あらすじ
十七歳と十六歳の夏の夕暮れ、きみは川べりに腰を下ろし、“街”について語り出す――それが物語の始まりだった。高い壁と望楼に囲まれた遥か遠くの謎めいた街。そこに“本当のきみ”がいるという。〈古い夢〉が並ぶ図書館、石造りの三つの橋、針のない時計台、金雀児(えにしだ)の葉、角笛と金色の獣たち。だが、その街では人々は影を持たない……村上春樹が封印してきた「物語」の扉が、いま開かれる。
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十年ぶりくらいの村上春樹。村上春樹らしい村上春樹。
最初は抵抗がある。村上春樹の小説はどれもそうだけど、「よくわからんどうでも良い童貞の妄想」を聞かされているような気分になる。それが不思議なことにある程度まで進むと、村上春樹ワールドに浸かって、村上春樹を読む時間が心地良くなる。
久々に村上春樹、良いなーと感じている。下巻にも期待。
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若いときの物語と同じモチーフだけど、しっとりとやさしい雰囲気で、作者の落ち着きを感じる。
無意識の下に釣り糸を垂れる作業が小説を書くことだと対談などで話していたのがうなづけた。ただ、この作品では、個人の無意識下と周囲のそれがつながっていることを表している気がする。その壁が不確かなのではないか?
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村上春樹さんの小説で最も好きな『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の壁に囲まれた街が出てくる物語。全体的に美しく、切なく、幻想的で、しんしんと雪の降り積もるような文章が染みます。
村上春樹さん独特の文体も控えめですが、その分、文章の可憐さが目立ちます。
下巻も楽しみな一冊。
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街とその不確かな壁(上)』
"Tender is the Night"との繋がりを見出せそうだった。中年の男が女性との繋がり次第で生きる意味を見出したり、無気力になったりする。
下巻はどうなるかな。影と主人公の逃亡は楽しそうだった。
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不思議な世界観。
君は影なのか、何処に行ってしまったのか、壁に囲まれた世界とは何を意味しているのか、なぜ影と切り離されなければならないのか、私と君は再開できるのか、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドとどのような繋がりがあるのか、子易さんは現実と壁に囲まれた世界とを繋いでいる人なのか、ねじまき鳥以来の村上春樹作品を読んでいる。村上春樹は何を伝えたいのか、自分なりの考えを持ちたいと思う。
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ずっと夢をみてるような感覚で読んだ。
うたた寝でみる夢みたいな、現実なのか夢なのか境界が曖昧な気持ち良い心地で読める作品。
あるいは気持ち悪さとも紙一重なのかも。
現実に戻ってしまうと醒めてしまうので、どっぷりハマって一気読みをオススメしたい。
下巻も楽しみ。
母が読みたがってるので貸す予定。
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今まで私の中で村上春樹は「好きではないが、なぜか読み続けている作家」だったのだが、この作品は好きな本だと強く断言できる小説だった。これまで個人的に苦手としてきた独特な比喩、アレゴリーによる難解さと性的描写がこの作品では殆ど感じられなかった。確かにいくつかの「不確かな」辻褄やアレゴリー(それも楽しみの一つではある)は存在するものの最後には全て納得がいった。全ての意味を完全に理解した訳ではないが、自然に納得がいったのである。一度ほどけた靴紐がまた結ばれるように。あとがきをみると、第1部で終わった可能性もあったらしい。確かに第1部だけを切り取っても物語としてはありだなとは思った。しかし第2部と第3部を経ることで霧がかかっていたモヤモヤとした物語が鮮明な太陽の光の中で完結したという印象を受けた。性的合体による何らかの到達、ある種の「希望の可能性」はこれまでの村上春樹の描写に多く見られたがこの作品では直接的な描写はなく、読者の創造にあくまでも委ねられている。村上春樹のセックス描写があまり好きではないので個人的にはありがたかった。この作品で描かれているのは喪失とそこからの復活を遂げるための自分自身の中での自分との対話の話だと思う。心の中に残った傷跡、記憶、それを乗り越えるのはそうした過去を忘れることではなく、過去にとらわれずに向き合うことではないだろうか。重要な登場人物である子易さんもその問題に勇敢に向き合った一人だ。本来の自分ともう一つの「影」の自分はどちらも結局自分自身である。この不確かな壁は誰の心にも存在し得るし、存在しているはずだ。久しぶりに読み終えて、とてもいい気持ちになった本だ。
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村上春樹を読んでいると、
必ず入り込みにくい中弛みを体験するのだが、
それは後の世界観に繋がっていくと信じているので、
今回も想定内。
ずっと、ずーっと世界が狭い主人公だが、
観念と無意識の領域が広大過ぎるために、
現実世界でバランスを取るためには必要悪というところか。
子易さんの登場から一気に加速する。
後編が楽しみ。
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村上春樹の作品は時々挟まってくる自然や風景の描写が本当に美しいと思います。この作品もその例に漏れず、雨の降る風景、雪の降る風景がありありと脳内にイメージされます。
物語は現実と空想?世界が交互に展開され、やがて現実と空想の狭間があいまいになっていく…村上春樹らしい不思議な世界です。
秋の夜長にオススメですょ。
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久しぶりに村上春樹の長編読んだ。短編集も良かったけど、やっぱりわたしは長編が好き。
でも、どうして私は村上春樹の小節が好きなんだろう。好きを言語化全然できない。ここのシーンが良いってのも特にない。不思議な世界観にいつのまにか入り込んでしまって、ただただ続きが気になって読み進めてしまう感じ。最後まで読んでも、結局わからないことの方が多いんだけど。とりあえず魅了される。本当に不思議。
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ハードボイルドワンダーランドを彷彿とさせる壁の内の世界。影のない世界。
山奥の小さな村。子易さん。
村上春樹の最新作は、彼の世界観がふんだんに詰め込まれていることだろう。
下巻が楽しみだ。
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とても抽象的かつ謎が多くの残った一方で、情景描写や登場人物の言葉から村上さんの書く世界の意味を探ることに楽しさを感じる作品でした。
時々感じるけど言葉にできないことを言葉で印象的に現せるのは尊敬しかありません。それを想像しながら読むのか心地よかった。
内容について、その場の主人公が求めたものこそが真実だからこそ、壁は不確かになるのでしょうか。
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途中まで世界の終わりとハードボイルドワンダーランドの焼き直しなのかなと思いながら読んだけど、途中から枝分かれしてきたので、これからどうなるのかが楽しみ。
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村上春樹の初読。
きみに心を焼かれた、焼き切れたぼくのように、読み進めた。とても魅力的なキャラクター。
物語の最後には、ぼくときみが再開すればよいと願っているが、願っている時点で心のどこかで、薄々わかっているのかもしれない。
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【2025年70冊目】
高校生の僕には一つ年下の彼女がいた。たくさんのことを話し、手紙のやり取りを重ね、デートをしてキスをする。けれど大好きだった彼女はある日突然姿を消してしまう。彼女のいなくなった世界で僕は年を取り、ある日、穴に落ちてしまう。目が覚めるとぼくは、彼女が話していた高い壁のある不確かな街にいた。
久々の村上春樹さん!最初は現代と街の話が交互に展開されていきますが、どっちも、どこかゆったりのんびりと時間が流れているような文体で、私も流れるように物語の中に入っていくことができました。
彼女が消えてしまった世界で、どこか違和感を感じながらも生きるぼく。彼女はどこに行ってしまったのか、生活を替えたぼくが移り住んだ福島の街は、ぼくに何を示唆してくれようとしているのか。
これこれこれが村上春樹!って感じの話でもあり、珍しく展開がゆったりだなと思ったりもしつつ、とっぷりと沈むように物語に入っていけるリズムや雰囲気はさすがだなと言ったところ。
上巻と同じボリュームで下巻も続きますが、どうなるのか全く予想できないところも魅力の一つと言えそうです。引き続き楽しんでいきます。
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どうして「街とその不確かな壁」なのだろう。「壁」は「そこにずっしりと存在している」イメージがあるので、「不確かな」に合わない。「壁」は「ゆらゆらと揺れ動いてぼんやりとして定まらない」存在として書かれている印象。「境目」や「国境」のような「目で見ることのできない」表現の方が良かったのではないかと思いながら読み進めた。物語をつくる上で、「壁」の方がやりやすいのはあるだろうけども。
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村上作品はそこそこ読んできたが、その中でトップクラスに好きな作品になりそう。
影のある世界と影のない世界の境界線がどんどん交わって薄れていくところが凪いだ海を見ているようでとても好き。
子易さんの背景に驚きつつ、下巻で伏線をどうやって回収していくか気になる。
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まだ上巻のみですが、村上ワールド炸裂って感じの世界観に引き込まれます。
どっぷり浸かれる並行世界。
描写表現や展開など時間がたっぷりある時にお勧めです。
間を埋めるような部分が後から重要な交差点になっている等、ぜひ紙で読むべき一冊です。
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オーディブルで読んだ。内容はモヤモヤ感が大きかった。村上春樹ワールドに浸る事が心地よかったが、ストーリーとしては不完全燃焼という感じだった。その為、下巻を文庫本で読んだ。
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◯又聞きや噂話なのに、子易さんの詳細な会話まで知れてて驚いた。ここまで、細かいときっと子易さん本人から聞いたものだろうし、なんか安心した。
読んでる時に、もう、ここまで絶望的な状況下では自分も周りも見失って自暴自棄とかになりそうだけど、ちゃんと子易さん ここまで詳細に自分の苦しみを相談できる人がいたんだと思ったら、安心した。
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久しぶりの村上春樹。
前情報なしに読み始めたので、街の話が出てくるにつれ、「あれ、これってもしかして『世界の終わり』の世界観…?」と心臓がドキドキし始めた。『世界の終わり/ハードボイルドワンダーランド』は私の中での春樹作品の原点にして頂点なので。
そんな運命を感じる出だしにもかかわらず、何となくページが進まなかった前半部。
読みにくいということもないんだけど、やっぱりあまり大きな出来事がないからか、やや退屈さを感じてしまった。結果途中まで読んではちょっと日が経ってまた初めから読んで、を3度ほど繰り返し。4回目ぐらいでなぜか入り込んで一気に読みたい気持ちに。
やっぱり何か起こり始める気配の漂わせ方は惹き込まれるものがある。
まだまだ下巻を読まないとわからないなというところ。
村上春樹の小説の鍵概念はいつも深い愛。たった一つの愛が存在するという前提は相変わらずで、どんなにSFチックでもロマンスだと思う。
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単行本で読んでいましたが、オーディブルで聴けるようになったので聴きました。最初が少し入り辛く壁に囲まれた影のない世界というのが何だか馴染めませんでした。私が村上春樹さんの本でとても好きなのは、一人の女性にこだわるところなのですが、この本でもやはりそういう展開になります。最近の不思議ワールドの中でも不思議度が高いように感じました。下巻の登場はいつになるのだろう。
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前半はファンタジーな感じで、よくわからないまま何とか読んだ。後半からストーリーが進んできて面白くなった。下巻でここまでのストーリーが回収されるのかな?
売る
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前半は良かったのですが、後半パートはあまりピンとこずでした。具体的に説明するのが難しいのですが。
昔の小説に比べたときの先が気になって読み進みたい感情が湧かない感じでした。
ただそれは自分が歳を重ねて感受性の感覚が昔と異なってしまったせいなのかもしれないのでこの機会にまた昔の作品を読んでみようかなと思いました。。
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最近、恒川光太郎氏の小説ばかり読んでいたので、この村上春樹氏の小説も幻想ファンタジーのような趣きで読み進めた。ツッコミどころはあるにしても村上春樹氏の独特な比喩表現は健在のようだ。ストーリーに関しては村上ファンでないと途中で読むのをやめる人も多いかもしれない。
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文庫本を購入しました。
上の前半と後半とではまるで色が違って感じられました。
前半は淡く色味のないモノトーンのような世界観。
冷たく感じられる部分が多い印象でした。
後半は色味と呼吸を感じられるような世界観。
前半とは異なり生きている人間を感じました。
どちらの世界観もとても好きなのですが、後半に入っていく部分から展開のテンポが早まったように感じられてより引き込まれます。早く下巻を読みたいです。