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Posted by ブクログ
ファンタジーの世界観と現実世界が見事に融合していく表現力に脱帽した。
高い塀に囲まれ、一角獣の一生を見届けながら素敵な女の子と穏やかな生活を送る「私」の世界と、
かたや暗く殺伐とした世界で刺客に追われながら、無慈悲に与えられた使命を全うする「僕」の世界が並行して進んでおり、全く逆の世界が交互に展開していく所が面白い。
遠い世界の話に思えるが、資本主義的な世界でこき使われている「僕」は、現代で生きている我々の苦しみと通ずるところがあるし、その苦しみから解放されたいが故の楽園『世界の終り』があると捉えると、実は現代社会を生きる我々にフォーカスされている物語だと分かる。
穏やかな世界だけを享受したいという願いは全ての人類が抱くものであろう。作中の「私」もまた同じ願いを抱いている。ただし、楽園世界に存在しつづけることで「心」を失ってしまうという制約がある。たとえ穏やかな世界であっても、感情を失うことは幸せなことであるのか。現実に向き合い、楽園からの脱却を図るか、はたまた世界の終りの住人として生きていくのか。その葛藤は辛い世界を生きる現代人にも考えさせられる部分であり、その選択こそが本作品の根幹をなすものである。
マジックリアリズム的手法が散りばめられており、一見して我々世界の現実社会とは無関係のように思えるが、主人公が置かれている状況や生き様によってじわじわと現実世界へ落とし込まれていく過程が面白く、村上春樹らしさを存分に感じられた。特にラストは、映画「インセプション」を思わせるような、現実か夢か判然としない終わり方だった。主人公の選択を読者に委ねるような構成となっており、考察のしがいがあった。
Posted by ブクログ
面白い。物語を通じて生きるとは、人生とは、世界の終わりに向けて自分はどれくらいたくさんのものを見落としているんだろう、、、と思わされた。
要約したりどんな話しか?そんなことをするのは無粋かな、読んで感じて余韻に浸る。読む人それぞれ味わい方が違うんじゃないかなと思う。
ただ、一つ事実として驚いたこと。
この作品が発表されたのが40年以上前ということ。
もちろん作中にはスマホもなければカーナビもない。
だけど、文体や世界観に古さを感じさせず、現代でも通ずる人間らしさが描かれている気がして、
村上春樹の魅力ってこういうところも一つ挙げられるのかなと思った。
Posted by ブクログ
下巻も、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドが交互に章立てされている。
僕は、老人とチェスを刺しながら、ただただ運命として死んで行くこと、影を失い、自分の過去と思い出を犠牲に、影のない完璧な世界に行くことに疑問を抱く。攻殻機動隊、MATRIXでも描かれている、人間のユートピア的な状態。しかし、そこに少しずつ違和感を覚えていく僕の心が、壁の外に向かい始める。
僕と私が交錯するポイント、この2つの物語が収束して行く場所を求めて、物語は進んでいく。一つひとつの物語があるのだけれど、それぞれに終わり方を作っていくように、進んでいく感じ。とどまって、あえて日常の何気無いことが、ものすごく特別なことのように思えて、それでいて幸せという概念さえも包含する。世界の終わりにいる最後の光、僕の決断は、そして僕が街だったことで、全ての問題が明らかになっていく。僕が作った街であり、街は僕であり、僕は私。複雑な関係性を物語それぞれで紡いでいく、本当に凡人ではたどり着けない名著。
シンガポールで開催された、藤原竜也主演の舞台を見に行った。凝縮された村上春樹の世界観に、多くの、特に欧米系の方々が笑い、涙していたのが印象的だった。それだけ、力のある小説であることを改めて理解した。感じ方というのは少し違うのかもしれないけれど、普遍的であることとはそういうことだ。
Posted by ブクログ
うわぁ〜凄かった…。何この世界観。
すっごく面白かったです。
今活躍している小説家さんたちって、残らず村上春樹を読んでいて、かつ強い影響を受けてるんじゃないかとさえ思う。これを40年も前に書かれていたなんて。
物語は下巻。博士に会えてからようやく、一気に種明かしが始まる。二つの世界が一体何で、どのように交錯していくのか。
ところが仕組みは分かったものの、物語がどう行き着くのか最後まで全く予想が付かないまま駆け抜ける。そして膨大な想像力で描かれたストーリーが、大きく余白を残して幕を閉じる、といった感じです。私たちの想像力まで試されているような。この余韻まで計算し尽くされているんだろうな。
100人いたら100種類くらい感銘を受ける箇所が人それぞれ違うんじゃないかな。それだけ物語は複雑に入り組んでいる。
私は今の私の世界を知っているからこそ「影」の言葉に共感しました。ユートピアには絶望もなければ愛も存在し得ない。不完全な完全性。
でもそこでまだ主人公は「心」を持つ。愛する人の心を取り戻したいと願える。微かだけど希望の兆候は確実に読み取れる。
そもそも計算士なんていう謎の職業が出てきたり勝手に脳を操作されたり、何なんだよ!っていうのがここでの現実世界なのに、その物語に引き込まれてしまう。古い小説なのに斬新。それってこの物語で語られていた、日々進化していくものと不変で普遍的なものとがあって(後者は料理とか音楽とかとも言いたいのかな?)…この小説自体がそんな要素をギュッと詰め込んだ不思議な存在なんじゃないかな、って思いました。
世界中で評価されているのが分かります。
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