柚月裕子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『佐方貞人』シリーズ4作目。4編からなる連作短編集。米崎地検検事時代の佐方を描く。
* * * * *
前半の2話で描かれるのは、「『起訴』と『真実の解明』が一筋縄ではいかない」という現実を、佐方が身を以て知ることになる話でした。
人間は神ではなく、善良な市民のための落としどころを見いださなければならないときもあるのでしょう。そこは理解できます。
後半の2話で描かれるのは「検察内部のメンツ」が絡む話でした。
真実を解明し、事実に照らして起訴・求刑をすることが検察の務めのはずです。佐方はその信念のもと真っ当な裁きを貫きますが、先輩検事は佐方を非難します。
まったくく -
Posted by ブクログ
『佐方貞人』シリーズ2作目。5編からなる連作短編集。大藪春彦賞受賞作品。
* * * * *
本作での佐方は検事として米崎地検に配属されて1年という設定。
高校時代の佐方を描く「恩を返す」、横領の罪に問われ獄中死した佐方の父・陽世の謎に迫る「本懐を知る」以外の3編は、佐方の検事としての佇まいを異なる側面から描いています。
それも佐方に心の内を語らせることなく、各話の登場人物の目を通した佐方という人間の描写にすることで、却って主人公としての存在感を確固としたものにしていました。実にうまい手法だと思います。
巻末が近づくと言いようもなく淋しくなります。そして、早く続編 -
Posted by ブクログ
原作・柚月裕子、映画脚本・池上純哉、ノベライズ・豊田美加『小説 孤狼の血 LEVEL2』角川文庫。
映画『孤狼の血』のオリジナル続編映画『孤狼の血 LEVEL2』の脚本をベースにしたノベライズ小説。小説『孤狼の血』と『凶犬の眼』との間をつなぐ物語となっている。オリジナル映画のノベライズというと原作のイメージを損なうのではないかという懸念もあったのだが、そんなこともなく非常に面白い作品に仕上がっていた。
広島の裏社会の暴走を食い止めていた呉原東署の刑事・大上が亡き後にその意思を継いだ若手刑事の日岡秀一は再び広島の裏社会に新たな抗争の火種が燻るのを感じた。日岡が壊滅状態に追い込んだ五十子会を復 -
Posted by ブクログ
本作は小説であるが、小説のシリーズ第1作を原案にした映画の“続篇”として企画制作された映画の脚本を下敷きにしながら起こした小説となっている。「映画の尺」という分量の物語を小説化しているので、読み易い分量の小説に纏まっている。
『孤狼の血』のシリーズについては、映画を愉しく観たという経過が在り、小説の『孤狼の血』を読み、小説がシリーズ化されていたので第2作の『凶犬の眼』も読んだ。更に本の登場まで少し待った第3作の『暴虎の牙』も愉しく読んだ。
映画も、3作の小説も知る“一ファン”と「映画の2本目が在るなら?」と考えれば、第3作の『暴虎の牙』を下敷きに脚本が創られるというようなことを予想した。が、そ -
Posted by ブクログ
ミステリーという勿れ 人気漫画のタイトルをお借りしました。
ジャンルで言えばミステリー、サスペンスになるのでしょう。ですが、トリッキーな犯罪や犯人逮捕の攻防戦を望むと肩透かしでしょうね。
この小説は、限りなく現実に寄せているのだと思います。派手な演出もみんながあっと驚くようなトリックもない。
でも、だからこそ朴訥な刑事の抱える16年前の事件に対する思い、正義感との狭間で苦しむ様子に共感できるのではないでしょうか。その意味ではヒューマンドラマとも言えると思います。
長年連れ添った妻との絆、娘への愛、旅先での縁、そこから拾い上げるそれぞれの人生。そういったものと相まって、この「神場」という定年退 -
購入済み
正義から仁義へ
主人公、日岡の前作での揺らぐ正義感が今作では正義から仁義へと揺るぎない心情がテンポ良く描かれ新登場のキャラクターも魅力的でした
完結となる次作が非常に楽しみです。 -
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「佐方貞人シリーズ」が人気と聞いて手にした1冊。柚月裕子さんの作品、けっこう好きです。
で、本作。プロローグからはその展開は読めず、途中で、ん?被害者と被告人の名前が明かされていない?!となる。
息子をあんな形で失い、その犯人は警察に守られ、自分は余命宣告される。私にはそんな実行できるかと問われると、すぐにはYESと言えるものではないが、あんな状況でそう考えるのは理解できなくもない。どうにか罪を公にして償わせたいと思うだろう。
佐方さんはあまり登場しないのか?と思ったら、後半怒涛の展開。おー、そうくるか、と。シリーズを読むのが楽しみになってきました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ警察を定年退職し、妻とお遍路の旅に出た神場。道中、テレビで観た幼女の殺人事件のニュースに、16年前のある事件がフラッシュバックし、心に抱え続けてきた悔恨が蘇る。
刑事物ではあるが、主人公は退職しており、事件には直接関わらず部下とやりとりするだけで、自身はお遍路をしながら過去と向き合っていくという設定は面白いと感じた。冒頭から、過去に悔恨があることは匂わされているが、お遍路の各所で見たものや何気ない妻との会話と結びつけてそれらを明らかにしていくようになっており、構成も練られていると感じた。どんでん返しなどはないが、心の動きに重点を置いた作品で、お遍路や願掛けに意味を見出せなくなっていた神場が、自 -
Posted by ブクログ
ネタバレ平成6年師走に行われる竜昇戦に挑むのは、東大卒から経営者を経てプロとなった異色の棋士・上条桂介。しかし、序盤早々に、彼がある殺人事件の容疑者で、石破・佐野の刑事コンビに追われていることが明かされる。
時は変わって昭和46年、教師を引退して穏やかな生活を送る唐沢は、母を亡くし、父から育児放棄のような扱いを受けて新聞配達をする少年・桂介に出会う。桂介は将棋が好きで、その才能を見抜いた唐沢は、桂介をプロにすべく父親に掛け合うも却下される。その後成長した佳介は、東大に合格し東京へと旅立つ。
白骨化した遺体の側から出てきた600万円相当の高級な将棋の駒を手がかりに、事件を追う刑事のストーリーと、上条