あらすじ
堪えがたいほどの空腹を覚えたある晩、彼女は断言した。「もう一度パン屋を襲うのよ」。それ以外に、学生時代にパン屋を襲撃して以来、僕にかけられた呪いをとく方法はない。かくして妻と僕は中古のカローラで、午前2時半の東京の街へ繰り出した……。表題作のほか「象の消滅」、“ねじまき鳥”の原型となった作品など、初期の傑作6篇を収録した短編集。
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なんと約40年前の著作。今よりも閉塞感が少なく希望に満ちていた時代の空気感が感じられます。村上春樹さんの文章も力強く若々しい気が。面白かったです。ここから名作、ねじまきどりクロニクルに繋がるんですね。
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何年かに一度、どうしても読みたくなる短編というものが、いくつかある。
そのひとつが、この本に収められた「ファミリー・アフェア」だ。
若い頃、それこそ二十歳そこそこの頃に大好きだった作品で、春樹のあらゆる作品の中で最も春樹ジョークが鮮やかに炸裂していて最高だ。
『帰納法、と僕は思った。』が個人的にはツボだが、ここだけ抜き出しても何のことやら。
「ピンボール」にルーツを持つ作品あり。
「クロニクル」のルーツとなった作品あり。
どの短編も春樹ファンにはたまらない。
そして、いったい何人のワタナベ・ノボルが登場するのか。
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パン屋再襲撃、象の消滅、ファミリー・アフェアという面白い短編が三作も続いて収められており、特にパン屋再襲撃、ファミリー・アフェアの二つはユーモアに溢れた作品であり、あまり本を読まない人にとっても読みやすい事請け合いである。
ねじまき鳥と火曜日の女たちというねじまき鳥クロニクルの種となる様な短編もあり、こなれてきた読者としても重要な一冊だ。
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どれもハズレのない短編集。『双子と沈んだ大陸』では双子の近況を知り、『ねじまき鳥と火曜日の女たち』はクロニクルの元を見ることができた。春樹ファン必見ではないだろうか。
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久々に読んだけどやっぱり面白い。真面目に考えたら馬鹿馬鹿しい?けど。なさそうでありそうな話しに思えて不思議。強風が吹いてローマ帝国が崩壊したことを感じる。発想する?そう言うの好きです。
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⭐️パン屋再襲撃
何度この本を読んだのだろう。若い頃はふわふわした印象しかなかった。相変わらず感覚で読む村上作品なのだが、妙に懐かしさが込み上げるのは歳を重ねたせいか?今回は表題作より「象の消滅」が印象的だった。世界は統一性、便宜性を求めすぎるためバランスを失っている。年老いた象と年老いた飼育員が幸せそうに見えるのは何故だろう?
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はじめて読んだ村上春樹はたぶんこの作品の文庫版。有名な作家さんだし読んでみようかなって読んでみたけど…。なんだか良く分からなかった記憶があるな~。まさか色々読んでクセになるとは思わなかったな。『ねじまき鳥クロニクル』を読みたくなってしまったな~。
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「ファミリー・アフェア」
村上春樹を好きになった理由を思い出した。僕は『風の歌を聴け』をきっかけに村上春樹を好きになった訳だけれども、そうだよなぁ、これだよなぁ。クールでスマート、都会的な村上春樹作品の真骨頂。
クスッと笑えて、むず痒くなるくらい格好良い主人公に憧れる。
能天気な冗談を言う、それにしっかり者の女性が呆れながらツッコむ。この構図、すごく好きだなぁ。
最近の重いテーマに果敢に挑戦している村上春樹も好きだけど、初期のこの能天気で飄々としたアーバンな村上春樹もやはり好きだなぁ
初期の頃の村上春樹が好きな人は是非読んでみてほしい。
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一見は合理性がない物語の中に、合理性を当てはめていく作業。見えない水脈を探し当てるように、ひとつの筋を見つけようとする作業を続けていく。こんな作業を通して、この物語たちは、読んだ人々に溶け込んでいくのだろうかと思う。
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パン屋を襲撃するという意味がわからない展開。展開自体は意味がわからないけれど、独特の世界観すぎて安定に面白い。比喩が誰にも思いつかないような比喩で彼にしか書けない
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笠原メイ、ある歯科医の受付女性は五反田君と過ごした後に失われてしまったメイなのか。名作長編『ねじ巻き鳥クロニクル』へと続く前日譚を収めた、読者に畳み掛ける短編集。山羊を飼う少女、ワタナベノボル、ある場合においては繋がり合う世界観。ひと差し指で軽くこめかみを押さえると、かっこうと鳴く声が聞こえる。
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ピンボールの双子の登場にはテンションが上がった。村上春樹作品は、つながっているようでつながっていないようでつながってる感じがする。個人的にこの短編集では、喪失がテーマだと感じた。我々は失った瞬間悲しむのではなく、気づいた時に悲しむ。
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ねじまき鳥、パン屋再襲撃、象の消滅、 あなたの頭の中のどこかに致命的な死角があると思いわないの?
確かに、どこか地底の底のような暗闇が、自分を違う自分へと、ねじを巻くようにジリジリと巻いて、ずらしているような気がする
Posted by ブクログ
初めて読んだ村上春樹作品
6つの短編で構成
中でも"象の消滅"という話が好きだった
ある日、町で飼育されていた象とその飼育員が、急にいなくなってしまう。形跡も残さず消滅してしまう。その大事件も、日が経つにつれ多くの人の記憶から消えていく。
その象に愛着を持っていた男が、仕事関係で出会った女性とお酒の場でその話をする。
結論、選んだ話題としては間違いだった。
感情や心踊る物で人と繋がるより
便宜的である方が生きやすく、評価される。
それだけで物語が成り立つようなストーリーを、伝えたいことの反面教師に使うのが凄いと感心してしまった
Posted by ブクログ
微妙に話の繋がった短編集。
表題作であり、するっと読める「パン屋再襲撃」
謎が残るものの読み進めやすい「象の消滅」
村上春樹節とも言えるユニークな台詞を楽しめる「ファミリーアフェア」
この前半三作は楽しめました。
正直、どの話も好みが分かれると思うので評価は難しいと思います。
Posted by ブクログ
総評としてやはり、村上春樹の文章は面白い。
ときどきあまりにも拗すぎる表現や言い回しも見受けられたが、やはりここまで考えを客観的かつ主観性を持って語ることはなかなかできない。
必用に描かれる男と女の関係が心地よくおしゃれである。
日常を感じさせる音楽や映画、考えを表現する目線ややり取り。会話のテンポでは、独文と会話文の流れ。さまざまなものが読みやすく流しやすい要因になりうる。
内容としては、
パン屋再襲撃では過去の自分自身と今の自分自身によるわがたまりを描いた。
マックを襲うことが面白いが、主人公のわがたまりをじぶんのわがたまりであると大胆に論理する妻が痛感である。
物の準備も含め、彼女にもそのわがたまりはあったのだろう。
また、あれは渡されたのだと、過去のパン屋の襲撃を語るのも非常に面白い。
ゾウの消滅
個人とその存在を定義される様はいまの外国人問題のようである。
ゾウの消えた先に待っているのは幸福なのか...
ファミリーアフェア
非常に等身大であり面白い.
今を立ち止まる主人公も、不安を振り払おうと思った妹もその先に待っているのは不安である。
ジム・ジャームッシュの映画のパターソンを思い出した。小さな変化こと日常の幸福である。
最後に終わるカタルシスも含め、今後たくさん読み直すであろう一説。
非常に好みである
双子の沈んだ大陸
非常に難しい本編。あまり考えたことを忘れてしまったが、人を壁の隙間に埋めるように塗っていく行為は我々人間による自己形成の本質であり、それをいまから取り出してやり直すことなんて本質的に不可能なのだと私も思う。
それは喧嘩をやり直すことや別れを立ち止まることなのであろうが、今の私にそれは重要にはとても思えない。
ローマ...以下省略
帰着したテーマがフェチすぎる。
組み立て方骨組みを作り方がオタクすぎてつまらなかった。
ねじまき鳥と火曜の女たち
非常に面白いかつ、痛快な小説である。
小説を謙って読む大学生にぴったりな本。
過去を振り返る時、大学のようすから現代まで一気に飛ぶ。
過去なんてきっと、そんなに昔ではない。
本質なんてものはそうそう変わらない。
裏道を渡る場面。妻の葛藤と猫を探していた過去を暴く。だが、非常にわかりにくい。
翻訳をしたようなメリハリのある会話は村上春樹といった感じで非常に心地よく、含みがすごい。
いつも選択を強いられていると思っている主人公。パスタが茹で上がってしまう。女に声をかけられたから猫を探すのをやめる。自分が女子高生なんてわかるわけがない。
全て選択をしているのは自分自身であるが、それは自分自身のせいだとは思わない。
火曜日の女たち。どんな意味があるのか、
これを読んだ後にねじまき鳥クロニクルを読んだ人たちはどんな感想を得たのか。
今から読むのが楽しみである。
Posted by ブクログ
どの短編もおもしろく、クスッと笑える。
テーマはなにかと問われたら、なかなか難しいけど日常の設定の中に非日常的な出来事が次々と起こるコメディのようでそのアンバランスさがおもしろかった。
ねじまき鳥クロニクルの元となった短編もあったり、ワタナベノボルが何ヶ所か出てきたり、繋がっっていない短編がどこかで繋がっているのかと考えたり考えなかったり。
気を抜いて読める村上作品でした。
Posted by ブクログ
初めての村上春樹作品。初めて手に取ったのは三年前くらいで、その時は回りくどい独特の表現に疲れてしまって(笑)これが村上春樹なんだ…!と途中で挫折してしまったが、今回は読書習慣ができてからの再開だったのでスラスラ読み進められた。
絵画でも歌でもその人の作品だとすぐ分かるのが本物の才能だなと思うけど、まさにそれで。村上春樹の世界、明け方に見る夢みたいな、夢心地になってしまう。本作はやれやれな男たちがたくさん出てきたが、描写は十分なくらいされるんだけど、心情や肝心なことはあえて描かれていない感じが想像力を刺激して尽きない。他の作品も読みたいと思う。
Posted by ブクログ
最後の「ねじまき鳥と火曜日の女たち」は多分3,4年くらい前からずっと読んでなかったんだけど、晴れて今日全部読み終わったということになった。
ただ最後のねじまき鳥短編以外のことはほぼ全て忘れてる。
にしても、最後のはわかりやすかった。
電話の女の主も足を引きずっている女の子もどちらも妻の姿が変わったもの。時間を経て、あるいは巻き戻した姿と言える。もしくは現在の妻が迷い混んでいる「路地」までの案内役。門番的存在。
猫=ワタナベ・ノボルは彼女の中で悩みの種。
本当に言葉の意味そのまんま。
猫という気まぐれな存在が抽象化され、そこに名前としてつけられた義兄(テレビに出る人間)であり、妻の悩みの種である。
それがとんと袋小路に逃げていったのだけれど、主人公は必死になって探そうとはしない。
猫というものは果たして夫婦間で解決すべきことなのだろうか?ずっと電話はなり続ける。
Posted by ブクログ
パン屋らしいパン屋が開いてなくて「妥協も必要〜」という台詞には特に笑ってしまった。
他、うちの冷凍庫は小さい上に冷凍食品で詰まってるのにアイスクリームを持ってくるとは、ステーキは昨日食べたしコロッケがいい、等、日常あるあるなネタがちりばめられており、時折笑ってしまう。
「妥協というものもある場合には必要なのよ」p28
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これが村上春樹氏の作品なのですね! 初、村上春樹氏の作品に触れましたが、なんとも言葉選びが面白く、一話終わるごとに余韻に浸り、村上ワールドにのめり込みました。
ファンの方にとったら、別作品とシンクロしたり、思わずクスりとしたりする演出が散りばめられているようなので、もっと深く知っていきたいと思いました。
(私的な部分ですが、誕生日に配信されたということ、柳楽さんがナレーターであること、そして村上 春樹氏であることといくつものきっかけを生み、手に取らさせて頂きました。感謝です。)
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ファミリーアフェアは主人公?の独特なユーモアのあるボケがなかなか面白かった。「オブラディオブラダ、人生は続く」困難な場面に直面したらその時考えるっていう気楽さが自分にはない考えで見習いたいとも思った。
ほかの5個はよく分からん
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『パン屋再襲撃』『ファミリー・アフェア』が好き。
村上春樹はが繰り返し用いるものとして、”妻”、”セックス”、”失踪”、”猫”がある。
時代背景が違うので、軽い気持ちで女と寝ている主人公の気持ちが分からん。
昔は出会いの機会がたくさんあったのかな?
一度もそういうことになったことないから、気持ちが分からん。
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ファミリーアフェア。兄妹がまるで熟年夫婦のようなやり取りで、婚約者と妹の会話はまるで仲の良くない兄妹のよう。そう感じるのは、自分と妻とが上手くいっていることの証明みたいなものだなと、良い気づきを得られた。それでなくとも、この話はどこか共感できるところも多くて凄く好きだった。
Posted by ブクログ
表題作の『パン屋再襲撃』は本の一番最初に収録されている短編だ。
深夜に目を覚ました主人公夫妻は空腹に耐えかねていたのだが、主人公はふと学生時代にパン屋を襲撃したことがあることや、その顛末の釈然としない気持ちを「呪い」と称してを妻に溢す。するとそれを聞いた妻は、呪いを解くために今からパン屋を再襲撃しようと提案する。
なんともまあ、初っ端から村上春樹ワールド全開である。
しかも余計に愉快なのが、なんの計画性もなく話が進行していくこと。東京といえども深夜二時半に開店しているパン屋は見つからず、最終的に妥協してマクドナルドを襲撃することになる。
無論、標的をマクドナルドに変更したのは妻で、主人公は「マクドナルドはパン屋じゃない」と彼女に呆れ返る。まるで読者の気持ちを代弁しているような途方の暮れっぷりに笑いが堪えきれなかった。結局ハンバーガーが食べたかっただけなのでは……というツッコミはやめておこう。
主人公の妻は非常にパワフルであるが、それでいて妙に愛らしい。バックボーンもほとんど描かれていないに等しいのに、読者を強烈に惹きつけるのはなぜだろうか。強引に物語を動かしながら主人公を従える姿は、村上春樹氏と読者の関係に似ているのかもしれない。
以下、各短編のざっくりとしたあらすじと感想。
○象の消滅
街のシンボルだった老いた象とその飼育員が失踪、もとい消滅する話。一見ミステリーのようで謎はまったく解決しないため、どちらかといえばファンタジーよりの作品だろうか。
作品の本質に触れることは難しかったが、相変わらずの村上春樹節が良かった。特に9月末に降る雨の表現がお洒落で好み。
○ファミリー・アフェア
同棲していた妹の結婚を機に、妹との関係性が変化していく男性の話。
主人公は口を開けば冗談を言わずにはいられないような男。そんな男が心地よかった妹との関係が崩れていく現状を憂いている様子が、人間臭くてとても良い。
○双子と沈んだ大陸
かつて双子の女と暮らしていた男性が、たまたま目にした雑誌で二人の姿を見つける。また、主人公は雑誌に双子と共に座る男性を見つけ、それが彼女らの現在の寄生先なのだと知る。
前述の二編よりも喪失感強めの作品に感じたものの、やはり謎を多く残しておりモヤっとする。歯医者の受付の女の子を登場させたのにも、何か意図があってのことなのだろうか…。
○ ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界
短編につけるタイトル名じゃねえ!とツッコミたくなる作品。ある日曜日に起こったことを男が日記にまとめたのがタイトルの由来なのだが、こんな大雑把なメモでは何が起きたのか振り返ることは難しいだろう。
タイトルを含め、クスッと笑わせてくれる不思議な短編だった。
○ねじまき鳥と火曜日の女たち
失業し専業主夫をしている男性が火曜日に出会ったさまざまな女たちとの話。
ここまでの作品で、村上春樹氏が作中の登場人物にワタナベノボルという名前を当てはめることは知っていたが、まさか猫の名前にまでなっているとは……。また『ねじまき鳥クロニクル』と関連がある作品なのかも不明。いつかあちらを読めば理解できるのだろうか。
Posted by ブクログ
存分に「やれやれ」してる本。女の話ばっかりだな、とか、かっこつけすぎだろ、とかどうしても思ってしまうんだけど、文章が良くて読めてしまう。平易だけど独特で、40年近く前の本なのに古さを全く感じさせない。「パン屋再襲撃」と「象の消滅」が好きだった。
Posted by ブクログ
【2023年153冊目】
久々に村上春樹さんの作品を読みました。いつ、いかなる時に読んでも、どこかシンと静まり返ったような世界観に引き込んで来るのが恐ろしいなと改めて思いました。
短編集でありながらも主人公はずっと「僕」なのですが、同じであったり、違う人物であったりして、でもそんな差異はきっと些細なことなのだろうな〜と思ったりしました。
一番好きなのは兄妹の話ですね。距離感がすごくいい。上手く言えないですが、理想的な感じがしました。
双子はどこか、他の作品で見かけたような気もしてますがちょっと覚えてません。この作品も読むのは二回目だったりします。何回読んでも、色褪せないし、読もうと思わせるのが恐ろしいですね。
初読:2012年11月1日以前