柚月裕子のレビュー一覧
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6人の作家さん毎に色が異なる厚手の紙の本。
写真はもちろんカラー。
角田光代さん
「トト」は2冊フォトエッセイを読んだので知ってる。
「トトが来る前は自分中心で、辛いことがあると全身で向かい合っていたのでしんどかった。」が、
「トトが来てからは、とりあえずトトにご飯をあげなきゃ、といった気持ちの逃し方ができた。」そうだ。
角田さんは犬が好きで、「トト」は犬の要素を持っていると言っていたのを思い出した。
他の猫よりも人懐っこいのかな。
村山由佳さん
猫が大好きなんですね。
「もみじ」に対する想いは尋常ではなく、エッセイを何冊も出しているみたい。
「もみじ」の生まれる瞬間にも立ち会ってるし、亡くなる時まで17年も一緒にいたら、そりゃ愛情だらけになりますね。
「犬は子供で猫は対等な大人。」と言ってたが、子供は従順で大人は自分勝手ということか?
逆に犬は大人で猫は子供とも言えそうだな。
柚月裕子さん
「呼んでも来ないし、抱きしめても、するりと腕から抜け出す。」
「でも気がつくとそばにいて、いつも同じ瞳でみつめてくれる。」
猫との接し方は、養老孟司さんと似てるかな。
養老孟司さん
子供の時からずっと家に猫がいるようだ。
あまりかまわないで好きなようにさせている。
寄って来るのは餌が欲しくなった時。
人に手間をかけさせるのがペットの仕事。
猫は生きることのモノサシ。必要な物を手に入れたら、あとは寝ている。
毎日お互いに生きてますな、と顔を合わせてお終い。それでいい。
皆さん、猫に見られている感があって、自分以外で自分のことをよく知っている存在と捉えている。
猫はいつでも自分のことを気にしてくれているありがたい存在なんですね。 -
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柚月裕子さんの、作家生活15年の軌跡が詰まった文庫オリジナルエッセイ集です。カバー装画はGLAYのTERUさんの描き下ろし。素朴ながら柚月さんの心情に寄り添っていると感じました。
私の柚月さん像‥見目麗しい女性作家が、なぜあんな骨太な男臭い物語を描けるのか、そこに萌えますし、またある時は、主人公が(佐方シリーズのように)自分の正義を貫く姿に快哉を叫びました。
本エッセイは、柚月さんの喜怒哀楽が散りばめられたバラエティに富む内容で、とても新鮮に感じました。各紙や小説誌等に掲載された以前のものも多くありながら、古さを感じさせません。
特に、柚月さんの創作にまつわる裏話は興味深いものがありました。また、猫をはじめ、柚月さんの好きなもの・ことの話も多く、ファンの皆さんには必読ではないでしょうか。
個人的に最も刺さったのは、震災の辛い経験を経て、表題につながったであろう終末部分です。
◯「ふたつの時間」(震災の日で止まったままの
時と、そこから流れている時)
◯「ふたりの自分」(震災後の日常を送る
自分と、あの日から動けずにいる自分)
このくだりを読む程に、柚月さんの根底にある、世の中の理不尽や不条理に向き合い続ける姿勢が、痛いほど伝わる一冊でした。 -
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葉真中顕、中山七里、呉勝浩、深町秋生、下村敦史、長浦京、柚月裕子『警官の道』角川文庫。
7人の作家の短編を収録した警察小説アンソロジー。7人の作家全員が自分の好みというのはなかなかあり得ないことだ。読んでみれば、柚月裕子の『聖』がピカイチで後は平凡な短編ばかりで、少しがっかりした。
葉真中顕『上級国民』。本作に描かれる刑事事件とされなかった交通死亡事故は、2018年に東京都港区で起きた元東京地検特捜部長による自動車死亡事故を思い出す。実際にこういうことはありそうだ。90歳の佐々木嘉一が交通事故で亡くなった。しかし、車を運転していた谷田部洋は逮捕されなかった。その裏には驚愕の事実が隠されていた。★★★★
中山七里『許されざる者』。復興五輪などと銘を打って、コロナで延期された汚職に塗れた東京オリンピック。犬飼隼人シリーズの短編。今の時代、こんなこともありそうだ。東京オリンピックの閉会式を演出する予定の演出家の三浦伽音が殺害される。一体何があったのか。★★★★
呉勝浩『Vに捧げる行進』。警察官の名前がモルオとは。コロナ禍で疲弊する日常の中、町で頻出する落書き犯。その驚愕の意図とは。モルオという名前がどうにもこうにも。ストーリーが入って来ない。★★★
深町秋生『クローゼット』。ゲイの警察官か。世も末だななんて言うと顰蹙を浴びる、何とも嫌な世の中になったものだ。LGBTQなる少数派ばかりを擁護して一体何になるんだろうか。上野署の荻野大成と相棒の中澤祐一は荒神と呼ばれ、重宝されながら管内で起きる様々な事件現場に臨場する。その荻野には誰にも言えない秘密があった。★★★
下村敦史『見えない刃』。最近、やたらと性犯罪のニュースを耳にする。世の中、おかしなことになっているな。ある日、刑事課長に呼ばれた明澄祥子は性犯罪を専任することを命ぜられる。東堂とコンビを組んで性犯罪の捜査に乗り出した明澄が見た現実とは。★★★★
長浦京『シスター・レイ』。最近、注目している作家の短編。フランス帰りで予備校の講師という能條玲という謎の美女が主人公。玲は半グレ集団のトラブルに巻き込まれた知人の家族を救うために、果敢にも半グレ集団のアジトに乗り込む。★★★★
柚月裕子『聖』。最後の最後に納得のいくレベルの短編が収録されていてほっとした。母親と自分を虐待し、母親と別れたろくでなしの父親に復讐するためにヤクザに憧れ、組事務所に出入りする少年・聖。中華料理店でアルバイトをしながら、神戸の金坂組のバッジをもらうチャンスを狙う聖は、組に出入りするサングラスをかけた迫力十分の男に弟子入りを懇願する。★★★★★
本体価格820円
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柚月裕子『ふたつの時間、ふたりの自分』文春文庫。
2008年のデビューから2023年現在までの15年間の軌跡を辿る著者初となるエッセイ集。
作家と主婦の『ふたりの自分』という自身のことを綴ったエッセイと東日本大震災で父親と祖母を失ったことを切っ掛けに東日本大震災前後の『ふたつの時間』を綴った二部構成のエッセイ集となっている。
年代的に近いこと、同じ岩手出身ということもあってか、妙に納得するところが多い。自分も2年間、父親の仕事の関係で釜石に暮らしていたことがある。夜の町に光る新日鉄の工場、いつもゴーっというかワーンというような工場の操業する音が聞こえたものだ。
最初のエッセイ『記憶の中の料理』に登場する中津川は盛岡の市内を流れる中津川なのかと思うのだが、特に説明も無く定かではない。しかし、後のエッセイ『道の記憶』と『思い出の道』に盛岡で幼少期を過ごしたことが描かれているので、やはりあの中津川だったかと納得する。柚月裕子が釜石生まれであることは知っていたが、盛岡でも暮らした経験があったことを初めて知った。
柚月裕子は『想像する原点を思い出す五冊』というエッセイの中では、五冊の中の一冊に北方謙三の『逃れの町』を選んでいる。自分も北方謙三のハードボイルドの中では一番好きな作品だ。柚月裕子も書いているが、冬の軽井沢のシーンが良い。
勿論、柚月裕子の小説は好きで、文庫化されたものは全て読んでいるが、柚月裕子の人と成りを垣間見ることが出来て、面白かった。
本体価格820円
★★★★ -
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読後は決して爽やかではない。しかしイヤミスではない。読むだけで胸が苦しくなるような悲劇の実態を描いた作品だ。
タイトルになっている「蟻の菜園」は共依存を表現したものだが、この作品の悲劇の根幹はそれではなく、胸糞が悪くなるような児童虐待だ。最近、巷間を賑わせているJ事務所の問題も児童虐待だが、この手の話は被害者が名乗り出ないと表沙汰にならないにも関わらず、被害者からの告発がないケースが多いようだ(J事務所の件はずっと以前から声をあげた人々がいたがマスコミが無視をしたという最悪のケースだが)。被害者が名乗り出ずに忍耐を続けているが故に虐待がエスカレートしていく。事案は違えど共通の構図だ。
世の中から少しでも児童虐待を減らすために私たちが出来ることは何だろうか。
多分そんな大袈裟なことではなく、知人や隣人にもう少しだけ関心を持つ。それが第一歩のように思う。
柚月裕子は昭和の雰囲気を持つキャラクターを描くのが上手いが、古き良き昭和のような周囲とのコミュニケーションこそが、悲劇を減らす切っ掛けだと作者は感じているのかもしれない。 -
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コミカライズ版もなかなか
柚月裕子の原作に感銘を受けたので、このコミカライズ版を読んでみた。なかなか手際よくコミカライズしているが、原作の持つ、蒸し暑いベトベトした天気や、タバコ臭い雰囲気があまり感じられないところが残念である。絵柄がちょっと爽やかすぎるのかも知れない。しかしストーリー展開を追うのには大変に手頃である。