【感想・ネタバレ】1Q84―BOOK3〈10月-12月〉後編―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

その誰かは、そこにあるものが本当にあることを確認するために、彼の幅広い手をいっそう強く握りしめた。長く滑らかな指、そして強い芯を持っている。青豆、と天吾は思った。しかし声には出さなかった。彼はその手を記憶していた。──青豆と天吾、二人は「物語」の深い森を抜けてめぐり逢い、その手を結び合わせることができるのか。ひとつきりの月が浮かぶ夜空に向かって……。

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ネタバレ

ヤナーチェックのシンフォニエッタを聴きながら読みました。村上春樹の本は2年ぶりに読んだけれど、歳を重ねるにつれて面白くなっていくなと感じます。文庫版は6巻までの構成になっていましたが、少しずつ内容がつながっていくところ、同じチャプターのなかで後になって話し相手の名前がわかるところがたまらなく面白かった。村上の作品に出てくる人物は博識な人が多く、つまり彼の知識がふんだんに使われているところも私にとっては素敵だなと感じます。内容に触れるのなら、私は中野あゆみとタマルがすごく好きです。

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ


・青豆が人々の前で上手く微笑むことができないということにとても共感した。私も笑うことは笑えるが、ずっと歯並びにコンプレックスがあったお陰でいまだに自分の歯をむき出しにした満面の笑みには自信がないから誰かに無条件で褒めてほしい。

・普段冷静な青豆が天吾のことになると我を失って突飛な行動に出る様を見ていると恋愛や誰かを激しく好きになることはいつだって筋の通らないことなのだと思う。それこそが恋愛なのだと。

・第27章「この世界だけでは足りないかもしれない」この章が、本当に本当に良すぎた。あまりにも名場面すぎた。あまりにも心揺さぶられた。今まで誰からも本当に愛されたことも抱きしめられたこともなかった2人が、やっと、出会ってくれて本当に言葉には言い表せないほどの深く強い感情が私を揺さぶった名シーンだった。

・第29章の待ちに待ちに待った2人の美しい再会のシーンは、世間一般に溢れるいかにも世俗的な「このまま時が止まればいいのに」という感情を最大限に拡張し、強く言語化し、濃密にし、読者に素晴らしい味わいをもたらしてくれるまたしても名場面となったと思う。本当に、心の底から相手を愛し、愛され、その人と世界で2人きり、そして時間を永遠に感じるような瞬間はこの世に生まれた最上級の喜び、そして意味そのものではないかと思う。私もそれに出会えることを人生のテーマにしたいくらい、美しく、最高の名場面であった。

・青豆が天吾と出会ってから自然に笑えるようになったのがとても嬉しかったし、私も一緒にいて自然に笑えるような相手と人生を歩んでいきたいと思った。

・最終章の2人のセックスシーンは、官能的な趣も多少はありながら、そこには2人が「初めて心も身体も深く繋がることができた」という感慨深さ、感無量の気持ちで溢れかえるような代物だったと感じる。こんなにもエロスより神聖さやハートウォーミングな気持ちが勝つ濡れ場の描写は貴重だと思うと同時に、私も2人のように心も身体も一体化するような愛の営みをしてみたいと強く思った。


・また、夜の美しい営みの後明け方の窓際で2人が手を繋ぎながらただ一つの月の代わりに朝日が昇っていくのを見つめるシーンは、是非ともEd Sheeranの「How would you feel?」を流したいと思った。

最もエンディングはfull of Harmonyの「I Believe 」を流したい。

【まとめ】
『1Q84』全編を読み終えた感想としてまず言えることは、私の人生史において、至高の、これ以上ない作品に出会ってしまったかもしれないということだ。私はこの物語に出会う為に生まれてきて、この物語は私と出会う為に作られたのだと感じるほど、私の魂を揺さぶり、私の人生のテーマである「心の繋がり」と驚くほど合致したあまりにも素晴らしい作品だった。間違いなく人生一番の小説だと言える。今まで一番好きな小説と聞かれたら『スプートニクの恋人』であったが、それを遥かに上回ってきた。スプートニクでもかなり心を動かされ、生きる糧を得たと思ったが、『1Q84』はレベルが違う。私にとってこの作品は青豆にとっての『空気さなぎ』に値するくらいの代物だと言える。

とにもかくにも、1Q84は家庭環境に恵まれなかったという自覚がある人にこそ読んでほしい。愛着に問題があるような愛が足りていないような人にこそ読んでほしい。私にもそのような自覚があり、青豆や天吾の境遇や心情に深い共感を得ながら所々感情移入しながら読み進めることになった。それを踏まえた上での2人の最終的な深い感動的な結びつきは魂を揺さぶる以外の何ものでもなかった。全てが最高だった。

また、私個人の強い共感や好みだけでなく、ストーリー性にも優れていたと感じる。大筋は壮大なラブストーリーでありながらもミステリー小説のような謎や疑問、緊張感を持って物語が進んでいくため全6巻もあっても飽きずにむしろ次へ次へと期待感を煽られながら楽しく読み進めることのできる作品だった。

結局『1Q84』の「Question」よろしくその世界における謎は解明されきれないまま物語は幕を閉じたものの、それこそが1Q84であると納得できるが故に一般小説における不十分な種明かしによる不完全燃焼のようなものは感じず、完全無欠のストーリーだと感じた。少なくとも私にとっては完璧だった。こんな完璧な小説に出会ったのは初めてだというくらいに。

私はこの物語を愛している。出会ってくれてありがとう。こんな物語に、ずっと出会いたかった。

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2025年08月22日

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ネタバレ

1Q84のBOOK3~6の感想です。

牛河がメインキャラ入りしているのは驚いた。
哀れな最期だったけど・・・。
ふかえりが出てこなくなってから途端につまらなくなっちゃった。やっぱり動いてる時が良かったね。
青豆ぐらい激しく愛して、でもそれを受けいれる天吾・・・。
なんでだろう、不安にならないのかな。うらやましい。すてき。

以下はお気に入りの文引用です。
「明日の今頃、私はどこにいるのだろう(略)でもそんなのは些細なことだ。天吾がこの世界に存在しているという事実に比べれば。」
「説明されないとわからないのであれば、説明されてもわからない」
「靴は、利用されるだけ利用されて今は死に瀕した哀れな使役動物を連想させた。」
「セブンスターもそれくらいうまそうに吸われると本望だろう」
「ごく当たり前の生活?」
「いろんなものごとがまわりで既にシンクロを始めている。」
「うまく微笑むことのできない青豆をあとに残して。」
「私もいつかそこにあるような、物静かで順当な世界の一部になることができるのだろうか。」
「人は死者に自然な敬意を払う。相手はついさっき、死ぬという個人的な偉業を成し遂げたばかりなのだ。」
「「二人で月を見るの」「とてもロマンチックだ」」

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2025年06月26日

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ネタバレ

読み切った‼︎達成感‼︎
物語がゆっくり進んでいって、どこまでも読める感じがすごかった‼︎
タマルやさきがけの人達はどうなったのかなと思う所はあるけれど、それが気にならないくらいに気持ちよく終わった。純愛小説。

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2024年12月03日

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ネタバレ

村上春樹の小説を初めて読み終えたけど、天吾も青豆も別々の建物の303号室に偶然住んでいて、今わたしも303号室に住んでるので、この本をまず手に取って正解だった気が(勝手に)した

リトル・ピープルは謎のままだったけど、天吾と青豆に希望のある結末が訪れて読後感は爽快だった!

ところで、女性の胸の形と大きさの話が最後の最後まで出てくるのは何?
せっかくハルキワールドに浸ってるのにやめてください(;_;)

This was my first time finishing a Haruki Murakami novel, and since both Tengo and Aomame happened to live in Room 303 of separate buildings—and I’m living in Room 303 right now—I couldn’t help but feel (on my own whim) that picking up this book first was the right choice! :)

The Little People remained a mystery to the end, but Tengo and Aomame got a hopeful resolution, leaving me with a refreshing aftertaste!

By the way, what’s up with the talk of women’s breast shapes and sizes popping up right until the very last page?
I was finally immersed in the Haruki world, so please stop!

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2025年11月30日

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ネタバレ

天吾はその光の中に足を踏み入れ、ほっと一息つくことができた。
そこにはもう死者の気配はなかった。
それは生きている人々のための世界だった。
たとえ、それがどれほど不確実で不完全な代物であれ。

この一節が、読後もずっと胸の奥に残っている。
物語の中でふたりがようやくたどり着いたのは、
1Q84でも1984でもない――おそらく“第3の世界”。
完全ではないけれど、ふたりが出会うために必要だった場所。

その世界が良い場所なのかはわからない。
けれど、たぶん、どちらの世界にも留まっていたら、
天吾と青豆は巡り会えなかった。

「不完全で不確実で、それでも光のある、生きている人のための世界」。
そう思うと、ほんの少し、心が安らぐ。
この物語を読み終えたあと、私は何度も夜空を見上げて、
月が一つだけ浮かんでいることを確かめた。

あちらではなく、たぶんここが私の世界。
不完全で、不確実で、それでも。
生きている人のための世界。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1〜6の感想
とても面白かった!!2人の視点がどこで交わるのか、2人それぞれのリトル・ピープルへの迫り方が予想できないので、ドンドン読み進めたいと思って(ほぼ)一気見してしまった!
度々出る意味深な物語・セリフは、更に私を物語に惹き込ませる重要な役目を担っていたし、何よりも村上春樹さんの文章がとても好きだった!♡
これが初★村上春樹作品なので、これからもっとハマりそう)^o^(
少し心残りなのは、7冊目も出して欲しかったな〜ということ。月が2つある世界からは抜け出せたので、物語は終結となっているが、青豆のお腹にいるのは一体何なのか?2人の周りにいる人達は元の世界(ではない別の世界かもしれない)でも同じような感じなのか?さきがけは元の世界では追ってこないのか?ふかえりはもう一度姿を現してくれるの?疑問がまだある中、物語の外に出されたので、その先の物語も読みたかったな〜というのが読後の最初の感想でした(゚ω゚)

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2025年08月06日

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ネタバレ

(全巻同じレビューを入れています)

・・・
なんだか本作、キャラの作り・彩りが他の作品より豊富かつ精緻であったと感じました。

・・・
一番感じたのは天吾。
天吾は、これまでの村上作品でいうところの「僕」に当たると思います。

たいてい「僕」は文筆・広告関連、或いは飲食関連を生業にしつつ、音楽好き・思想や文学をそらんじ、気怠く生きつつも(あるいは彼なりに模索をしつつ)女性と交わりつつ、そして世の中のフシギと対峙し、最終的に大団円を迎える、みたいな感じでした。そんな彼ですが、不思議とどういう背格好かとか、そういうのは記述がなかったんですよね。まあそれはそれで味がありました。自分を重ねて読むこともできました。

でも今回の天吾は家族構成、身体的特徴(柔道耳!)、大柄でスポーツも数学的センスも(実際は音楽センスも)あり、とにかく器用であることなど、非常に細かい設定であったと思います。よくも悪くも、自分を投影するキャラではなく、外から眺めるべき主人公でありました。

・・・
もう1人の主人公青豆はややラフな作りこみで、彼女の家族の話は余り描かれず、むしろ柳屋敷の女主人やタマルなど、遊び友達の中野あゆみなど、周囲の際立ったキャラとともに物語を彩り深いものにしていたと思います。

もう1人、やはり出色のキャラは牛河でしょう。本作で一番印象深いトリックスター(という程ではない!?)だったかと。実は司法試験合格者とか医者の家の子だとか。こういうのは初めて読んだときに記憶に残りませんでした。

でも彼のこと、他の作品でどっかで読んだ気がしたけどどこで見たんだろうと、気になって仕方なく、googleで検索したら『ねじまき鳥クロニクル』 (1994)で出ていました。そうそう、「僕」の元を離れた奥様の兄の綿谷ノボルの秘書としてでした。

・・・
その他、ふかえりの育ての親の戎野先生、編集者の小松など、かなりエッジのたったキャラが自然な形でそのポジションを占めていたと思います。

あと、17歳で文学賞を受賞したふかえり、あれは綿矢りささんが高校生で芥川賞を受賞したことの影響じゃないかとか、さきがけ・あけぼのってのもオウムの影響じゃないかとか、諸々想像させるところがありましたね。

・・・
もう一つ。終わり近くまで殆ど考えませんでしたが、タイトルについて。

本タイトル、もちろんかのディストピア小説の『1984』を承けたものでありますが、本作は「9」「Q」になっており、一種のパラレルワールドへ迷い込んだという設定です。実際にはパラレルではないとの説明がありましたが。

で、天吾と青豆は会えそうで会えないすれ違いを、結構延々と、最後の最後まで繰り返すのですが、最終巻の第三巻に至ってまだ会えないところで、私気づきました。
そう、この物語は年末までに終わらねばならない。なぜならば、タイトルがそうだから。85年を跨がないように、タイトルが84年となっている。

実は第一巻は4-6月、第二巻`は7-9月、第三巻は10-12月とサブタイトルが振られています。そしてキチンをけりをつけるべく、収束していったことに感心した次第です。

上手く表現できませんが、何というか、タイトルの制約を内容に反映させた?ような作りが面白いと思いました。

・・・
ということで村上作品でした。いやー長かった。10日間弱、読むのにかかりました。

ところで、私の初めて読んだ村上作品は『ノルウェイの森』(1987)でした。そして帯には『究極の純愛』とか何とか書いてあったと記憶します。

そこから20年を経て上梓された本作、これもまた『究極の純愛』と呼んでも良い作品であったと思います。

堪能致しました。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

年末年始で一気読み
長編読むのは久しぶり
当時すごいベストセラーの記憶だったからずっと読みたかったけど
よかったかと言えば普通だった
NHKの集金は天吾の父親?
なぜ天吾の家と青豆の隠れ家、牛河のところに来たとか、牛河から出て来たリトルピープルと空気さなぎのその後等。
伏線回収しきってないとこあるけど物語としては完結してくれてよかった。
ただ、おおよそ予想通りの展開とオチだった。
村上春樹作品はもうしばらくいいかなと思った。

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2025年01月06日

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ネタバレ

青豆と天悟、ようやくふたりは巡り会えたんだね。
このふたりでならどの時代でも、どんな場所でも生きていける。なんてロマンチック。

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2024年10月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

約10年ぶりの再読。
あっというまに読んでしまった。これだけ長い話はけっこう時間かかるが…
なんといってもキャラの濃さ。特に牛河。
青豆とてんごは出会えてよかった。世界はもとに戻ったようだが、その世界でどんなふうに生きていくかは想像がつかないな。
全ての流れが、伏線として最後の結末に集約したのはよかった。運命として決まってしまっている物事としての人生。そして、その中にあって、全く予想外のことが起こること。運命と真逆の存在。
その両方が、同時に存在すること。
その中で葛藤しながら生きる人々。
現実と離れているようで、実は現実のような物語。村上春樹の力は偉大だ。

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2024年10月08日

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