Posted by ブクログ
2022年05月05日
第94回アカデミー賞 国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」を観に行くため、再読する。
映画そのものはアカデミー賞を受賞したとは言え、400字詰めで80枚分の短編小説を、なんと179分という長い尺に引き伸ばしたものだから、そんなに期待はしていなかった。
でも、いい映画でした。
感想を一言...続きを読むで言うと、「小説とはぜんぜん違うものになってるけど、なかなかいける」という偉そうな感じになる笑
映画と小説との違いで気になったのは、主に以下の3点。
①主人公・家福がたばこを吸うこと
小説内では吸っていないと思う。村上さんが昔吸っていて禁煙した人だし、ヘビースモーカーだった僕が禁煙したのも村上さんの影響を少し受けているので、とても気になった。
家福が吸うのなら、サーブの中を禁煙にする意味がわからないし。
②妻の死因
小説では子宮がん。映画はくも膜下出血。
子宮がんはHPVの感染が原因で発症することが多い。だから、ある意味、不倫の代償的な意味合いが感じられる(最近読んだ吉川トリコさんの「余命一年、男をかう」で主人公が子宮頸がんになった原因は上司との不倫だ、みたいなくだりがあったので、なおさら)。
③映画では車の中でロックを聴かないこと。
だって、タイトルが「ドライブ・マイ・カー」ですよ…と、思っていたのだが、小説の中でも家福はビートルズのこの曲を聴いているシーンが出てこない。聴いているのは、ビーチ・ボーイズやラスカルズやクリーデンス、テンプテーションズといったアメリカン・ロックだった。
「ドライブ・マイ・カー」は人の多面性を受容することがテーマ。理屈ではなく、ただあるものとして受け止めること。それは自分自身を深くまっすぐ見つめることでもある。だから、とても難しい。
なお、映画では短編集のうちの「シェエラザード」と「木野」のエピソードも散りばめられている。だから、予習としては短編集全体を読んだ方がいい。