あらすじ
「運命よ 私はお前と踊るのだ。」
理性と感情、男と女、東洋と西洋、二人の父、偶然と必然……幾多の対立に引き裂かれ、安定を許されなかった生のただなかで、日本哲学の巨星は何を探究しつづけたのか。その生い立ちから、留学、主著『「いき」の構造』『偶然性の問題』、最晩年の『文芸論』まで、その思索の全過程を、第一回中村元賞受賞の著者が明解かつ艶やかな筆致で辿る。九鬼哲学への決定版・入門書。
[目次]
はじめに
第一章 出会いと別れ
第二章 「いき」の現象学
第三章 永遠を求めて
第四章 偶然性の哲学
第五章 偶然から自然へ
第六章 形而上学としての詩学
あとがき
学術文庫版へのあとがき
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Posted by ブクログ
九鬼周造は明治から昭和を生きた哲学者。
その生い立ちも興味深い。
九鬼周造が、松岡正剛著の『日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (講談社現代新書) 』を読んでる中で登場し気になり購入。
(彼を知らないことへの焦りのような感覚)
ただでさえ、哲学の基礎知識がない中、「九鬼周造」の本は大変難解に感じた。
西洋文化と日本文化の違いについては、自分の関心が高いところだし、彼のように内外で哲学を学んだというバックグラウンドからも、彼が日本文化・精神を何をどのように捉えているのか興味が湧いてくる。
九鬼も後年は仏教に傾倒していったらしい。
昨今、欧米からも注目されている仏教の考え方を知識としても習得する必要があると感じる今日この頃。
仏教の概念である「輪廻」「無常」、これは人生は周っているという概念。一方、一神教がベースにある欧米社会では、出発点が決まっているので(キリスト誕生等)、時間が進む概念が強いとする。その概念が技術の発展を支えている、得意とする、という事実にもつながる。
ただ、出発点が明確で進化が前提の社会であると、何らかの歪みが生じる。行き過ぎた資本主義、環境破壊等は、そのような中で捉えることができる。そして、そのアンチテーゼとして仏教の考え方が受け容れているのかもしれない。
そんな問題意識がある中で本著を読み、九鬼も同じよう概念を示しているように感じている。