あらすじ
私立探偵のフィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には悲しくも奥深い真相が隠されていた……村上春樹の新訳で話題を呼んだ新時代の『長いお別れ』が文庫版で登場
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
読んでいてアメリカっぽさ、無骨な感じを受けていました。でもヘミングウェイほど感傷的ではなく独特で、徹底的な一人称視点なのに真相に辿り着けない…
ドライだけどカラフルな感じ。
Posted by ブクログ
ハードボイルドの古典。レイモンド・チャンドラーの探偵フィリップ・マーロウシリーズの最後の作品。ハードボイルドとは、主人公の無骨で筋の通った生き方、行動を慈しみ楽しむものだと思う。そこには浮世の経済合理性や名誉はなく、ただた個人的な「筋を通す」「原理原則を曲げない」それだけがある。そんな非現実的な生き方ができる本当の意味で「タフな」男の物語をたのしむというかなりマニアックなジャンルだと思うが、チャンドラーがそれを確立したと思う。村上春樹がなぜ彼を好きなのかよくわからないが、根底には「原理原則を曲げない」生き方への憧れがあるのだろうか。文体のシンプルなところも好きなのだろう。たまに主人公に「やれやれ」と言わせるがこれはちょっと違う(ハードボイルドではない)感じがする(苦笑)
Posted by ブクログ
「ハードボイルド」の意味を、ようやくこれを読んで理解できた気がする!!
これがザ・ハードボイルドね!って自信満々に言いたい。
ハードボイルドってそもそも何?ってレベルの私なんだけど、文学で、感情を交えず、始めから終わりまで、客観的な態度・文体で対象を描写しようとする手法らしい。
この小説、マーロウという主人公=語り手の感情が全く出ず、淡々と周りの情景、出来事を描いていくスタイルで、王道なミステリーのプロットがこんな風に純文学になるなんて!!そんなことあるんだ、知らなかった!すごい!
と驚いてる!!
ストーリー自体がすごい斬新な設定とか、そういうことではなく、語られ方が斬新!!
すごい簡潔な文体で、タフな私立探偵マーロウが展開する、全く感情に流されない、冷徹で現実的な描写が、とにかく読み手を惹きつける!!!
皮肉ばっかり言って、「まどろっこしいやつだな」とマーロウのことを思いつつも(笑)、かなりの吸引力で惹きつけられてしまう魅力が彼にはある。(か、かっこいい…)
小説の時代も時代(1953年刊行)なので、こういう言い方を許してくださいっ!
「男らしい…」
おばさんの戯言だと思って聞き流してね!すいません!(笑)
今回読んでる間一度も実現できなかったけど、暗めのバーの間接照明の下でギムレットをちびちび飲みながら読んでみたかった本…いつか再読する時にやりたい…
そしてどうしてロング・グッドバイなのか。
最後まで読んで、この胸がキュンとなる感じを、切なさを、肺の奥まで思いっきり吸い込んで、「はぁ〜〜」と吐き出してほしい!!
さよならには色々あるなぁ!
母のおすすめだったんだけど、母は村上春樹訳ではなく、清水俊ニ訳が良いと思うらしい。(母は村上春樹が苦手なので)
私は村上春樹の文がとても読みやすいと思うので、この訳で読めて良かったのかな。(あとがきの解説も長いっっ!ボリュームタップリで大満足。)
ヘミングウェイや特にフィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」の影響がかなりあるらしく、ギャッツビーを読むのも尚更楽しみになった。
Posted by ブクログ
令和におけるチャンドラーを読める幸せ。生きていてよかったと思える1冊である。清水訳も読んでいるが、それでも読む意義については、長ったらしい春樹解説を見てほしい。
Posted by ブクログ
本読みならば一度は読んでおかなくてはいけないと思った中の1冊。
翻訳小説を読むのは何十年ぶりだし、翻訳を担当した村上さんの作品はエッセイしか読んだことがないし、なんと言っても分厚いし・・・という不安要素はあったのだが、フタを開けてみれば、元は外国語で書かれていたという不自然さがどこにもない。
村上氏がアメリカに滞在している時のことを書いたエッセイを読んでいたせいだろうか。氏の描くアメリカの風景に馴染みがあるような気がして読みやすかった。分厚いけど。
マーロウは、パンドラの箱を開けたばかりか、最後に残っていた「希望」まで引きずり出して吊し上げてしまうような、依頼された仕事はやらずに、余計なことばかりする男。そして口が減らない。他のキャラクターも皆、ああ言えばこう言うの応酬が半端ない。この辺が日本人との国民性の違いか。本が分厚くなるはずである。
そして、女を見るとすぐにロマンスしたがる。これも国民性か、ハードボイルドというジャンル性か。
マーロウは、警察的、あるいは法的な形での事件の決着には興味がない。
彼は、個人的な「?」を徹底的につぶさないと気が済まないようだ。そして、最後までそうした。
出会った時のテリーには、マーロウの心の琴線に触れる「何か」があったと書かれている。
テリーは今でもマーロウとギムレットを飲みたがっていたようなのに、何が気に入らないんだろう。
ああ、つれないなあ・・・つれない。
「ロング・グッドバイ」は、永遠にさよならという事でいいのか、またどこかで会うかもしれないけれど、期限の決まっていない長さのさよーならまたいつか、なのか。
後者であってほしい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翻訳者による解説の、「チャンドラー論」のようなものが難しかった。
Posted by ブクログ
文章に酔える。
原作の世界観を残したまま村上春樹の文体/世界観も感じることができて最高の一冊。登場人物の多い海外文学への抵抗感もこの人なら消え去ってしまう。
自分に大きな影響を与えた作品を翻訳するって本当に凄い。
Posted by ブクログ
美しい話だった。そして題名の意味が最後の最後にわかるそのまとめ上げ方が最高だった。話の途中に、男同士の友情として描かれる一節がまさにハードボイルドで…そしてその場面があるからこその最後の最後に題名が効いてくる…染み渡る話でした。
Posted by ブクログ
10代に挫折して本棚の肥やしになっていたものを引っ張り出して再読。
10年越しに読んで思うことは、マーロウはなんて気高く不器用な男だったのだろうか。
10代の私ではそのことが分からなかった。
何を感想として残せばいいか分からないくらい、読んだ後に寂寥感に苛まれる。
人生を象徴するような出会い、別れ、非情さ、優しさが詰まっていた。マーロウに共感しながらも、同時に、役者あとがきにもあるようにその実何光年も離れたところにいる人間だろうという言葉に強く頷く。
優しさや誠実さは、時に深く人を刺す。
もう彼とのギムレットは飲んでしまった。
この先この本が本棚から消えることはないだろうし、何度でも読み直す大切な一冊になった。
読むたびに味が変わるんだろうな
Posted by ブクログ
私立探偵、フィリップ・マーロウのどこまでも冷静で、どんな事態におちいっても、ユーモアを忘れない、いわば超人的なナイス・ガイさにやられた。
事件も、網をくぐって、くぐったすえに、複雑な様相を呈している全体像に驚き、終わりも予想外だった。
会話も面白く、人物、一人一人に魅力があるので、読む者を飽きさせない。
傑作。
Posted by ブクログ
村上春樹版の『長いお別れ』
こちらも大好きな本です。
とりあえず解説を堪能して、清水俊二訳と比較するといった楽しみもありますよね。
装丁のデザインは、なぜこんなにも簡素なのでしょう。
Posted by ブクログ
訳者村上春樹が影響を受けたというレイモンド・チャンドラーのミステリー小説で、ハードボイルド系ということもあって、酒や喧嘩が目立つ描写が多い。分量が多い作品だが、現代の人びとが読んでも分かりやすい語彙で翻訳され、また一文自体が短いので、すらすらと読める構成となっている。あとがきでは、訳者本人がチャンドラーの生い立ちやかれの作品の優れた点と魅力を語っている。
Posted by ブクログ
チャンドラーの準古典的名作。何処となく『グレートギャツビー』に雰囲気と感じていたら、村上春樹氏も同じことを述べていて嬉しい。ジャンルとしてはハードボイルド・ミステリではあるが、マーロウの視線を実相として重ねて外形的に心情を描く硬質なのに軽快な文体はページが進む。アメリカ文学の名作としても楽しめるし、村上春樹氏訳ということで彼の亜流作品的な雰囲気でも楽しめる。
Posted by ブクログ
フィリップ・マーロウは、酔っぱっていたテリー・レノックスと仲良くなる。彼の妻は億万長者の娘。ある日、その彼の妻が殺され、容疑がテリーにかかる。テリーは罪を自白した遺書を遺して逃亡先のメキシコで自殺するが、テリーが犯人とは思えないマーロウは真相をつきとめようとする…。
誰が良い人で誰が悪い人なのか見極めながら読んでいくドキドキ感が続きました。怪しい登場人物が多く、気が抜けません。
お酒と中年男、美しくミステリアスな女…ハードボイルドです。
主人公マーロウの人の依頼を断れない優しいところがありつつも冷静なところや、お金には断固クリーンなところに好感が持てました。
登場人物が多く、594ページもあるけれど、キザ過ぎないカッコいいセリフで飽きることはありませんでした。最後の章は特にカッコよくて繰り返して読みました。真実にたどり着くまでが長かったからこそ楽しめたんだと思います。
Posted by ブクログ
面白かった。
ハードボイルド作品は苦手だが、村上春樹が織りなす独特な文体を通してだと、不思議と違和感なく読めた。
特に、フィリップ・マーロウが自宅でメンディネス(ギャングのボス)と対峙する場面は心臓を鷲掴みされるような臨場感があり、一気に読んでしまった。
一読しただけではとても理解できない奥深い作品。日を改めて、また手に取りたい。
Posted by ブクログ
探偵フィリップ・マーロウは、酔って駄目になっているテリー・レノックスに出会い、「なにか」に惹かれる。おそらくその「なにか」は彼にとって欠落というべきものだろうと思われる。その「なにか」がなんなのかについて彼自身がどのくらい理解しているのかは、小説を読む限りでは分からない。ただ、彼はその「なにか」のために、テリー・レノックスの死に執着する。その過程で、彼以外の、周囲の人の心にあるわだかまりは少し明らかになったりするし、事件の真相も明らかになる(予想以上にミステリ小説してたので驚いた)が、結局彼の欠落した「なにか」には1mmも近づかない。
最終的に、”ミステリ的な仕掛け”としてテリー・レノックスが生きていたことが明かされる。これで良かった、マーロウのレノックスに対する想いは報われるだろう、と感動する準備をしながら読んでいくとそうはならない。真相にかかった霧が晴れると同時にレノックスに付帯してマーロウとの繋がりを引き止めていた「なにか」も霧散してしまう(それはミステリ的な仕掛けのさらにその先に仕掛けられた非ミステリ的な真相だ)。そうして、真相が明らかになるのと逆行して、彼の欠落した「なにか」はより深くなっていく。
読み終わってもなお、フィリップ・マーロウが誰だったのか分からないままだった。
Posted by ブクログ
チャンドラーの本は集中力が続かないことが多くて、最後まで読めないのが普通なのだが、このストーリーは気になって読破した。推理小説としてはとても上出来だと思う。
Posted by ブクログ
初のチャンドラー。良かった。なかなかのボリュームだけど村上春樹訳というのもあって、思いの外スラスラ読めた。元々ハードボイルドとか古典的なミステリーに惹かれるところがあり、私的には非常に満足度が高かったけど、好みは分かれるだろうなぁ。小洒落た言い回し、キザな台詞、無駄に細かい描写そのものを愉しめないと苦行かと思う。謎解きを求める方もハマらないに違いない。場面場面を愉しむ、夜中にJAZZの名盤を聴きながら、酒と煙草をお供に読みたい1冊でした。巻末の村上春樹氏の気合の入ったあとがきも読み応えあり。
Posted by ブクログ
だいぶ前に清水訳を読んで以来の再読。内容については名著すぎて言うべきことはほとんどないが、村上春樹訳は、あっさりめだがくっきりはっきりと書かれていて細部がよく分かる印象で、作品そのものの文学性を味わうにはこっちの方がいいかも。
Posted by ブクログ
1953年に発表された本であることにびっくり、第二次世界大戦中の空襲やナチによる残酷な扱いを受けた心の傷は重要な意味をもってはいるものの、翻訳が新しいせいもあるのだろうが、古さを感じない。緻密な凝ったストーリーに魅了された。
Posted by ブクログ
レイモンド・チャンドラーの長いお別れ、村上春樹訳。
まずそのタイトルに惹かれた。ロング・グッドバイ。
なかなか粋なタイトルである。
フィリップ・マーロウの織り成す物語に、
読んでみて大分想像してたものと違っていた。
いわゆる推理物と呼ばれる、事件が起きて推理していって犯人を暴いていく、
そんな王道パターンとはどこかズレているような、
まずもって、人間臭さが全開である。そして何処までもキザな。
そんなフィリップ・マーロウという男の魅力を存分に味わう、
読んでいくうちに珈琲を深く味わうような、
そんな苦味にも似た切なさがそこには広がっていた。
ハードボイルドとはこういうことなのかもしれない。
Posted by ブクログ
ハードボイルド小説の巨匠の代表作を村上春樹訳で読む。もうむちゃくちゃに有名で言い回しやセリフも有名なのが多い。プロットはシンプル(友人の死の真相を調べていく)だがマーロウのくたびれた皮肉が身にしみるように感じる。作品としてオッと思わせるシーンもなくはないが比較的淡々と進んでいくように思えるのは主人公目線だからだろうか。事件が解決してからの方が読み味としては面白く、そこからが本番な気がする。正直、長編もいいのだが短編が読んでみたい。
Posted by ブクログ
いちいち言い回しがかっこいい!アメリカの風を少し浴びれた気がする。
ラストにめちゃくちゃ感動したし、人間の心理描写が上手くてめっちゃ良かった
いつかまた読みたい
「ギムレットを飲むには少し早すぎるね」
Posted by ブクログ
事件起きてから解決編に移るまでが長い!
そこまで我慢できれば後半は展開が変わりまくりで飽きなく読めた。
春樹さんぽさが万歳で洋書を読んでる感じは無かった。
Posted by ブクログ
準古典ミステリ文学の巨匠、レイモンドチャンドラーの最高傑作と言われている。
古い本なので、展開的にはそこまであっと驚かせるようなものはないが、古きアメリカの退廃した社会や、登場人物たちの清濁併せ持つありのままの姿を、主人公フィリップマーロウの視点から切り取る。
村上春樹のあとがきもすごい難しいこと言ってるけど、「自我というものを、
ブラックボックスとして、各人の行動に反映されたものとして捉えている」というコメントには同意できる。
村上春樹が似た作品として挙げている、フィッツジェラルドのグレートギャツビーも読みたくなる。
個人的にはマーロウやレノックス、その他の人々達も「どこかやりきれない」まま終わるのが味わい深くはあった。また、誰にでも言葉で噛み付くマーロウの知的さと獰猛さのバランスもハラハラさせてくれた。
狆、薹が立つ、アモンティラード、指物師など、難しい言葉も多数。小説からも学ぶことが多いなと思い、小説をさらに読むきっかけになりそう。
Posted by ブクログ
村上春樹が準古典と位置付ける小説である。レイモンド・チャンドラーは推理小説のハードボイルドという分野を代表しているらしい。一方、本格ミステリーではアガサ・クリスティ、エラリー・クイーンが有名である。本格ミスとの違いは簡潔に言葉で表現すると「現実の犯罪捜査に近いかどうか」となる。近いのがハードボイルド小説で(wiki調べ)確かにアガサやエラリーってじゃんじゃん死人がでて、なぜかしら急に手ごろな証拠があらわれるってと・・・現実とのギャップが激しようなきがする。
日本のハードボイルド作家で有名な方は大沢在昌・北方謙三が二大巨塔かな。なにぶん推理小説ってあまり趣味じゃないんで読みこんでいません、『ロング・グットバイ』は村上春樹訳だから読んでみた。