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Posted by ブクログ
きっかけは、あの名セリフ「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない」。元ネタを知りたくて手に取った一冊。
読んでみたら、目的以上に本編そのものが面白かった。マーロウと登場人物たちの気の利いた掛け合いが最高に小気味いい。真似したくなるけど、日常生活であんなキザなやり取りをする場面はどこにもない(笑)。
村上春樹作品でたまに出てくる、ちょっと変だけど洒落た言い回し——たとえば「赤坂でナッツでもつまもうか」的な、あの独特な日常描写も、たぶんチャンドラーの系譜にあるんだろうな、と勝手に納得。
ミステリーとしてのトリックや動機は正直ちょっと強引で、そこだけ見ると物足りない。でもそれでいい。この小説はマーロウたちの気持ちいいお喋り合戦のためにあるんだから。
そして終盤、あの名セリフが満を持して登場する。「この文脈があったから、あの一言だったのか」と痺れた。セリフそのものは真似できないけど、その裏にある価値観は大切にしまっておきたい。読む前より、読んだ後の方がこの本を好きになった一冊。
Posted by ブクログ
マーロウ最後の一作。もうこれでマーロウに会えないかとおむと寂しい。リンダが出てくるのが少し驚きである。
村上春樹が7作の翻訳をやっている。改めて、なぜ彼がチャンドラーが好きなのか考えてみた。彼はバイオレンスも銃も私立探偵も好きとは思えないし、ハリウッドの金持ちライフにも興味はないと思う。でもエッセンスで共通点はある。主人公の男は、自分のルールを持ち、他人の価値観や世間体や慣習には関係なく、あくまでも自分のルールに従ってとことん行動する。ここは共通。あとは一つ一つの文章が簡潔で短い。でも主人公の話し方は少しひねくれていて、回りくどいしきどっているし余計な比喩や修飾語がやたらと多い。ここらへんは共通である。
その意味でハードボイルド小説のエッセンスが、自分のルールを第一に、他人の迷惑など顧みずに予定調和も無視しして突き進み、結局誰も幸せにはならないということにあるとすれば自分もその解釈に同感である。
Posted by ブクログ
▼(本文より)
常識というのは、決して計算間違いなぞしない、グレーの背広を着たちっぽけな男だ。しかしその男が計算しているのは常に他人の金だ。
▼(本文より)
この街の売りのひとつは、ここで働いている人間にはここに住むような経済的余裕はないということです。
▼フィリップ・マーロウ長編を発表順に再読しよう計画の最終章。第1作「大いなる眠り」は作者49歳くらい。最後の「プレイバック」は作者69歳くらい。マーロウの年齢は言及されずにあまり老けていない印象ですが、小説そのものは、より練られて、より枯れてきて、そしてややタガが緩んでいる印象。それはそれで滋味深いのですが、やはり「ロング・グッドバイ」が他をよせつけない強靭さと分厚さとオモシロさであることは確かですね。
Posted by ブクログ
「優しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない」あの有名なセリフの村上春樹訳である。「プレイバック」の小説そのものよりもこのセリフの方が有名である。
「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」という有名な訳は生島治郎によるもののようだ。
田口俊樹訳だと「タフじゃなければここまで
生きてはこられなかった。」になる。
こんな話だ。朝の6時半、マーロウは知らない弁護士からの電話で起こされる。列車で到着する若い女性を尾行してくれという依頼だった。マーロウは駅へ行き、女性を見つけ尾行するが、彼女の周りにはおかしな男たちがまとわりつき…。前半は事件らしい事件は起こらない。依頼してきた弁護士は何者か?この女性は?彼女にまとわりつく男たちは?何が起きているのか、わからないことだらけである。
途中で死体が出てくるがすぐ消えてしまい、今ひとつ盛り上がらない。最後にはすべてが明らかになるのだが、依頼主になるベティーにマーロウは言う。「私が求めているのは金なんかじゃない。自分がいったい何をしているのか、なぜそんなことをしなくちゃならないのか、それが知りたいだけだ」なんだこの理屈。何がしたいんだ?
この作品では事件は派手には起きない。その点では地味だ。そして何よりいつものマーロウと違う点は、簡単に女性に言い寄られ、簡単に一緒に寝てしまう点だ。これまでのマーロウは悪漢から女性を守るなどの流れがあって女性から何か言われてもさらりと断るのだ。しかしこの話では女性は脈絡なくマーロウに惚れて、マーロウも今までの我慢の反動のように女性を受け入れる。あまりオススメしたくないマーロウである。
翻訳では創元推理文庫の田口俊樹版も良いと言われるが、ハヤカワ文庫の村上春樹版が読みやすいのは確か。どうぞフィリップ・マーロウが崩れ始めるチャンドラー晩年の長編小説を愉しみましょう。
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