最初は主人公由美のマスコミっぷりに、人のプライベートに自分の好奇心だけを引っさげて踏み込む厚かましさに、読んでいて疲れるところがあった。
だけど2章から姉妹の回想パートに突入し、一気に惹き込まれる。
その後、話が過去と現在の交互で展開し、先に過去で本人たちの思惑を知った上で現在パートで由美たちが謎を
...続きを読む解いていくので、非常に読みやすかった。自分で、時折ページを繰る手を止めながら、散りばめられた伏線について思索するのもとても楽しい。
姉目線での話があまりないのと、妹があまりにも他人本意なので、終盤で少しイラッとしてしまったが、その偏見は私が恵まれているからなのかもと思ったりした。自分の軸を持ち他人に依存しないことは大切だが、この姉・妹に襲いかかった運命は、どうしたって1人では立ち向かえない。生きていく上で、妹は自分の中の別人格と姉に、そして姉は妹に、そして妹に無償の愛を注ぐ自分に依存することでしか、この世界を生きられなかったのだろう。
誰が悪いでもない(父親は擁護できないが)、彼女たちが生きた社会では、彼女たちの辿る運命は決まっていたのではないか。その社会を変えていくために、由美が最後にペンをとったのは希望があってよかった。
いやしかし、朝の通学バスで読み終えたが、このどんよりした気分はしばらく引きずりそう。