アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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ネタバレタイピストとして働くシェイラのもとに、自宅へ来てタイピングをしてほしいという依頼が来る。その家を訪れたところ、そこには男の死体があった。この家は目の不自由なミリセントが住んでいたが、死んでいたのは彼女も知らない男だった。しかもミリセントは、そもそもタイピングの依頼などしていないと主張。さらには、なぜか家には無数の時計が持ち込まれていた。
現場に居合わせた秘密情報員のコリンとハードキャスル警部は捜査に乗り出すが、被害者の身元すらわからない。そこでコリンは、父の友人であったポアロに相談することに。
だがそのうち、第二、第三の殺人が発生してしまう……。
時計が持ち去られる、ではなく持ち込まれるという謎が魅力的で、さらには死んだ男の正体もわからないまま進んでいくため、その二つの謎が大きな原動力となる。ただその分、時計の謎がかなりの肩透かしになってしまうのが否めない。さらにはポアロが完全なる安楽椅子探偵に落ち着いているところも、少し物足りなさを感じる。
●見どころ
・古典ミステリについて一席ぶつポアロ
・重要なことを思い出した人物が殺されるお約束
・時代の移り変わりとともに希薄になる隣人との関係
・かわいい茶トラ猫 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【ノンシリーズ短編】
こんな控えめな主役は他にいないんじゃないかな。
クィン氏はポアロのように決して自ら謎は解かない。相棒のサタースウェイト氏に匂わせヒントを与えるだけ。
するとあら不思議。
サタースウェイト氏は今までは気づかなかったものが見えてくる。
そして事件を解決した後の声かけが素晴らしい。
「あなたが成功したのは、すべてあなた自身の力によるものですよ」
見習いたい!
私はクィン氏を読んで、これは子育てで見習いたいと思った。
クィン氏は、相棒のサタースウェイト氏にヒントのみをそっと教えて自信を与えるのが最高に上手い。
「自分には真相を見抜く力があるんだ!」と彼の自己肯定感がバリバリ上がってくる。
もしクィン氏が答えを出してしまったら、彼が自分の力に気づく機会もなくなってしまう。
次第に章が進むと、もうヒントすら与えない。クィン氏は彼に自信を持たせるだけ。
自信を持った彼は、自分の力で真相にたどり着けるようになっていく。
そしてサタースウェイト氏が失敗したと落ち込んだ時は、「大丈夫だよ」みたいな安易な慰め方はしない。
そんな時は、客観的な見方で視野を広げられるように導く。
クィン氏、最高。
私もクィン氏の姿勢を目指して頑張ろう。
クリスティもまさか子育て術として読まれるとは思っていなかっただろう。
でも自分はそう感じたんだから仕方ない。
今回は王道の楽しみ方とは違うかもしれないけど、苦手なクリスティの短編を自分なりに楽しめたので良しとしよう。
(1度目は途中で挫折したので、今回は2度目の挑戦) -
Posted by ブクログ
ネタバレ中盤までは正直物語に乗り切れず読むペースが上がらなかったが、後半なんとなく方向性が分かってきてからは入り込めたような気がする。
系統としては、最近読んだ『杉の柩』『五匹の子豚』に近い、多数の登場人物が入り乱れるミステリーの形をとりながらもその実ひとりの女性の内面にフォーカスした作品、という印象。
マリーナ・グレッグの描き方はもちろんのこと、バドコック夫人の「こういう人いるいる~」感も見事。
親切心なの分かるし実際助かることもあるから、本人いない場だとしてもあまり陰口とか言いづらいけど…あ、結構みんな言っちゃうんだ?別に言ってもいいんだ?という気持ちになった。
動機の真相には胸がえぐられるものがあったが、マリーナへの同情と言うより、それ以前からマリーナが少々病的な人物であったように描かれているので、全部まるっと含めて愚かな人々による悲劇という感じ。
マリーナの夫も結局はこの「幸せになれる要素を兼ね備えたように見えながら自ら破滅へ向かってしまう」ところも含めて強く愛してしまったのかなあと感じた。
見事な部分はたくさんあるのだが、物語として楽しめたかというとまた別の話で。
マープルさんが華麗な推理を披露するのは最後の最後で、それまではクラドック警部が情報を集めながらも「で、どういうこと?」と困惑する姿をずっと見続けることになるのだが、これが個人的にはモチベーション維持が難しい。
やっぱり随所で、推理した結果を明かさないながらも、なんか掴んでるんだなーすごいなーと感じさせて欲しい。
その点でやっぱり自分はどちらかと言うとポアロシリーズが好きなんだなと改めて認識させられた一作だった。
あ、でもナイトとチェリーのマープル家のわちゃわちゃした感じは読んでて楽しかった。
ところでこのタイトル、
「鏡は横にひび割れて~ くじけそうになった時は」
と歌いたくなってしまうのは自分だけだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった。解説にもあったが、「1番怪しくない人よりも、1番怪しい人が、怪しい」というのは新鮮だった。確かにそのような小説もあって良いと想像していたが、もうミステリーの女王が最初でやっていた。読者にも犯人を一切悟られないように、するのがすごい。確かにハワードとミスターイングルソープの繋がりは分からなかった。なので、ヘイスティングズと同じように驚ける。一作目ということもあって自分は油断してしまった。
ポワロが序盤からヘイスティングズにも舐められているのは面白かった。初回ならではの人物関係だった。他の作品でもそうだが、ポワロの秘密主義的で、理路整然としていて、それでいて人間の心理への鋭い洞察力が見もの。解説にもあったが、軽快さと上品さによって、(当時斬新だったらしいが)現代の感覚からしても親しみやすい内容になっている。とにかくアガサクリスティーは、人間が感じるあらゆる側面の捉え方のバランス感覚が、絶品だと思った。斬新で濃密で軽快。また、20世紀一の創作力をもった人というのも頷ける。本当の巨人なのだと。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ故人からの依頼を受けて、ポアロが捜査に乗り出す。
老婦人が亡くなり、遺産はすべて付添い人に渡った。亡くなる直前に変更された遺言状によって、親族たちは遺産を受け取ることができなかった。ポアロが受け取った手紙は、その老婦人が亡くなる前に書かれて、それから二ヶ月も経って届いた。興味を持ったポアロはヘイスティングスを連れて、聞き込みを始める——。
犯人そっちか。ドクターの方が怪しいと思っていた。ヘイスティングスと一緒に何もわからない人としてポアロの推理に感嘆する楽しさ。人から聞いた話で、少しずつ光を当てる部分が違うのを、確信できる事実だけに絞っていくポアロ。その過程で登場人物たちの豊かな個性に引っ張られてぐんぐんと読み進められる。幕引きまで鮮やか。最後に犬を引き取るポアロとヘイスティングスの描写が幕引きとしてとてもよかった。