養老孟司のレビュー一覧
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著者の主著である『唯脳論』が書かれる以前に発表されたエッセイをまとめた本です。
著者は「文庫版あとがき」で、「はじめの部分は、『唯脳論』に至る軌跡をあるていど表わしている。こちらに収録した文章のほうが、私の最初の考えかたをよく示しているものもあるので、興味のある方は両者を並べてお読みいただくと、あるいはよく理解していただける点があるのではないか、と考えている」と述べています。ただわたくしの印象では、前著である『ヒトの見方』(1991年、ちくま文庫)のほうが、解剖学的な議論から『唯脳論』へとつながる著者の思索の軌跡がよく示されているように感じられます。
本書はむしろ、とりあげられているテーマ -
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養老孟司(1937年~)氏は、東大医学部卒、東大大学院基礎医学博士課程修了、メルボルン大学留学、東大教授、東大総合研究資料館館長、東大出版会理事長、北里大学教授等を経て、東大名誉教授。専門の解剖学に加えて脳科学などの見地から多数の一般向け書籍を執筆しており、『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞(1989年)、2003年に出版した『バカの壁』はベストセラーとなり、累計出版部数は400万部を超える戦後日本の歴代4位となっている。尚、現在までに「壁」シリーズとして、『死の壁』、『超バカの壁』、『「自分」の壁』、『遺言。』、『ヒトの壁』の計6巻を刊行し、シリーズ累計の出版部数は660万部超。(『バカ
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養老さん、医師免許を持っているのに病院嫌いだったんですね。笑
うちの母も病院嫌いで、身体の声を聞いた方がいいんだと言っていましたが、これは養老さんに影響を受けていたんですねぇ。本書でも、いわゆる病院嫌いの人と養老さんを一緒にしてはいけないと書いてあって、その通りなんですけど、そういう人たちからは養老さんのスタンスは心の支えというか、安心材料のひとつで、あったのでしょう。そんな養老さんも病院にいく。身体がまずいと思ったら、ちゃんと受診するんだから、その点も見習ってほしいものです。
養老さんが医者にならなかったのは、患者との距離感がとれないからと言っていました。自分は病院に行かないけれど、愛猫の -
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ネタバレ気になった一文のメモ
・国家とは政治体制ではない。実質的には供給能力の総和である。(45)
→食糧、医療、コロナワクチン、そういった「供給」がどれだけ国民に提供できるかが国家の力なのかもしれない
・世界と見る時に、神学の位置付けは意外に大切である。(55)
→人の歴史に神(神学)ありきだと思うので、神学の位置づけを知っておくことは教養として必要
・「そうだったのか」と「理解」は向こうからやってくるが、「解釈」はもともとこちらの都合(71)
→理解は感覚の延長で、解釈は運動の延長。解釈は「わかったこと」にできる。
・「意味は外部(の体系、システム)を召喚すること(78)
→意味そのものが独 -
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- カート
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最初の森博嗣との対話が興味深い。日本で理系とは、数学が出来る人という事になっている。しかし、数学が出来ない物理学者もいたと。マイケルファラデーやロバートフックなど。確かにそうかも知れないが、日本における共通認識として、やはり文系は数学が苦手、あるいは受験項目で物理や化学を避けた人、という意味合いが強い。興味が無かったのか、勉強が合わなかったのか。
一方で理系に対しても、就職を考えた打算的な現実主義者、または対人が苦手という偏見がある。この区別は、単に受験制度に最大の要因がある。何を意識して、自らを文系と理系に分けたのかだ。従い、その後のアカデミックな勉強内容よりも、その前の判断基準で文系理系 -
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ネタバレ世間の内側にいたい伊集院光と世間の外側にいることに抵抗がない養老孟司が、「世間」をキーワードにして対談した内容をまとめた本。世間の内と外の話から都市と自然の話に発展したり、AIの話になっていたり、あまり縛りなく様々な話をしている。
伊集院さんのことを全然知らず、深夜ラジオで下ネタを言っているイメージしかなかった(友達からそう聞いたので・・・)。だから伊集院さんと養老先生が対談するって、何がどうなったらその二人がくっつくんだと気になって購入した。実際読んでみると、伊集院さんがとても論理的に物事を分析していることに驚いた。
会社の研修を受けていると、世間の内に内にと閉じ込められる感があってとても -
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最近新書を読んでいないな、と思い、書店に並んでいるものの中から気になるものを買ってみた。
対談集なので、テーマが分散しているものの、幅広いジャンルでの気づきが持ててよかった。
死期の迫った子供のエピソードは、悲しくなった。
成熟は共感力。本来なら成長しながら少しずつ身に付けるのに、急速に「聞き分けのいい子」になってしまうというもの。
子どもの自殺が多い理由を「幸せな瞬間が未来に回されるばかり」としているのは、そうかもしれないと思った。
そればかりではないだろうけど、「幸せ」を実感できないと、将来に待ち受けるものに対していいイメージは持てないと思う。
「子どもは人材ではない、人間である」の -
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対談本だが、AIを語るほど工学に精通しておらず、あくまで抽象論として文系目線で、哲学者や棋士、経済学者相手に議論されている。だからAIに仕事を奪われるかどうか、という受け身な発想になるのかな。それに対して、60億以上いる世界人口があって知能があるのに、更に頭脳を増やして意味あるの?と養老先生。お得意の持論は良いのだが、相手が養老先生に気を使い過ぎて議論にならない。衝突を避けながら、養老先生に合わせる形で探り探り主張している。それが次第に面白くなってくる。
例えば、正規分布や偏差値を批判的に議論する箇所で、高血圧といった外れた存在を標準化させる事が必要なら、東大生のような偏差値の高い存在も補正