錯覚である。人は書かずにいられないから書くのだ。』
お気に入りは、
ある女性の母が、ドイツで半ズボン(レーダーホーゼン)を買う際に離婚を決意するに至った『レーダーホーゼン』
画廊の女性オーナーが、かつて一番衝撃を受けた絵について話す『タクシーに乗った男』
『今は亡き王女のための』も淡いエッチな感じと喪失感が程よい。
ラストの『ハンティング•ナイフ』が一番わからなかった…
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不思議な短編小説
冒頭のこの小説のスタンスについての説明がとても好きだ
あくまでどこにもいかない、ただただ書かれることを望んだ物語たち
こういうのもっと読んでいたい
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読んでいるうちに忘れてしまって、レビューを見て思い出した。
この話全部本当の話なの?
これほど不思議で奇妙な話を持っている人がいることにも驚くが、やはりそれを文章化して引き込ませる村上春樹がすごい。どの話もオチらしいオチはないし、びっくり!と言いたくなるような話もない。
だけど、現実の話だからしっかり現実味があって、でもどこか現実離れしている。特に「嘔吐1979」なんかそうだ。まず題名から気に入った。これを読むにあたって、主人公がなぜ嘔吐し続けたのか。電話の主は一体誰だったのか。を考えることは意味がない気がして、読んでいる時は考えなかった。
野球場が1番好きな話だ。人間の汚さと言うか自己中心的な部分が現れてて読んでいて楽しかった。映画化すると面白そう。全体的にどの話も流れがゆっくりで季節もわからなくて現実味がなかった。何度も言うが、これが現実に起こったとは考えられない。
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春樹くんにしては意味のわかる短編ばかり。
普通に面白くて一瞬で読めてしまう。
特に『プールサイド』や『ハンティング・ナイフ』など、凡人が書いたら小話にもならないような平々凡々な話を小説に昇格させているのは天才としか言いようがなく、自分には小説は書けないと読めば読むほど強く思う。
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初・村上春樹でした。
小説とは言い切れない短編集。誰かから聞いたアイデア集のようなもの、というけれどどこからフィクションでどこからがノンフィクションなのか曖昧さも含めての作品集だと思う。
文章のリズム感が独特で、読んでいてこんなに楽しい気分になるのは珍しい。村上春樹の作品が好きな人の気持ちがわかる気がする。
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かなり読みやすい作品であった。
しかし、各々の作品の深みまではわからなかった。
この時代の若者は性にも奔放であり、バー、クラブに通うのが普通らしい。
今って、そんな感じの人いるのかな?
俺の生活圏内にいないだけなのか?
これから引っ越すので、引っ越し先では積極的に外に出てたくさんの人と関わりを持てるようにして、見識を広げたい。
『しかし例外は認められんのです。この不確かな世界の中で、信用ほど得がたくそして崩れやすいものはないのです。(p.31-32)』
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2025/04/19
初めて村上春樹を読んだが、とてもよかった。老いについて触れている話がいくつかあり、自分もアラサーに差し掛かっているため、自分ごととして読むことができた。
半分エッセイ、半分小説というような立ち位置の読み物。
なんで今まで読んでこなかったのだろう、、
少しずつ読んでいこう
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何故だか定期的に村上さん家の春樹さんを読みたくなる。
取り立てて「面白い!」と思ったことは一度もないのだが、読みたくなる。
これが春樹の実力なのか。
1Q84をいつ読むか、それが問題だ。
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ここまで長編・連作を読んできた村上春樹の短編集を手に取ってみた。
ここでも登場する、悲しみを分かち合いは、彼の作品の根底に流れているものだと感じた。
年を取ることの利点の一つは、好奇心を抱く対象の範囲が限定されること。解ってはいるのだが、抗っていきたい。
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聞いた話を物語(小説)にした短編集。ただ聞いた話をそのまま文章にすればいいわけではなく我慢強さというフィルターをとおして、村上氏自身のなかに溜まっていってこの物語を作ったと序文で言っている。人から聞いた話だからリアリティなのかと言えば、なんかちょっと不思議なこともあったりして、やっぱりそこは村上春樹っぽさ(視点)なのかなあとか。
個人的には「雨やどり」と「ハンティング・ナイフ」が好きでした。ハンティング・ナイフの最後はどういう意味だったんだろう。
「野球場」では「小さな灯というのはとてもいいもんです。僕は飛行機の窓から夜の地上を見下ろすたびにそう思います。小さな灯というものはなんて美しくて温かいんだろうってね」というセリフは『グレート・ギャツビー』のギャツビーが見つめる灯のシーンぽいような気もした。
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日頃短編集というものはあまり好まない私でも、楽しく、軽やかに読むことができた。言わば本書は村上作品を嗜む上でのウォーミングアップといったところだろう。
いくつか気に入った話があるが、その一つは「タクシーに乗った男」である。この話には非常にロマンがあり、「現実に起こり得ないようで起こり得ることがあるのだ」という人生に対する期待感を持たせてくれる。
また、「ハンティング・ナイフ」という話に関しても、スプートニクと同様、やはり村上春樹にリゾート地を描写させたらピカイチだと思った。
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センテンスも分かりやすく情景がリアルに思い描けた。
やはり何となくオシャレ。
どの編も異性との距離感がテーマのようだ。
日常の些細なことも角度を変えれば物語になるんだな。その辺りがセンスなんだろうと思った。
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最後のハンティングナイフが印象的だったな
精神疾患の母と足の悪い息子
別れる前に打ち明けるだなって
訳あり親子なんだろうなって想像してたけれど
精神疾患は自分も一時なったけど、他人に言われたくない気持ちもあるし抵抗感あるかな
作者が野球好きなん知ってたけど神宮球場周辺の話じゃないんやって思いながら野球の話読んでたなw
村上春樹作品ほど単語の意味調べる本はないw
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村上春樹を初めて読んだけど思っていたより読みやすかった。
でも多分この本が実在の人間から聞いた話をほぼそのまま書いてあるからだろうな。
実際村上春樹の体験?の話はよくわからなかった笑
村上春樹自身もこれは小説ではなくスケッチと書いていて、起承転結の転や結が全然ないような話なんだけどなぜか読めてしまう。伝え方がうまいんだろうな〜
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身の回りに全身を傾けて感じてみるというのは、きっとまだできない
これからできるのかもわからないけど、1日のうち何分かはそういう時間があってもいいなって思う
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村上春樹さんの小説は定期的に読みたくなります。
最近、村上春樹さんは新作の長編を発表されましたよね。
『1Q84』っていう、二冊組みの長編。すごい売れてるみたい。
このあいだ札幌に行った時に、二軒の本屋になんとなく入ってみたら、
どっちの店でも売り切れでした。重版できしだいうんぬんと書かれてもいた。
読みたいなぁとは思うけど、文庫待ちかな。村上春樹さんの本は
かなり読んでいて、残るところ僅かなのかもしれないので、
新刊で買って読んでもいいんですけどね。
『海辺のカフカ』も文庫で出るのを待ったけど、あの頃に比べて
村上春樹さんの作品に触れた頻度と度合いは深まっている。
さて、今回読んだ『回転木馬のデッド・ヒート』は、短編集です。
まぁ、短編集とはいっても、村上さん曰く、これは「話の大筋は事実」だとして、
小説と呼ぶことについて、いささか抵抗がある、なんて書かれてはいるんです。
でも、「本当?」って思っちゃうような話ですよ。創作でしょ?
そういう「お断り」自体がフィクションだろうと疑って考えてしまいます。
やっぱり文章が上手い人だと思わせられます。たまに村上春樹さんの文章や文体に
接しておかないと、なにか落ち着かないというか、物足りないというか。
春樹さんの文章を読むということは、「お手」と「おかわり」の区別がつかない犬が
ご主人の上手な教え方によって、やっとそれがわかったという時に似た、
簡単な問題へのクリアな思考をもたらしてくれるようなところも、一部あります。
そして、犬に(それも雑種に)よくあるように、また「お手」と「おかわり」を
忘れて元に戻るっていう感じもあって、また教えて~っていう気持ちになったりする。
…って、僕は犬かい。
それはそれとして、それなりの満足感を与えてくれる本です。
文庫なら読んでもいいよね、って感じだったかな。