柚木麻子のレビュー一覧
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なんて元気が貰える作品なのだろう!残業が多いだとかミスしただとか、あるいは好きな人ができないだとか。今現在の仕事や人間関係における悩みなんて本当にちっぽけ。もっと広く長い視点で自分の人生を見つめるべきだ!という、20代前半の私に対するメッセージのように感じた。
正子おばあちゃんの自由さ、貪欲さ、プライドの高さ、発想力の高さ、頑固だけど流行り廃りには柔軟…。読み進めていけばいくほど、段々と愛おしく格好良く思えてくる。杏奈とのやり取り(特に序盤)も強烈で面白い〜。杏奈は大成して欲しい。なぜなら「東京ホラーハウス」の構成しかり、杏奈のアイデアはどれも演者やその地域に寄り添っていて素敵だなぁと感じたからです。
結末については、ある意味"大どんでん返し"だと思う。正子おばあちゃんもそうだけど、そもそも柚木先生が容赦ない方なのかな!?と。でも私は柚木先生のそんな所を敬愛している。 -
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江國香織さんの「夕涼み」と綿谷りささんの「青春リグレット」が読みたくて手に取った。夕涼みは、夫の行動にゾッとしたし、私だったらそんなズレた夫とは一緒にいられないと思った。「逃げたかったわけではない、が、逃げられないと思わされることは恐怖だった。竦むような、恐怖だった。」という言葉に共感。誰かに自分の選択肢を奪われたり、縛られたり、自分で自分を決められないことを、人は恐怖と感じるんだなと思った。そして誰にもその出来事は話せないことも、夫を含む周りにはいつまでも愛し合っている夫婦だと思われていることも、自分だけがこのザワザワした気持ちに気づかないふりをしていればいいんだと感じるのもわかる。老女たちの夕涼みを今になって理解できるようになってしまったことも、それを見て単に奇妙だと思うだけだった過去を無敵だったと表現したことも、妹にはそんな日が来ないでずっと幸せでいてほしいと思う姉の気持ちも、切なかった。
「青春リグレット」は、自分の何がそんなに好きかわからないくらいに愛してくれた人を、自分は愛せなかったことを夫に離婚を切り出された時に思い出す。愛される恋愛がどれだけ幸せだったか、それはその時には理解できなかったのだから仕方ないし、後悔しないでほしいなと思った。後になって気づくものってある、もう取り返しはつかないけれど。彼との時間を俯瞰で冷めた目でみてしまうところ、古傷が痛んだ。愛の重さは同じくらいがいい。 -
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栞子のナルシストさに痛々しいと思いながらも、どこか自分と重ねながら読んでいたから、最後真美子が放った言葉や態度に息が詰まりそうになった。
見下される者と見下す者、見下す者の方がその存在を求めてるって言う感じの言葉がしっくりきた。
お嬢様女子大生の女同士の人間関係って感じがして出てくる人みんなリッチで清潔感溢れててレベルが高いなぁーって感じたから、栞子みたいな1人もがいてる女の子を見てると、何だかホッとして好きだった。
この本では自分の居場所をみんな求めてる
そのために彷徨うとあった
真美子が栞子に憧れたのは、女子大生の真美子にとっての居場所を作ろうとしていたから。
社会人になって美里並みに一般常識を身につけた真美子にとって、栞子はもう憧れの対象ではないと同時に居場所ではなくなっていたから最後あれだけ冷たい言葉を放てたのか。
真美子が栞子に憧れてる描写が好きだった。ワクワクした -
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「柚木麻子と読む」とあるので、一作ごとに解説が入るのかと思ったら、そういう形式ではなかった。
柚木麻子・編の林芙美子の短編集である。
こういう作品集は、編者が原作者のどういった部分を好んでいるかで、色合いが変わってくることもある。
やはり「柚木麻子と読む」で良いのだろう。
「はじめに」で、林芙美子本人があまり気に入っていなさそうな作品をあえてチョイスした、と書かれている。
女友達に、ニヤニヤしながらちょっと意地悪をしてみる感じで微笑ましい。
「おわりに」では、林芙美子の作品では、男女の機微を描いたものより、シスターフットが感じられるものの方が好き、と書かれていて、この好みが『ついでにジェントルメン』を柚木さんに書かせたのかなあと思った。
男に頼らず、自分の足で立って、自分で稼ぐ女性たち。
女の味方は最後には女なのだ、との読後感のある作品だと思う。
「市立女学校」は、作者自身が気に入っていないようだという。どうして?
林芙美子も女学校を出ていて、このヒロインのさわは本人がモデルなのだという。
卒業を控えた女生徒たちのあれこれが、瀬戸内の風景とともに描かれる。私はとても好き。
生徒たちにはまだ他人事だが、女性の教師たちが、教頭や男性教師からのパワハラやセクハラで辞めていく様子を描くのは、彼女たちを待っている厳しい社会の一角をチラ見させているようでもある。
卒業前は、まだ何にでもなれる「余白」を持っているけれど、社会に出たらどうなるだろう。
女学校時代は、短いきらめきの季節だ。
続きの作品というわけではないけれど、「ボナアルの黄昏」では、女学校を出た同窓生たちが学校を出た後、結局どういう運命を辿ったかという、一種残酷な後日譚が披露される。
最後の「椰子の実」は、死の3年前くらいに書かれた、小説ではなく随筆のようなもの。
もう書けない、疲れてしまった、どうせ後の時代に生きている人たちが書いたものの方がいいに決まっている、と弱気。
若い頃は、書けなくなると衝動的に旅に出た。大陸だってパリだって、どこにでも行けた。
もうそんな遠くには行けないけれど、とりあえず海を越えれば自分の旅心も満足する、と大島に行ってみたら思わぬ再会あり。また書きたいものができた。
浜辺に打ち上げられて朽ちるかと思われた椰子の実は、また波によって海へと誘い出されるのだった。