村上春樹のレビュー一覧

  • 羊をめぐる冒険
    都会で暮らす平凡なサラリーマンがあることをきっかけになんだかよくわからない茫漠とした世界に入り込んでしまう。そんな基本構図はその後の村上春樹の小説の原型になっているのだろう。全作品を読んでいるわけではないけれど、『羊』がやっぱり一番好きな小説だなと感じる。
    北海道という土地の持つ欺瞞・因縁とそこから...続きを読む
  • ねじまき鳥クロニクル―第3部 鳥刺し男編―(新潮文庫)
    「ねじは巻かれた」

    ゆるみかかっていたねじは、最後には巻かれた。
    岡田享さんは、その最後を担ったのではないでしょうか。

    正直読むのにはかなり時間がかかりました。
    精神世界から実社会、向こうとこちらの行ったりきたりで、考えることが多かったからです。

    さて、
    私たちが生きるこの社会は悲しいかな、理...続きを読む
  • パン屋再襲撃
    なかなか理解させてくれない、この短編たちに心惹かれる。でもどうしたって分かりたくなってしまう。

    『パン屋再襲撃』は、「愛を描く世界の秀作短編シリーズ」という女性雑誌に掲載されたらしい。それを知ると、
    犯罪を犯してまで、夫を救済しようとする妻の行動‥確かに、ここに描かれているものは愛である。互いを想...続きを読む
  • 街とその不確かな壁
     村上春樹の小説は、ノルウェーの森に続き2冊目になるが、かなりファンタジーな独特の世界観と予想のつかない展開で、気持ちよく読み進めることが出来た。
     自分は、基本的に物語の伏線を回収していきながら、はっきりとした結末を迎える筋書きの小説が好きであるが、その点でいえば白黒はっきりとした筋書きの小説では...続きを読む
  • 国境の南、太陽の西
    主人公は優しくて一歩先を歩んだ奥さんがいてよかったと思った。独身のまま島本さんを失っていたら、イズミみたいに表情を失った状態になったり、肉体までも死を迎えてしまっただろう。みんな誰かを一方通行に思って生きていて、真の両想いなんて無いんじゃないかって思える物語だった。それは辛いことだけど、私には現実味...続きを読む
  • 東京奇譚集(新潮文庫)
    特に『偶然の旅人』と『ハナレイ・ベイ』が好きだった。
    サチみたいな女性に憧れる。

    品川猿が目的で読んだ本だったけれど、読めて良かった。
    『品川猿』もそこで出てくるんだ、と。

    今度はもう一度、一人称単数の品川猿を読み返してみたい。
  • 国境の南、太陽の西
    自分が20歳の時に1回読み、10年経った30歳の今もう1度開いてみました。
    スラスラと読める、本当に読みやすい小説だと思います。

    主人公の激しい感情の動きも共感できますが、お父さんとの関係も含めて全体的にリアルなんですよね。

    10年前に読んだ時は、鮮明に描かれた肉体的描写のイメージが強く残ってま...続きを読む
  • 職業としての小説家(新潮文庫)
    物書きとして、人生を賭して生きてみようという勇気を喚起された。村上春樹さんの生き様、息遣いがボクの心身に染み渡った。
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)(新潮文庫)
    再読。

    ここまで美しさを感じる著作に触れたことはない、そう思わせる程秀逸な作品。二層構造が重なり合う文学、アニメ、映画は様々あるが、これが一番良い。

    まごう事なき神作品。
  • 街とその不確かな壁
    日常の出来事から滑らかに非日常の出来事に移っていく展開で物語はすすむのですが、すっかり、世界観に惹き込まれました。

    かなり個人的ですが、人には、「陰陽」「理と本能」「現実と理想」…等、二極なるものに自分なりに折り合いをつけながら生きている。そんなことを思いながら読みました。


    別視点のハードボイ...続きを読む
  • 海辺のカフカ(下)(新潮文庫)
    世界観に飲み込まれているうちにいつの間にか読み終えてしまった。理解できる部分とよくわからない部分と色々でしたが、何故か没頭してしまう。中毒性のある文章がさすがでした。
  • ラオスにいったい何があるというんですか?
    本書は、村上春樹(1949年~)氏が、1995~2015年にいくつかの雑誌のために書いた紀行文をまとめたもの。大半の初出は、JALのファーストクラス向け機内誌「アゴラ」(但し、雑誌に掲載されたものより長いバージョンだそう)で、その他は、雑誌「太陽 臨時増刊」、雑誌「タイトル」、雑誌「クレア」である。...続きを読む
  • 世界で最後の花 絵のついた寓話
    兵隊たちが行進し、突撃する絵が不気味です。戦争は今やそれで儲けたい人がさせているものだと思っていますが、始めさせるには多くの妬みや憎しみの種をまかなければならないのでしょう。やってみればきっと人を殺すことはとてもイヤな感じがするものだろうに、続けてしまうのは感覚が麻痺してしまうから?戦争は下手をした...続きを読む
  • 海辺のカフカ(上)(新潮文庫)
    1Q84・ノルウェイの森をものすごく時間をかけて読んだので、自分に余裕が出来たら読もうと長年積んでた作品。思いがけず読みやすく世界観にグイグイ引き込まれました。もっと早く読めばよかったと後悔。
  • 国境の南、太陽の西
    面白かった…。どれもわかる…というところがあって、おしゃれなジャズが流れるバーに行きたくて仕方がない。

    …もちろん僕はイズミを損なったのと同時に、自分自身をも損なうことになった。…その体験から僕が体得したのは、たったひとつの基本的な事実でしかなかった。それは、僕という人間が究極的には悪をなし得る人...続きを読む
  • 村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた(新潮文庫)
    「村上朝日堂」シリーズ(シリーズと言っていいのかな?)
    マサチューセッツ州ケンブリッジ(ボストンの隣)に住んだ、1993年から1995年にかけての滞在記で、村上さん44歳から46歳のころ。
    日記であり、紀行。
    紀行文好きの私としては、村上さんの紀行文が読めて、とても楽しかったです。

    安西水丸さんが...続きを読む
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)(新潮文庫)
    ◯生
    第一回路=ハードボイルド・ワンダーランドの私
    第二回路=影
    第三回論=世界の終わりの僕

    ◯死

    第一回路の私は失われ、第三回路に融合した?


    『ねじまき鳥クロニクル』の井戸(=id)しかり、『ノルウェイの森』の直子しかり、分裂症的世界観よく描かれる
    人生は深い悲しみに満ちていて、別れや人...続きを読む
  • みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る―(新潮文庫)

    村上春樹の解体新書

    村上春樹さんがどのように物語を紡いでいるのか、何を大切にしているのか、どのような手順で推敲しているのか。そういうあらゆる興味深いことを同じ作家の川上未映子さんが余すことなくインタビューし、それを包み隠さず村上春樹さんが答えているという濃厚なインタビュー。

    そしてこのインタビューを通してわかったこと...続きを読む
  • 街とその不確かな壁
    思ったより分厚くて怯んだけれど、中身は私が一番馴染んでいた頃の村上春樹だった。もちろん「世界の終わりと」もだけれど、ページを捲っているとよくユミヨシさんと五反田君のことを思い出した。「ダンス・ダンス・ダンス」の、寒い北海道と、親密な空気と、ちょっとした料理と。
    きっと、いろんな世界が実は全て繋がって...続きを読む
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)
    映画を初めて見て、違和感を感じてしまったので原作を読んでみたら、とても好みだった。そう!ホリーは永遠に手に入らないひと、掴めない自由さ!

    それを悲しく思ったり淋しく思ったり切なく思ったりするのも、きっと凝り固まってるの 人の幸せなんて決められないのに 自由ってわるいこと?

    なんだか、映画では「間...続きを読む