柚月裕子のレビュー一覧
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手術シーンの描写の細かさが凄い。実際に手術を見ているのか、更にアドバイスも受けたのか、とにかく細かい。物語の基本筋は医師と権力、隠蔽、マスコミとよく見るものが並んでるが、この話を独特なものにしているのが医療支援ロボットミカエルで、これは映像化して欲しいと思った。まあまあ現実的な存在のミカエルを通して医療とは、という話が描かれているが、ソフトウェアに関わる立場としては、ミカエル問題の描き方には疑問で、こうはならないんじゃないかな。終盤はプロローグを結び付けるなど情緒的ではありつつも、長く厚い話に決着がつくのではないあたりは好みから外れるかな。
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ネタバレミカエルを使用した手術に絶対的な自信を持っている西條が主人公。
心臓手術に長けている真木が、ドイツから同じ病院へ来たことで、絶対的な自信や自分の信念に揺らぎを感じ始める。
航の手術を境に、物事が動き出す。
◾️良かった部分
ミカエルをめぐったサスペンス的な要素、病院内のギスギスした世界観など、先が気になりドンドン読み進めることができた。
登場人物のイメージもつきやすい描写が多く、読み進めるのは難しくなかった。
◾️微妙と思った部分
感情や行動を表すときに、勘であったり経験といった曖昧な背景で描写していたのが自分的には物足りなかった。
ミカエルを使い続けていた理由が癒着であったり、医療の未来 -
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2025年の最初に手にしたのは、私が好きな作家さんの一人である柚月裕子さんの「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」でした。
「確率的にあり得ない」「合理的にあり得ない」「戦術的にあり得ない」「心情的にあり得ない」「心理的にあり得ない」の5編の短編で構成されています。
とあることで意に反し弁護士資格を剥奪された女性が探偵エージェンシーを立ち上げ、様々な難題を解決していく物語です。過去に読んだ柚月作品のような重厚感はありませんが、勧善懲悪?が心地よい痛快な物語に仕上がっています。
時間がある時にじっくりというよりは、スキマ時間に手軽に読むのに適した感じかな?
いつも感じますが、柚月作品 -
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ネタバレ何作か読んでいる柚月さん。医療モノは初めて見かけた。帯の宣伝文句が気になり購入。
対立する二人の医師が白い巨塔のような、振り返ればやつがいるのような感じで(懐かしい)、とてもわくわくした。
いてもたってもいられなくなって読んでる間にサブスクに加入して白い巨塔のドラマ(唐沢さん版)を見始める始末。
財前に比べるとそこまで野心はないかな?と思うけど、主人公・西條がミカエルにこだわっている理由は患者を救うためだけではないのも事実で。
ちゃんと医者の人間らしさも描かれているのがよかった。
医者は神じゃない!
今まで読んできた柚月さん作品に比べると割とマイルドな展開かなと思った。
作中で人が死んで -
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◾️サマリー
・姉妹は共依存の関係を子供の時から築いてきた。
・父親からの虐待で生まれた解離性同一性障害。
・悪いのは父か、娘か、自治体か。
◾️感想
児童虐待、姉妹の共依存、ギャンブル依存、殺人という暗澹たるキーワードをベースにした暗い小説だった。
作者の作品を読むのは2回目である。前作の盤上の向日葵もまた、虐待のシーンが出てくる。
子を持つ親としては、何とも悲しい気持ちになる作品である。
子は親を選べないのだから、どのような形であれ、我が子には慈しみを持って接したい。
作品を読むと誰が本当に悪いのか分からなくなる。
虐待をした父親が悪いのか、虐待を背景に育ちあげく殺人に手を染めた姉妹が悪 -
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昭和63年広島のヤクザと警察を舞台にした物語。
署内で曲者とされる刑事・大上の下につく新人刑事の日岡は、大上の破天荒な行動に振り回されながらも暴力団の事件を追う。
各章冒頭の、“塗り潰された日誌”を気にしつつ内容に没頭。日誌の目的や塗り潰した日岡の真相が最終章で明かされ、そして読み終えた後に再度プロローグを読むと、日岡に『孤狼の血』が確かに受け継がれており目頭が熱くなった。
正義にはさまざまな形があり、“法律を守るだけが正義ではなく、むしろ正義を通す為に法律を破る事もある”と大上は身を呈して伝えた。ヤクザの義理人情と警察の体裁重視の対比が際立っている秀逸な作品だった。