アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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ネタバレ【再読】
婚約していたエリノアとロディーの前に現れたのは、門番の美しい娘メアリイ。たちまちロディーはメアリイに心を奪われ、エリノアとの婚約を解消する。その折、伯母のローラが死亡し、エリノアは遺産を相続する。エリノアは、ローラが可愛がっていたメアリイに遺産の一部を譲る。
その後屋敷を売り払ったエリノアはメアリイを昼食に招くが、彼女がつくった昼食を食べたメアリイが死亡する。機会も動機もあるエリノアは当然逮捕され、裁判にかけられることに。さらに病死と思われたローラの死にも不審な点が見つかった。エリノアは、メアリイを可愛がっていたローラが遺言を書き換える前に殺したのではないかということでローラ殺害の容疑もかけられたのだった。ポアロはローラの主治医だったロードの依頼を受け、エリノアの無実を証明するために立ち上がる。
看護婦やほかの使用人の証言を集めていくも、エリノアへの疑惑は深まるばかり。だがポアロは、バラの傷跡やモルヒネのラベルから、ホプキンズの犯行を見抜く。
男女の愛憎をテーマにした人間ドラマはクリスティーの真骨頂。動機も機会も全てが一人の女性を指し示す事件にポアロが挑む。使用人のコミュニティが深く描かれているのも特徴。
●見どころ
・どんな相手からも話を引き出すする術を熟知しているポアロ
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ネタバレ長編のポアロシリーズとは少し違う味わいのある一冊。
この短編集では、トリックや意外な犯人に驚かされるというより、若き日のポアロとヘイスティングズの掛け合いを楽しむ作品という印象。
後年のポアロはもっと完成された名探偵だけど、
この頃の2人はなんだかいきいきしていて、
漫才コンビみたいな軽妙さがある。
ヘイスティングズは長編よりずっと感情豊かで、
「くそっ!」「笑いものにしやがって」「当分のあいだ許さないぞ」など、悔しさや呆れがそのまま語りに表れていて思わず笑ってしまう。一方のポアロも、猫の鳴き真似をしたり、「チャー!」と猫のくしゃみのような感嘆詞を漏らしたり、口髭が暑さでへなへなになったことを嘆いたりと、
人間味があって愛らしい。
特に『チョコレートの箱』は印象深かった。
完璧に見えるポアロにも失敗があり、それを「もし自惚れだしたら『チョコレートの箱』と言ってくれ」とヘイスティングズに頼む場面がいい。しかし、その直後には「ヨーロッパ随一の頭脳」だと自慢してしまい、ヘイスティングズが小さく「チョコレートの箱」と呟く。
そのやり取りに二人の信頼関係とユーモアが詰まっていた。
長編のクリスティは、人物像や人間関係、心理描写を丁寧に積み重ねることで、犯人にも意外性を生み出している。それがクリスティの魅力だと思う。
一方、この初期短編集は、まだ作風が固まりきる前の自由さがあり、いろいろな題材を楽しみながら試しているように感じられた。
自惚れ屋だけどどこか憎めないポアロと、
文句を言いつつ結局は相棒を信頼しているヘイスティングズ、という2人の気安い関係性を楽しめる作品。 -
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ネタバレ【再読】
偏屈な老富豪シメオンにより、クリスマスに集められた一族の面々。その夜、シメオンが何者かに惨殺される。部屋には鍵がかかっており、凶器も消えていた。事件の直前にはシメオンのダイヤが盗まれていたことも判明。
シメオンは死の直前に遺言の書き換えを仄めかしており、それが殺人の引き鉄となったと見られる。また屋敷には、シメオンの孫娘ピラール、シメオンの旧友の息子スティーブンも訪れていた。ポアロは、遺言の書き換えによって得をする者・損をする者、惨劇の時間にアリバイのある者・ない者などの観点で推理をすすめていく。
犯人は警視のサグデンだった。サグデンはシメオンの私生児だったのだ。
サグデンが部屋で何かを拾ったピラールの行動をなぜポアロに話さなかったのかという疑問をもった読者は多いと思うが、それこそが真相に繋がるものであるのが面白い。
●見どころ
・遺産をめぐる骨肉の争い
●名言
「わたしは、主人からけしかけられて獲物を狩り出しながら、その獲物がどうも気に入らないからといって、呼びもどされて、帰ってくる犬ではありませんよ!」 -
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名作と名高い本作。
アルファベット順に殺人が起きるという不気味な謎と、鮮やかなプロットには一気に引き込まれた。
しかし、現代のリアルな犯罪心理小説に慣れた視点から見ると、劇中で事件に巻き込まれていく男の行動や、心理描写のディテールには、どこか物理的・心理的な無理があるようにも感じられた。
だが、読み進めるうちにこれは、当時のミステリが「プロットの美しさ」を最優先にした結果なんだなと納得。
当時は現代ほどミステリ作品が溢れておらず、読者の目も今ほど批評的ではなかったはず。
こうした細かな違和感に気づけること自体、本作が築いた「基礎」の上で、後世のミステリが進化を積み重ねてきた証拠なのだろう。
そう考えると、本作の歴史的価値は微塵も揺らがないどころか、ミステリの歴史の一端にいま自分が触れているのだと気づかされ、興奮で満たされた。
そして何より、この物語の最大の魅力は名探偵ポアロの〈名探偵ぶり〉にあると思う。
世間が用意された完璧な筋道や状況証拠に惑わされ、犯人だと決めつける中、ポアロだけは自身の違和感を信じた。
一人の人間に真摯に向き合い、その言い分に耳を傾け、冷徹なパズルの裏にある真実を見抜いたポアロの姿には、彼の人間味溢れる洞察力が詰まっている。
ミステリの歴史の深さと、ポアロというキャラクターの深い魅力を再発見した。
これこそが、時代を超えて本作が愛され続ける理由なのだと感じた。 -
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ネタバレ悪評で有名なシャイタナのパーティに招待されたポアロ。そこにはシャイタナのほかにポアロ含め8人の人間が招待されており、彼らは2組に分かれてブリッジをすることに。その最中、シャイタナが何者かに刺殺された。部屋には誰も出入りしておらず、そこにいたのはポアロとは別の組の4人のみ。シャイタナには人の弱みを握り悦に入るという悪趣味があり、どうやら4人には後ろ暗い過去があったらしい。ポアロたちは4人の過去を調べるとともに、ブリッジの手法や得点表から彼らの心理分析を行なっていく。
そうしていくうちに、ロリマー夫人が罪を自白する。だが犯罪の性質的に彼女が犯人ではないことを見抜いたポアロは、彼女がアン・メレディスを庇っていることを知る。ブリッジの最中にたまたまアンがシャイタナを殺すところを目撃したロリマー夫人は、自身が病気で余命いくばくもないこともあり、未来あるアンを庇ったのだった。直後にロリマー夫人は睡眠薬を服用して命を断つが、それはドクター・ロバーツの計略だった。アンがシャイタナに近づいたとき、シャイタナはロバーツによりすでに殺されており、アンは宝石を盗もうとしていただけだったのだ。だがアンはアンで自分の利益のためなら平気で人を殺す人間で、最後は親友のローダを殺そうとした結果自身が死ぬことになる。4人の容疑者のうち唯一デスパード少佐のみがローダと結ばれハッピーエンドを迎える。
ブリッジの最中に殺人が起きる、容疑者の4人にはともに後ろ暗い過去がある、など設定が奇抜かつ魅力的。さらに探偵側はポアロのほかバトル警視、レイス大佐、(クリスティーを投影していると言われる)オリヴァ夫人と濃いメンツが揃っている。その分、ポアロの印象がやや薄まってしまっていると言えなくもない。ブリッジのルールがわからずとも問題ないのはある意味フェアだが、基本的には物証ではなく心理面での推理がメインになっているため犯人当てはかなり難しいと思われる。
●見どころ
・大量のストッキングを購入して不審者扱いされるポアロ -
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ネタバレ海外ものは名前や人物関係を把握するのに
いつも手こずるので、
今回からノートに相関図、時系列をまとめながら読んだ。
いつ誰に何ができたのか、こいつは周りからどんなやつだと思われているのか。
結果、みごとに犯人が…
全くはずれていた。
またやられた。
クリスティは人物への思い込みを利用するのがほんとに上手い。
だから、今回も見えてる通りの人物像とはみんなちがうんだろう、と実はロウスンがすっごい策士で演技してるんじゃないか!?とか思ってたのに。
全然ちゃうかった。
驚きとかトリックだとかはクリスティの
他作品より薄いが、終始コメディぽい軽快なやりとりが楽しい作品。ボブがいいスパイスになっている。
ちなみに相関図に書くために調べたら、ボブは表紙の犬とは全然ちがう感じの犬種だった。
今回、読んでてポアロが「事実と解釈」だとか「推察と考察」だとかを非常に意識して線引いてることに目が行った。やっぱり賢い人は気をつけてんだな。
最近、物事に対する自分の解釈だとか無意識の色眼鏡を疑ってかかんなきゃだめだなって反省してたから、参考になっちゃった。
「〝彼の話では〟とか〝彼女の話では〟といった推理は、愚の骨頂ですよ」とポアロは言った。「なんの意味もない。それは本当の話かもしれないし、あるいは〝嘘も方便〟のつくり話かもしれない。いずれにしてもわたしは事実だけしか取り扱わないことにしている」
「あらゆる人が少しずつ異った角度から彼女を眺めていたことになる。」
「この人たちをわれわれ自身の目で観察することです」
「その人から受けた印象だけを頼りにしたら、非常に危険だということ。感じや印象は第二にして事実をもととしなければ……」
「ヘイスティングズ。わたしは思うなんてことは、自分自身に対して絶対に許さない主義なんだよ。つまり推察するってことはしないんだね。ただ、いまのところある種の考察はしてますが……」
「原因と結果だよ。原因と結果」
肝に銘じます、ポアロさん。 -
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ネタバレ【再読】
看護師のエイミーは、たまたま知り合った外科医のライリーに依頼されてエリック・レイドナーの遺跡調査団とともに中東へ赴く。そこでエイミーはエリックの妻ルイーズの看護をすることになるのだが、どうもこのルイーズの様子がおかしい。彼女は何かに心を苛まれているようだった。エイミーが話を聞くと、ルイーズは死んだはずの前夫から脅迫されているのだという。さらに何者かが窓を覗いていたり保管室から怪しい物音が聞こえたりと、不可解なことが続く。
一人としてそのことに真剣に取り合わなかったが、ついにルイーズが何者かの手で殺されてしまう。そこに颯爽と現れたポアロは関係者から事情を聞き、捜査を始める。宿舎のつくりや目撃証言から、外部の犯行とは考えがたい。ポアロはエイミーをパートナーに選び、調査団のメンバーから証言を集めていく。すると、誰からも好かれていたルイーズの裏の顔が徐々に明らかになっていく。
そうしていると、今度はミス・ジョンソンが塩酸を口にして死亡する。ジョンソンはその直前に、誰にも見られずに宿舎に侵入する方法がわかったと言っていたため、口封じのために殺されてしまったのだ。またこの事件を機にラヴィニー神父も姿を消してしまった。
ポアロはミス・ジョンソンが残した言葉をヒントに、ついに真相に辿り着く。
犯人はルイーズの妻エリックだった。実はエリックこそがルイーズのかつての夫で、正体を隠して彼女に接近したのだった。そして彼女の裏切りに対する復讐として殺害に及んだ。ちなみに姿を消したラヴィニー神父は発掘した品を盗むコソ泥だったこともわかる。
中東を舞台にした異国情緒溢れる作品。みなに好かれていた女性の過去、そしてもう一つの顔とは。最初の夫と離婚した後、考古学者の男性と再婚したクリスティー。彼女の人生が作品の下地となっている。
●見どころ
・ポアロの登場は三分の一ほどが過ぎてから
・語り手であるエイミーにみくびられるポアロ
・フラグを立ててしまう登場人物
●名言
「殺人は癖になる」