柚月裕子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昭和最後の広島の空気がとにかく濃くて、読み始めから作品世界に包まれるようでした。
広島弁の勢いに引っ張られ、しばらく語尾が「じゃのう」になりそうなほど没入。
これまでにもヤクザを扱った作品は読んできましたが、本作はその濃度が桁違いで、組の名前が次々登場するたびに相関図へ戻って確認する読書体験も含めて面白かったです。
大上の強烈なキャラクターには最初は距離を感じていたものの、日岡に対して妙に高い評価を口にする場面が続き、どこかで「この人は初めから日岡の本質を見抜いていたのでは」と思わされました。
その評価も、自分の側へ引き寄せるための駆け引きのように見える一方で、読み進めるほどに大上自身の中でも日岡への見方が変わっていった気配があり、その揺れが物語に深みを与えていました。
昭和の街のざらついた質感、警察と極道の緊張感、そして物語のテンポの良さが重なり、ページを追う時間が濃密でした。
終盤で「ここで一区切りかな」と思ったところからさらにもう一段階の展開があり、最後まで集中が途切れません。
清濁併せ飲むという姿勢が、時に人を動かし、物事を前へ進める力になるのだと感じさせてくれる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
埼玉県の山中で白骨の遺体が名駒・初代 菊水月作 錦旗島黄楊根杢盛上げ駒(しょだいきくすいげつさくきんきしまつげねもくもりあげごま)とともに見つかった。埼玉県警の2人の刑事が名駒の来歴を追う。なぜ遺体は名駒を抱いていたのか?
文庫本では上下巻になっており、上巻では2人の刑事が名駒の来歴を追うのがメインのストーリーライン。もう一つのストーリーラインではタイトル戦が行われており、そのタイトルに挑戦している異色の経歴の棋士 上条桂介にもスポットが当たる。
この上条桂介の子供時代からの話が展開されるがひたすら不憫で可哀想でした。一方で刑事たちが駒の来歴を追う旅はなんとも面白い。辛いと面白いが交互に来る感じですね。
2つのストーリーラインがどこで交錯するかが、事件の真相に迫るための鍵になる。謎解きでは無いのでミステリという感じはそこまで無かったかなあ。後半はどうなるのか?なお名駒の読みが難しすぎて、いつまでも読めず適当に読み飛ばしてしまった。あと本書で創作した架空の駒みたい。 -
Posted by ブクログ
教誨の意味やどういう本かが、よくわからないまま手に取り、読み終えた。
あの、秋田で約二十年前に起きた我が子を含めて殺人を犯した母親をモチーフにした作品。
殺人事件が起こると、表面的な犯行の原因や簡単な構図を追い、それが自分には当てはまらないことを確認して、あとは週刊誌ネタを少し眺めて、興味関心が薄れて忘れてしまう…という繰り返しのように思う。
そして、自分には関係ない事件と考える。
もちろん、自分には関係はないのだが、でも、読後には、人の心理や行動ってそんなに簡単なものではないし、自分もそこに生まれたら関係者や加害者被害者になっていたかもしれないという想像力が働く。
また、一つの事件が起きるだけで、家族だけではなく周囲に大ダメージがおこることもわかる。そういう事件はできるだけ起きない方がいい。
で、あの事件から何の教訓を得るのか。
あの事件というよりも、この本を読んだ感想ですが、
地方の閉鎖的な環境には自分の意志や意見、自尊心を抑えて生きなければいけない人が少なからずいる。
特にそういう人に向けて、自分の意思や意見、考え方などを大事にする教育や環境が必要。
それが身になるためには、経済的な自立も必要。(この本とは関係ない。)
虐待されている子には寄り添ってあげる人の存在が必要であるなど。
この本の中でも、冷たい親族と思っていた寿子さんが別の顔を見せたり、当たり前だけど、人ってそんなに簡単じゃないと思った。
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Posted by ブクログ
定年退職した刑事が、ある想いから四国の霊場巡りをすることになったが、妻も一緒に付いて行くことになった。旅先で知った少女誘拐事件から、更に深い苦悩の旅になって行く。後輩の若手に事件の経過を依頼することで、更に苦悩の旅になって行く。16年前の事件に酷似しているのが原因のようだが、明かされるのが後半ということで、ここまでモヤモヤが続いてしまう。
また、もう一つの秘密が徐々に明かされていく。娘と交際する後輩の刑事を認めたく無い主人公。大切な娘の出生にもドラマがあった。
霊場巡りも後半に入り、出会った人々から事件のヒントを貰い、解決への道すじが見えてきた頃から展開が急ピッチに進んでくる。
最近の事件は解決したが、16年前の事件は、、、?
主人公の将来に暗い影を落としながら、最期は優しい慈雨で余韻を持ちつつ終わってしまった。