【感想・ネタバレ】みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

ようこそ、村上さんの井戸へ――川上未映子はそう語り始める。少年期の記憶、意識と無意識、「地下二階」に降りること、フェミニズム、世界的名声、比喩や文体、日々の創作の秘密、そして死後のこと……。初期エッセイから最新長編まで、すべての作品と資料を精読し、「村上春樹」の最深部に鋭く迫る。十代から村上文学の愛読者だった作家の計13時間に及ぶ、比類なき超ロングインタビュー!

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Posted by ブクログ

今1番気になってる作家のお2人の会話が読めてとても嬉しい。特に「騎士団長殺し」を最近読み終えたばかりだったので、インタビューの内容もついていきやすく良かった。
川上未映子さんだからこそできる質問や、かなり深入りする質問がとても面白かった。特に村上春樹さんの小説の中での、女性の描かれ方についての突っ込んだ質問。めちゃくちゃ良かった。
村上春樹さんの今まで読んだ(まだ数は少ない)小説は、どれも私はとても好きだったのだけれど、女性目線で読むと少しモヤモヤするところがあって、その霧が晴れたような気持ちになり、本当にこのインタビューを読めて良かったと思う。
村上春樹さんへは、川上未映子さんがそう感じたように、「信頼関係」を築いて良いんだと感じた。
そして何よりも私が腑に落ちたのは、村上春樹さんは「本当の出来事とか、本当にそこで血が流れたような出来事とか、悲しみや恨みとか、そういったものを自分の物語に利用することはできない。」というところ。もし題材にするなら、スピーチやノンフィクションとしてやると。
私は虐待やネグレクト、性同一障害などの社会的テーマを表面的に小説に「利用」しているかのように取り入れてる作品にとても嫌悪感を抱くので、何だかこれを読んで少しスッキリした。
これから、ブローティガン、カフカ、ディケンズ、メルヴィル、フィッツジェラルド、チャンドラー、サリンジャー、トルストイを読みたい。

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2025年01月09日

Posted by ブクログ

注! インタビュー本なのでネタバレ設定にしていませんが、内容にかなり触れています。



年末(2023年のw)、本屋をブラブラしていた時、表紙のフクロウ(あ、みみずく…、ねw)が、なぜかミョーに気に入ってしまって、ついつい衝動買いしちゃった本。
ちなみに、フクロウとミミズクの違いは、羽毛が耳のようにちょこんと出ているのがミミズクで、頭が丸いのがフクロウということらしいけど。
ウチに時々やって来るのは頭が丸い方なせいもあって、ミミズクよりフクロウの方が好きだ(^^ゞ

……って、最近は、文章の終わりに「。」をつけたりすると怒られたり(ニュースで見た)、「、」や絵文字が多いと“おじさんの文章”とバカにされるらしい(『脳の闇』で中野信子が自分だってチューネンのクセに変に上から目線で書いていたw)が、今は多様性が尊重される時代だ(爆)
文章の終わりに「。」をつけるのは、自分にとっては長年の習慣だし。
また、あふれるネットの文章(情報)に、誰もがテキトーに読みがちなネットの文章だからこそ、書いている意図を少しでもわかりやすくするために「、」は、(読みにくかったとしても)あった方が意図が伝わりやすくていいと思う。
絵文字は、エラそぶって書いてるけど、所詮は普通のバカが書いていることだよw、とわかってもらうために、じゃんじゃん多用することとする(^^)/
(ま、例の「。」ハラは、あくまでLINE等、連絡アプリでの話なんだろうけどね)


ま、それはともかく(^^ゞ←だから、絵文字多すぎw
本を読むのが好きな人には、本そのものは好きだけどそれを書いた作家には特に興味を感じないという人も多いらしいけど、自分は作家の人となりや考え方にすごく興味を持つ方だ。
読んで面白かった作家は、「作家の読書道」に載ってないか必ず見て、その作家がどんな本を読んできたのかを知るのが楽しいし。
テレビ等で作家のインタビューがあると、知らない作家でもとりあえず録画して見る。
その作家がこれまでどんな風に生きてきたのかとか、世の中をどう思っているかとか、人生観や恋愛観、思想等々、興味があることはイッパイあるが、特にその作家の小説を書くスタイル…、つまり、普段どういう風に小説を作っているか?ということに、すごく興味をおぼえるのだ。
いや、ノウハウ云々ではなく(たぶん、小説を書くのにノウハウはない)。
その作家が小説をどういう風に書いているかの一端を知ることで、あの小説のあの急展開はどの時点で決まったんだろうか?とか、この小説はどんなことを意識して書いていたんだろう?といったことを想像するのが楽しいのだ。
ついでに言うと、その作家が、まがりなりにも作家としてメシ食ってけるまでの苦労話や、業界、さらに読者への恨みつらみの話も大好きだ(^^ゞ


ただ。
村上春樹のそれに興味があるか?っていうと、まー、ない(爆)
もちろん、それは自分が村上春樹の小説に興味がないからなんだけどさ。
とか言って、実は村上春樹は、例の『1Q84』が出た時、世の中の大騒ぎがすごく不思議で、逆に興味を覚えて何冊か読んだ。
ちなみに、今、ウィキペディアを見ながら確認してみると、その時読んだのは、『羊をめぐる冒険』、『ダンス・ダンス・ダンス』、『スプートニクの恋人』、『アフターダーク』、『海辺のカフカ』。
あと、短編集の『中国行きのスロウ・ボート』、『カンガルー日和』、『螢・納屋を焼く・その他の短編』、『回転木馬のデッド・ヒート』、『パン屋再襲撃』、『レキシントンの幽霊』、『東京奇譚集』だったから、まぁー、そこそこ読んだ。
その時に思ったのは、村上春樹って、面白いのは面白いんだけど。『1Q84』が出た時の、あのバカ騒ぎする面白さというよりは、物語として普通に面白い小説を書く人なんだなということだった。
だから、あのバカ騒ぎっていうのは、(メディアを含めた)騒ぎたい人たちの騷ぎたい人たちによる騒ぎたい人たちのためのネタってことか…、と気付いた。
ていうか、なんであんなに騒いでるんだろう?という不思議さはどーでもよくなって、(バカ騒ぎしていた人たちではなく、たんに)村上春樹の小説を面白く読んでいる人はこれらの小説のどこをどういう風に面白いと思っているんだろう?という興味に変わった記憶がある。

というのは、自分にとって村上春樹の小説っていうのは、面白いのは面白んだけど、でも、妙に「つるんとした小説」なんだよね。
面白く読めるんだけど、触感が「つるん」としているから印象に残らない。
印象に残らないから、頭の中にある好きな本、好きな作家の棚に入らない。
変な話、村上春樹の小説には「ペ●ス」って言葉がよく出てくるけどw、読んだ触感が「つるん」とした感じがするというのは、その語感とどこかダブっている気がする(^^ゞ
だってさ。日常で、あるいはエッチの場面で、それをその言葉で言う人っている?
いや、他の人がエッチしている時にそれをどんな言葉で言っているかなんて、わかるわけないんだけどさw
でも、なんとなく、エッチの時にその言葉を口にしている人っていなさそうな気がしない?
そんな言葉を言われたら、むしろ恥ずかしいっていうか、生物学用語で会話しながらエッチしている気がしちゃうっていうか(・・;
とにかく、村上春樹の小説っていうと、その言葉の音感も相まって、「つるんとした小説(てろんとした小説って言った方がいいかもしれないw)」というイメージが強い。
それは、不思議なくらいコーフンを催さないエッチのシーンのあの感じと大いにダブるしw
また、小説って、読んでいると頭の中にその情景が自然にバァーっと浮かんでくるものだけど、村上春樹の小説の場合は、それが昔の漫画のような画(藤子不二雄みたいな画?)で浮かんでくる、あの感覚ともダブる。


そんな村上春樹だけど、デビュー作の『風の歌を聴け』は、出た当時、本屋に並んでいたのを見て、妙に引っかかったのを憶えている。
それは、本屋で村上春樹のそれを見た時、1979年というその時代の空気を感じたからだ。
つまり、(そのタイミングで自分が読んでいたかどうかは定かではないが)同じ群像新人賞の中沢けい『海を感じる時』のような、いわゆるその当時の一般常識での「文学」とは全然異なるもののように見えたのだ。
だから、本屋で『風の歌を聴け』を見ても、手にとろうとはしなかった。
1979年当時のあの時代に流行っていたものと同じもの、今で言う「シティポップ」とか、やたらと目にしていたカリフォルニアや海辺のリゾートをイメージしたイラストとか、CMに出てくる渡辺貞夫や浅井慎平、なにより当時人気だった片岡義男っぽいアホバカなカッコつけや気取りを感じて、子供ながらに「ダッセーっ!」のひと言で片付けた(爆)

そんな流行りっぽくて「ダッセーっ!」のひと言で片付けた村上春樹wが、ミョーに一昔前の文学っぽさをまとった『ノルウェイの森』を出した時は呆気にとられたのを憶えている。
『ノルウェイの森』は1987年くらいだっけ?
ウィキペディアで見てみると、87年の9月とあるけど、自分が読んだのは年明けだった記憶があるから、ということは、88年の初めだったのかな?
もちろん、上下で赤と緑という、やたら当時っぽいクリスマスカラーな表紙も相まって、秋には本屋に置かれているのを見て気づいていたけど、それにしても9月には出ていたんだ。
その時、『ノルウェイの森』を読んだのは、もちろん流行っていたからだ(^^ゞ
ただ、今思い返すと、それよりも、その当時の自分のミョーにうら寂しかった毎日になんかしら彩りが欲しくて、あの赤と緑を手に取ったのかもしれないな?なんて思う(爆)

87年の秋っていったら、個人的には大貫妙子の「スライス・オブ・ライフ」と、やたら地味だったスプリングスティーンの「トンネル・オブ・ラブ」なのだが。
そうか。それらと『ノルウェイの森』って、なーんか、それにある何かと通ずるものものがあるような、ないような……w

その『ノルウェイの森』だが、内容は全然憶えていない。
憶えているのは、読み終わった後、友だちにビートルズの「ノルウェイの森」ってどんな曲だっけ?と聴かせてもらって。
なんだ、それならウチにある「ビートルズ・バラード・ベスト20」に入ってたじゃん、と思ったことだけだ。
ただ、読み終わって、悪い感想を持ったわけじゃないんだろう。
だから、ビートルズの「ノルウェイの森」が気になって、どんな曲だっけ?って聞いたんだと思うのだ。
でも、今となっては、「ノルウェイの森」を読んでその時どう思ったか?なんて全く憶えていない。
確かなのは、村上春樹の他の小説を読んだりはしなかったことくらいだ。

そんな村上春樹(の小説)が自分の人生に登場(?)するのは、社会人になって3、4年も経った頃だったと思う。
同僚に、やたらと優秀なヤツがいたんだけど、彼は某国立の文学部出身で。
ある時、彼が村上春樹を語りだしたのを聞いていて、「なんだ。コイツって、村上春樹とか好きなダサいヤツだったんだ」と、心のなかでほくそ笑んでしまったのだ(爆)
(ちなみに言っておくと、後に彼は親しい友人になったw)


村上春樹のイメージを自分史的に見るとそんな感じだ(^^ゞ
面白いのは面白いんだけど、なんか「つるんとした小説」か「てろんとした小説」を書く人で。
それがあるから、読み終わった後、「あぁー、面白かったぁーっ!」と、素直に言う気にならない(なれない?)作家。
だから、村上春樹本人にも何の興味も感じない。
言ってみれば、「ジャズファンなんでしょ? なら、ジャズでも聴いてればぁ?」って感じ?←ジャズ嫌い(^^ゞ
そう、あと、『1Q84』の大騒ぎで村上春樹の本を読んだ時、ウィキペディアを見たら、レディオヘッドが好きみたいなことが書いてあって。
(レディオヘッドが大嫌いな自分としては)ダッサぁ〜とか思っちゃったこととかw


そんな自分が村上春樹を見直しちゃったんだから、この本はスゴい!(爆)
なにがスゴいって、P145にある、“物語というのは、解釈できないから物語になるんであって、これはこういう意味があると思うって、作者がいちいちパッケージをほどいていたら、そんなもの面白くもなんともない。(中略)作者にもよくわかってないからこそ、読者一人ひとりの中で意味が自由に膨らんでいくんだと僕はいつも思っている”は、目ウロコで、ものすごくエキサイティングだった。
バカな話だけど、村上春樹のイメージが540度くらい変わった。←180度でいいだろ!w

そう。そういう意味では、この本は第二章に入ってからの方が面白い。
第一章は、インタビュアーの作家がファンであるがゆえに、村上春樹を奉りすぎちゃってて、言ってみれば「村上春樹さまからご託宣を聞く」みたいになっちゃっているのに対して。
第二章以降は、村上春樹 > ファンの関係は引きずりつつも、なんとかかんとか、村上春樹 vs 作家・川上未映子の話として形になっているように思う。
というのは、読んでいると、村上春樹が大人気(オトナゲねw)を出して、少しでもこのインタビューが形になるようにと、インタビュアーの反応を見ながら発言しているように感じるんだよね。
変な話、へぇー、村上春樹って、こんな風な人だったんだ…、と意外な気がしたって言ったらいいのかな?(^^ゞ

もっとも、第一章にも面白いところはある。
小説(フィクション)におけるリアリズムへの意識の差…、未だ”今”を意識することから逃れられないことにジレンマを抱える川上未映子と、批判されることで"今”を解脱してしまった村上春樹の意識の違いは興味深いし(ま、現在の日本の本の世界において、村上春樹は絶対神になっちゃったからっていうのもあるのか?w)。
初期の頃、たぶん批判に嫌気がさして海外にいっちゃう前の村上春樹が持っていた、"前の時代に対する反抗心”なんかは、ちょっとワクワクする。
こんなことを書くと怒り出す80年代アレルギー過多の人wもいるかもしれないけど、村上春樹というのは、戦前からずっと引きずっている日本の文学(純文学?)にあった、あの「貧乏=正義」ではなく、(70年代の終わり〜)80年代以降今に続く、日本の現在の豊かなライフスタイルの肯定で小説(文学)を書き始めた作家のように思うのだw
ただ、それと同時に、戦後の進歩的文化人的なあの感覚(=それまでの日本文学)から逃れられない人でもあるような気がするんだよね。
その、60年代でもなく80年代でもない、言ってみれば、宙ぶらりんな70年代的な位置?、視点?、基点?こそが、今の豊かな暮らしを享受しつつも80年代を全否定する人(というよりは時代?)の感性にすごくフィットするんだと思うのだ(^^ゞ
そんなことを書くと、「村上春樹は海外にもファンが多いじゃん」と言う人もいるかもしれないが。
そっちは、「都市化」や「中産階級化」が進むと、村上春樹の小説の感覚がフィットするようになるってことなんじゃない?
それは、今、都市化や中産階級化が進んでいるアジア諸国で「シティ・ポップ」がウケているあの感覚と同じだと思う。
あまりいい例えではないけれど、イスラエルには村上春樹のファンはいるけど、パレスチナにはおそらくいない。
そういうことだと思う。

そういえば、終わりにある「文庫版のためのちょっと長い対談」で、インタビュアーだった川上未映子がインタビュアーではなく川上未映子として、“『ノルウェイの森』の世界観や時代みたいなものを、30歳くらい年の違う私が10代で読むわけです。私たちの青春とは違うのに、なぜか自分の話として読めてしまうところがあります。文化的なディティールは共有できないのに、不思議ですよね”と言ってるんだけど。
それなんかは、まさにそういうことのような気がするかな?

ただ、川上未映子はその後、“逆に90年代について書かれている小説も結構あるんですけど、まったく自分の青春として読めないのも不思議なんですよね。渋谷とか、ファッションでもいいんですが、90年代の文化ってあるじゃないですか。私が本当に18、19でリアルに聴いた音楽とかリアルなものがリアルに思えない”と言っているように。
村上春樹の書く小説にある、60年代でもなく80年代でもない、ある意味、宙ぶらりんな70年代的なナニカが今の時代にフィットするのは、それは、あくまで村上春樹を読む(好む)人の感覚、さらには、本を読むのが好きな人の感覚であって。
インタビュアーと同世代だけど本を読まない人からしたら、『ノルウェイの森』よりも、自分が90年代にリアルに体感してきたものにこそ、自分の青春を感じるんじゃないのかな?
それは、第三章のP277でインタビュアーが、“(『風の歌を聴け』が出た時)最初から若い読者が興奮した、という話をよく聞きます。「来たな、俺たちの時代が来たな」と激烈に感じた人が、今の50代半ばくらいに多いです”と言っているのを見てもそう思う。
1979年頃といったら、一般的な感覚としては文学の本なんて読んでいたら、即「ネクラ(←死語w)」とバカにされた時代だ。
そんな時代に『風の歌を聴け』を読んで興奮していたような人は、大学生等、ごく一部のスノッブな文学ファンのはずだ。
おそらく、インタビュアーは作家であるがゆえに、業界の人の話を聞くことが多いんだろう。
でも、業界の人=一般の人ではないし。
もし、今の50代半ばくらいの一般の人に、『風の歌を聴け』が出た時に“俺たちの時代が来た”と感じた人が多いのだとしたら、それは、今の世に「村上春樹のファンであることは、なぁ〜んかカッコイイこと」という情報(空気)がネットに蔓延しているからにすぎないんじゃないのかな?w
それは、渋谷陽一がなにかにつけて言っている、「当時はビートルズファンはマイノリティだった」っていうのと同じだと思う。

ていうか、インタビュアーが、『ノルウェイの森』を世代が違うのに自分の話として読めるのが不思議だ、と言っていたことに戻るけど。
メールだ、連絡アプリだ、チャットだ等々、いくらコミュニケーションが便利に密に出来る、今の時代になっても、恋愛がうまくいかないものであるのは、昔と変わらないわけだ。
人間関係が、今も昔もギクシャクしがちなのも同じだ。
つまり、世の中がどんなに変わって便利になろうとも、人間そのものは結局同じで。
『ノルウェイの森』の世界観を文化的なディティールは共有できないのに、自分の話として読めるのを“不思議”だと感じるのは、いつの時代にもある、その時代の人による昔への上から目線にすぎないように思う(^^ゞ

ま、それはともかく。
今の村上春樹の人気っぷりっていうのは、今が”何をするにもまず情報”という面が前提としてあるのは確かだと思うけど、なにより今の感性や感覚に合うってことが大きいんじゃないのかな?
だからって、村上春樹を好まない人が、今の感性や感覚からズレているっていうことでは決してなくて。
村上春樹を好まない人というのは、今の感性や感覚に内包される60年代的なもの、あるいは80年代的なものといった、村上春樹の小説にある特定の要素に過敏に反応してしまうってことのように思うんだよね。
60年代も、80年代も、ある意味どちらもスノッブだから(爆)
すごくスノッブであり、その反面、スノッブでない、今みたいな世の中を生きているからこそ、同じ感性や感覚を持っていたとしても、ある人は村上春樹の小説にあるナニカが心地よくフィットするし、ある人は受け入れられないっていうのはあるんだと思う。
それこそ、村上春樹の小説を読んで「面白かった」という人、「面白くなった」という人に、なぜそう思ったのか?を聞くことで、その人が「今の世の中」をどう捉えているか、あるいはライフスタイルや消費スタイルが見えてくる…、みたいなマーケティング的な指標をつくることだって出来るかもしれない。
そういう意味では、村上春樹っていう人は、今を解脱しちゃったようでいて、実はその時代の影響をものすごく受けてしまうタイプの人なんだと思う。
村上春樹がマスコミ等のインタビューを受けないようにしている等、(たぶん)意識して自分が世の中に露出しないようにしているのは、自らにそういう面があることをわかっているからなのかもしれない。


繰り返しになるが、第二章にある、“物語というのは、解釈できないから物語になるんであって、これはこういう意味があると思うって、作者がいちいちパッケージをほどいていたら、そんなもの面白くもなんともない。(中略)作者にもよくわかってないからこそ、読者一人ひとりの中で意味が自由に膨らんでいくんだと僕はいつも思っている”という、言ってみれば、いい意味での読者への突き放し発言wは、ものすごくエキサイティングだった。

それは、やっぱり第二章で、“「これは出産のメタファーだな」と考え出したりしたら最後だから”、“頭を使って考えるのは他の人に任せておけばいい。それは僕の仕事じゃない”と語っているように。
村上春樹っていうのは、もしかしたら、作家がやることは、あくまで物語を書くことであって。
物語を「文芸」にしてはならない。それを「芸」とするのは他の人、つまり、評論家や読者に勝手にやらせておけばいい、という考え方なんじゃないだろうか?
それは、元々ファンであり、なにより、インタビュアーとして、このインタビューの前に過去の作品を念入りに復習してきたであろう川上未映子の追求wに、あっさりと「忘れたよ」と答えたのをみてもそんな気がする。
インタビュアーとしては、あるいは、この本を企画した編集部、さらにはファンからしたら、あの小説のここはどんな意味があるのか?とか、あの小説のこれはどんな意図で書かれているのか?という村上春樹本人による「正解」を期待していたところなんだろうが。
書いた当の本人からしたら、場面場面での意図や意味は瞬間的に頭の中にあったとしても、それは、あくまでその瞬間にあった意図や意味にすぎなくて。
そんなものは、書いた当の本人ですら、時期やタイミングによって全然変わる、言ってみれば、後付けの正解(のようなもの)にすぎないってことなんだろう。

そういえば、篠田節子が、“小説は書き終えるまでは100%作家のもの。書き終えた瞬間、100%読者のもの”みたいなことを言っていたけど、それは村上春樹の「忘れたよ」に通じているんだろう。
ていうか、自分が書いた小説をそういう風につき離せるか否かが、作家の一つの分かれ目なのかもしれない。
そういう意味でも、村上春樹に好感を持った。

自分が文学を読んだのは、せいぜい大学生くらいまでで。
それ以降は、海外ミステリーを中心にエンタメ小説ばかり読んできたわけだが、村上春樹のそれによって、自分がいかにエンタメ小説のお決まりやルールこそが小説(物語)の常識だと勘違いしてきたかを思い知らされた気がする。
物語の中で語られてきたパーツ、パーツが一つ、一つ、収まるべきところに収まっていった結果、読者が今まで見えてなかった大きなストーリが見える、もしくは、読者が思ってもみなかったストーリーに変わるみたいな小説っていうのは、もちろんそれはそれで面白いし、自分もそれを楽しんできたわけだが。
でも、そういう小説っていうのは、本来は小説の中の一つのタイプにすぎないわけだ。
そういうタイプの小説こそが優れた小説だという価値観は、(読者によって)それはそれでアリなんだろうけど。
そういう小説じゃない、読者それぞれに捉え方が違う、あるいは、同じ人が読んでも、読んだ時期やタイミングで印象が違ったり、全然別の捉え方が出来る小説があるというのは、子供の頃、小説を読み出していた頃はおぼろげながらに知っていたはずなのに。
面白い小説、面白い小説と求めている内に、いつの間にか忘れてしまった小説の楽しみ方を思い出させてくれたような気がするかな。
表紙のフクロウ(みみずくねw)で衝動買いしてしまったこの本だけど、そういう意味では、とっても有意義な衝動買いだったと言える(^^)/


そんなこの本は、全体については村上春樹についての本であり、部分的には『騎士団長殺し』についての話であり、また、作家同士の裏話だったりもするわけだけど。
読みようによっては、これからの時代に人は仕事にどう向き合っていったらいいのか?というヒントが書かれている本でもあるように思う。
働き方改革がどんなに進もうと、IT技術によって仕事がどんなに省力化効率化されようと、それは仕事だ。
必死こかなきゃ、お金は貰えない。
なにより、必死こかなきゃ、仕事は絶対面白くならない。
村上春樹の小説が面白いのは、村上春樹が面白くなるように必死こいて書いているからだと思うんだけど、そういう意味でこの本は、「村上春樹流、仕事で楽しく必死こくヒント集」として読んでも面白いように思う(^^ゞ
それは、インタビュアーである川上未映子(と出版社の担当者)がこの村上春樹へのインタビューを面白いものにするために、いかに必死こいたか?ということにも通じている。

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2024年05月01日

Posted by ブクログ

村上春樹さんの作品は最近読んでなくてご無沙汰してたけど、この対談は村上さんのコンセプトとか頭の中をのぞいてる感じがして面白かった。しっかり言語化できていてそれがわかりやすいのと村上さんの感性も伝わってきて読んでいて楽しかった^ ^

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2024年05月01日

匿名

購入済み

村上春樹の解体新書

村上春樹さんがどのように物語を紡いでいるのか、何を大切にしているのか、どのような手順で推敲しているのか。そういうあらゆる興味深いことを同じ作家の川上未映子さんが余すことなくインタビューし、それを包み隠さず村上春樹さんが答えているという濃厚なインタビュー。

そしてこのインタビューを通してわかったことはやはり村上春樹さんは稀有な作家だということ。
デビューして40年経ってなおストーリーがどんどん降ってくるなんて。そして彼の紡ぎ出す物語は今もなお新鮮で息切れを感じさせない。他の人が真似しようとしてもできないことははっきりわかる。

#感動する #深い #タメになる

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2024年03月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

川上未映子さん以上のハルキストはいるのだろうか。
村上春樹さんが忘れていることまで、ディテールまで覚えていてたじたじの場面も。でも、のらりくらり「覚えていない」という春樹さんは本当に覚えてないのかもしれない。
それにしても鋭かった。特に村上作品における女性の描き方、女性の見方についてのところ。
村上さんは、文章を書くのが大好きで基本ポジティブだということ。地下一階の自我の葛藤には興味がなく、地下二階に降りようとしていること。集団的無意識みたいなところに。
文章を読んだら、カキフライが食べたくなるような文章を書きたいというのが、村上春樹さんの目指すところ。
それと忘れちゃいけない直接的なメッセージは決して書かないけど、フィクションの中でかなりポリティカルということ。

この本を読んでさらに村上春樹さんの魅力が浮き彫りになった。川上さんのファンにもなった!

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2024年03月16日

Posted by ブクログ

村上先生の本ということでこの本を読み、川上未映子先生を知りました。
村上先生のファンで小説家になった方なんですね。
小説家は「洞窟内でのストーリーテラー」という言葉が、情景が目に浮かんできました。
お二人の対談が読者に対してすごく誠実で真摯だなと思いました。すてきという言葉では言い表せないくらい、「ああ、こんなことを考えて書いていらっしゃるんだな」というのを文章で読めました。
またいつかどこかで、お二人が対談した記録が本になったらいいなと願っています。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

これまで村上春樹の作品を読んで感じてたこと、例えば表層的なヘンテコな出来事の下層に通底するものに読者は共感するのだろうだとか、リアリズムにはフィクションやメタファーによってより迫ることができるのだろうだとか、そこらへんの漠然と抱いていた印象が、村上春樹の語る「地下二階」の話やコンラッドの引用などと符合して興味深く思った。

以前、海外の読者とのやりとりで以下のように書いたら、まったくその通りだと同意してくれたことを思い出した。著者と読者、読者と読者は、村上春樹という励まし、肯定で通底していて、それを確信している。

“Shadow” he mentioned in his speech reminds me of his work "Hard-Boiled Wonderland and The End of the World". "Dreamlike realism" is the very expression which explains his works in short. It is "his" realism that makes us readers connect through the bottom and share kind of agreement, even in his realm of dreamlike metaphors.

川上未映子のインタビューは、村上春樹が小澤征爾にしたインタビューくらいいい仕事をしたと思う。

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2023年08月26日

Posted by ブクログ

こんなに話し手の意図を話し手と同じ次元で汲み取れて、聴ききれなかったと思ったらそこで怯まずに踏みとどまってさらに聴きなおすことができて、こんなすごいインタビュアーさんがいるなんて……。川上未映子さんだから聴けたお話ばかりで、ほんとうに面白かった。

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2023年03月10日

Posted by ブクログ

村上春樹の底の底にまで迫ったインタビュー。
以前読んだ春樹と龍の対談本『ウォーク・ドント・ラン』と比べても、圧倒的に深い。春樹氏のインタビューでこれまでこんなに深く潜ったようなものは読んだことがなかった。村上春樹の地下一階を暴いていると思うし、なんなら地下三階くらいまで行ってそう。

インタビュアーの川上未映子は春樹の大ファンらしく、村上作品に対する愛着、記憶、理解力どれもすごいのだが、何より感心したのは、え!そこまで突っ込んで聞いていいの?というところまで踏み込んでいく川上さんの勇気というか率直さというか。まさに読者が春樹氏に聞きたかったことを代弁してくれている気がする。村上春樹ファンなら楽しめること間違いなし!

『騎士団長殺し』を上梓した前後のインタビューだと思うので同作に対する言及が多めだが、『騎士団長殺し』を未読だった僕でも楽しめた。読むたびに違う発見がありそうな本でした。

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2023年02月22日

Posted by ブクログ

めーっちゃ面白かった。
川上さんだからこそインタビューを受けたそうで、かなりグイグイ突っ込んでいて村上さんもタジタジ笑
小説を創作する上でどんな手順を踏んでいるのかすごく気になっていたけどビックリするくらい自由だった。
リアリズムな印象な村上さんだけど、小説を書く際はイタコみたいなものに憑依したりもしくは何かを降ろして?書いているらしい。
その現実と非現実の間の境目に自分の影があるんじゃないかと言っていて、なるほど〜ってか天才すぎて言ってることが訳わからないって笑っちゃった。
だってイデアとメタファーを理解してなくて騎士団長殺しを書いたらしいですよ。
もう川上さん口あんぐりだっただろうな、、、。

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2022年12月31日

Posted by ブクログ

2022年の150冊目。

川上未映子さんが、村上春樹さんの井戸に一緒に入ることを試みた対談集。かなり、井戸の深いところまで二人で潜っている、そんな印象だ。

川上さんは鋭くつっこみ、村上さんが楽しそうに真剣に受け答えたり、華麗に受け流したり、そんな展開で、飽きることなく(文庫本だが)437ページの対談を読み切った。

特に、面白かったのは、村上作品に出てくる女性について「男性の自己実現のために、血を流して犠牲になっている」例が多いと言及しているところ。
川上さん、強いなあ笑
「女の人が性的な役割をまっとうしていくだけの存在になってしまうことが多い」とか
「井戸とかに対しては惜しみなく注がれている想像力が女の人との関係性をおいては発揮されていない」とか、けっこう言いたい放題。
それに対する村上さんの受け答えは見ものです。

あと、村上さんから「僕より小説をうまく書ける人というのは、客観的に見てまあ少ない」という発言を引き出した川上さんはインタビュアーとしてすごい!

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2022年12月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

川上さんと村上さんの対談記録。川上さんの質問がかなりパーソナルな部分にも迫るものだったから(フェミ的観点からの指摘の部分なんか特に)たじたじしつつ受け答える村上さんが浮かぶようで新鮮でした。

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2021年09月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「対談」って手抜きで本を作ってテキトーに売ってる印象があって普通は読まないんだけど、村上主義者なのでこれは読みました。
対談じゃなくてインタビューですね。村上春樹を死ぬほど熟読して、どこに何が書いてあるかも、小説の登場人物についても知り尽くし、村上春樹がどこぞのスピーチで何を言ったかもフォローしている川上未央子氏の、一作家として、読者として、ファンとしてのすごいインタビュー。「騎士団長殺し」に出てくる「イデア」と「メタファー」についても一体何なのか(多くの読者が聞きたいところ!?)掘り下げて聞く。
…まぁ答えは例によって「僕にもわからない。」なんだけど。
一番心に残ったのは、あぁつまり、村上春樹は本当に小説のテーマとか構造とかそんなものはどうでもよくて(どうでもいいというか二の次で)、ただ単に「文章を書くのが好き」という話。「文章を書くのが好き」。「なんでもいいから何か書きたい」。「なんかフレーズが頭に浮かんで、そこから物語が発展する」。
大学で文芸サークルみたいなのに所属していたとき、みんなそういう感覚だったな、と(もちろん本物の作家とは全然レベルは違うんだけど)思った。
私も文章書くのが好き。読んで、書くのが好き。だから読書のレビューもこうしてコツコツ書くし、新聞に投書したりする。あとけっこうこまめに人に手紙を書きます。素敵な自分らしい文章をこれからも書きたいな。

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2021年08月08日

Posted by ブクログ

読み始めは「???」だったけど、読み終わった時は定期的にやって欲しいと思いました。
「そんな質問しなくても」とか「失礼じゃない?」って思う質問も慣れてくると(ってなんか変な言い方だけど)面白くなってきた。

小説を読んでいる感じで、インタビュアーの川上未映子さんに自分がなって村上春樹(ここは敬称略)に聞きなさたいこと聞いているような。
そんな感じです。

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2021年05月30日

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村上春樹さんと川上未映子さんのロングインタビューを1冊にまとめた本書
村上さんの文章に対するひたむきさや川上さんの鋭い質問、読んでいて楽しかったなー。
あの特徴的な比喩も村上さんの小説を書く上で意識していることで、小説を作る上での裏側を興味深かった。
たとえ紙がなくなっても人は語り継ぐ
このセリフいいです。
次に本を読むときは文体を意識して読んでいきたいな。

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2021年02月06日

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文庫化されたので実に3年ぶりに再読。
どんなこと書いたっけなぁと思ってレビューを読み返そうとしたら何も書いてなかった。そうだそうだ、あまりに濃密で果敢で超絶怒涛のインタビューに圧倒されて言葉が出てこなかったんだ、と思い出した。

インタビュアーとしての川上未映子さんの資質には、ほんとうに驚くべきものがある。
この本をまだ読んでいなかった2016年頃、NHKのSWITCHという番組で「君の名は。」の公開間近だった新海誠監督にインタビューをしている未映子さんを見たことがあって、彼らはイノセンスについての話をしていたのだけど、未映子さんはそのとき新海誠監督が話すイノセンスに「季節は?」ってさらに突っ込んだ質問をしたのね。
私はそれをきいたその瞬間に、全信頼を未映子さんに寄せたのを確かに覚えている。イノセンスの季節を知ろうとする人を私は絶対的に信頼する。
この本の中で村上春樹さんも言及していることだけれど、作者と読者の間に必要なのは信頼関係だと強く思う。
「どや、悪いようにはせんかったやろ?」というあれ。

それにしても3年前に読んだ時と今とでは、やっぱりあらゆる変化(成長といってもいいかもしれない)がある。
川上未映子さんの小説はすべて読んだし、村上春樹さんの猫を棄てるだってンダーグラウンドだって読んだし騎士団長殺しだって読み返したし。グレートギャツビーもキャッチャーインザライも読んだ。村上RADIOも聴いた。
とにかく前回とは比べられないほど深い次元で吸収することができた気がする。地下二階の話が特に興味深くて、あぁ私がなぜ村上春樹をこんな好きかって地下二階に連れて行ってくれるからなんだ、って気づけた。
大切な言葉はいくつもいくつもあった。

「大切なのはうんと時間をかけること、そして「今がその時」を見極めること。村上さんはくりかえしそれを伝えてくれたように思う。ミネルヴァの梟がそうであるように、物語の中のみみずくが飛びたつのはいつだって黄昏、その時なのだ。」

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2021年07月30日

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少し前に読んだ「騎士団長殺し」
に関する対談多め
意外にシャーマンチックな所が
ある人なんだな〜と思った
もしくは煙に巻いているのか?
普通は小説やエッセイより
対談の方が読みやすいけど...今回は逆!
いつもの村上文体と違うので
なんだかちょっと読みづらかった

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2025年06月14日

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すらすらと楽しく読めた。
村上さんの熱心な読者であり自身も作家である川上さんの問いは、情熱的・具体的・切実でありながら楽しそうだ。質問と回答というより、二人がかりで一つの答えを求めて分け入っていくような。

村上さんのファンとしてはこういうものを読むことには少々躊躇いもあったが(個人対個人の体験でなくなってしまうような気がして)、普段は一人で好きなように見ている美術館を、学芸員さんと一緒に巡るような……自分を遥かに上回るオタク(失敬)の話を聞く楽しさもあった。

心に残ったフレーズは「信用取引」、「悪しき物語/開かれた・善き物語」。

「騎士団長殺し」を読み返したくなった。免色さんってやっぱりちょっと、そういうとこあったよな~

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2024年12月01日

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ネタバレ

予想以上に川上未映子が突っ込んだインタビューをしていて、かなり読み応えがあった。
あの村上春樹が、作品や過去に受けたインタビューで答えた内容との矛盾?を川上から指摘され、ややたじろぐ様な場面もあり、読んでいる方がハラハラ。それでも飄々と村上節でかわしていく?様子はさすがだなと。だけど終始和やかな雰囲気で、2人の信頼関係がこちらまで伝わってきて、作家として人間としてリスペクトし合っているのがめちゃくちゃ伝わってくる。
さすがというか、とにかくインタビューの内容が濃い。かなり勉強になりました。
家に例えると、その人の普段の生活や考えてることを1階とすると、日本の近代文学は地下一階を扱っていて、村上春樹は地下二階を書こうとしているという話。
リアリズムをリアリズムの文体で書くことを試みたノルウェイの森、テーマやストーリーよりも文体が先であること、物語というフィクションは過去から現在、未来に至るまで一番強いポリティカルであり得るのではないか、ここに書き出したらキリがないくらいの興味深い話が繰り広げられて。
ほんまに?!何この人本気なん?!と川上未映子と一緒に村上春樹の井戸に入って何が見えたのか、私は入ってみて本当に良かったです。
さてさて、来年は村上春樹をしっかり読んでみようか!

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2023年12月24日

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芥川賞作家の川上未映子さんが村上春樹氏に4回にわたりインタビューする対談集。内容は、主に村上氏の小説の書き方、文章へのこだわり、スタンス、特にインタビュー直前に発行された「騎士団長殺し」について、様々な角度から切り込む形である。
村上氏は過去の著作をあまり振り返って読まないそうで、その理由は今ならもっとうまく書けるのにと思ってしまうからとのこと。本書の中でも、「え、そんなこと言ったっけ?」とか、小説の登場人物の名前を忘れたり、覚えていないこともたくさんあった。
私はわりと最近「村上さんのところ」を読んだので、彼の人柄や考え方は入っていた。基本的なところは一貫している。
本書では、川上未映子さんの事前準備に驚かされた。村上氏の過去の著作を短編含めてすべて読みこなしているだけでなく、発表した順番やスタイルの変化など研究し尽くしていた。それだけでなく、村上氏の愛読書や翻訳書、好きなジャズ音楽や哲学書についても勉強してあって、彼女のプロ意識が感じられた。
小説家というのは、たとえ稀有な才能があっても大変な職業なんだな、と改めて感じた。

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2023年02月13日

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村上春樹さんが文章を書く上で大切にしていることをを、聞いて目から鱗が落ちた。

大事なのは語り口。小説でいえば文体です。
信頼感とか、親しみとか、そういうものをうみだすのは、多くの場合語り口です。まず、語り口に魅力がなければ、人は耳を傾けてくれない。
できるだけわかりやすい言葉で、できるだけわかりにくいことを話そうと。


確かに好きな作家を選ぶ時、私の場合ストーリーというより、文体やリズムが合うみたいなことを本能的に感じとっている気がする。

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2022年03月07日

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のらりくらりとした師匠と優秀な弟子の対談みたいな、2人のやり取りが絶妙。

村上春樹の読者は内的な読書を求めてるとか、壁抜けの話とか、今まで村上さんの小説を読みながら感じていた感覚が言語化されていくのが面白い。本人の言葉だから納得感もある。

女性の描かれ方について聞くところは、川上さんのストレートな質問がスリリングで、でも村上春樹小説の理解者としての部分も聞き手として見えてきて、絶妙なバランス感覚で面白かった。

最終章、小説の書き進め方を数字のメモを見返しながら話していくところは、ものづくり論としても興味深かった。「書き飛ばし」のくだりとか。

村上春樹さんの本も川上未映子さんの本ももう一度読みたくなったし、なにより村上春樹のことも川上未映子のことも好きになった。そんな本でした。

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2022年01月16日

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騎士団長殺しの政策秘話が聞けて良かった。
文章力とは読みやすさを追求していく事である。心に響く語り手とは謙虚であり誠実なんだと痛感した。
読みやすくて心地よい二人の対談に癒された。

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2021年12月03日

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村上春樹さんにとって小説とは何なのか、について、川上未映子さんが質問攻めにしている本でした。

村上さんは、読みやすい文体を大事にされてること、物語にメッセージや意味を込めたり伝えたりしようとはしてないこと、自我に関する悩み(やその解決)という次元で書いてはいないこと、それよりもっと、無意識(深層心理?)に近い領域で物語をかいていること、読み方は読者に委ねていること、などがわかりました。

川上さんの質問が鋭く熱心なのに対する村上さんの脱力加減というか自然体加減がすごい。面白かった。言及される作品も読みたい気持ちになった。

村上さんが人として謙虚だが小説家としてはプロ意識・自信に満ちてるところも読んでて楽しい理由かもと思った。

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2021年09月05日

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作品全体に暗喩の雰囲気が漂う村上春樹がよもやプラトンについて明るくないどころか洞窟の比喩も知らないとは、、、、。
徒然に、ある種、語感だけでメタファーとイデアを持ち込んで騎士団長殺しを執筆していると考えると身震い。作品を読むたびにこの人物が象徴しているものはなんなのかなあ、わかんないなあとか思ってたけどそんなこと考える必要もないんだな。
「もやっとした総合的なものを読者がもやっと総合的に受け入れるからこそ、それぞれ自分なりの意味を見出すことができるんです。」

わかりやすいステートメントではなく、善き物語としての小説、それもわりかし長い小説という形で発信を続けていく村上春樹の作品を今後も追い続けていきたいと感じた。

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2021年09月01日

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対談である。そして、その作品として「騎士団殺し」があげられている。自分は未読なので、内容を理解できないと思われた。あとで機会があれば読み直したい。

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2024年07月22日

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『思いもよらないことが起こって、思いもよらない人が、思いもよらないかたちで死んでいく。僕が一番言いたいのはそういうことじゃないかな』
『僕の文章というのは、基本的にリアリズムなんです。でも、物語は基本的に非リアリズムです』
『つまるところ、小説家にとって必要なのは、そういう「お願いします」「わかりました」の信頼関係なんですよ』
『物語とか、男性とか井戸とか、そういったものに対しては、ものすごく惜しみなく注がれている想像力が、女の人との関係においては発揮されていない…いつも女性は男性である主人公の犠牲のようになってしまう傾向がある』
『トロントの新聞によると、トロントの書店で盗まれる本は村上春樹が圧倒的に多い』
『紙がなくなっても、それが善き物語であれば続く…たとえ紙がなくなっても、人は語り継ぐ』


川上未映子さんが村上春樹さんに13時間に及ぶインタビュー。
村上さんの文章に対する思いや、川上さんの鋭い問いかけ(得に女性について)がイイ‼️
『騎士団長殺し』を読み直すはめになりそうだ。

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2021年04月21日

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★★★2021年4月★★★


読み終わってからだいぶ経つ。
本に入れた折り目を見直しつつ、印象に残ったことを書いていく。


村上「本当のリアリティっていうのは、リアリティを超えたもの」
「ボイスをよりリアルなものにしていく。それが僕らの大事な仕事」
「学生運動の頃の、言葉がまったく無駄に終わってしまったことへの怒りみたいなものが強くあった」
「トランプは人々の地下室に訴えることだけを言いまくって、それで勝利を収めたわけ」
「日本人の感覚では、あの世とこの世が行き来自由なわけです」
「僕にとっては文章がすべてなんです」
「自分がそうであったかもしれないけど、実際にはそうではない自分の姿」
「『つんぼじゃねえや』と『太った配達人』、この2つが僕の文章のモデルになっている」
「物語の『善性』の根拠は何かというと、要するに歴史の重みなんです」

川上「その物語自体を自分の経験として引き寄せていた」
「そう、まあ、ごく控えめに言って最高ですよね(笑)」
「神話や歴史の重みそれ自体が無効になっているとは思われませんか、村上さん。」

  

  

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2021年04月11日

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単行本で読んでいたが、文庫版のためのちょっと長い対談が読みたくて、文庫版で読んだ。村上春樹が文章以外にラジオでの活動、父親のメモワールを書いた経緯などが分かって良かった。

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2024年05月09日

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村上春樹は「物語の力」を信じているし、読者との「信頼関係」を重んじている。だからいつも、安心して読める。そういう作家はきっと稀有なのだ。
彼の人格、主義、主張の是非など一切問わず、一読者としてのまっさらな川上未映子がするすると切り込んでいくさまは、いっそ気持ちいい。

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2022年01月08日

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「騎士団長殺し」についてのインタビューなので、読んでないとわからないと思う。半分ぐらいで停止。そのうち再読する。

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2021年08月10日

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