村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
映画から入り小説→映画と何度もループしてしまう大好きな作品。
ホリー・ゴライトリーの奔放な美しさと、その裏側にある苦悩、自由を求めるあまりその自由に苦しむ、ホリーの言う"いやったらしいアカ"は、現代人、とくに都市で生きる僕らに通ずるものがある。
オードリー・ヘプバーンのキュートさがこの作品を有名にした一助であることは間違いないが、物語としては小説の方が好みである。映画版の結末はややご都合主義というか、映画を見終わった人たちが肩透かしを喰らわないように配慮したのでは、と感じる。小説の結末の方が、ホリーというどうしようもなくは魅力的な人間の内面を表していると思う。 -
Posted by ブクログ
村上春樹は20年近く続けてきた一人称「僕」で小説を書くことがだんだん息苦しくなってきて、『ねじまき鳥クロニクル』(1994)を最後に、三人称での語りを取り入れたみたい(参考文献:村上春樹『職業としての小説家』新潮文庫)
『1Q84』は、カルト集団のリーダーを暗殺した青豆と、青豆と特別な関係を持つ天吾の2人の三人称の語りで交互に物語が進んできたけど、この巻からはまさかの牛河(カルト集団に雇われた醜い容貌の追跡者)の語りも加わった!
青豆と天吾の周囲には時空や次元を超える不思議な世界があるけど、そこに現実世界の牛河が加わることで、スイカに塩をかけて甘さを引き立たせるような効果が生まれた
とこ -
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村上春樹さん 文藝春秋2016年10月発行
短編6つ 読んだあとちょっと寂しさが残る物語
・ドライブ・マイ・カー
専属運転手みさきの本籍地「北海道上十二滝町」って「羊をめぐる冒険」では十二滝!なんか嬉しい
・イエスタデイ
聞いたことはないけど、へんてこな歌詞がとても気になる…
・独立器官
恋煩いで亡くなってしまう
その選択は、身近な人にはとても辛い
・シェエラザード
片思いの彼の家に、あえて留守に行ってしまうところは、ドキドキする
・木野
路地の奥の小さな酒場で、古いLPレコードを聴きながら過ごしてみたかった
・女のいない男たち
なにはともあれ、電話をもらったせいで思いを巡らせる…そうでな -
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「タフな精神力と母親からの愛、引き継いできた者たちの記憶を力に、一方的な力によって引き受けざるを得なかった強烈な悪意を断ち切る。」
物語を一言で形容するとこんなところでしょうか。
「世界で一番タフな少年になる」というのは大きく出たなと思っていましたが、カフカ君は実際めちゃくちゃタフですよね。自分が15歳の時って何してたかなって考えると赤面してしまいます。
物語は主にカフカ君とナカタさんの視点で語られてますが、カフカ君は今を生きる若者、ナカタさんは悪意を受け止めされられた存在、という具合で読めますよね。
私自身、村上作品は何冊か読んできました。その中で、ただ健気に生きている人に強烈な悪意 -
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(ドライブ・マイ・カー感想)
村上春樹の小説ってどうしてこんなに感想を書くのが難しいのだろうか。セックスについて語る事もままあるし、浮気(?)のようなテーマを扱う事も多い。しかしとても上品でメロドラマのような下品な感じは無い。いつも思うのだがこの人は文章から作者がどんな人物なのか掴めない。いや掴めない人物だということが感じ取れる。何事もしっかり受け止めてから過去に流しているというか、落ち着き払っていて達観しているのかと思えば弱い人間を描く事も出来るのが不思議というか。雲を掴むような、霞を食らっているような文章で酷い言い方をすれば印象に残らない、のだが言外の余韻のようなものが心地よくて結局読んで -
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ネタバレ『街とその不確かな壁』を読んだので、こちらも読みたくなり再読。
やっぱり私にとってはこの作品が村上春樹の最高傑作である(結構多くの人にとってそうだとも思いますが)。
以下、下巻の感想もまとめて書きます。
上巻の何かが起きるワクワク感は本当にたまらない。
設定も突飛ではあるし、かなり説明少なく読者の想像に任せる部分も多いのだが(やみくろとか)、そういうものとして淡々と進むから逆に違和感なく読めるのが不思議。主人公がいちいちびっくりしないのも受け入れやすさに影響してるのかもしれない。
とにかく話の展開と構成力、こちらの想像をかきたてる描写力にグッと引き込まれてしまう。
下巻はさらに物語に引き込 -
Posted by ブクログ
ネタバレ全6巻の小説だから最終巻で描かれるんだろなと予想していた出来事が全部もう起きた!
これまで読んだ本、観た映画の中でも断トツに醜悪でおぞましい、カルト集団のリーダー
そのリーダーの暗殺を請け負った優秀な女アサシン青豆
青豆が同情のカケラもなくリーダーを瞬殺してくれることを信じてここまで読み進めてきた
この巻で両者が接触し、青豆との会話の中でリーダーの鬼畜の所業の理由が明かされる
それは時空を超え、次元をまたぎ、作用反作用の法則に従うものだった
そしてそれを読んでいたら自分でも驚くことに、リーダーを消し去って欲しい気持ちに揺らぎが生じた
物語の青豆も暗殺を躊躇っている
思考の深奥から、闇の奥 -
Posted by ブクログ
一冊をひとりで翻訳する、それは孤独な作業。道をひとりぽっちで歩いてゆかねばならない。本書はその旅のおともになる。弱気になった時に読み返すと、少しだけ元気をもらえる。
3つのフォーラム――1996年東大駒場、1999年翻訳学校、2000年若い翻訳家6人と――を収める。若い翻訳者のなかには、25年前の岸本佐知子や都甲幸治もいる。
カーヴァーとオースターの短篇を村上・柴田がそれぞれ訳している、その比較が興味深い。もともと波長が合うためか、ふたりの訳文がそんなに違っていないような印象も受ける。
村上も柴田も勢いがあるのががいい。まだふたりとも、ほぼほぼの40代だもん。