柚月裕子のレビュー一覧
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『佐方貞人』シリーズ4作目。4編からなる連作短編集。米崎地検検事時代の佐方を描く。
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前半の2話で描かれるのは、「『起訴』と『真実の解明』が一筋縄ではいかない」という現実を、佐方が身を以て知ることになる話でした。
人間は神ではなく、善良な市民のための落としどころを見いださなければならないときもあるのでしょう。そこは理解できます。
後半の2話で描かれるのは「検察内部のメンツ」が絡む話でした。
真実を解明し、事実に照らして起訴・求刑をすることが検察の務めのはずです。佐方はその信念のもと真っ当な裁きを貫きますが、先輩検事は佐方を非難します。
まったくく -
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『佐方貞人』シリーズ2作目。5編からなる連作短編集。大藪春彦賞受賞作品。
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本作での佐方は検事として米崎地検に配属されて1年という設定。
高校時代の佐方を描く「恩を返す」、横領の罪に問われ獄中死した佐方の父・陽世の謎に迫る「本懐を知る」以外の3編は、佐方の検事としての佇まいを異なる側面から描いています。
それも佐方に心の内を語らせることなく、各話の登場人物の目を通した佐方という人間の描写にすることで、却って主人公としての存在感を確固としたものにしていました。実にうまい手法だと思います。
巻末が近づくと言いようもなく淋しくなります。そして、早く続編 -
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原作・柚月裕子、映画脚本・池上純哉、ノベライズ・豊田美加『小説 孤狼の血 LEVEL2』角川文庫。
映画『孤狼の血』のオリジナル続編映画『孤狼の血 LEVEL2』の脚本をベースにしたノベライズ小説。小説『孤狼の血』と『凶犬の眼』との間をつなぐ物語となっている。オリジナル映画のノベライズというと原作のイメージを損なうのではないかという懸念もあったのだが、そんなこともなく非常に面白い作品に仕上がっていた。
広島の裏社会の暴走を食い止めていた呉原東署の刑事・大上が亡き後にその意思を継いだ若手刑事の日岡秀一は再び広島の裏社会に新たな抗争の火種が燻るのを感じた。日岡が壊滅状態に追い込んだ五十子会を復 -
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本作は小説であるが、小説のシリーズ第1作を原案にした映画の“続篇”として企画制作された映画の脚本を下敷きにしながら起こした小説となっている。「映画の尺」という分量の物語を小説化しているので、読み易い分量の小説に纏まっている。
『孤狼の血』のシリーズについては、映画を愉しく観たという経過が在り、小説の『孤狼の血』を読み、小説がシリーズ化されていたので第2作の『凶犬の眼』も読んだ。更に本の登場まで少し待った第3作の『暴虎の牙』も愉しく読んだ。
映画も、3作の小説も知る“一ファン”と「映画の2本目が在るなら?」と考えれば、第3作の『暴虎の牙』を下敷きに脚本が創られるというようなことを予想した。が、そ -
購入済み
正義から仁義へ
主人公、日岡の前作での揺らぐ正義感が今作では正義から仁義へと揺るぎない心情がテンポ良く描かれ新登場のキャラクターも魅力的でした
完結となる次作が非常に楽しみです。 -
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前に出版された『合理的にあり得ない』の続編。
これまでの柚月さんの作風とは異なり、ヒヤヒヤ、キリキリとした緊張感ではなく、とてもリラックスして物語に入り込める内容だ。
今回は三つの中編で構成されている。
信頼していたクライアントの社長が仕組んだ罠に嵌り、弁護士資格を失った上水流涼子は、自由気儘に動ける探偵事務所を設営し、金と欲に満ちた連中の悩み難問を片付けて、高額な報酬を得る算段を常にしている辣腕経営者兼美人探偵だ。
もう一人の主人公となる貴山伸彦は、東大卒のIQ 140を誇るイケメン青年で、上水流涼子をアシストすると云うよりも、難問の解決は貴山の力量によって図られているのが実情だ。
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