前に出版された『合理的にあり得ない』の続編。
これまでの柚月さんの作風とは異なり、ヒヤヒヤ、キリキリとした緊張感ではなく、とてもリラックスして物語に入り込める内容だ。
今回は三つの中編で構成されている。
信頼していたクライアントの社長が仕組んだ罠に嵌り、弁護士資格を失った上水流涼子は、自由気儘に動ける探偵事務所を設営し、金と欲に満ちた連中の悩み難問を片付けて、高額な報酬を得る算段を常にしている辣腕経営者兼美人探偵だ。
もう一人の主人公となる貴山伸彦は、東大卒のIQ 140を誇るイケメン青年で、上水流涼子をアシストすると云うよりも、難問の解決は貴山の力量によって図られているのが実情だ。
⚫︎物理的にあり得ない
空港から積荷を載せたクルマが、引き取り場所に来ないで困っている。
そのクルマを探し、積荷を確保して欲しいとの相談を受ける。
⚫︎倫理的にあり得ない
離婚して8年程が経っている元妻から、小学生に成長している息子の親権を、元父親から取り戻して欲しいとの依頼を受ける。
その夫人は、成功報酬を少なくとも500万円は支払うと言う。
⚫︎立場的にあり得ない
涼子と腐り縁の刑事から、拒食症となって衰弱し、容態が不安視されている女子大学生を救ってくれと依頼される。
涼子は「私は医者ではないので受けることはできない」と断るのだが、刑事から成功した後には美味しい情報を持ってくるの一言を受けて依頼を引き受けてしまう。
上水流涼子は相変わらず依頼の内容よりも成功報酬を最優先する営業姿勢は変わっていない。
貴山伸彦は常に冷静な視点で物事にあたり、仕事を請け負ったは良いことに解決法に行き詰まると、常に貴山に頼る姿勢は崩していない。
読者は「なんで貴山は涼子の我慢を許すのだろう」と、同情とイライラ感に苛まれてしまうのだ。
そんな涼子と冷静な貴山とのやり取りが、真剣ながら面白可笑しく描かれている。