アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ミステリー史に残る作品で、今のミステリーの土台を作った一冊なのだろうとは思う。ただ、自分にはあまりハマらなかった。
仕掛けは確かに上手い。伏線もかなりあり、犯人を示す叙述上の手掛かりは巧いと思う。ただ、犯行を成立させる細かな条件まで十分早く提示されているとは感じられず、「その情報が後から出てくるなら何でもありでは?」という感覚が残った。
自分は、後から振り返れば辻褄が合うフェアさよりも、最初に与えられた情報を積み上げて真相へ到達するフェアさの方が好きなのだと思う。
また、『medium』のような現代ミステリーを読んでいることもあり、仕掛け自体にはそこまで新鮮味を感じなかった。もちろん、1926年にこれをやったことや、後のミステリーに与えた影響はすごいと思う。
キャロラインは好きだった。噂好きでお節介だけど、優しさもあって印象に残った。
日本語訳も少し読みにくく、文章や会話が自然に入ってこない感じがあった。
歴史的な価値や仕掛けの巧さは理解できる。でも、それと自分が読んで面白いかは別だった。
10段階評価: 4点 -
Posted by ブクログ
ネタバレアガサ・クリスティー大全集で星5つだったので期待して読んだ作品。
ボイントン夫人の性根の悪さには納得。誰かをいたぶっていないと生きている意味がない、というような人で、一度ターゲットを決めたら徹底的に追い詰める。あれだけ人を苦しめていたら、誰かに殺されても仕方ないと思ってしまうほどだった。
ただ、ボイントン家の娘たちにはかなり引っかかった。母親に支配されてきた被害者なのは分かるけれど、あまりにも自己中心的。結局、自分のことばかり考えているように見えて、「あなたたちも大概じゃない?」と思ってしまった。
そして一番気になったのがサラ。ボイントン家とは何の関係もない部外者なのに、「自分がこの家族を変えなければ」という発想になるのがどうしても理解できなかった。いや、あなた部外者ですよね?と思ってしまう。しかも、出会ったばかりのレイモンドとすぐに恋に落ちる展開も、正直あまり腑に落ちなかった。
犯人がウエストホルム卿夫人だったのも、「え、そこ?」という感じ。最初の頃に事情を聞かれて、服装について話していたくらいの印象だったので、最後に犯人として出てきたのはかなり唐突に感じた。
さらに、最後はポアロに追い詰められたウエストホルム卿夫人が自殺する。『アクロイド殺し』のときと同じように、ポアロが犯人を自殺へ追い込んでいるようにも見えて、「ポアロ、そこまでやるの?」という気持ちになった。
作品として評価が高いのは分かるけれど、私は謎解きそのものよりも、登場人物たちの行動に「いやいや、それはおかしくない?」とツッコミを入れながら読んだ作品だった。
でも、こういうふうに登場人物に納得できないところがたくさんある作品ほど、読後にあれこれ話したくなるので、これはこれで面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ神はわたしのしたことを赦さない。
ローラは両親の愛を妹シャーリーに奪われていると感じていた。だから彼女は妹の死を願った。両親が不在の夜、火事が起きて、妹は炎の中に取り残された。ローラは炎の中に飛び込んで、妹を救った。その日からローラは妹を何よりも大切なものとして愛し続けたのだった。それが何を引き起こすのかわからずに。
最後の伝道者ルウェインの未来視したのはローラだったのでプロポーズするという展開はちょっと唐突すぎてうまく理解できなかったが、愛することで他人の人生を駄目にする罪ということには考えさせられた。両親を早くに亡くしたローラは親代わりとなり、よかれと思ってシャーリーの幸せを考え続けた。自分の幸せについてはあまり考えなかった。もちろん結婚が幸せだという単純な結論ではなく、ローラが自分の人生に目を向けずシャーリーの幸せばかり考えて行動することを、クリスティーによく出てくるタイプの皮肉を愛するおじいさんボールドック氏が早いうちに看破している。他人の人生に手を出しすぎてはいけない、と。
こういう近しい人の幸せが自分の目的になって、その人の「幸せ」を追い求めすぎる人はいつの時代もどの場所にもいる。水をあげすぎると花はダメになる。シャーリーは意外と強いタイプだったとルウェインは言っていたが、ヘンリーを選んだのがシャーリー自身なのだからシャーリーが戦うまで待てるローラだったらよかったのに。そうはいっても実際にはローラのようにシャーリーに辛く当たるヘンリーを安楽死させるまで振り切れる人は少ないだろうが、ローラはできてしまった。そしてそれをシャーリーの幸せのためだと思っていた。ローラは恵まれない子のために、おそらくプライベートなどない状態で、働いている。他人を「幸せ」にすることに全力を注いでしまっている。しかもそれに成功してしまっている。ルウェインはそんなローラの生き方を間違っていると伝えた。
原動力を他人にすることの危険さを、この物語は語っている。自分の人生を生きることの大切さと、その難しさも語っている。ローラみたいに生きると多分気持ちがいいと思う。でもそれは誰かを「幸せ」にすると過信して、逆に台無しにしているかもしれない。ローラにはルウェインが現れたけど、自分には現れなかったら。やはりウェストマコット名義のクリスティーは、自分にとってゾワッとする作品だ。 -
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ20作目。1941年の作品。
『白昼の悪魔』という邦題もなかなか渋いけれど、原題『Evil under the Sun』がかっこいい。
小さな島のリゾート地が舞台という夏に読むにはぴったりでした。事件が起こったのは8月25日。
朝起きたらバルコニーから海岸に降りてひと泳ぎ、ホテルのダイニングルームで朝食。あるいは遅くまで寝ていてベッドで朝食。
海辺で日光浴、ボート遊び、テニス、散策もしくはテラスで読書。
島はホテルの私有地なので、海岸は宿泊客のみのプライベートビーチ。
なんていう上流社会の夏の過ごし方がなんとも優雅。
(216ページ)
「ミセス・マーシャルはいつもベッドで朝食をとっていたんだね」
「はい、いつもです。いつもベッドでほんの少しだけ。紅茶とオレンジ・ジュースとトーストを一枚です。多くのご婦人方同様、太らないように気をつかっていらっしゃったのでしょう」
ミスリーディングや思わせぶりなセリフ、小道具が多すぎて、宿泊客全員怪しく思える。というか、ラスト40ページくらいまで誰が犯人でもおかしくない展開。ミステリーとしてはまったくフェアじゃないけど、夏のリゾート気分を味わえたので私は十分満足。
新訳版は田村義進。『ゴルフ場殺人事件』、『メソポタミヤの殺人』なども手がけており、全体的に上品で読みやすい。
ただ、いくつか、伏線回収されていなかったり、あれ、このセリフあったけ?みたいな箇所があるんだけど、これは原文のミスなのか。
ブティックのオーナーであり、ドレスデザイナーであるロザムンド・ダーンリーのモデルはあきらかにココ・シャネル。
彼女のつけている香水は「ガブリエルの8番」。この香水は架空のものですが、ココ・シャネルの本名はガブリエル・シャネルで、2017年に「ガブリエル シャネル」という香水が発売されています。
それを考えると、ラストの彼女の選択はいまいち不満である。
(37ページ)
「結婚して子供をつくるのは誰にでもできることです。あなたのように自分の力で地位と名声を勝ちえた女性は、百人──いや、千人にひとりいるかいないかですよ」
ロザムンドはにっこり笑った。「でも、やっぱりわたしは哀れなオールドミス。とにかく、今日はそんな気分なんです。どんな貧乏暮らしでも、夫がどんなに粗野で陰気な人でも、腕白坊主がぞろぞろあとを追いかけてきても、そのほうがずっと幸せなんだと思っています。そうじゃないでしょうか」
いくつか自分用注釈。
3ページに出てくるコーネリア・ロブスン、リネット・リッジウェイは『ナイルに死す』。
ウェストン州警察本部長と話しているセント・ルーの事件とは『邪悪の家』。
133ページの「ウォーレス」とは、1931年に妻を殺したとして有罪になり、その後、逆転無罪となったウィリアム・ハーバート・ウォレス事件のこと。
以下、引用。
12
「そうなんです、ムッシュ・ポアロ、あなたのお噂はコーネリア・ロブスンからいろいろとうかがっています。わたしたち、五月にはバーデンホフに滞在していましてね。そのとき、エジプトでリネット・リッジウェイが殺された事件の話を聞いたんです。」
Badenhof
14
「わたしが若いころには、せいぜい足首までしか見ることができませんでした。ふんわりしたペチコートがちらっと見えただけで、胸がドキドキしたものです。それがいまは、ふくよかなふくらはぎも、膝も、リボンがついたガーターまでも──」
21
「たしかにここは夢のような場所です。じつにのどかだ。陽は燦々と降り注ぎ、海はどこまでも青い。ですが、ミス・ブルースター、忘れちゃいけません。邪悪は陽の下のいたるところに潜んでいます」
35
「ええ、びっくりするくらいに。イギリスの田舎です。大きなあばら家。馬や犬。雨の歩道。薪ストーブ。リンゴ畑。つましい暮らし。古ぼけたツイードの服。来る年も来る年も同じイブニング・ドレス。荒れ放題のお庭。秋にはシオンが咲き乱れ……」
37
「結婚して子供をつくるのは誰にでもできることです。あなたのように自分の力で地位と名声を勝ちえた女性は、百人──いや、千人にひとりいるかいないかですよ」
ロザムンドはにっこり笑った。「でも、やっぱりわたしは哀れなオールドミス。とにかく、今日はそんな気分なんです。どんな貧乏暮らしでも、夫がどんなに粗野で陰気な人でも、腕白坊主がぞろぞろあとを追いかけてきても、そのほうがずっと幸せなんだと思っています。そうじゃないでしょうか」
44
ううん、ニキビじゃない。そう判断して、ほっとした。そして思った。十六歳なんてイヤ。本当にイヤ。
自分がどこにいるかわからない。子馬のように頼りなく、ハリネズミのように刺々しい。見苦しさや頼りなさが気になってならない。
46
時間の感覚をつかめないのは幼さのせいかもしれない。一年は永遠に思える。
69
70
74
ドーヴィル、ル・テュケ、ジュアン・レ・パン
ビアリッツ
マーゲイト
83
部屋を出て、廊下を進む。廊下のはずれのドアからバルコニーに出る。そこにある階段をおりていけば、ホテルの下の岩場に出る。その岩場には磯まで小さな鉄の梯子が取りつけられている。海水浴場へ行くより手間がかからないので、朝のひとときをそこで過ごす者は多い。
85
年上のクリスティーンとのあいだには微妙に共感しあえるものがある。それはどちらも同じ人物を憎んでいるという事実に根ざしているからにちがいない。
93
「さっきも主人に言ったばかりなんだけど、わたしたちもぜひダートムーアに行ってみたいと思ってますの。ここからはそう遠くないし、言い伝えからしてロマンチックなところのようだし。それからあの有名な監獄のあるところ、プリンスタウンていったしら。あそこへも行ってみたい。」
94
歯磨き粉の金属ケース
108
「こいつは驚いた!」と、州警察本部長のウェストンは言った。「こんなところできみに会えるとは!」
エルキュール・ポアロは愛想よく答えた。「これはお久しぶり。セント・ルーの事件以来ですな」
「いまでもよく覚えてるよ。あんなに驚いたことはない。いまだに納得がいかないのは、葬儀のときのきみの策士ぶりだ。普通じゃ考えられない。常軌を逸していた」
112
「マーシャル大尉がどんなふうに思い、何を考えているかはわかりません。感情を表に出さない御仁のようですから」
「でも、感情はあるはずだ」
エルキュール・ポアロはうなずいた。
「ええ。感情はあるはずです」
133
「なんとも言えません。感情を表に出さないので。証人台に立ったときの印象は間違いなく悪いものになるでしょうね。ある意味、気の毒な話です。どんなに傷ついていても、そんなふうには見えないのだから。ウォーレスも同じような調子だったので、陪審員の心証を害して、有罪判決を下されてしまいました。確たる証拠があったからじゃありません。妻を亡くして、あんなに冷静でいられるはずはないと思われたからです」
ウィリアム・ハーバート・ウォレス事件
149
「ある学者が記した論文によると、社交界で浮名を流した伊達男(ボー)ブランメルと生涯独身であったニュートンのような人物とでは、孤独の意味がまったくちがう。」
183
「サボイ・ホテルでブレスレットをなくしたときに来てくれた若い刑事さんは、そりゃもう、優しくて親切な人でした。」
210
聖書。古びたシェークスピアの戯曲。ハンフリー・ワード夫人の『ウィリアム・アッシュの結婚』、シャーロット・ヤングの『若い継母』、A.E.ハウスマンの『シュロップシャーの若者』、エリオットの『寺院の殺人』、バーナード・ショーの『聖女ジャンヌ・ダーク』、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』、ディクスン・カーの『火刑法廷』。
216
「ミセス・マーシャルはいつもベッドで朝食をとっていたんだね」
「はい、いつもです。いつもベッドでほんの少しだけ。紅茶とオレンジ・ジュースとトーストを一枚です。多くのご婦人方同様、太らないように気をつかっていらっしゃったのでしょう」
239
「聖書に出てくるイザベルやアホリバのような毒婦です。悪行のかぎりを尽くし、あげく鉄槌がくだされたのです」
260
すぐに返事はかえってこなかった。村人たちにじろじろ見られているのが気になるのだろう。指をさされこそしないまでも、それと同じことを目でされているのだ。
285
「無作法をお許しいただけるでしょうか、マドモアゼル」
「あなたが無作法なことをなさるとは思いませんけど」
「恐縮です。それでは言わせてください。あなたがいまお使いの香水はじつにいい。繊細で、深淵で、複雑です」手を振り動かし、それから感情のこもらない声になって、
「ガブリエルの八番ですね」
「よくおわかりですね。ええ、わたしはいつもこれをつけています」
294
「たしかにアリーナ・マーシャルは聖職者が淫らな女(スカーレット・ウーマン)と呼ぶにふさわしい人物です。」
366
若島正「明るい館の秘密 クリスティ『そして誰もいなくなった』を読む」
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Posted by ブクログ
現在の事件や発言から、過去の細かな出来事の繋がりや動機を探っていくクリスティーらしい構成。ただ、自分の都合で細切れに読んだため、緊張感が途切れてしまい、評価が難しい。
被害者が子どもということもあり、個人的にはちょっとキツかったが、読ませる力はやはり別格。少し読みにくいと感じたのは翻訳か、思わせぶりな台詞が多いためか。
悲しかったのは、殺された少女の家庭環境を見ると、周囲から見える少女の性格が裏打ちされるところ。と同時に、アガサ・クリスティーは本当に人間を書くのが上手いので、動機が分からなくても大体あんまり好きじゃないなーと思った人が犯人だな……と思った(笑) -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルがなんだか未来的?でかっこいいと思ったら、中身はいつものクリスティ的お屋敷ミステリーだったのは少々肩透かしではあったが、とは言え安定の面白さだった。
殺人事件そのものよりもそこに至る人間の物語を主軸にした作品、ってことなんだけどクリスティって割といつもそうじゃない?と思ってしまい、この作品独自の面白さはいまいち見い出せず。
無関係のところから急に飛び込んできて解決の手がかりになるマクワーターの存在はドラマチックで面白かったけど。
結局は事件発生前の男女の愛憎劇を楽しめるかどうかに尽きるのかな、とも思いつつ個人的には『ナイルに死す』や『五匹の子豚』のドラマ部分の方が登場人物に感情移入しつつ楽しめたので、そんなに高評価とはならなかった。
ネヴィルへの愛やケイへの嫉妬を抱えつつ一生懸命平静を装っているようにしか見えなかったオードリーの本心が実は全然違った!というのは面白く、これこそクリスティの真髄のように思う。
ただ、せっかく面白い要素なのに他の要素も盛り込み過ぎて霞んでしまっているかなあという印象。
外側から見て分かる状況だけで、その渦中にいる人の気持ちまで決めつけてはいけないなあと改めて肝に銘じた。 -
Posted by ブクログ
走る列車の中から、併走する列車の中で起きている殺人を目撃するという発端がとにかく魅力的で、目撃者が若くはない女性であるというあたりが、クリスティっぽい感じで嬉しくなる。誰からも信じてもらえない中、名探偵ミス・マープルだけが信じてくれる、というあたりも「きたきた」という感じでわくわくした。
個人的には少し残念だったが、一族を巡る殺人事件にするすると物語は収束していき、逆にいつもの殺人事件の捜査になっていく。マープルの登場も少なくなるし、登場する人たちの「顔と名前」がなかなか上手く一致しなくて少々辛かった。そういう中で、ある種の安楽椅子探偵であるマープルの手足となる「プロ家政婦」の活躍がすてきで、物語に花を添えていてくれた。彼女を追いかけていくのは楽しかった。
話がどんどん広がってき意外な展開もみられて、後半はとても盛り上がっていく。どのように収拾をつけるのだろうと思っていたら、それなりに意外でもあり納得もできる結末だった。マープルのいたずら心も楽しいし、登場人物の未来を想像されるラストも気持ちがよかった。
最初は楽しく、途中やや退屈で、後半からラストにかけて気持ちよく盛り上がる。悪くはないが、そんなに大傑作という気はしなかった。 -
Posted by ブクログ
★3.5
タイトルの通り、ハロウィーン・パーティで起こる事件が舞台。アガサ・クリスティーの描く作品って、意外に現代も舞台になっているんですよね。この作品も、羽切とは書かれていませんが、第二次大戦後の世界が舞台になっているので1960年代くらいでしょうか。そんな世界に、髭をピンとはやして、伊達な姿の探偵は目立つでしょうね。
“意外”と言ったらなんですが、この作品は、ケネス・ブラナーが演じるポワロ物映画の3作目にリストアップされているそうです。前2作品が『オリエント急行の殺人』『ナイルに死す』なので、ちょっと異色な感じ。前2作が、結構いい感じに映画化されているので、この作品を原作とした映画がどうなるのか興味深いですね。