あらすじ
この者は、神か、悪魔か――。
気鋭の著者が、医療の在り方、命の意味を問う感動巨編。
大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。
あるとき、難病の少年の治療方針をめぐって、二人は対立。
「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。
そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。
大学病院の闇を暴こうとする記者は、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫る。
天才心臓外科医の正義と葛藤を描く。
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Posted by ブクログ
結論、とても面白い小説でした。ミカエルの鼓動というタイトルも本当に秀逸です。
終始ドラマを見ているような感覚で、後半に展開を密集させるような構成だったと思います。
この分量でドラマの構成だと最初は退屈に感じてしまいました。ただ後半からはとても面白く、面白いだけでなく航くんや西條、真木の行動に衝撃を受け一気に読んでしまいました。
個人的には後書きでこの本の理解度がかなり上がりまして、作家の今までの人生や性格があってこの作品が産まれたのだと思うと、冗長に思っていた部分も見方が変わってきて評価を改めました。
本当に面白かったです。
Posted by ブクログ
ミカエルという機械を使って心臓の手術をする、第一人者になっている西條。
そこに、機械を使わずに手術ができる医師、真木が入って来ることになり、西條は院長に対して不信感が少しずつ顔を出してくることになり……。
テーマは、命の期限を自分たちで決めることはできない。なのかなあと思いました。
どんなに手を尽くしても、亡くなってしまう時は亡くなってしまうし、どんなに死にたくても、行かされる時もある。
西條が、ミカエル(天使)という機械を扱う神のような感じになっていき、読んでいるこっちが、大丈夫なの?と心配になりつつページが進みました。
Posted by ブクログ
柚木裕子の小説はどの小説も好きだ。とても好きだ。
特に、小説のコアになる場面での表現がなんともカッコよすぎて大好きだ。
例えば、この小説で僕が一番気に入ったところを引用する。
駒田は顔から笑みを消し、じっと西條の目を見つめた。やがて、諦めたように息を吐き、答えた。
「ふたりが似ているからですよ」
「真木先生と、私がー」
駒田は頷く。
「私は西條先生のことを、心臓外科の名医であることしか知りません。出自や生い立ちなど、なにも知らない。
でも、感じるんですよ。真木さんと同じ寂しさを。そして医療に対する誠実さをも」 P444
全くキャラクターが違う2人の対立する医師、その2人、西條と真木が似ていると表現させるこの描写、それも「感じるんですよ」という感覚に訴える描写が、脳裏に稲妻が落ちたように激しく痺れた。
この小説を読み終わった後、数日間、何度も何度のこの場面が頭の中を行き交う。
こんな経験、今までにあっただろうか。
Posted by ブクログ
生命がテーマとなる医療機関を舞台に繰り広げられる人間ドラマにグイグイ引き込まれる。ハラハラドキドキしたり、色々考えさせられたりしてあっという間に読み終わった。
Posted by ブクログ
大天使ミカエルが、命の現場で戦う医師の姿に重なり、
とても感動的なストーリーだった。
ライバルというものは、
同じくらいの実力があってこそ競え合うもの。
嫉妬心も、相手がすごすぎては持たないだろう。
大谷翔平に対してのように、憧れしか感じないと思う。
二人の医師は、まさにライバル。
どちらも根底には命を救いたいという思いがある。
辛い過去や生い立ちが似ているからこそ、
お互いの実力を認め合えているからこそ、
反発しつつ、切磋琢磨できる。
手術支援ロボット、最先端医療はこれからもますます進歩するだろう。
機械は、人が作ったもの。
改良を重ねて完璧にしようとしても、
時には欠陥がでたりする。
まして、医療機器であれば、生死に直結する。
目の前の命を救うのが病院だが、
収益がなければ、経営ができなくなるのも現実。
西條と少年航との、触れ合うシーンは、
とても暖かく感じた。
家族や周りの人に、ずっと気を使っていた航に、
生きようとする心が芽生えてこそ、手術を成功させた。
ぜひ、映像化してほしい。
Posted by ブクログ
読み応えのある作品
手術支援ロボットを扱い心臓手術を開拓していく新進気鋭の医師
ドイツの有名な病院から帰国した医師
病院の未来を二人を天秤にかけて
決めようとする病院長
そして週刊誌の記者
一人の子供の手術を通して協力した
二人の医師
二人を育ちは似通っていて
辛い子供時代を生きていた
でも患者や医療に向き合う姿勢は
似通っていた
すごいヒューマンなストーリーで
久しぶりに心に沁みた
Posted by ブクログ
作中にある「医者は神」という言葉、病気の不安を一度感じれば意味がよくわかってしまう。医者に全てすがってしまうことが確実にある。
本当の意味での信仰とは言えないのだろうけど、そのまま自分で選ばず、人に任したまま生を終える人は山のようにいる。この本は医療を入口にした、生き方とか意思の話かもしれないなと思った。
正義は一つではなく、それぞれの正義が存在するという現実が書かれているにもかかわらず、神秘的ないい終わり方だった。
Posted by ブクログ
幼い心臓手術に先端医療の手術支援ロボットを選ぶか、従来からの人間の手による手術か、患者の選択を重視するか執刀医の決断を問う。その背景には手術支援ロボットミスによる仲間医師の自殺があった。瀬戸際まで油断を許さない前代未聞の心臓外科手術での心の選択を問う。
現実、これからの医療改革は最先端のロボットを使うのは自然の動きになるだろうが、人が作った「メカ」には必ず誤動作、劣化がつきものである事を忘れてはいけない。常にプログラムとメカのアップデートが必須であり、100%、先端医療でも完全なものは無いと思わなければならない。小説内で気になった言葉「先のことはその時に考えればいい、今は目の前ある事をするだけだ」「何かを守るものがある人間は強い。苦難に打ちのめされて倒れたとしても、自分の大切なものを守るために何度でも立ち上がれる」
本書でのキーワードは医者としての名声・名誉・肩書・権力、さらに病院長としての経営判断。最後に掲げた経営判断では、収益の良い時に次なる一手を編み出せるかどうかだ。
Posted by ブクログ
手術支援ロボット・ミカエルを推進する心臓外科医の西條が勤務する大学病院に天才医師の真木がやってくる。難病の少年の治療を巡り二人は対立。結局、ミカエルで手術を行うことにしたのだが誤作動を起こした。再開された手術は成功したが西條の心の中には絶望が残っている。
※人生の意味は自分が納得できるかどうかだ。結果どうあれ自分が決めた道なら後悔はない。
Posted by ブクログ
病院内の権力争い、関係機関との癒着といった、病院を舞台にした話にありがちな内容もありますが、それだけでなく登場人物の言葉に考えさせられる場面があるのが柚月作品が好きな理由。
「航くんがいうふつうってなに?心臓が丈夫な人のこと?心臓が丈夫でも、手が不自由な人はいるよ。身体が健康でも、心が傷ついている人もいる。走るのが苦手でも、泳ぐのが得意だったり、人とうまく話せないけど、文章を書くのは好きだったり、この世の中には、いろいろな人がいる。同じ人はいない。みんな違う。人と違うから普通じゃないなんてことはないの」
中盤は、寝不足になるとわかっていても読み進めてしまうほどでしたが、読後感は少しもやもや感もあり。
Posted by ブクログ
ミカエルを使用した手術に絶対的な自信を持っている西條が主人公。
心臓手術に長けている真木が、ドイツから同じ病院へ来たことで、絶対的な自信や自分の信念に揺らぎを感じ始める。
航の手術を境に、物事が動き出す。
◾️良かった部分
ミカエルをめぐったサスペンス的な要素、病院内のギスギスした世界観など、先が気になりドンドン読み進めることができた。
登場人物のイメージもつきやすい描写が多く、読み進めるのは難しくなかった。
◾️微妙と思った部分
感情や行動を表すときに、勘であったり経験といった曖昧な背景で描写していたのが自分的には物足りなかった。
ミカエルを使い続けていた理由が癒着であったり、医療の未来というのがありきたりすぎたかなと思った。
◾️印象に残ったセリフ
真木の口癖でもある、「先のことはその時に考えればいい、今は目の前にあることをするだけだ。」
理由は、自分自身打算的に物事を考えてしまい、何事にもストーリーを作ってしまう癖がある。
それゆえに目の前のことに集中しきれずに、先のことを見越した平均点くらいの熱量でしか取り組めない。
目の前のことに集中することへの意志の強さであったり、刹那的とも言える考えが自分に足りない部分でもあるため、このセリフが印象に残った。
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第一章が非常だるく、断念しそうになったがここを超えるとあとはどんどん読み進められた。内容はとても良かった。ずっと覚えておきたいと思える言葉もいくつかあった。
Posted by ブクログ
命、権力、家族、ライバル、仕事、様々なことが描かれている。医療関係者ではない自分にも、抽象化すると同じような問いが立つので、考えさせられるストーリー。
Posted by ブクログ
プロローグに書かれた人は誰だろう、いつこの話題が出るだろうと構えて読んだが、エピローグまで引っ張られるとは。それと、西條医師や院長などの出てくる人達の上昇志向が強すぎて、前半は暗い気持ちで読まされた。真木も秘密が多いし、仕事場の雰囲気も悪い。
少年の心臓手術で、この少年を救おうと西條が考え始めた頃から面白くなってきた。何としても救おうと真木にオペのバックアップを頼み、予想通りミカエルが暴走する。緊迫の場面が生々しい。
失敗を隠そうとする医療関係者達。それを告発すべく立ち上がった西條。弱者である患者及び家族を救えるのは、やはり当事者や倫理観を持った専門家だと強く思わされた。
Posted by ブクログ
自分が医療機器『ミカエル』の権威として活躍していたところに、ミカエルに関する暗雲が。
心臓の弁形成術にミカエルを使うか、使わずに新しく赴任した天才医師による手術を行うか。
その後の教授の椅子にも大きく関わる手術。
ミカエルに隠された秘密を知ってしまった医師の葛藤がリアリティーがあって読み応えがありました。
平等な医療、命の尊さとは?を考える医師。身分やプライドと戦いながらも打ち勝つところが良かった。
Posted by ブクログ
これは面白かった。ぐいぐい引き込まれた。
著者は何者?医療業界にもこんな詳しくて、読んでないけど、孤狼の血はヤクザと警察の話しだからそっち系も生半可な知識じゃ描けないだろうし、こんな骨太の作品を次々書いて、知識量ハンパない。もちろん知識だけじゃ書けないだろうし…。
西條(ミカエル推進派)VS真木(ドイツ帰りの天才外科)のようにみえて実はふたりとも恵まれなかった生育歴、医療に対する真摯な姿勢は支笏湖診療所の駒田医師が指摘したように、よく似ている。
絶大な信頼をおいてミカエル(手術支援ロボット)を的確に操作できる西條がそのミカエルに不具合があるとわかった時に出た行動が、医師の矜持だったのだろう。
それに比べて院長の曽我部は…。
でも、実際似たようなことがないとは言えないよね。
西條のような良心を持った医師がひとりでも多くいてほしいよ。
このまま雪山で遭難しないよね。
小説は遭難したとこで終わっているけど。
その後、西條はどんな人生を(妻にもう少し優しくなれなかったのか、結局離婚することに。)歩むのか続きが読みたい。
Posted by ブクログ
読み応えあった。
西條や真木をはじめとする医師たちの、医療や患者に対する真摯な姿勢に救われる思いだった。
ミカエルに全幅の信頼をおき、未来に期待していながらも、ミカエルの瑕疵の可能性に思い至った時に、患者のことを考え、真木に助手に立ってもらうことを選択した西條の心の柔軟性が良かった。
反発してるようでいて、出会った時から真木の医師としての姿勢をリスペクトしてしまう西條の人間性。
あと、西條が雨宮と安易に恋仲になったり、体の関係を持ったりすることがなくて安堵。もしそんなチープなことになったら興醒めだなと薄っすら戦々恐々としながら読み進めたけど、さすが柚木裕子、そんなことには一切ならず。よかった。
Posted by ブクログ
とても専門的な事柄や細かな描写を丁寧に書いてるが、文体なのか丁度良い塩梅なのか読んでてストレスを感じない。
文章全体がとても武骨に感じる。
良い意味で女性作家が書いた作品とは思えない。
それが個人的にはとても好きだ。
何気ないフレーズにも作者のセンスを感じる。
最近、さらに好きになった作家。
他作品も読み漁ろうかと思う。
エンディングが若干あっけなく調子抜け。
Posted by ブクログ
想像より良かった!先が気になり、読みやすくて情景が容易に思い浮かぶ文章で、気が付けばどんどん読み進んでいました。
前職で心不全については随分勉強していたので、専門用語や術式などの単語も殆ど理解出来たので更に楽しむ事が出来ました。
二人の医師が対立しながらも根幹では通じ合っているありがちな医療小説ですが、流石に直木賞候補になった作品だけあって、他の同じ様な小説に引けを取らない面白さでした。
ただ、エピローグはありきたり過ぎてちょっと不満足かなぁ、、、
後は読者の想像にお任せなのは分かるけど、もう少し先を描いて欲しかったです。
Posted by ブクログ
題名と新聞か何かの内容紹介に惹かれ購入。
何回か1章は読んでいたが、いつも途中で
挫折してしまい、ようやく今年読めた。
内容としては、ロボット手術医師と、
胸手術派の医師の対立という話で物語は
進むが、ある患者の手術をきっかけに物語は
大きく変わる。
物語の中心であるミカエル(ロボット手術)に
隠された大きな闇が明かされた時は驚いた。
登場人物が多いので、その理解をするのが少し
大変だった。また中盤以降で出てくるある患者の手術に
ついて過程や手術中の緊迫感や勢いみたいなもの
が、文字なのに読み手にも画としてはっきり伝わって
くる。
また登場人物の心情の移ろい方や画の書き方など、
細やかな文章表現であるため、それが画として
読み手にも伝わってくる部分は凄いと思う。
特に専門用語が多く出てくる医療ものでその辺りを
分かり易く表現しているところは、良く取材している
と思う。
Posted by ブクログ
西條先生と真木先生
ある患者の治療方針に対する考えの
違いはあれど、患者を救いたい想いは共通
「白石航の執刀医はひとりじゃない。
ふたりだ』
真木先生が術中に西條先生に投げた
言葉はグッとくるものがありました
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
自分が信じてきたミカエルは、神の使いである天使ではなく悪魔だった。
己の姿を偽った悪魔が悪いのか、騙された
自分が愚かなのか。
自分が患者の命を危険に晒したことに
間違いはない。悪魔が見せる甘美な
幻想に惑わされ、現実を見失ったのだ。
(517-518)
Posted by ブクログ
読みやすかった
治療も利用しつつ権力を持ちたくなる社会
両親に対する感情が、医師としての生き方に影響している
命を救うことと、生きる意味を問うことは別だ
結果論
母親が最期を迎えた土地がどんな場所か知りたくて、真木はきた
西條と真木が似ている
自分は己であり、己ではない
Posted by ブクログ
西城と真木の対立というのは良いんだけど、他の設定がちょっとね。
医療機器で不具合あったら情報公開されるし、術中死なんて起きたらすぐに使用中止措置になるので、そのあたりはもう少し勉強してから書いてほしい。
Posted by ブクログ
医療用ロボットを使った心臓手術の第一人者である北中大の西條とミュンヘン大から帰ってきた真木。
医療に真摯に向き合う者達の苦悩を描く。
警察や検事のことを柚木裕子は扱うイメージがあったが、医療モノもやはりシリアスで真に迫る感じがあった。
Posted by ブクログ
手術支援ロボ、ミカエルに不具合の噂が。
これを公表する事で、ミカエルの手術を今行う人を見殺しにし、大多数を救うのか、今目の前の一人を救うために、公表せずにいるのか。
トロッコ問題の医療版。
命とは何かを考えさせられる話。