村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「沈黙」
どうしようもなく嫌な相手にされた嫌がらせに苦しめられながらも、相手を哀れみ、同じ土俵に立ちたくないと葛藤し、苦しむ想い。
レベルの低い相手とは戦わないこと。
私が生きていく上で大切に思って来たことでもある。
それでいて、その相手の中にも「その人なりの正義」というものがあるのだということを理解出来るようになりたいと思う。
だから、私は同じような葛藤を抱えていた時に、恨みや憎しみではなく、「哀れみ」の感情だけが心に残っていたのかもしれない。
そして、その他大勢の傍観者達に対しては、興味すら抱けなかったのかもしれない。
「トニー滝谷」
彼が「孤独」の存在を知ってからの彼の抱える孤独がどうしようもなく切なくなった。
「七番目の男」
幼い頃に、恐怖に背を向け、目を閉じてしまった七番目の男。
それは奇しくも、自分の中のいちばん重要なものを、「何か」に譲り渡してしまう結果になってしまっていた。
怖いものやしんどいことから逃げたくなるそんなとき、ほんの一瞬の迷いの後に、ためらいなど無意味で、腹を括って正々堂々と向かいあっていた方が、後がいいのだということ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前口上で著者自身が出てくるなんて初、だな。すべて実話らしい…ホントかな。エッセイを読んでいる限りだとちょっと信じられないな。笑。
では一篇ずつ感想的なものを…。
①「偶然の旅人」…話の内容は関係なくて、語り口がその著者を表しているんだ。文体ってやつだね、これが。とても村上春樹らしい作品に仕上がってた。
②「ハナレイ・ベイ」…主人公は鮫に片足を喰いちぎられ溺死してしまった息子の母親だ。その喪失感を拭うため(?)、彼の命日前後に亡くなった土地に赴き——。ある人物たちに出会うことにより、少しでも心穏やかに過ごせるようになったのかなぁ…。
③「どこであれ〜」…マンション内から忽然と姿を消した夫を探してほしいと依頼に来た女性。それを無料で探す男(主人公)。これも摩訶不思議な話だった。消えた夫は階段の踊り場にあった鏡を通して「仙台」に行ったんだろうねきっと。ソファーに座り、階段を上ってくる住人をただ眺める。どこか文学的な感じがした。
④「日々移動する〜」…元証券アナリストの女性と、彼女に恋をする小説家の話。これは割とわかりやすいかな。その女性は墜ちて亡くなってしまったんだと思う。だから淳平(小説家)の元へ来ないのだ。
⑤「品川猿」…これも不思議な話だ。どっかの短編集で似たものを読んだ気がする…。見た目は「猿」だけど言葉を話せるから、もうヒトよね。笑。村上作品にはこういう変わったキャラクターが多く存在する。
で、本当に実話なのこれ?笑
俄には信じ難いんだが……。笑。 -
Posted by ブクログ
ネタバレFUN FUN FUNが良すぎる。
曲も含めて。
そんなただのことばの響きの中に氷を入れて飲むとおいしいよ
面白すぎる。どうやら深いことを語ってそうだぞ、実体と存在について、言葉とは記号であり…みたいな端をしているかと思ったら最後の一文で急に気が抜けたことを書いている。
なんだか村上春樹のステレオタイプなイメージとは全く違う。ゆるいユーモア。
鏡の中の夕焼けもいいな。これは詩ではなく結構しっかり短編小説。犬の喋り方が好き。
安西水丸のイラストはポップで線画太くてビビッドな色使い。精緻でも写実的でもないが思い切りとインパクトが魅力的な絵。一見して雑であるように感じられるが根底には深い観察があるようにも思う。 -
Posted by ブクログ
第1部の最初の一行で、主人公は台所でスパゲティをゆでていました。「泥棒かささぎ」の序曲を口笛で吹きながら。
第3部を読み終えるまでは、これほど壮大なスケールの物語だとは予想していませんでした。主人公の岡田トオルはこれといった特徴もなく、国境を超えないし、戦地に赴くこともないし、物理的な移動距離はさほどないのですが、夢と現実、生と死の世界をさまよいます。クロニクル(年代記)とタイトルにあるように、過去の時代についても描かれ、戦争の残酷さ、理不尽さは読むのが辛くなりました。
戦時下、中国大陸にいた獣医は、思います。「世界というのは、回転扉みたいにただそこをくるくるとまわるだけのものではないのだろうか」と。
大きな喪失を体感した時は、すべての世界が閉じ、回転扉の別の仕切りの中に移動させられたような、まったく別の世界に放り出されたような気持ちになるのかもしれません。
でも、連続性がないはずの世界は、後の世代の岡田トオルに結び付き、輪のようにつながっているのです。
岡田トオルは、枯れ井戸の底の暗闇の中で、精神の深層世界を探ります。生死の境界へとさまよう旅は、痛く、苦しく、恐ろしくもありましたが、読書でなければ知ることのできない(現実にはしたくない)体験でした。