すべての高評価レビュー
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本書はハイデガーの『存在と時間』への入門書である。多くの書は『存在と時間』「について」の入門書である中、その読み解きの具体性において群を抜いているがゆえに『存在と時間』「への」入門書であるとあえて書きたい。『存在と時間』という著作の成立とその思想的背景に関しては轟孝夫氏の『ハイデガー「存在と時間」入門』が本書でも決定版と言われているように現在手にし得る最も詳しい本であると思われるが、本書はハイデガーに初めて触れる読者もそれなりに読んできた読者をも、ハイデガーが『存在と時間』において取り組んだ問いへとダイレクトに招く本である。
ハイデガーに関する本を幾つか読んでいくと時折指摘されるように「ハ -
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アリストテレスの政治学は言わずと知れた政治哲学の古典である。トマス・アクィナスの神学大全の人間論においてこの著作が頻繁に言及されており、トマスが豊かな洞察を得ていた書物であることがわかる。政治思想、政治理論を学ぶ上で重要な著作でありながらも、日本の読者が本書を読むには時々再版される岩波文庫の山本光雄訳か西洋古典叢書の牛田徳子訳を読むしかなかった。岩波文庫の山本訳は品切れが続いており、牛田訳は単行本のため持ち歩きには適さない。本書は光文社古典新訳文庫で詩学を訳した訳者による待望の翻訳と言えよう。
政治学は重要著作であることが指摘されていても、どこか研究がための書物であると思っていた。しかし訳 -
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現代は多様性の時代である。SNSや実際に人々の交流を通して国境があいまいになり、地球の裏側まで瞬時にニュースが飛び交う時代である。まさに身近なことが地球規模に影響を及ぼす、あるいは地球規模のことが身近にある、グローバルな時代なのである。しかしそれだけではなく、安定していた豊かな閉じられた世界では感じられることのなかった様々なことが露わとなり、国を超えなくともごく身近な範囲で分かりあうことの難しさを痛感するという意味でも、日々多様性を感じさせられるのではないだろうか。
ストア哲学の思想は多様性の現代にあって日に日に注目度を増している。ストア哲学が生まれた社会というのはまさに国境があいまいにな -
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マルクス・アウレリウスは苦悩の人であった。五賢帝の最後を飾るストア哲学の「哲人王」として紹介されることが時たまある。しかし本書はその見方に待ったをかける。ストア哲学に基づいて政治を行っていた哲人皇帝として受け留めるとすれば、それは事実にもとるのではないかと問いかけるのである。ストア哲学の精華として、確かに『自省録』は人の心を打ち、魂を揺さぶるような言葉に満ちている。そこにある誠実さに胸を打たれる人も多いであろう。しかしマルクスがストア哲学者としてのみ現実に対処したと思い、そこに血の通ったマルクスの姿を見出せないとすれば事の順序が逆である。むしろ自らの周りで起きる不測の出来事に処し、自らを奮い
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柳宗悦は西田幾多郎と井筒俊彦の間に居るということを本書『宗教とその真理』は強く感じさせる。若松英輔氏の『霊性の哲学』を読んで以来、どうしても柳宗悦の「哲学におけるテンペラメント」を読まなければならないと思っていた。もちろんその文章が本書のハイライトとも言えるものであることは間違いないのだが、本書を実際に読んでそこに至るまでの向上道とも言うべき論述に評者は意表を突かれた。白樺の運動の中で連載された論考を集めたものでありながら、本書は一冊の書物として類まれな柳宗悦の堂々たる主著であることを知らされるのである。
西田幾多郎の『善の研究』に内展involutionと外展evolutionという言葉 -
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本書は九鬼周造の主著を紐解きながら九鬼周造その人の思想の核心に触れる評伝である。若松英輔氏の『岡倉天心『茶の本』を読む』で本書が引かれていて、それ以来気になっていたのであるが、やっと講談社学術文庫で手に入るようになった。『「いき」の構造』で知られる九鬼周造の哲学は明晰な叙述で展開されるが、どことなく近寄りがたいところが否めない。しかし本書を通して九鬼周造その人の生涯の中で主著である『「いき」の構造』と『偶然性の問題』とがどのように記されたのかが生き生きと描かれ、生涯を貫くその哲学の核心が明かされるのである。
まず印象的であったのは『「いき」の構造』そのものが西洋哲学の精緻な理解を土台として -
- カート
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試し読み
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後に『種の起源』で有名になる22歳のダーウィンによる5年間に渡る調査航海の記録。
以前読んだ、ダーウィンの『ミミズと土』(平凡社ライブラリー)がとても面白かったので、他の本も探していた。『ミミズと土』は晩年の研究だったので、研究室に篭っている印章が強かった(狂気的な執念でミミズを観察するその姿勢が何より面白かったわけだが)が、本書は若かりし頃のダーウィン。その対比が面白く文章も溌剌としていて、ワクワクする探検の気分を味わうことができる。
当時南米は未開の土地で、出会うもの全てに驚きと感動が満ちていて、昨今のグーグルマップを開けばどこに何があるのかわかる状況から照し返すと、不便で危険では
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