あらすじ
その誰かは、そこにあるものが本当にあることを確認するために、彼の幅広い手をいっそう強く握りしめた。長く滑らかな指、そして強い芯を持っている。青豆、と天吾は思った。しかし声には出さなかった。彼はその手を記憶していた。──青豆と天吾、二人は「物語」の深い森を抜けてめぐり逢い、その手を結び合わせることができるのか。ひとつきりの月が浮かぶ夜空に向かって……。
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世界はバランスである。そのバランスをある方向に導こうと働く者があれば(リトルピープル)、その寄り戻しが存在する。(ふかえり)一見偶然のように見えても、それは裏で突き進んでいる何らかの意志の現れである。
理解できないような形而上学的な設定を押し付けられる感じがとても良かった。現実世界に照らし合わせて理解できるような世界観では無いが、だからこそ味わえる不思議な恐怖や納得感がよい。
天吾の暮らしに憧れた。仕事は自分にとって最低限の幸せを手に入れられる収入をもらうためのもので、決まった時間しかなくて、仕事以外の時間で物語を書いたり読んだりする。塾講師いいなと思った。
天吾の元にきたふかえりはマザとドウタどっちだったんだろうか。
Posted by ブクログ
かなり前巻から時間がかかってしまった。
正確に2週間ほど読み終えるまでに時間を要した。
前巻では、世界の秩序やルールは無作為に且つ無慈悲に僕たちに襲いかかる。
それは自分がルールの蚊帳の外にいるというある種現代人じみたデタッチメント的思考である。
自分はルールの外にいるつもりだが、ルールから逃れることは出来ずそれが牙を向いた時にそれを自覚する。当人はゴーストライターや殺人を犯しておりよりルールと結びついた人間でありながら。
しかし、よく良く考得てみると、生まれた時から彼らはルールの中にいるのだ。
家庭であるとか学校であるとか、はたまた公園である。
そんな混在する個人のルールに自分自身が染まっていることに気づき、それを解きに行くのが5巻である。
天吾は父親を紐解き、母親の存在を受け入れ(それは解釈である)父と和解する。
青豆は自分の中に祈りやそれに近い何かが存在しており、それは家族で信仰していたある者をさす神という言葉ではなく、自分の中にただ存在している神である。
しかし、それらは解釈に過ぎない。
牛河が自分が醜い存在であると、自分を自分のルールで縛っている。
それは過去の幸せを家族の幸せを否定してしまうほどに彼を絞り取りそして腐らせてしまう。
まるで油を敷かずにフライパンで炒めるように。
それ自身の油はそれを上手く炒め上品に味付けする。
そんなふうに誰もが、外部、内部、個人のルールに則って生きている。
だからこそ、自分でルールを獲得しようと試みるのが本巻である。
新たに生まれた生命体(2人の子供)はその世界の無秩序なルールに晒されそうになる。
信仰団体さきがけに搾取されそうになる。
だからこそ彼らは自力で世界を変えるしかないのである。
個人や何かを縛り矯正してしまうそれは個人の血のにじむ精神力でしか変化させることが出来ないのだ。
天吾はそれを解釈し、青豆は夢想した。
それぞれがそれぞれの形で何かを見出し変子を求めたのである。
それが出来ないものは死んでしまう。
青豆の旧友、ポリスの友達、タマルが世話を任された人形造りの背が低い偏狭な男、そして牛河。
彼らはみなルールに溺れていきそして何かを見出し解釈を受け入れそして朽ちていったのである。
だからこそ、それに抗い…つまりは絶対に出会うことの出来なかった彼らは出会うことが出来た、彼らは世界を少し形作ることが出来たのだ。
そこにどんなルールが待っているかは知らないが。
そんなことを描いた本作であった。
いや、1ヶ月と半月がかかった。読み終わるのに。
楽しい日々だった。解釈、というか見方が固定されていく実感がありある種、この道を辿ってきただけのように思える。
解釈をする事こそが、つまり自分にとって融通の聞く解釈をして体系性を流し込むことこそが読書のように思えた作品であった。
村上春樹は、わかった気になっているということは何も分かっていないということと、言う。
それは正しく今の私の状況を指すのだろう。
与えられた100ではなく、与えられた50と生み出した50によって物語を作った実感がある。
素晴らしい小説である。
ちなみに、空気サナギ、リトルピープル。
彼らは何者なのか。あるいは何を表す現象なのか。
メタファーなのか。
私は死者が生まれた時に生まれる新たなルールであるとも、思う。
老羊が死に、教祖が死に、父が死に、牛河が死んだ時にサナギは生まれる。
そしてそれはリトルピープルが紡ぐ。
恐らく、いやあるいはそれは、何かのルールによって翻弄された人間が生み出した新たなルールなのだろう。
戦争が生み出した悲しみが戦争を産むように。
きっと死に至らしめる何かは別の形で今の我々に個人に引き継がれてしまっているのだと思う。
それはまだ分からないが。
だからこそ、そんな個人が語るルールや体系的な何かを無秩序に生み出し、それを肥大化した世界をリトルピープル、つまりは我々の中にいる何か個人的な秩序が世界にそれを広げて言っているのかもしれない。
いや、本当に分からないが。
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ヤナーチェックのシンフォニエッタを聴きながら読みました。村上春樹の本は2年ぶりに読んだけれど、歳を重ねるにつれて面白くなっていくなと感じます。文庫版は6巻までの構成になっていましたが、少しずつ内容がつながっていくところ、同じチャプターのなかで後になって話し相手の名前がわかるところがたまらなく面白かった。村上の作品に出てくる人物は博識な人が多く、つまり彼の知識がふんだんに使われているところも私にとっては素敵だなと感じます。内容に触れるのなら、私は中野あゆみとタマルがすごく好きです。
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・青豆が人々の前で上手く微笑むことができないということにとても共感した。私も笑うことは笑えるが、ずっと歯並びにコンプレックスがあったお陰でいまだに自分の歯をむき出しにした満面の笑みには自信がないから誰かに無条件で褒めてほしい。
・普段冷静な青豆が天吾のことになると我を失って突飛な行動に出る様を見ていると恋愛や誰かを激しく好きになることはいつだって筋の通らないことなのだと思う。それこそが恋愛なのだと。
・第27章「この世界だけでは足りないかもしれない」この章が、本当に本当に良すぎた。あまりにも名場面すぎた。あまりにも心揺さぶられた。今まで誰からも本当に愛されたことも抱きしめられたこともなかった2人が、やっと、出会ってくれて本当に言葉には言い表せないほどの深く強い感情が私を揺さぶった名シーンだった。
・第29章の待ちに待ちに待った2人の美しい再会のシーンは、世間一般に溢れるいかにも世俗的な「このまま時が止まればいいのに」という感情を最大限に拡張し、強く言語化し、濃密にし、読者に素晴らしい味わいをもたらしてくれるまたしても名場面となったと思う。本当に、心の底から相手を愛し、愛され、その人と世界で2人きり、そして時間を永遠に感じるような瞬間はこの世に生まれた最上級の喜び、そして意味そのものではないかと思う。私もそれに出会えることを人生のテーマにしたいくらい、美しく、最高の名場面であった。
・青豆が天吾と出会ってから自然に笑えるようになったのがとても嬉しかったし、私も一緒にいて自然に笑えるような相手と人生を歩んでいきたいと思った。
・最終章の2人のセックスシーンは、官能的な趣も多少はありながら、そこには2人が「初めて心も身体も深く繋がることができた」という感慨深さ、感無量の気持ちで溢れかえるような代物だったと感じる。こんなにもエロスより神聖さやハートウォーミングな気持ちが勝つ濡れ場の描写は貴重だと思うと同時に、私も2人のように心も身体も一体化するような愛の営みをしてみたいと強く思った。
・また、夜の美しい営みの後明け方の窓際で2人が手を繋ぎながらただ一つの月の代わりに朝日が昇っていくのを見つめるシーンは、是非ともEd Sheeranの「How would you feel?」を流したいと思った。
最もエンディングはfull of Harmonyの「I Believe 」を流したい。
【まとめ】
『1Q84』全編を読み終えた感想としてまず言えることは、私の人生史において、至高の、これ以上ない作品に出会ってしまったかもしれないということだ。私はこの物語に出会う為に生まれてきて、この物語は私と出会う為に作られたのだと感じるほど、私の魂を揺さぶり、私の人生のテーマである「心の繋がり」と驚くほど合致したあまりにも素晴らしい作品だった。間違いなく人生一番の小説だと言える。今まで一番好きな小説と聞かれたら『スプートニクの恋人』であったが、それを遥かに上回ってきた。スプートニクでもかなり心を動かされ、生きる糧を得たと思ったが、『1Q84』はレベルが違う。私にとってこの作品は青豆にとっての『空気さなぎ』に値するくらいの代物だと言える。
とにもかくにも、1Q84は家庭環境に恵まれなかったという自覚がある人にこそ読んでほしい。愛着に問題があるような愛が足りていないような人にこそ読んでほしい。私にもそのような自覚があり、青豆や天吾の境遇や心情に深い共感を得ながら所々感情移入しながら読み進めることになった。それを踏まえた上での2人の最終的な深い感動的な結びつきは魂を揺さぶる以外の何ものでもなかった。全てが最高だった。
また、私個人の強い共感や好みだけでなく、ストーリー性にも優れていたと感じる。大筋は壮大なラブストーリーでありながらもミステリー小説のような謎や疑問、緊張感を持って物語が進んでいくため全6巻もあっても飽きずにむしろ次へ次へと期待感を煽られながら楽しく読み進めることのできる作品だった。
結局『1Q84』の「Question」よろしくその世界における謎は解明されきれないまま物語は幕を閉じたものの、それこそが1Q84であると納得できるが故に一般小説における不十分な種明かしによる不完全燃焼のようなものは感じず、完全無欠のストーリーだと感じた。少なくとも私にとっては完璧だった。こんな完璧な小説に出会ったのは初めてだというくらいに。
私はこの物語を愛している。出会ってくれてありがとう。こんな物語に、ずっと出会いたかった。
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天吾と青豆がやっと出会った。時代を風刺したような場面もあり、リアルとフィクションの行き来が不思議な雰囲気を作っているのだと思う。表現が合うのか、おもしろく読めた。
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1Q84のBOOK3~6の感想です。
牛河がメインキャラ入りしているのは驚いた。
哀れな最期だったけど・・・。
ふかえりが出てこなくなってから途端につまらなくなっちゃった。やっぱり動いてる時が良かったね。
青豆ぐらい激しく愛して、でもそれを受けいれる天吾・・・。
なんでだろう、不安にならないのかな。うらやましい。すてき。
以下はお気に入りの文引用です。
「明日の今頃、私はどこにいるのだろう(略)でもそんなのは些細なことだ。天吾がこの世界に存在しているという事実に比べれば。」
「説明されないとわからないのであれば、説明されてもわからない」
「靴は、利用されるだけ利用されて今は死に瀕した哀れな使役動物を連想させた。」
「セブンスターもそれくらいうまそうに吸われると本望だろう」
「ごく当たり前の生活?」
「いろんなものごとがまわりで既にシンクロを始めている。」
「うまく微笑むことのできない青豆をあとに残して。」
「私もいつかそこにあるような、物静かで順当な世界の一部になることができるのだろうか。」
「人は死者に自然な敬意を払う。相手はついさっき、死ぬという個人的な偉業を成し遂げたばかりなのだ。」
「「二人で月を見るの」「とてもロマンチックだ」」
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自分史上最長の長編だったので読み終えた後は達成感。。となっていた。
最初はどこに向かっているかわからない物語が中盤から青豆と天悟の2人の純愛物語と理解すると続きの展開が気になってページをめくる手が止まらなかった。
村上春樹にしてはかなり綺麗にまとまっている終わり方になっていて読み終えた後はそこまでモヤモヤした気持ちは残らなかった。
まあ1Q84年の世界がなんでもありな設定なだけあってそこまで気にならないというのもあるけど、
もう、クライマックスの展開の気持ちよさよ。。章区分の名前に天悟と青豆の2人が並ぶベタな演出も好き。
あとはタマルが個人的にはとても愛着が湧いた登場人物になった。
冷静沈着なプロなはずの彼だけど、なぜか最後に豆知識てきなことを小言で青豆や牛河に話すシーンが彼の人間性的な部分を表していて好きだった。(メタルギアシリーズの回線通信の会話みたいな。。伝わるかな、笑
読み終えてよかったなと思う作品でした。
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ひとつのことがきっかけとして、良くも悪くも大きく世界が変わってしまうことは実際にあると思う。それでも共に生きていけると思えるような誰かと巡り会って、世界も変えてしまいたいよな
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全6冊、読み終わりました。村上春樹作品の雰囲気は残しつつ、哀愁は少なめで、とても素敵な物語でした。物語の解釈はいろいろあるのだろうなと思いつつ、比較的分かりやすい作品のように思います。久しぶりの村上春樹さんの作品、楽しませていただきました。
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読み切った‼︎達成感‼︎
物語がゆっくり進んでいって、どこまでも読める感じがすごかった‼︎
タマルやさきがけの人達はどうなったのかなと思う所はあるけれど、それが気にならないくらいに気持ちよく終わった。純愛小説。
嬉しい
村上作品が電子書籍になり、クーポン等で割引で購入できるなんて、なんていい時代なんだ。
電子書籍を了承してくれた著者と版元に深く感謝。
いつでもどこでも村上作品が読める。大きなタブレットでじっくり読める。幸せ
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村上春樹の小説を初めて読み終えたけど、天吾も青豆も別々の建物の303号室に偶然住んでいて、今わたしも303号室に住んでるので、この本をまず手に取って正解だった気が(勝手に)した
リトル・ピープルは謎のままだったけど、天吾と青豆に希望のある結末が訪れて読後感は爽快だった!
ところで、女性の胸の形と大きさの話が最後の最後まで出てくるのは何?
せっかくハルキワールドに浸ってるのにやめてください(;_;)
This was my first time finishing a Haruki Murakami novel, and since both Tengo and Aomame happened to live in Room 303 of separate buildings—and I’m living in Room 303 right now—I couldn’t help but feel (on my own whim) that picking up this book first was the right choice! :)
The Little People remained a mystery to the end, but Tengo and Aomame got a hopeful resolution, leaving me with a refreshing aftertaste!
By the way, what’s up with the talk of women’s breast shapes and sizes popping up right until the very last page?
I was finally immersed in the Haruki world, so please stop!
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あっけない最後
でもとても楽しく読むことができたので◎
幹線道路の非常階段を探す、
高架下の工事現場のようなところをキョロキョロみてしまう妙な癖がついてしまった
Posted by ブクログ
天吾はその光の中に足を踏み入れ、ほっと一息つくことができた。
そこにはもう死者の気配はなかった。
それは生きている人々のための世界だった。
たとえ、それがどれほど不確実で不完全な代物であれ。
この一節が、読後もずっと胸の奥に残っている。
物語の中でふたりがようやくたどり着いたのは、
1Q84でも1984でもない――おそらく“第3の世界”。
完全ではないけれど、ふたりが出会うために必要だった場所。
その世界が良い場所なのかはわからない。
けれど、たぶん、どちらの世界にも留まっていたら、
天吾と青豆は巡り会えなかった。
「不完全で不確実で、それでも光のある、生きている人のための世界」。
そう思うと、ほんの少し、心が安らぐ。
この物語を読み終えたあと、私は何度も夜空を見上げて、
月が一つだけ浮かんでいることを確かめた。
あちらではなく、たぶんここが私の世界。
不完全で、不確実で、それでも。
生きている人のための世界。
Posted by ブクログ
1〜6の感想
とても面白かった!!2人の視点がどこで交わるのか、2人それぞれのリトル・ピープルへの迫り方が予想できないので、ドンドン読み進めたいと思って(ほぼ)一気見してしまった!
度々出る意味深な物語・セリフは、更に私を物語に惹き込ませる重要な役目を担っていたし、何よりも村上春樹さんの文章がとても好きだった!♡
これが初★村上春樹作品なので、これからもっとハマりそう)^o^(
少し心残りなのは、7冊目も出して欲しかったな〜ということ。月が2つある世界からは抜け出せたので、物語は終結となっているが、青豆のお腹にいるのは一体何なのか?2人の周りにいる人達は元の世界(ではない別の世界かもしれない)でも同じような感じなのか?さきがけは元の世界では追ってこないのか?ふかえりはもう一度姿を現してくれるの?疑問がまだある中、物語の外に出されたので、その先の物語も読みたかったな〜というのが読後の最初の感想でした(゚ω゚)
Posted by ブクログ
(全巻同じレビューを入れています)
・・・
なんだか本作、キャラの作り・彩りが他の作品より豊富かつ精緻であったと感じました。
・・・
一番感じたのは天吾。
天吾は、これまでの村上作品でいうところの「僕」に当たると思います。
たいてい「僕」は文筆・広告関連、或いは飲食関連を生業にしつつ、音楽好き・思想や文学をそらんじ、気怠く生きつつも(あるいは彼なりに模索をしつつ)女性と交わりつつ、そして世の中のフシギと対峙し、最終的に大団円を迎える、みたいな感じでした。そんな彼ですが、不思議とどういう背格好かとか、そういうのは記述がなかったんですよね。まあそれはそれで味がありました。自分を重ねて読むこともできました。
でも今回の天吾は家族構成、身体的特徴(柔道耳!)、大柄でスポーツも数学的センスも(実際は音楽センスも)あり、とにかく器用であることなど、非常に細かい設定であったと思います。よくも悪くも、自分を投影するキャラではなく、外から眺めるべき主人公でありました。
・・・
もう1人の主人公青豆はややラフな作りこみで、彼女の家族の話は余り描かれず、むしろ柳屋敷の女主人やタマルなど、遊び友達の中野あゆみなど、周囲の際立ったキャラとともに物語を彩り深いものにしていたと思います。
もう1人、やはり出色のキャラは牛河でしょう。本作で一番印象深いトリックスター(という程ではない!?)だったかと。実は司法試験合格者とか医者の家の子だとか。こういうのは初めて読んだときに記憶に残りませんでした。
でも彼のこと、他の作品でどっかで読んだ気がしたけどどこで見たんだろうと、気になって仕方なく、googleで検索したら『ねじまき鳥クロニクル』 (1994)で出ていました。そうそう、「僕」の元を離れた奥様の兄の綿谷ノボルの秘書としてでした。
・・・
その他、ふかえりの育ての親の戎野先生、編集者の小松など、かなりエッジのたったキャラが自然な形でそのポジションを占めていたと思います。
あと、17歳で文学賞を受賞したふかえり、あれは綿矢りささんが高校生で芥川賞を受賞したことの影響じゃないかとか、さきがけ・あけぼのってのもオウムの影響じゃないかとか、諸々想像させるところがありましたね。
・・・
もう一つ。終わり近くまで殆ど考えませんでしたが、タイトルについて。
本タイトル、もちろんかのディストピア小説の『1984』を承けたものでありますが、本作は「9」「Q」になっており、一種のパラレルワールドへ迷い込んだという設定です。実際にはパラレルではないとの説明がありましたが。
で、天吾と青豆は会えそうで会えないすれ違いを、結構延々と、最後の最後まで繰り返すのですが、最終巻の第三巻に至ってまだ会えないところで、私気づきました。
そう、この物語は年末までに終わらねばならない。なぜならば、タイトルがそうだから。85年を跨がないように、タイトルが84年となっている。
実は第一巻は4-6月、第二巻`は7-9月、第三巻は10-12月とサブタイトルが振られています。そしてキチンをけりをつけるべく、収束していったことに感心した次第です。
上手く表現できませんが、何というか、タイトルの制約を内容に反映させた?ような作りが面白いと思いました。
・・・
ということで村上作品でした。いやー長かった。10日間弱、読むのにかかりました。
ところで、私の初めて読んだ村上作品は『ノルウェイの森』(1987)でした。そして帯には『究極の純愛』とか何とか書いてあったと記憶します。
そこから20年を経て上梓された本作、これもまた『究極の純愛』と呼んでも良い作品であったと思います。
堪能致しました。
Posted by ブクログ
村上さんの有名な代表作
1度読んでみようと思っていました
騎士団長殺しに似ていると思うところも多く
不思議ワールド
スピ的なところも多いので好みが分かれる作者さんだなと思います
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初めての村上春樹の作品。中2から読んだから、ほぼ10年かけて読んだ伝説の小説
村上春樹の小説の読み方が分からず、抽象的な表現が多い本でもあることから、読み終わった時に掴みどころのない感覚を味わった記憶がある。
もう少し歳をとってから時間をかけて読みたいと思える作品
Posted by ブクログ
青豆と天吾が1Q84年(猫の街)を抜け出せたようで良かった。ふかえりやタマル、老婦人たちのその後が気になる。
読み始めた時はここまでファンタジーだと思っていなかった。ふわふわした感覚で読み進めるうちに面白くなってきて、最後は結構あっさり終わったなと思った。
Posted by ブクログ
全館制覇した達成感と、大好きな村上春樹さんの疲労、世界観のくすみを感じてしまいました。
いつかもう一度読んで、自分がどう感じるのか確かめたいと思います。
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5と6は一気に読めた。
1Q84は読み終えた後の爽快感は村上春樹の作品の中で一番だった。
物語が一つになって、突然語り手が不自然に入ってくるのも、それはそれで面白かった。
読み始めた人は最後まで読んでほしい。
社会問題に切り込んだ作品ではあるけれども、この本を読んでも作者の考えは多くわからない。
でも、親子の関係については共通点がある。
親の思想は子どもに良くも悪くも影響を与えるけども、青豆も天吾もふかえりも、親とは違う人生を歩むことができた。
村上春樹のどの作品もそうであるように、この作品も音楽を文学に触れながら読むことができる。
ペーパームーンや、シンフォニッタをこのように物語に組み込むなんてやはり天才。
Posted by ブクログ
1Q84の世界から手を取り合って元の世界に戻っていく青豆と天吾。
高揚感と幸福感ともに物語が締めくくられる。
が、それは本当に「元の世界」なのか。
タマルに「処理」されてしまった牛河の遺体に、新たな「空気さなぎ」が作られる。
青豆のお腹にいる新しい命は天吾の子と青豆は信じ切っているが、それは新たな「ドウタ」であり、青豆が「マザ」となる別の「1Q84」に似た世界なのではないか。
あれほど際立った存在感のあったふかえりは、物語からも「さきがけ」からも、役割を終えた人間として、あっさりと姿を消してしまう。
亡くなる数か月前から昏睡状態になっていた天吾の「父」(そういえば、この物語では「父」が二人死ぬ)は、ときどき覚醒して何か通信しているようだったと看護師の証言があった。
これは、青豆や牛河の部屋の扉をたたき続けたNHKの集金人が彼だったのではないかと読みたくなってくるが。
(どうでもいいことだが、この集金人の造形は、現実のNHKの集金業務をしている人からすると心外だろうなあ…)
「お前は何者でもない」という言葉を残して父が死ぬことで、天吾は天吾で青豆以外との世界との関係を失っていくようにも見える。
青豆、天吾、そして生まれてくる子は、リトルピープルの世界の「聖家族」なのだろうか。
Posted by ブクログ
村上春樹の作品を最新作から遡って過去作品まで、代表的なものは抜かさずに読んできたけれど、この本はなかでも幻想的で起承転結がある作品だった。
フィクションっていうのかな、、、良い悪い、面白い面白くないは別として、こんなにファンタジー味が強いのは今作が初めてだったかも。
私的村上春樹の良さって、彼の確固たる世界観なんだけど、だからとのキャラにも似たような言い回しとかあってもむしろ大歓迎なんだけど、今回に限っては「いやーその台詞はこの状況で言うかな」「この心理状態になるか…?」という、物語で勝負したからこその抵抗があった。
なんていうんだろ、もちろん既存の散りばめられた名言や美しい文体とかはそのままなんだけど、物語としての流れがある分そこに逆流としての抵抗が生じたというか。
だからあんまり好きになれなかったなー
あとはやっぱり女性主人公の性描写が共感できなさすぎて、例えばノルウェイの森みたいに、あくまでも男目線での理想像を描くとかなら良いんだけど、物語として女主人公目線でがっつりああだとなんか、うーん、、ってなったな。ふかえりの役割とか特に。
まあ、総じて村上春樹節は効いててボリューミーでした。6冊は長かったけど、、笑
Posted by ブクログ
全部読み終わっての感想。
海辺のカフカに続き二作目の村上春樹。
登場人物たちが次第に寄り合い、ふたつの物語がひとつの物語になること、全部を説明しきらないことが村上春樹流なのだなぁと彼の作風理解がちょっぴり進んだ気がした。
世界が元に戻って、主役2人以外の登場人物の末路には全く触れずに物語が終わる。消化不良感もありつつ、2人がもう1Q84年に戻れないのであれば他の人々がどうなったのかなんてわかるはずもない、そう考えるととてもはっきりした終わり方であり、主役のはっきりした作品だと感じる。
そしてやっぱり手放しで面白かった!とはならないのも私にとっての村上春樹。なのにどういうわけか手に取ってしまうし読み進めちゃうんだよなぁ……文章が美しいというわけではなく(というとハルキストに怒られそうだけど)文章のリズム感と、さらっとクセのある表現にどんどん読まされてしまう、という感覚……
特に3巻、4巻。展開が面白くてサクサク読んでしまった(マザとドウタがMotherとdaughterだと気づいたのもこの辺でした笑)
解せない、と思いながらも村上作品を読むのを辞められない時点で沼なのかもしれない……それもまた解せない。
Posted by ブクログ
初めてこれだけ長い長編小説を読み終えました。
村上春樹の小説を初めて読みましたが、表現方法やストーリーが独特で、今までで一番難しかった小説であると同時に、何故か読み進めてしまう魅力がありました。
まずは、リトルピープルに関して明言されていなかったので、解説動画を見た上で個人の解釈でリトルピープルに関して書こうと思います。まずリトルピープルとは、「大衆の悪」だと思いました。自分は表に出ずに他者を使って都合の悪いことを排除していく存在。これは、「匿名の存在でSNSで誹謗中傷を行う」という現代のSNS問題に通ずると思います。そして、これに対して村上春樹は1Q84の中で2つの対抗策を提案しています。1つ目が”言葉”での対抗策(天吾)、2つ目が”暴力”での対抗策(青豆)。ただ、この2つの対抗策が有効であったかどうかは不明です。天吾と青豆はさきがけに命を狙われる存在で、実際に周囲の人間は被害を受けています。問題定義と対抗策を提示して、後は各々の思考で考えてみてと丸投げされた気分でした。リトルピープル以外にも、天吾の年上のガールフレンド・戎野先生・ふかえり・あゆみなど、風呂敷を広げて回収しきれていない話が多すぎてモヤモヤが残っています、、、
最後に、村上春樹の考えを書こうと思います。1Q84を読んで、村上春樹は虚無主義だと感じました。実際に天吾も青豆も人生は無意味なもので、ただ生きているだけの人でした。しかし、その中で唯一人生の救い(≒生きる希望)が「愛」であるとも読み取れます。さきがけに命を狙われた青豆が高円寺にとどまったのも、そこに天吾への「愛」があったからです。生きる事は無意味だが、無意味だからこそ、唯一「愛」こそが生きる希望と説いているような気がしました。
※余談ですが、村上春樹はアンチ三島由紀夫らしいです。この2人は虚無主義ですが、三島が「人生は無意味だからこそ自殺すべき」と説いてるのに対して、村上は「人生は無意味だからこそ価値を見出す」と説いてるらしいです。
Posted by ブクログ
年末年始で一気読み
長編読むのは久しぶり
当時すごいベストセラーの記憶だったからずっと読みたかったけど
よかったかと言えば普通だった
NHKの集金は天吾の父親?
なぜ天吾の家と青豆の隠れ家、牛河のところに来たとか、牛河から出て来たリトルピープルと空気さなぎのその後等。
伏線回収しきってないとこあるけど物語としては完結してくれてよかった。
ただ、おおよそ予想通りの展開とオチだった。
村上春樹作品はもうしばらくいいかなと思った。
Posted by ブクログ
約10年ぶりの再読。
あっというまに読んでしまった。これだけ長い話はけっこう時間かかるが…
なんといってもキャラの濃さ。特に牛河。
青豆とてんごは出会えてよかった。世界はもとに戻ったようだが、その世界でどんなふうに生きていくかは想像がつかないな。
全ての流れが、伏線として最後の結末に集約したのはよかった。運命として決まってしまっている物事としての人生。そして、その中にあって、全く予想外のことが起こること。運命と真逆の存在。
その両方が、同時に存在すること。
その中で葛藤しながら生きる人々。
現実と離れているようで、実は現実のような物語。村上春樹の力は偉大だ。