あらすじ
私立探偵のフィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には悲しくも奥深い真相が隠されていた……村上春樹の新訳で話題を呼んだ新時代の『長いお別れ』が文庫版で登場
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Posted by ブクログ
物語に惹き込まれて、悲しさに浸っていた。苦しくはない悲しさだったように思う。
テリーとの出会い、それから別れが尾を引いて、次から次へと無関係なようでいて、繋がっている流れにマーロウは関係していた。介入していた。
また、再読したい。今度は静かな夜に、お酒とデスクライトで本を照らして、そういう雰囲気の中で、もう一度読みたい。
Posted by ブクログ
美しい話だった。そして題名の意味が最後の最後にわかるそのまとめ上げ方が最高だった。話の途中に、男同士の友情として描かれる一節がまさにハードボイルドで…そしてその場面があるからこその最後の最後に題名が効いてくる…染み渡る話でした。
Posted by ブクログ
10代に挫折して本棚の肥やしになっていたものを引っ張り出して再読。
10年越しに読んで思うことは、マーロウはなんて気高く不器用な男だったのだろうか。
10代の私ではそのことが分からなかった。
何を感想として残せばいいか分からないくらい、読んだ後に寂寥感に苛まれる。
人生を象徴するような出会い、別れ、非情さ、優しさが詰まっていた。マーロウに共感しながらも、同時に、役者あとがきにもあるようにその実何光年も離れたところにいる人間だろうという言葉に強く頷く。
優しさや誠実さは、時に深く人を刺す。
もう彼とのギムレットは飲んでしまった。
この先この本が本棚から消えることはないだろうし、何度でも読み直す大切な一冊になった。
読むたびに味が変わるんだろうな
Posted by ブクログ
面白かった。
ハードボイルド作品は苦手だが、村上春樹が織りなす独特な文体を通してだと、不思議と違和感なく読めた。
特に、フィリップ・マーロウが自宅でメンディネス(ギャングのボス)と対峙する場面は心臓を鷲掴みされるような臨場感があり、一気に読んでしまった。
一読しただけではとても理解できない奥深い作品。日を改めて、また手に取りたい。
Posted by ブクログ
探偵フィリップ・マーロウは、酔って駄目になっているテリー・レノックスに出会い、「なにか」に惹かれる。おそらくその「なにか」は彼にとって欠落というべきものだろうと思われる。その「なにか」がなんなのかについて彼自身がどのくらい理解しているのかは、小説を読む限りでは分からない。ただ、彼はその「なにか」のために、テリー・レノックスの死に執着する。その過程で、彼以外の、周囲の人の心にあるわだかまりは少し明らかになったりするし、事件の真相も明らかになる(予想以上にミステリ小説してたので驚いた)が、結局彼の欠落した「なにか」には1mmも近づかない。
最終的に、”ミステリ的な仕掛け”としてテリー・レノックスが生きていたことが明かされる。これで良かった、マーロウのレノックスに対する想いは報われるだろう、と感動する準備をしながら読んでいくとそうはならない。真相にかかった霧が晴れると同時にレノックスに付帯してマーロウとの繋がりを引き止めていた「なにか」も霧散してしまう(それはミステリ的な仕掛けのさらにその先に仕掛けられた非ミステリ的な真相だ)。そうして、真相が明らかになるのと逆行して、彼の欠落した「なにか」はより深くなっていく。
読み終わってもなお、フィリップ・マーロウが誰だったのか分からないままだった。
Posted by ブクログ
準古典ミステリ文学の巨匠、レイモンドチャンドラーの最高傑作と言われている。
古い本なので、展開的にはそこまであっと驚かせるようなものはないが、古きアメリカの退廃した社会や、登場人物たちの清濁併せ持つありのままの姿を、主人公フィリップマーロウの視点から切り取る。
村上春樹のあとがきもすごい難しいこと言ってるけど、「自我というものを、
ブラックボックスとして、各人の行動に反映されたものとして捉えている」というコメントには同意できる。
村上春樹が似た作品として挙げている、フィッツジェラルドのグレートギャツビーも読みたくなる。
個人的にはマーロウやレノックス、その他の人々達も「どこかやりきれない」まま終わるのが味わい深くはあった。また、誰にでも言葉で噛み付くマーロウの知的さと獰猛さのバランスもハラハラさせてくれた。
狆、薹が立つ、アモンティラード、指物師など、難しい言葉も多数。小説からも学ぶことが多いなと思い、小説をさらに読むきっかけになりそう。