村上春樹のレビュー一覧

  • 虚言の国  アメリカ・ファンタスティカ

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    ミソメイニアという虚言症が蔓延るアメリカを舞台にしたロードノベル。重奏的な物語なので登場人物は多く、だいたいみんな嘘をついているし、犯罪も犯す。そういうと、シリアスで気分が悪くなるような作品のようだけど、滑稽でクスッと笑ってしまうようでもあり、不思議でおもしろい。
    トランプとフェイクニュースを風刺していて皮肉が効いているけれど、日本の状況を考えるとのんきに笑ってもいられない。

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    2026年09月10日
  • 海辺のカフカ(下)(新潮文庫)

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    何回読み返しても面白い。テンポよく進む内容にページをめくる手が止まらない。どのキャラクターも味がある。

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    2026年09月08日
  • 海辺のカフカ(上)(新潮文庫)

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    20年ぶりに読み返したが色あせず面白い。大島さんんスマートさ、中田さんのほっこりする話し方、大好きです。

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    2026年09月08日
  • ねじまき鳥クロニクル―第3部 鳥刺し男編―(新潮文庫)

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    空想の世界が現実に侵食していくような、オカルティックな世界観。主人公は初め翻弄されながらも、行方不明の妻を探すうちに、いつの間にかそういうものに身体を馴染ませていく。運命のために、自己を変質させ、時に蝕む「なにか」の形を掴んだ、稀有な小説。

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    2026年09月08日
  • 海辺のカフカ(下)(新潮文庫)

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    「筋トレと学問に励み、世の中の不条理に独りでも耐えられるような強い男を目指す」という主人公の目標設定って、かなり「男の子」的だな、と思った。
    「運命のために、自己が変質させられることに抗う」というのは、村上春樹長編の普遍的なテーマなんだと思う。

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    2026年09月08日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    表題作『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンの映画を思い浮かべる人も多いと思うが、そちらは未視聴で読んだ。作中のホリー・ゴライトリーは溌剌としたヘルシーな印象で、自由な猫のようにプリズムが弾け飛んだようなギラギラした瞳をした女性だったので、上品なイメージのヘプバーンが演じたことが意外だった。実際、著者も映画化の時にオードリー・ヘプバーンがホリーを演じると聞いて、多少不快感を露わにしたとのことだった。

    この作品の中にはティファニー以外にも短編が3作収録されている。どれも純真の象徴としての存在が登場し、それが暗いテーマの中で対象物として良い働きをする。以前カポーティの『誕生日の子どもたち』を読んだが、彼はそういう純真さがもたらす悲哀のようなものを描くのが上手いと思う。何より、村上春樹の訳が読みやすくて良かった。

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    2026年09月08日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

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    映画「ライ麦畑の反逆児」がおもしろく、サリンジャー関連でそういえばこの本持ってたと思い出して再読。(初読のとき感想書いたかな?と思って本棚内検索したら、わたしは2007年から感想書きはじめていたようで、2003年出版のこの本は出てこなかった)。
    最初に村上春樹氏による「キャッチャー・イン・ザ・ライ」訳者解説を読んだら、「ライ麦畑の反逆者」のストーリーがよりよくわかって、さらに細部が補完される感じですごくよかった。村上氏は、サリンジャーは戦争体験がショッキングすぎて小説にすることができず、「キャッチャー~」は書かれることのなかった彼の個人的な「戦争小説」かもしれない、ということを書いていた。
    で、結局全部再読してしまい、村上氏と翻訳家の柴田元幸氏の対談も隅から隅までおもしろかったんだけど、特に印象に残ったのは、「キャッチャー~」が読み継がれているのは、イノセンスを礼賛しているからではなくて、『人々が巨大なシステムを前にしたときの恐怖や、苛立ちや、絶望感や、無力感や、焦りのようなものを自然に呑み込み、ユーモアをもって優しく受け入れてくれるから』というところとか。あと、『イノセンスに代わるものは必ずあります。たとえばそれは愛情です。広義な意味での愛情。』というところとか。

    あと、柴田先生が「キャッチャー~」をアメリカ文学史のなかに位置づけるために書いた「Call me Holden」もすごくおもしろくてためになり、「アメリカの息子」とか「ハックルベリーフィンの冒険」はやっぱり読まないといけないかも、と今さらながら思った。

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    2026年09月06日
  • 風の歌を聴け

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    解るようで解らない、そもそも「わかる」ものではないのかもしれない。
    ただ、何となく雰囲気がいいなとか、この文章が好きだなとか、この登場人物には共感するなとか。
    もしかしたら、小説ってそれでいいのかもしれない。
    もちろん逆の感情も然りで、ここが嫌い、不快、意味が分からないなどもありだし。

    小説を読み続けて30年以上になるけれど、この作品を再読しながらそんなことを考えた。考察とか、小説に限らずそういうのが楽しい物もあるけれど、ただ素直に作品から受け取るということ。誰にも評価されなくても、共感を得られなくても、自分だけの気持ち、感触を見つけられたらそれでいいんじゃないだろうか。

    内容とは関係ない感想だけれど、これも私の現時点の「感想」ということで。

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    2026年09月05日
  • 1Q84―BOOK2〈7月-9月〉前編―(新潮文庫)

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    長編の良さが最大限に出てきている。
    出した武器は物語で使わなくてはいけないし、例えモブであろうと存在する意味と作用する人物関係はなくてはならない。
    こと長編になると、それが丁寧に回収されるから好きだ。

    リーダーと青豆の対話は、読む側の私でさえ緊張して一気読みした。

    これはSFでもあるから、展開が一切予想できないし、予想もきっと覆るから要らない。
    そんな愉しさがある。

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    2026年09月04日
  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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    ネタバレ

    初めて読んだのは高校三年の春だった。そのころとは私自身の考え方が随分変わったし、視野も変わっている。約二年越しに読んで思ったのは多崎つくるの感情をより身近なものに感じたし、同時にクロの犠牲にも、どこか孤立無援の静けさを感じた。色彩を持たない多崎つくるが人生で最も大切にしていた四人の友人たち。その四人は彼の望まない形で離れていき、そのうち三人と十六年の月日を隔てて再会する。その再会は、私にはどこか儀式的で、荘厳ささえ感じた。自分を切り離したかつての友人と、再会することができるだろうか。再会した三人は、それぞれ隔てていた年の分だけ変わっていた。シロを起点とした亀裂はその五人グループを決定的に破壊したが、各々にもその亀裂の影響はあった。多崎つくるは自分のことを色彩のないどこか空虚な冴えない人間であると認識しているが、私にはとてもそうとは思えない。彼の周りにはたくさんの色があったが、彼はその色を受け入れるパレットのように、彼ら彼女と触れながらも自分の譲れないことは譲らなかった。互いに影響されながらもその安寧を保つ土台の役割をしていた。
    つくるが学生時代に出会った灰田という青年とシロ。二人は他の三人と異なりもう二度と会うことはできない(少なくともシロは絶対)二人とつくるは、やっぱり別離しなければならない運命にあったのだと思う。特に、どんな色にも影響を受けてしまう「白」は、彼女が生きた世界は残酷で無慈悲だった。灰田とつくるが再会してほしいと願うものの、それはやっぱり叶わないのだと思う。
    クロの犠牲。短い少女時代をシロのために犠牲にした。彼女は誰よりも早く大人にならなければならなかった。何色にも染まりづらい「黒」。彼女のタフな性格とユーモア。その下で守られるのはきっと心地よくて安心なのだろう。だけどクロ自身の傷には誰も気づいてはくれない。彼女はもう名古屋はおろか日本にすら戻れない、戻ることはないと決意を固めている。フィンランドでの彼女の生活が、長い時間をかけて傷を癒してくれることを願う。これは私自身の願い。

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    2026年08月31日
  • 風の歌を聴け

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    作中時間とは少しズレてしまったけど、ギリギリ8月中に、夏の間に読めたことは満足
    その後の村上春樹作品にも見られる会話のテンポの軽妙さや淡白さ、それと共存する深刻さが見られて、村上春樹らしさを感じながら読めた

    過ぎ去っていくあらゆるものは再び捉えることができないし、それを諦めて受け入れようとしても、心の底では屈託してしまう人間のままならなさを感じた
    「もう何も考えるな。終ったことじゃないか。」
    色々と考えるべきことや示唆はあるんだろうけど、一先ずはリズムと情景に身を任せたいと思わされた

    あと、個人的に驚いたのは、作中の「僕」が思う小説の評価基準の通りに、セックス・シーンが出てこないこと
    村上春樹へのステレオタイプって最初期の作品には反映出来ないんだ

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    2026年08月31日
  • 村上ラヂオ2―おおきなかぶ、むずかしいアボカド―(新潮文庫)

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    副題にもなっている「おおきなかぶ」では、今昔物語の話が出てくるが、親子で大笑いした。今昔物語(もちろんすべての話が入っているもの)が読みたくなった。村上さん、ありがとう。

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    2026年08月28日
  • 国境の南、太陽の西

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    恋人だった訳でもないのに、昔心通わせた島本さんのことが忘れられない。彼女で無くてはと申し分の無い幸せを手に入れた後に気が付き、どちらを取るかの葛藤が面白かった。

    知らなくてはならなかったものごとがまるでサンプル・ケースみたいに全部ぎっしりと詰め込まれていた。
    これはとても大事なことだから、よく聞いて。さっきも言ったように、私には中間というものが存在しないのよ。私の中には中間的なものは存在しないし、中間的なものが存在しないところには、中間もまた存在しないの。だからあなたには私を全部取るか、それとも私を取らないか、そのどちらかしかないの。それが基本的な原則なの。
    僕はその暗闇の中で、海に降る雨のことを思った。広大な海に、誰に知られることもなく密やかに降る雨のことを思った。雨は音もなく海面を叩き、それは魚たちにさえ知られることはなかった。

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    2026年08月28日
  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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    自分が気にしている事項あるいはその優先順位が、自分の関係している他の人と異なる、このことについて、何を気にして何を気にしないか? あるいはその結果、その各人が取ったあるいは発生した行動に対して、どのように評価したり感じたりするのか。そして、これらに対し、人はどこまで責任をとる必要があるのだろうか。

    つくるがフィンランドに飛び判明した事項からそんなことを考えた。そして自分でコントロールできない事柄について、どこまで気にするべきであるか?

    「色彩を持つ、持たない」ことについても同様。名前という表層の世界でも、実際の活動に対する評価としての「色彩」についても、観念的な世界では極めて主観的である。

    苦しんできた、「つくる」とそれを解いていく「沙羅」との関係は一見好ましい感じ、関係であるように見えて、それなりに複雑な関係であり、読者はやはり著者に翻弄されてしまう。

    もう一つ理解が難しいのが灰田の存在である。苦しみを乗り越えるステップとして中間点が必要なのか、複雑な「彩り」を加えるためにもうひとつ方向が必要であるのか。「巡礼の年」を登場させるために必要なくだりなのか。その父のエピソードと共に、不思議な位置付け。安保闘争から距離を置くのと、山奥の温泉に逗留してバイトする原体験はどこにあるのか。

    本作は村上春樹作品の中でも展開が多彩なほうであり、擬人化した動物らしきものは6本指エピソードだけという、ストレートな小説構成である。これはこれで村上春樹の作品!こんな大それた感想を記してしまうのもまた本作品の複雑さからくる影響のひとつであるのかなーと。

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    2026年08月28日
  • 一人称単数

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    村上春樹さん、最近長編小説を出さないなあと思っていたところ、とうとう新作が発売になったようです。そこでと書店を覗いたところ、新作は買わずに⁉︎この本を見つけ、買い求めた次第です。
    短編小説が8篇あり、内容はエッセイとも言えるような村上さんの半生のエピソードが詰まっていて、大変興味深い内容でした。大学や高校生の頃の付き合った女性の話は、ノスタルジーな要素や不可思議な要素も相まって心に残ります。神宮球場好きやヤクルト・スワローズ愛と言ったちょっと微笑ましいシーンも含め、「品川猿」のような内容はやっぱり、村上作品だなあと思わせるものでした。

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    2026年08月27日
  • 走ることについて語るときに僕の語ること

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    村上春樹氏のマラソン論。
    自分の肉体をここまで客観的に、かつ精密に表現できるのはさすが村上春樹氏だと感動した。

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    2026年08月24日
  • 騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編(下)―(新潮文庫)

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    今まで読んだ村上春樹長編の中では好きな方だった

    例によって村上春樹の世界観で、現実では起き得ないことが起きたりする。それについて詳しく説明されるわけではなく、そういうものなのだと受け入れて読み進めていった。それが心地良くもある。

    本作は特に結末がよかった。分類としてはハッピーエンドなのだろうけど、チープではない。説得力を感じる終わり方で読後感もよかった。

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    2026年08月23日
  • 風の歌を聴け

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    数年ぶりに再読。面白すぎるし読みやすすぎる。流れるような美文。2026年の現在に読むと、「誰もが傷を抱えていたあの頃」のような物語は、語られ尽くしたクリシェという気もする。でも面白い。今、こういう物語をカッコいいと感じるのは憚られる気もするが、それでもカッコいいという気持ちが内から湧き上がる。
    (多くの問題、批判点もあるような気がする。例えば、中国人のマスターに、誰もが傷ついていたというような台詞を言わせるのも、主人公側にとって都合良すぎないかと思う。)

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    2026年08月23日
  • 走ることについて語るときに僕の語ること

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    村上春樹が趣味のランニングを通じて、時に作家人生についても振り返るエッセイ。本文内ではメモワールと語っている。
    村上春樹のような作家は、みな天才で常人とはかけ離れた考えをしてると思っていた。しかしそんなことはなく、彼も1番大事にしていることは最後までやりぬくという普遍的なものだった。自分は最後までやり抜くであったり、コツコツ継続するということが大の苦手だ。そんな性分を自分もランニングを通じて少しずつ改善してみようかな、「わずかでもそれらしき場所に近づいて」みようかな。そう思わせてくれるエッセイだった。

    ところで自分は物語には起承転結を求めてしまいがちなのであまり村上春樹は刺さらなかった経験がある、しかしエッセイだとそんな所はきにならず村上春樹の心地よい文章がスッと入ってきた。自分はエッセイの村上春樹の方が向いてるのかも

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    2026年08月22日
  • 国境の南、太陽の西

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    ネタバレ

    村上春樹のベストかも。ノルウェイの森よりも好きだった。
    不在、喪失、愛、死、性 全てを感じ、瑞々しかった
    今置かれている自分の状況と近いし、結婚とかしてこんなことを思うのは悲しいなぁ

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    2026年08月22日