Posted by ブクログ
2020年10月15日
主人公(望月大地)は、九州の福森市で家庭裁判所調査官補という職業をスタートするところから物語は始まる。新人調査官補は、先輩調査官からはカンポちゃんと呼ばれる。
普段はあまり馴染みの少ない職業だが国家公務員だ。採用試験に合格した人は、全国の家庭裁判所や出張所等に配属される。(家庭裁判所調査官補は...続きを読む、2年間の養成課程の後任官する)取扱う業務は、心理学など人間科学の知見や技術を用いて、離婚紛争・子供の親権者争いや少年少女の犯罪など、当事者の調査を行い、紛争の原因を探り、裁判官の審判に必要な情報を収集して報告書をまとめ、調停に立ち会い事実関係を述べる仕事です。
当事者だけの聞取り調査では、明らかにされない事実が隠されています。調停の面接で、当事者は自分に有利な言葉しか話さない。
所謂、仮面を被っているのです。
例えば、夫婦間の離婚紛争で子供がいる場合、辛い思いをするのは当事者である親だけではありません。
もしなに不自由なく暮らしていた子供達が、両親の別れを目の当たりにして、父母のどちらを選ぶのかを迫られる場合は、子供達が両親に恨みが無くても、親同士の争いに板挟みとなれば暴れたくなるのかもしれません。
少年少女の非行事件なら、再非行に至らないようにする必要もあります。その様な場合の調停は、解決に何年もかかると書いていました。勿論、厳しい審判となれば調査官の苦悩が偲ばれます。
しかし問題の解決は、当事者との信頼関係が構築される遣り甲斐のある仕事だと思いました。
作品は全五話で、どれを読んでも根が深い。カンポちゃんの奮闘が読みどころだと思います。頑張れ「大地」と励ましたいところだが、これはミステリー小説ですぞ!
アッと驚く真実は、必読ですよ。
タイトルに「あしたの君へ」の君が、小説の「読者へ」と解釈すれば激励の言葉だと思う。
実におもしろい。